[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?

 年が明けてしまいましたが、「シベリウス生誕150年記念」シリーズで続けます。シベリウス「クレルヴォ交響曲」op.7の様々な演奏を聴こう不定期連載。前のものから間が空いてしまいました。その間に、ユニークな「クレルヴォ」を見つけました。

ARTE Concert:Tero Saarinen inszeniert Jean Sibelius' "Kullervo" in Helsinki
(言語はドイツ語かフランス語。右上にどちらかを選択するボタンがあります。ページに飛ぶと動画が再生されるので注意してください。また、重めなので、再生が始まったら一度一時停止して数分待ってから再生するとスムーズに再生されます)
※3月1日まで公開です※

フィンランド国立歌劇場:シベリウス「クレルヴォ」
ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ヴィレ・ルサネン(バリトン)
フィンランド国立歌劇場合唱団
ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団

テロ・サーリネン:振付
ダンサー:
Terhi Räsänen(テルヒ・ラサネン):クレルヴォの妹、Samuli Poutanen(サムリ・ポウタネン):クレルヴォ、David Scarantino(デイヴィッド・スカランチノ):キンモ
フィンランド国立バレエ、テロ・サーリネン・カンパニー


 2015年、フィンランド国立歌劇場で上演された、シベリウスの「クレルヴォ」バレエ付きです。「クレルヴォ」を聴いていると、踊りたくなるような箇所がある。バレエとは面白いかもしれない。と思って観てみました。

 一言で言うと、不思議です。そして、謎です。
 謎に思った点について先に書くことにします。シベリウスは各楽章にこう副題をつけています。
第1楽章:序章(導入部)
第2楽章:クレルヴォの青春
第3楽章:クレルヴォとその妹
第4楽章:クレルヴォの出征(戦場に赴くクレルヴォ)
第5楽章:クレルヴォの死

 リョンロットが編纂した新「カレワラ」のクレルヴォの章に基づき、その詩・物語通りの展開です。しかし、このバレエ版では、副題が異なる楽章があります。第1楽章から、「クレルヴォと彼の同志キンモ(Kullervo und sein kamerad KImmo/Kullervo et son compagnon Kimmo)」(動画のサイトがドイツ語とフランス語だけなので、両方表記しておきます。英語、フィンランド語がないのが困る)。キンモって誰?岩波文庫の「カレワラ」小泉保訳版の、下巻巻末の用語集には、「牛の名、kimmoは跳ねることの意」「恐ろしい悪霊で石の主の名」とある。クレルヴォの章には出てきません。第4楽章の前に「クレルヴォの出征(Kullervo zieht in den krieg)」とダンスだけの箇所があり、第4楽章は「キンモの狂気(Kimmos wahnsinn)」。第5楽章の前でも女性ダンサーが曲なしで踊る「das schweigen der frauen:女性の言及」というシーンが。でもフランス語だと「le silence des femmes:沈黙の女性」(ドイツ語、フランス語共にわからないので機械翻訳です、すみません)言及なのか沈黙なのか、どっちなの?
 キンモという存在と、副題も変えられている。シベリウスの交響曲「クレルヴォ」は演奏、独唱・合唱はそのままですが、副題や演出は変えている模様。
 調べてみたら、以前ちょっと紹介したサッリネンのオペラ「クレルヴォ」にクレルヴォの子ども時代の友達としてキンモが出てきます。「カレワラ」のクレルヴォの章とは、あちこち物語を変えています。もしかして、サッリネンのオペラでの物語、演出を混ぜているのだろうか…?
 これが謎の部分です。

 バレエ・ダンスは抽象的です。クレルヴォを象徴する振り付け…腕からひじへ、もう片方の手でなぞる振り付けがよく出てきます。クレルヴォの力を表現しているのでしょうか。衣装は現代的。クレルヴォ役のダンサー・ポウタネンさんの肉体美には見惚れます。クレルヴォの妹役・ラサネンさんも美しい。でも、どこか不思議です。

 第3楽章、男声合唱とソプラノ・バリトン独唱が入ってくる演出はかっこよかった!声楽陣は衣装が違います。声楽陣の衣装の方が好みです。ソプラノのルサネン=カルタノさん、バリトンのルサネンさん…実際にごきょうだいです。ソプラノのルサネン=カルタノさんは2015年Proms、フィンランド・ラハティ・シベリウス音楽祭でもソプラノソロを務めた方。クレルヴォの妹が今までのことを告白する箇所の痛切な歌い方が印象的です。その後の、バリトンソロのクレルヴォの嘆きもずしりと来る。合唱はオペラ、歌劇場の合唱団。簡単な動きや演技をしながらの「クレルヴォ」の合唱はなかなかない、これだけだと思います。第5楽章も合わせて「クレルヴォ」の男声合唱はとても好きです。

 オーケストラ演奏は、バレエに合わせているのか、バレエが演奏に合わせているのか、どちらなのだろう?ただ、踊りやすいテンポにはしてあるように感じました。第3楽章で、金管がアクセントをつけるようにフォルテになるところがあるのですが、クレルヴォと妹の危険を予感させるような音でした。バレエをしっかりと支えるような演奏です。

 バレエがなくても、「クレルヴォ」は物語がドラマティックで情景が浮かぶのですが、フィンランドを代表する振付師が振り付け、演出するとこうなるのか…。また別の「クレルヴォ」で、謎もありましたが楽しみました。

 次回からはCDでリリースされている演奏に戻ります。あと、「カレワラ」やクレルヴォの章、リョンロットが「カレワラ」をどう編纂したのか、ちゃんと勉強しないとわからないことも多いと感じました。持っている資料をもう一度読み返して、またCDも聴いていきます。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 ベルグルンド指揮ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
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by halca-kaukana057 | 2016-02-21 23:13 | 音楽


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