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天文学者はロマンティストか?

 宇宙が好きな私にとって、宇宙に関わる仕事は憧れの存在。でも、実際何をしているのか良く分からない部分もある。天文学者もそのひとつ。天文学者は何をしているのか。天文学とは何なのか。そんな疑問に答えたのがこの本。

天文学者はロマンティストか?―知られざるその仕事と素顔 (生活人新書 236)
縣 秀彦/日本放送出版協会/2007

 筆者の縣さんは、国立天文台の「天文情報センター」で天文学の普及と国立天文台の広報に当たる仕事をされている方。縣さん自身子どもの頃から宇宙・天文が好きで天文学を学び、国立天文台で天文学者を一番近くで見ているけれども、縣さん自身は天文学者とは異なるため客観的な立場にもある。 そんな縣さんの視点での"天文学"と"天文学者"とは。

 冒頭にある、4人の天文学者たちへのインタビューがかなり面白い。天文学者と言っても、望遠鏡で星を観るだけが仕事じゃない。コンピュータや、紙と鉛筆と自分の頭脳で宇宙の謎を解こうとする「理論天文学」もある。電波望遠鏡のデータの解析のために、世界最速のコンピュータを作ってしまったすごい人もいる。その仕事に携わっている人の、生の声はどんな分野でも興味深い。

 この本では「天文学は役に立つのか」という疑問が強調されている。確かに天文学ははるか彼方の宇宙が対象。私たちの、地球での日常生活にはあまり関係ないと言えばそうかもしれない。でも、「天文学はみんなの科学」と言っているところが面白い。2003年の火星大接近(現在も火星は中接近中。ふたご座のあたりに見えます)や、冥王星の惑星論争、流星群や日食・月食、さらにはブラックホールの謎や宇宙の始まり・果てはどうなっているのか。自分の生活には直接関係しないけれども、宇宙のことを考えるとワクワクする、謎に惹かれる。「宇宙ヤバイ」なんて言葉もある。宇宙・天文の話題が、私たちの生活・心を豊かにしていることは事実。七夕やお月見もそのひとつに数えられるだろう。宇宙・天文…科学そのものを「文化」として楽しむことが出来る。「科学」と「文化」は相反するもののように考えられるけれども、ゴールが良く分からないものを追求するという点では似ているのかもしれない。追求しようと思えば、どこまでも追及できるのだから。宇宙は分からないことだらけで、特に追求しがいのある分野かもしれない。文中のニュートンの言葉が印象的だ。
「目の前に真理の大海原が広がっているのに、自分は海岸で貝を拾っているのに過ぎない」
(108ページより)


 以前私は三鷹の国立天文台へ見学に行ったことがあるのだが、その時「ALMA計画」実現を請願する署名の用紙をあるのを見つけ、署名してきた。「ALMA(アルマ)計画」とは、空気が薄く天文観測に適しているチリのアンデスに電波望遠鏡をいくつも建設し、より好条件で天文観測をできるようにしようという計画で、世界各国が参加する国際天文プロジェクトとして現在も建設続行中。その署名が行われたいきさつ(財務省に予算のお願いに行った際、国民がALMA計画を本当に望んでいるのか証拠を持ってきてと言われたのがきっかけらしい)も書かれており、署名したひとりとして実現してよかったなと感じた。しかも、その後、役人はこんなことを言うようになったんだとか。
「みなさんも天文学者を見習ってください。『役に立たない』と言われて続けてきましたが、天文学ほど新聞やテレビを通じて、自分たちの研究成果を国民に還元している分野はほかにありません。みなさんも、役に立つとか、外国との競争に負けるとかの理由だけではもう予算は付きませんよ。国民に支持されるようになってください」
(52ページより)
…ある意味すごい。

 これまでの天文学・天文観測・宇宙論の歴史もまとめられています。暦の計算なんて、地球が宇宙空間にあって、他の星との位置と公転が私たちの生活に関わってくる一番身近で、分かりやすい例だと思う。そんなことを考えながら、この本の帯を見ているとやっぱり天文学は必要だと私は思う。
天文学者はロマンティストか?_f0079085_237356.jpg


ちなみに、後ろに写っているPC画面の壁紙は「かぐや」が撮った地球の画像です。
by halca-kaukana057 | 2008-01-06 23:11 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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