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メロディ・フェア

 以前から読んできた宮下奈都さんの本を読みました。宮下奈都さんといえば、「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞、一気に注目されました。ピアノ調律師のお話と言うことで読みたい!のですが、文庫化待ち。他の作品を読んでいきます。


メロディ・フェア
宮下奈都/ポプラ社・ポプラ文庫/2013(単行本は2011)

 結乃(よしの)は東京の大学を卒業し、化粧品会社に就職。地元に帰り、ショピングモールの化粧品売り場で美容部員として働き始めた。一緒に働いている馬場さんは、「凄腕」の先輩。お客は思うように来ず、化粧品もなかなか売れない。だが、結乃は人をきれいにしたいとカウンターに立ち、お客に化粧品を試してもらい、アドバイスをして、その思いを伝えようとする…。

 このブログでも、ツイッターでも、自分の性別に関する発言はあまりしてこなかった。なので、この本についてどう書こうかと思ったが、書きたいと思った。面白い。化粧に関しては、それほど熟知しているとは思わないし、自信があるとも言えない。使いこなしているとも言えない。でも、この本を読んだら、化粧や化粧品についてもっと知りたいし、うまくなりたい、楽しみたい、チャレンジもしてみたいと思うようになった。

 結乃は本命の大手の高級化粧品を出している会社には落ち、3番手以下のこの会社に就職した。さらに、勤務地も本命のデパートの化粧品売り場ではなく、ショッピングモールの化粧品売り場。お客はなかなか来ないし、来てもなかなか売れない。何も買わず、雑談だけしていく人もいる。それでも、人をきれいにしたいと願いながら、雑談にもけなげに応じたり、様々な一癖二癖あるお客たちに化粧や化粧品についてアドバイスをする。悩みながら、日々仕事する「お仕事小説」でもある。結乃のけなげさが清々しい。お客達も化粧で新たな一歩を踏み出したりする。とても清々しい。

 結乃は化粧品売り場で、小学生の頃の友達のミズキに意外な形で再会する。ミズキの野望、抱えている悩み、本音…。それが化粧に現れているのが面白い。結乃とミズキの友情はコミカルだが、シリアスなところに徐々に踏み込んでいく。
 私も、ミズキのようなところがある。より高く、より遠くに手を伸ばそうとする。背伸びする。でも届きそうもない。「手の届く幸せ」。この言葉にじんとした。

 結乃の大学生の妹・珠美は化粧を強く嫌っている。姉の仕事も理解できない。姉妹の溝はなかなか埋まらない。それには、結乃と珠美の幼い頃の記憶も関係しているのだが、化粧によって、2人の関係も変化していく。
 化粧をしない顔が本当の自分なのか、化粧をしている時の顔は何なのか。一度は考えたことがある。結乃と珠美が出す答えに納得した。納得して、もっと化粧を楽しみたくなった。あと、化粧品売り場にやって来る「マダム」が言った言葉にも。
「そうね、合わなければ取ればいいんだものね。メイクのいいところって、そこよね」
 そう応じてくれた、マダムの言うとおりだ。メイクは何度でもやり直せる。失敗したら取ればいい。そしてまたやり直せる。好きな顔になるまで、好きな自分になれるまで何度でも。
(268ページ)


 結乃の売り場にある化粧品に関する描写も、いいな、その化粧品使ってみたいなと思ってしまう文章で楽しくなる。そんなにたくさん化粧品は買えない、買っても使い切れないので、この本で描かれているように私も試してみたいと思う。そして、気に入ったものを欲しい。

 この本を読んだ後、新しい化粧品を買いました(単純)。
 「メイク・ミー・ハッピー」メイクは自分を幸せにする。そんなキャッチコピーがありましたが、まさにそれだと思いました。化粧をして、明るい表情になって、楽しくなろう、幸せを感じよう。結乃の成長と共に、そんな楽しさが感じられるお話です。

 番外編(文庫本書き下ろし)の馬場さんの番外編もいい。馬場さんから見た結乃もまたいい。
by halca-kaukana057 | 2017-05-17 22:51 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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