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ブレイブ・ストーリー

 宮部みゆきの作品は、これまで「火車」ぐらいしか読んだことがなかった。でも、緻密な物語は今でもとても印象に残っている。と言う訳で久々に宮部みゆきを読んでみた。宮部みゆきが異世界ファンタジー?意外。そう言えばアニメ映画化されてたっけ。

 ブレイブ・ストーリー (上)
宮部みゆき/角川書店/2006(単行本は2003)

 小学5年生の三谷亘(ワタル)はゲーム好きな平凡な少年。学校では、建設途中のビルに幽霊が出るという噂が広がり、隣のクラスの転校生・芦川美鶴(ミツル)が心霊写真を撮ったという噂が広がり始めた。容姿端麗・成績優秀にして大人びた印象の美鶴に亘は興味を示すが、美鶴は相手にしてくれない。
 そんなある日、亘の父・明が突然家を出て行くと亘に告げる。亘の母・邦子と離婚するのだ。動揺した日々を送る亘は、幽霊ビルへと行くがそこでは美鶴が不良の6年生・石岡たちに殴られていた。美鶴を助けようとした亘は、美鶴が不思議な呪文を唱え、恐ろしい魔物を呼び石岡たちを飲み込ませてしまったところを目撃する。翌日、行方不明になった石岡と美鶴。父と、父の愛人と、母で混乱する亘の家庭。自殺しようとする母。…そして、突然、不思議な格好をした美鶴が亘の前に現れる。彼は、彼を残して心中してしまった家族との運命を変えるため、何でも願いを叶えてくれると言う「幻界(ヴィジョン)」という異世界にある「運命の塔」へ行くと言うのだ。彼は亘に幻界を旅する「旅人」の証のペンダントを手渡し消えてしまう。亘は幽霊ビルの階段の上にある幻界と現世をつなぐ扉を越え、幻界へと旅立った。

*****


 単行本では上・下巻。文庫では上・中・下巻の長く壮大な物語。長いので、あらすじもまとめきれません。文庫本上巻はワタルが幻界へと旅立つまでの経緯がほとんど。上巻のあたりはちょっとだるいな…と思っていたら、中巻、幻界での冒険が始まると怒涛の面白さ。幻界では「見習い勇者」となったワタル。勇者の剣にはまる5つの宝玉を探すことで、運命の塔への道が開かれると言う。その宝玉を捜し、旅を始めるワタル。トカゲのような男・キ・キーマや猫耳の少女・ミーナ、ガサラの街の自警団「ハイランダー(高地人)」の女隊長・カッツ他多くの人々と出会い、宝玉を捜してゆく。勇者としても、人間としても成長してゆくワタルの姿、そして困難を乗り越えて行く過程が面白くて面白くてドキドキした。

 ワタルが旅を続けてゆくにつれ、幻界はある危機に陥り始める。ワタルも幻界の真実を知らされ、2人の旅人を待ち受ける運命に動揺する。ライバルとしてのミツルの存在。さらにミツルの策略が、幻界を更なる危機に陥れる。その過程でワタルが気付き始める問いと願い。その問いは、人が成長する上できっと直面するあろうこと。そんな問いについて考えるワタルたちの言葉が、読んでいる私自身にもその問いが投げかけられているよう。
 運命を変えることの意味、苦難や悩みを乗り越える時に必要なもの、大切な人の存在…生きることの全てがこの話の中に詰まっていると感じる。困難や認めたくない自分自身にもっと向き合ってみよう、何とかしたいと思っていても何も出来ないと思っていた困難に立ち向かってみよう。やってみれば何か出来るはずだ。読後にそんな勇気がわいてくる。


 宮部先生はRPGゲームの攻略本をよく読まれるとのこと。個性豊かな幻界の住人たち、魔法の設定、世界観には圧倒された。特に好きなのがハイランダーの女隊長・カッツ。様付けか、お姉さまとお呼びしたいぐらいカッコイイ。カッツの例のシーンで泣いたのは他でもありません。(最近本で泣いてばかりだ…)


*****

 で、アニメ映画版も原作読了後に観てみた。えっと…なんですかこのダイジェストムービーは。こんな長い話を2時間そこいらの映画では、どう考えても短縮短縮するしかない…ですね。やるんならテレビアニメとして、せめて2クール・26話ぐらいでやってほしかったなぁ。でも、短縮したことでわかりやすくなった部分も結構あった。特にミツルの立ち位置。ミツルに関しては原作よりもアニメの方が好きだ。ワタル役の松たか子や、キ・キーマ役の大泉洋、カッツ役の常盤貴子の声もぴったり。ハマり度では明役の高橋克美が一番驚いた。

 それからCGと音楽。圧倒されました。キャラクターデザイン・総作画監督が千羽由利子さんだったのにも驚き。しかも脚本が大河内一楼さん。…「プラネテス」コンビをこんなところで観られるとは。どうりでワタルの表情がタナベに似ているなと思いましたよ。カッツは雰囲気ではフィー姉さん?キ・キーマはラヴィで、ミツルはクレアのような感じかな。主題歌「決意の朝に」(Aqua Timez)も耳に残るいい曲。歌詞がこれまた泣ける。

 ただ…、アニメでは宝玉を手に入れた後のシーンまでカットされているのは不服です。ワタルが剣を使いこなしていく過程も見たかったし、真実の鏡のシーンも。見せ場だと思うのに…。やっぱりテレビアニメとしてもう一度やってみてほしいなぁ。
by halca-kaukana057 | 2007-05-20 16:20 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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