ヴィンランド・サガ 3



「ヴィンランド・サガ 3」(幸村誠、講談社アフタヌーンKC、2006)

 2巻までは「少年マガジン」で連載されてきた「ヴィンランド・サガ」。3巻からはアフタヌーンで連載。ストーリーもトルフィンがアシェラッドに仇討ちを誓い、行動を共にするようになった時(つまり1巻第1・2話の後の話)に戻ります。


 時は1013年。アシェラッドたちは、スヴェン・デンマーク国王が率いるデンマーク軍についてイングランドを攻撃していた。ヴァイキング(デーン人)たちはイングランドの多くの町で破壊・略奪を繰り返し、イングランド王はフランスに亡命してしまった。しかし、デンマーク軍はロンドンを破ることが出来ないでいた。ロンドン側には同じくヴァイキングのトルケルが付き、ロンドンの守りを固めていた。アシェラッドと共にスヴェン王側についているヨーム戦士団・フローキは デンマーク側につくようにトルケルを説得する。しかし、戦争好きのトルケルは弱いイングランド軍と戦うよりもデンマーク軍と戦う方が面白い。このままイングランド側についてデンマークと戦うことにすると攻撃を始める。そして、アシェラッドにトルケルを殺すように命じられたトルフィンは、トルケルが守りを固めるテムズ川のロンドン橋に一人飛び込んだ。


 巻頭の第17話で少ししみじみしたあとは迫力満点の戦闘シーンが続く。トルケル…またとんでもなく強いのが出てきました。しかも台詞がオモシロイ。
「どぉーしたスヴェン軍!!ちったァ工夫しろ!! お前らもっとやればデキる子だろーが!!」(第18話、80ページ)
「気に入った!!オジさんはりきっちゃうぞー!!」(第19話、96ページ)

結構濃い。

 今巻でもヴァイキングの思想を支える北欧神話にまつわるものがあちこちに出てくる。2巻でも少し出てきたヴァルハラに、ラグナロク(最終戦争)。さらに、北欧神話とキリスト教をヴァイキングたちが比べるシーンも。この頃、北欧神話を信仰していたヴァイキングたちも徐々にキリスト教に改宗するものが現れ、スカンジナヴィア諸国にも教会が建ち始めていた。そう言えば第5話(マガジン版単行本では2巻、アフタヌーン新装版では1巻に収録)で、レイフのおっちゃんが十字を切るシーンがあった。何故北欧神話から離れ、キリスト教に改宗したのだろう?ヴァルハラの考えに代表されるように戦うことを重要視しているヴァイキングの人々にとって北欧神話のほうが魅力的なはず。第21話でトルケル側のヴァイキングたちの会話でも、北欧神話の神々の方が強くてたくましく、かっこいいと言っている。ヴァイキングたちに何が起こったのか。調べてみよう。


 巻の後半で出てくるスヴェン王の息子・クヌート王子にも注目。このクヌートは北欧史でかなり重要な存在。高校の時の世界史の教科書を押入れから引っ張り出して確認したら、ちゃんと載っていました。このクヌート王子もキリスト教に改宗した一人。今後このクヌート王子がどう歴史を動かしてゆくのが注目です。


 巻末にはトールズが死に、トルフィンが行方不明になった後のユルヴァを描いた「特別編・はたらくユルヴァちゃん」。けなげで一生懸命で、しかも男よりも強くたくましいユルヴァちゃんの父亡き後の毎日。家族が死んだ後の暮らしや心の動きがよく描かれていると思う。

 あと読みどころは第20話のアシェラッドの意味深な台詞。アシェラッドの深いところがだんだんにじみ出てきた。ずる賢いだけじゃなさそうだ。



 
ついでなので新装版1・2巻についても少し。大きな変化はないですが、上でも少し触れたように第5話が1巻に収められたことと巻末のおまけが追加。1巻では待望(?)のユルヴァちゃん4コマ。たった2ページの短さですが、ユルヴァちゃん最強。ヴァイキングとはもともと略奪行為そのものを指し、ヴァイキングに出かけていたのは専門の海賊よりも普通の農民の方が多かった。それがイングランド攻撃ではちょっと意味合いは変わってくるが、ユルヴァちゃんもそんなヴァイキングの一人なのです。

 
2巻では幸村さんのアイスランド取材レポート。やっぱり北欧の女性はいろんな意味で「凄い」らしい。さらに設定資料もお見逃しなく。





 ちなみに、現在北欧史関連で読んでいる本
・「新版世界各国史21 北欧史」(百瀬宏・熊野聰・村井誠人編、山川出版社、1998)
 北欧史を古代から現代までまとめたもの。スカンジナヴィア諸国だけじゃなくフィンランド・アイスランドも含みます。(フィンランドは言語的にノルウェー・スウェーデン・デンマークのスカンディナヴィア諸国と異なる。北欧神話ではなく「カレワラ」が語り継がれてきた文化的な面でも違う。現在ではほとんど同じだが、地域・歴史で見るとスカンディナヴィア諸国とは分けられてしまう。)
・「岩波少年文庫550 北欧神話」(パードリック・コラム作、尾崎義訳、岩波書店、2001)
 ジュニア向けの北欧神話。北欧神話は怖いのだが、まずは一通り読んでみよう。
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by halca-kaukana057 | 2006-11-07 17:43 | 本・読書


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