一緒に音楽を楽しもう Proms(プロムス)2016 ラスト・ナイト・コンサート

 イギリス・ロンドンで7月から9月の2ヶ月にわたって開催される世界最大の音楽祭「BBC Proms(プロムス)」.その最終日の夜のコンサートは、「Last Night of the Proms」と呼ばれ、その年のプロムスの打ち上げ、最後に大騒ぎする類を見ないコンサートです。鳴り物(笛やホーン)、風船、国旗などの持込可。演奏や演奏の合間に国旗を振り回し、風船を飛ばす…クラシックコンサートですよ?さらに、4つの野外会場があり、どう見ても野外フェス。イギリス国内は勿論、海外でもテレビ・ラジオで生中継、BBCのネットラジオで世界中で聴くことが出来ます。一体何万人の人が観ているんだろう…?
 日本では生中継は無く(昔はやってたそうです…)、遅れて大体12月にNHKでテレビ放送されます。しかし、昨年は放送されず…悲しかったです。

 でも!今年は放送されました!おかえりプロムス!!今年最後のプロムスの記事を書くことが出来る…!

 プログラムは以前の記事に書いたのですが、表記に違いがあったり、細かいところも追記して、以下のプログラム、出演者でした。
Proms(プロムス)2016 私選リスト その5 [9月]

Prom 75: Last Night of the Proms

・トム・ハロルド:Raze(世界初演)
・バターワース:青柳の堤
・ボロディン:歌劇「イーゴリ公」第2幕より:だったん人の踊り
・ロッシーニ:歌劇シンデレラ」より:誓って、彼女を見つけ出そう(Si, ritrovarla io giuro)
・ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」より:人知れぬ涙(Una furtiva lagrima)
・オッフェンバック:歌劇「美しきエレーヌ」(La belle Hélène)より:イダ山の上で(Au mont Ida)
・ブリテン:マチネ・ミュジカル op.24
 (行進曲/ノクターン/ワルツ/パントマイム/常動曲)
・ジョナサン・ダウ:Our revels now are ended(宴はもう終わりだ)

・マイケル・トーキー:槍投げ(Javelin)
・ヴォーン=ウィリアムズ:音楽へのセレナード
・ドニゼッティ:歌劇「連隊の娘」より:ああ、友よ!(Ah! mes amis)
・アン・ダドリー(編曲):カリブの祭り(アンコール)
 (ムーチョ・コラソン/シナモン色の肌/グアンタナモの娘/今どきの薬草売り)

・ヘンリー・ウッド:イギリスの海の歌による幻想曲
 (小粋なアレトゥーザ/トム・ボウリング/ホーン・パイプ/夜もすがら/スカイ・ボート・ソング/ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)/ホーム・スウィート・ホーム/見よ、勇者は帰る)
・トマス・アーン:ルール・ブリタニア!
・エルガー:威風堂々第1番 ニ長調 「希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)」
・パリー(エルガー:編曲):エルサレム
・ブリテン編曲:イギリス国歌

 フアン・ディエゴ・フローレス Juan Diego Flórez(テノール)
 ダンカン・ロック Duncan Rock(バリトン)

 フランチェスカ・チェジーナ Francesca Chiejina、イヴ・ダニエル Eve Daniell、ローレン・フェイガン Lauren Fagan、アリソン・ローズ Alison Rose(ソプラノ)
 クレア・バーネット=ジョーンズ Claire Barnett-Jones、マルタ・フォンタナルス=シモンズ Marta Fontanals-Simmons、アナ・ハーヴェイ Anna Harvey、ケイティ・スティーヴンソン Katie Stevenson(メゾソプラノ)
 トライスタン・リル・グリフィス Trystan Llŷr Griffiths、オリヴァー・ジョンストン Oliver Johnston、 ジョシュア・オーウェン・ミルズ Joshua Owen Mills、ジェームズ・ウェイ James Way(テノール)
 ブラギ・ヨンソン Bragi Jónsson、ベンジャミン・ルイス Benjamin Lewis、ジェームズ・ニュービー James Newby、ブラッドリー・トラヴィス Bradley Travis(バス、バス・バリトン)

 BBCシンガーズ、BBCシンフォニーコーラス
 BBCプロムスユースアンサンブル
 サカリ・オラモ Sakari Oramo:指揮、BBC交響楽団

 ネットラジオの生中継、オンデマンドを聴きましたが、ラストナイトはやっぱり映像を観てこそだと実感しました。音だけではわからないものがたくさんあり過ぎる!今年は放送されてよかった…!!

 今年のポイントかなと思われるものをいくつか挙げてみます。まず、南米。リオデジャネイロ・オリンピック/パラリンピックで、今年のプロムスは南米の指揮者、演奏家、オーケストラ、作品をよく取り上げていました。このラストナイトのスターソリストは、ペルー出身のテノール:フローレス。オペラアリアと4曲アンコール、「ルール・ブリタニア」、更に会場のロイヤル・アルバート・ホールの隣のハイド・パーク会場でもギターと歌を披露し大活躍。案内役のアナウンサーさんが「こき使っています」と言っていたのに、確かに、と思ってしまいましたw甘く優しい歌声で、魅了されました。アンコールのラテンメドレー「カリブの祭り」はラテンの情熱的な恋を歌った曲ばかり。ノリノリです。ヴィジュアル面でも魅了されますよこれはw
 フローレスさんの十八番、ドニゼッティ「連隊の娘」より「ああ、友よ!」見事なハイC(三点ド)の連発(9回も!!)には驚きました。声のハリも迫力、強弱もうまい。フローレスさんがリハーサルの際のインタビューで仰っていた男声合唱との掛け合いも楽しい。声楽をやっているものとして、聴く・観るべきところがたくさんありました。
 そのフローレスさんが「ルール・ブリタニア!」を歌います。衣装に驚きました。インカ帝国の王様。カッコイイ!仕草も歌も威厳ある。素晴らしい「ルール・ブリタニア」でした。
Thomas Arne: Rule, Britannia! - BBC Proms

 2つ目のポイントは、シェイクスピア。今年は没後400年。プロムスもシェイクスピア作品を元にした楽曲を数多く取り上げました。ラストナイトもシェイクスピアです。ジョナザン・ダウの「宴はもう終わりだ」は「テンペスト」から。ダンカン・ロックさんの渋いバリトンが、儚い世界を歌い上げます。歌詞には出てきませんが、音楽も儚いものだな…と感じました。ヴォーン=ウィリアムズ「音楽へのセレナード」は「ヴェニスの商人」から。音楽の美しさを讃える箇所を、16人の若手声楽家たちがそれぞれソロを受け持ち、歌います。以前も書いたのですが、本当に美しい作品です。

 3つ目のポイントは、若手音楽家。1曲目、トム・ハロルド「Raze」を演奏したBBCプロムス・ユース・アンサンブルは10代の音楽家の卵たちがBBC響の楽団員さんたちと一緒に演奏。10代でラストナイトの大舞台で演奏できるなんて凄い!また何年後かにこのロイヤル・アルバート・ホールの舞台に戻ってこいよ!と応援したくなります。作曲したトム・ハロルドさんも25歳。これから、またプロムスで新曲を世界初演するんだろうな…。Razeは「打ちのめす」という意味で、観客にガツンと響け!という思いを込めて作曲したのだそう。ガツンときました。とてもかっこいい作品です。ヴォーン=ウィリアムズ「音楽へのセレナード」を歌った16人の声楽家たちも若手。また歌声を聴きたい方ばかりです。指揮のサカリ・オラモさんの指揮者スピーチで、これからもプロムスは世界中の様々な音楽を紹介し続けますと仰ってましたが、その時は彼らのような若手音楽家たちが活躍するんだろうなと思いました。

 4つ目のポイントは、「イギリスの海の歌による幻想曲」。ラストナイトの定番曲なのに、2012年以降演奏されていませんでした。今年は完全復活!嬉しいです。トロンボーン、ユーフォニアム、チューバの低音域が活躍する「小粋なアレトゥーザ」。チェロのソロが観客の涙を誘う(観客のみなさんはハンカチで涙をぬぐう仕草をするのがお約束。そのハンカチはBBCがちゃんと用意していましたw)「トム・ボウリング」。コミカルで、指揮者vs.オケvs.観客の屈伸と手拍子とホーンのガチ対決の「ホーン・パイプ」。速さが足りない!ともう一度演奏するのもお約束です。BBC響の皆さんを応援したくなります。一方のオラモさんは踊って指揮してる箇所もあるしwその後はしっとりと、ウェールズ民謡「夜もすがら」、スコットランド民謡「スカイ・ボート・ソング」「ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)」。この3曲はウェールズ、スコットランド、北アイルランドの野外会場での演奏を生中継していました(ラジオではロイヤル・アルバート・ホールでのBBC響の演奏)。この3曲も涙が…。タイトルの通り哀愁が漂うオーボエが聴きどころの「ホーム・スウィート・ホーム」。表彰式でよく聴く「見よ、勇者は帰る」。最後は観客大合唱の「ルール・ブリタニア!」観客も一緒になって、演奏に参加できるのもラストナイトの魅力。巨大なホールで大観衆のコンサートなのに、どこかアットホームな感じ。気取らず聴けて楽しめる。この後に続く「ルール・ブリタニア」、「威風堂々(希望と栄光の国 Land of Hope and Glory)」、今年誕生100年の「エルサレム」、イギリス国歌「God save the Queen」そして締めの「Auld Lang Syne」(「昔なじみ」、「蛍の光」は日本独特の歌詞になってしまっているのでちょっと違う)も、プロムスの最後に大騒ぎして打ち上げ、また来年会いましょう!というものなんだと思います。歌詞がイギリス万歳な内容ですが(しかも今年はEU離脱も持ち上がり、EUの旗も振られていました)、根底にあるのは、観客も黙ってないで演奏に参加できる楽しさなんだろうと私は思います。

 その他の曲、今年没後100年のバターワース「青柳の堤」はとても美しいし、ボロディン「だったん人の踊り」は大迫力の合唱にしびれました。演奏後、オラモさんが「パーフェクト!」と言ったとか。ブリテン「マチネ・ミュジカル」も優雅でコミカルで楽しい。どのプログラムも楽しかった。録画を何度も観ては、ああ、今年のプロムスも楽しかったな、これでようやく終われる、来年に繋がると思っています。
 NHKさん、来年も放送よろしくお願いします!


 残り、細かい気になったところを箇条書き。

・ラストナイトの歴史や、今年誕生100年の「エルサレム」の歴史を解説していたのはよかったです。わかりやすかった。
・第1部でフローレスさんが曲の合間に足元に置いていたペットボトルで水分補給。「気にしないで」と言っていたフローレスさん、やっぱり素敵です。
・第1部では普通のタイをしているBBC響の楽団員さん、第2部ではユニオンジャックカラーのタイに変えたりもしていました。粋です。
・第2部、いつもの通り指揮台はカラーテープや国旗、風船でデコレーション。最初の曲「槍投げ」で、譜面台にあった緑色のカラーテープを首に巻いて指揮を始めたオラモさんwしかし、テープの色がシャツについてしまいました…。クリーニング大丈夫だったかなぁ…
・切手になり、結婚式は生中継…フローレスさんはペルーの英雄ですね。
・ドニゼッティ「ああ、友よ!」で、指揮台についていた風船を殴りながら歌うフローレスさんwどういう演出だw最後は風船を割って勝利!!途中風船が指揮台の内側へ。さりげなくオラモさんが元に戻してました。ナイス。
・フローレスさんがくまのパディントンのぬいぐるみをどう受け取ったのか、映像でようやく確認できました。パディントンもペルー出身だったのか。このラストナイトで初めて知りました。
・第2部のフローレスさんのアンコール中、フルートの2人(BBC響の第2フルートは日本人、向井知香さん。日本人演奏者もがんばってるのですから、NHKさん放送お願いしますよ!)が何かを指差して笑っていた。何があったんだろう?気になる。
・オーボエさんが、頬をふくらませ一生懸命演奏しているのが印象に残りました。MVP楽団員です。
・でも、どのパートにも魅せ場があって、BBC響の楽団員さん全員を応援していました。BBC響いいですね。
・オラモさん、今年の指揮者スピーチもいいこと言ってました。音楽は調和、時間や場、人を繋ぐ。そしてプロムスの意義、世界中の音楽を紹介し続ける。まさに音楽の祭典です。
・でも真面目なだけじゃないオラモさん。お茶目なところもあちらこちらで。「ルール・ブリタニア」のインカ王フローレス様が登場の際には、指揮台の上で跪きひれ伏してましたw「イギリスの海の歌~」の演奏前では、飛んでいる風船を指揮棒でつつこうとするwバーミンガム市響、フィンランド放送響初期時代は眼鏡のせいか、とても真面目そうに見えたのに…。
・指揮者スピーチの演奏者紹介で、BBC響のコールの後「Love you!」と、更に観客に向かって「もっと拍手!もっと拍手して!!」とジェスチャーするオラモさん。全プログラム終了後に、オケの皆を穏やかな笑顔で讃えねぎらっていたのも印象的でした。BBC響といいコンビです。
・BBCの他の放送でも気になっているのですが、サカリ・オラモさんのファーストネーム Sakari サカリと発音せずに英語読みのZachary ザカリーと発音してません?(聖書由来の男性名Zechariah ゼカリアが英語だとZachary、フィンランド語だとSakari)日本人から見ると、普通に見たままローマ字読みすればいいのに…と思ってしまうのですが…。
・BBC響は、イギリス国歌をチェロ以外起立して演奏します。
・「エルサレム」、イギリス国歌、「Auld Lang Syne」の流れがじわじわ来ます。「Auld Lang Syne」はオケの演奏は無く、指揮者も舞台袖で見守る形だったのが、去年・マリン・オールソップさんから指揮ありでオケも演奏するようになりました。

 来年のプロムスは、2017年7月14日スタートです!公式ガイド買って、また来年も楽しみます!

【追記】
 夏のBBCでの放送・オンデマンド、NHKでの放送を聴き逃した、見逃した…という方へ。年末年始はプロムスの公演のいくつかが再放送されますが、ラストナイトもありますよ!オンデマンドで聴けますよ!
BBC radio3 : BBC Proms 2016 : Prom 75: Last Night of the Proms
 ラジオ放送のMCや、指揮者スピーチの一部が端折られていますが、全曲聴けます。オンデマンドは1月30日ごろまで。

 ちなみに、この再放送はグリニッジ標準時 12月31日夜9時から始まりました。終わるのは日付、年が明ける午前0時。つまり、「ルール・ブリタニア」や「Land of Hope and Glory」で大騒ぎして年越ししてたんですよイギリスは。そして今年も残り少ないところで締めは、「Auld Lang Syne」.「蛍の光」でその年の締めって…紅白ですかwイギリスでも年越しの時間に「Auld Lang Syne」を歌っていたのかもしれませんw

◇BBC公式、3分で振り返るラストナイト:Last Night of the Proms 2016 in 3 minutes!

◇BBC公式、ラストナイトのバックステージ写真集:BBC radio3 : Proms : Backstage at the Last Night of the Proms 2016

◇ガーディアン紙による舞台裏写真集the guardian : Last Night of the Proms - behind the scenes

【過去のプロムス記事】
・7月編:Proms(プロムス)2016 私選リスト その1 [7月]
・8月前半編:Proms(プロムス)2016 私選リスト その2 [8月前半]
・8月後半その1:Proms(プロムス)2016 私選リスト その3 [8月後半のその1]
・8月後半その2:Proms(プロムス)2016 私選リスト その4 [8月後半 その2]

・2014年ラストナイト:こんなクラシックコンサート観たことない! 「Proms(プロムス)」ラストナイトコンサート2014

・ヴォーン=ウィリアムズ「音楽へのセレナード」について:美しい月と音楽と
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by halca-kaukana057 | 2016-12-17 16:43 | 音楽


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