星の案内人 4 [完結]

 ずっと読んだ本の感想書いていませんね…。少しずつ書いていけたらと思います(諦めてない)。

 プラネタリウム天文漫画「星の案内人」、3巻の発売から随分経ってからの4巻が出ました。そして、完結です…。なんと…。


星の案内人 4
上村五十鈴 / 芳文社・芳文社コミックス/2016

 ある日、トキオは不思議な雰囲気の青年と出会う。旅人のような雰囲気で、カメラを持っていた。おじいさんのプラネタリウム「小宇宙」にいると、その青年・チハルが訪ねてくる。チハルはカメラマンで、かつておじいさんの家・小宇宙に居候していたことがある。チハルはおじいさんと出会った頃、チハルの世界は真っ暗だった。


 4巻で登場し、4巻の鍵となる人物、チハルさんの登場です。子どもの頃、心優しく優秀な兄を不慮の事故で亡くしてしまう。事故と兄の死は自分のせいだ、自分が死ねばよかったと、自分を責めるチハル。学生時代はグレた生活をしていたが、そのグループで違和感を覚え、さまよい、おじいさんに出会った。何も聞かず、食事や寝床、服やお風呂を用意してくれたおじいさん。おじいさんの心のあたたかさに触れ、おじいさんと生活することに。そして、おじいさんとの天文や自然に関する会話から、自分が生きていていいと思うようになる。

 チハルさんは、「ムーミン」のスナフキンのような人。でも、過去にとても重いものを背負い、おじいさんに救われた。いや、おじいさんはひとつのきっかけであって、チハルさんの「生きたい」という気持ちを引き出したのかな。スナフキンのような言動は、おじいさんの影響です。おじいさんがもっと若くて、もう少し静かな人なら、チハルさんのようになったかもしれない…。

 このチハルさんが、トキオくんを動かします。27・28話、トキオくんも、おじいさんの心のあたたかさに触れ、おじいさんとの交流や星の話から、自分自身を認められるようになった。でも、もしおじいさんがいなくなったら…。生きること、死ぬこととはどういうことか。ひとりになるとはどういうことか。トキオくんの不安を、おじいさんのプラネタリウムと星の話、そしてチハルさんが優しく支えます。

 24話のトキオくんやコータのクラスメイトのスエツグくん、25話の謎の美女、26話のナノハちゃんの友達のしのちゃん。初期のオムニバスが戻ってきたようなこのあたりでも、チハルさんとトキオくんの話でも、そして最終話でも、この漫画は宇宙と人間の関わりを、科学の側からも、神話や文学・芸術の側からも教えてくれる。どちらも、人間が「宇宙のことをもっと知りたい、宇宙にもっと近づきたい」と思って、観測や研究を重ね、歴史の中で物語や作品がつくられてきた。プラネタリウムもそのひとつと言える。宇宙や星の姿や謎が少しずつ解明されるなかで、人は同時に宇宙に生きることとは何かという問いを映す。どう生きたらいいのか。辛いことや悩みがあって、ふと夜空を見上げて星空に見入ってしまうのも、そんな思いの投影だろう。

 25話で、おじいさんの奥さんについて語られたり、29話でおじいさんがどんな風にプラネタリウムをつくっていったか簡単な説明があったけれど、おじいさんはかなり苦労してきたんだと思う。でも、そう思わせない。表に出さない。全て肯定している。やって来た人は誰であれ拒まず、おじいさん流に心あたたかく迎え入れる。そんなおじいさんだからこそ語ることのできる星の話があり、このプラネタリウム「小宇宙」はおじいさんで生を受けているのだと思う。

 最終話(前後編)。トキオくんも、アスカちゃんも、皆、またひとつ成長します。トキオくんのラスト、志村さんに言った言葉がかっこよかった。でも、その後、「小宇宙」に来ていた人たちがどうなったかは語られません。でもプラネタリウム「小宇宙」はある。中に入れば、おじいさんが食べ物や飲み物とともに迎え入れてくれて、プラネタリウムを見せて星の話をしてくれる。そんな場所が、日本のどこかにあって欲しいなぁと思うラストでした。

 登場する人々が、色んな過去・現在を抱えていたり(過去や現在に問題を抱えていない人なんていないと思う)、最初は反発していたり。でも、心の奥底にはあたたかいものを持っている。それを引き出してくれるおじいさんとプラネタリウム。宇宙のことも学べて、心もあたたかくなる、素敵な漫画でした。ありがとうございました!!
 また好きな天文漫画が終わってしまった…(涙

 カバーを外した表紙のおまけマンガで、トキオくんがヴァイオリンで演奏していた曲のひとつが判明しました。クライスラー:作曲、「プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ」のアレグロ。この曲です。
Itzhak Perlman-Pugnani Kreisler-Preludium and Allegro
 パールマンのヴァイオリンでどうぞ。この曲の後半部分、2分24秒辺りからです。トキオくん、こんな曲を弾けるんだ…!!すごい。この曲、知りませんでした。作者の上村先生はクラシックがお好きなのかなぁ?

・3巻感想:星の案内人 3
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by halca-kaukana057 | 2017-03-07 22:30 | 本・読書


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