ヴィンランド・サガ2


「ヴィンランド・サガ 2」(幸村誠、講談社・少年マガジンコミックス)

 やっと2巻を読みました。

 イングランド北部で、ヴァイキング・デーン人がイングランド人の襲撃に遭う。その後、アイスランドのトルフィンたちの村に大きな軍船がやってくる。北海最強の軍団・ヨーム戦士団とフローキは戦士団首領の命令で、かつて大隊長だったトルフィンの父・トールズにイングランドとの戦争に加わるようにと伝えに来たのだ。トールズは戦の最中に脱走し、このアイスランドに逃げ隠れ暮らしていた。村の男たちは戦に興奮するが、トールズは村を巻き込んでしまったと落ち込んでしまう。再び逃げれば村が襲われる。逃げられないと覚悟し、トールズは戦に行くことを決心する。
 一方トルフィンは父の過去を知ってか、強くなろうと思いつめていた。子供同士の戦ごっこでも力いっぱい“戦い”、年上の子を骨折させるほどだった。そんな中トルフィンは家の中で短剣を見つける。おもちゃではない本物の刃に見とれるトルフィン。しかし、父トールズは「お前に敵などいない。傷つけてよい者などどこにもいない」と言い諭す。だがトルファンは父が人を殺しに行くことを知っていた。複雑な思いのトールズ。そして、トールズと村の男何人か、そして忍び込んだトルフィンも乗せ船は戦場へ出発した。トールズは途中で村の男たちは降ろし、ひとりで戦場に向かうつもりでいたが。
 そのトールズたちの船が一度立ち寄る予定の島にはフローキとヨーム戦士団、そしてアシェラッドの一味がいた。フローキはアシェラッドにトールズを暗殺するよう頼んでいたのだ。裏があると読みながら了承するアシェラッド。そしてトールズたちの船がその島に到着した。


 この巻でトールズの過去と死の謎、トルフィンとアシェラッドとの出会いが明かされる。とにかく、トールズが強い!!普段は穏やかなトールズの強さに圧倒された。しかし、そのトールズの「精神的な強さ」にさらに圧倒された。相手を殺すことで自分の強さを見せ付けるのではなく、それとは別な次元の「強さ」。戦士としての礼儀や磨かれた戦略、そして人間性。奥底には戦から逃げた過去の「弱さ」もあり、それがアシェラッドにチャンスを与えてしまう。それでも威厳あるトールズの死。…言うことなし。

 それにしても、幸村さんの「人間のドラマ」の巧さがたまらない。「プラネテス」にも通じるのだけど、近未来の宇宙であれ11世紀の北欧であれ、人間の生活やその中での想いが伝わってくる。舞台はフィクションでも、人間はノンフィクションに近い現実感。「ヴィンランド・サガ」は「プラネテス」よりも難しいんじゃないかと思う。「プラネテス」の方が現代に近いし、人の考え方も近未来とは言えそれほど変わってはいない。だが今回はずっと時代をさかのぼり、さらに北欧のヴァイキングと民族も違う。それなのにキャラクターの感情や考え方に説得力がある。生きている、現実感のある人間らしさがある。物語の舞台の設定や背景に「負けて」いない。中身もしっかりと充実している。そこが幸村さんの物語のよさだと思う。

 最後に個人的な見所。冒頭のトルフィンたち子供同士の戦ごっこが可愛い。死んだふりをするトルファンが「あーあ 戦場があっち行っちゃった」(8ページより)と言うところが特に。それから、ヴァイキングの人々が北欧神話の神々を信仰しているとわかるところ。先ほどの8ページでトルフィンの友達・ファクシの「天国にある戦士の館(ヴァルハラ:北欧神話の主神・オーディンの居城)では毎日お肉が食べ放題なんだってさ~~~」の台詞や、トールズがアシェラッドに決闘を申し込む時「全能のオーディンの名において貴様に決闘を申し込む」(174ページ)の台詞。ヴァイキングの人々にとって北欧神話はれっきとした宗教であったんだ。北欧神話はドロドロしていて怖いんだよなぁ…。巻末にある地図も北欧を知る手がかりになって興味深い。北欧の一つの側面としてこの漫画を読むのも面白い。


<追記>
 最初「少年マガジン」で連載されていたこの漫画、後に「アフタヌーン」に移籍したわけですが「アフタヌーン」と「少年マガジン」の単行本はサイズが違う。今後「アフタヌーン」のサイズの単行本で出したら1・2巻とサイズが合わないじゃないか…。ということで、「アフタヌーン」の単行本サイズで新装された1・2巻が8・9月に出るそうです。表紙も一新、さらにトルフィンの姉・ユルヴァがメインの4コマ「がんばれユルヴァちゃん」付き。…4コマ目当てで買います、マジで。あと、3巻は10月。楽しみ。

 もう一つ、この「ヴィンランド」というのは調べてみたらアメリカ大陸のことらしい。アイスランドの「サガ」の中にレイフおじさんのヴィンランド探検に関する記述があるそうだ。史実をもとにした漫画だったのね。面白そうだから調べてみる。
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by halca-kaukana057 | 2006-06-27 20:48 | 本・読書


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