宇宙と文化の間へ 「Lullaby of Muses 2」

 前の記事「天文学者はロマンティストか?」で"科学を「文化」として楽しむことが出来る"と書いた。それについて、もう少し考えてみたい。今日は本ではなく、音楽から。


Lullaby of Muses II
甲斐恵美子/Lyla Records/2007

 以前から何度も話題に上げてきた、小惑星探査機「はやぶさ」への応援ジャズ組曲CDです。もともとこのCDが出たのは「はやぶさ」が打ち上げられる前、2002年のこと。その時はまだ「はやぶさ」ではなく、コードネームの「MUSES-C」とだけ呼ばれていた(日本の人工衛星・探査機は打ち上げられ、軌道に乗ってからその愛称が発表されます。最近は「かぐや」や「きずな」のように打ち上げる前から愛称を公募して決めてしまうことも)。その後、無事打ち上げられ「はやぶさ」は宇宙の大冒険へ。予想外の困難な旅路を諦めることなく飛び続ける「はやぶさ」と見守る運用チームのために、新曲を1曲追加して、さらにジャケットやライナーノートも一新したのがこの「Lullaby of Muses 2」。「はやぶさ」のこれまでの旅を映像化した「はやぶさ」物語「祈り」の音楽としても使われています。
(「祈り」について詳しくは過去の記事で:祈りよ届け、宙の向こうの「はやぶさ」へ)

 聴いていると、「祈り」の各シーンが脳内で蘇ってくる。「祈り」はもう何回観ただろう…?何回観ても同じシーンで興奮して、ハラハラして、涙がこみ上げてくる。それが映像がなくても、このCDを聴いているだけで「祈り」の各シーンが脳裏に浮かぶ。そして、そのシーンの「はやぶさ」を想って、ドキドキしたり辛くなったり。「はやぶさ」が地球に帰還するシーンで使われている「Back to my arms」なんて聴いているとヤバイです。とても切なくなる。「はやぶさ」が地球に帰還する2010年は、きっとこの曲ばっかり聴いているだろう。

 人工衛星・探査機を応援するという音楽は、世界的に見ても珍しい。今は「かぐや」のサポートソングとしてSoul'd OUTの「COZMIC TRAVEL」や、「きぼう」建設へ向かう土井隆雄宇宙飛行士への応援ソングとして山梨県立科学館が企画した「宇宙連詩・山梨版」を平原綾香さんが歌う「星つむぎの歌」(1月23日発売)も登場。この「Lullaby of Muses」がそんな今の宇宙と音楽・文化の融合のきっかけになったと思う。この「Lullaby of Muses 2」の帯に、川口淳一郎プロジェクトマネージャーがコメントを寄せているのだが、このコメントにこうあった。
「はやぶさ」で初めてできた成果の一つは、こうした文化を横断した協奏です。


 宇宙・科学と文化・芸術は、実は相性がとてもいいのではないかと私は思う。「天文学者はロマンティストか?」の記事で、「「科学」と「文化」は相反するもののように考えられるけれども、ゴールが良く分からないものを追求するという点では似ているのかもしれない。追求しようと思えば、どこまでも追及できるのだから。」と書いた。どちらも果てがない。あるひとつの謎を解明しても、また次の謎が出てくる。ひとつの作品を創っても、それが終わりじゃない。科学も文化・芸術も新しいものを創造しているから、どこまでもどこまでも続いてゆく。

 そして、科学と文化はお互いを刺激し合える分野じゃないかとも思う。宇宙の星々や月、青い地球など宇宙の姿は、これまでも芸術作品のテーマとなることが多かった。SF小説・マンガ・アニメもそのひとつに入るだろう。JAXA宇宙教育センターが企画した「日本画は宇宙を描く」という企画もあった。未知の世界だからこそ、創造力が原動力となる芸術の題材として選ばれるのだろう。

 一方、文化・芸術から科学が学ぶものもあると思う。創造上のものだった理論や技術が、科学的に証明され実現される。SF小説・マンガ・アニメに触れて科学の道を志す人も少なくはないはず。こうやって見ると、科学と文化・芸術はとても近い位置にいて、お互いを刺激し、影響しあっている分野なのではないかと思う。

 科学の話題が出ると、「文系だから…」「数学も理科も苦手だから…」「難しそうで理解できない」と触れる前から拒絶してしまう人もいる。私も元々は文系人間のため、どうしても理解できないこともある(例えば理論物理学や宇宙論。ひも理論がさっぱり分からない)。科学へのアプローチ方法はひとつじゃない。文化からも科学にアプローチする方法があるんだと私は思う。これから、その方法が広まって、文化としての「科学」、「宇宙・天文はみんなの科学」として科学を楽しむ人々が増えればいいなと思う。

 そんな宇宙と文化のコラボ作品となった「Lullaby of Muses 2」。「はやぶさ」運用チームのひとりである矢野創先生によるライナーノートも面白いです。音楽を聴きながら「はやぶさ」の旅路を振り返る。それと、「A Little bit,Little bit Dancing」のベースと、「Space Passion」のフルートが印象的。ジャズってカッコイイ。この独特のリズム感、即興…私にはない要素。クラシックにはない響きが新鮮。これまでジャズにはあまり触れたことがなかったけど、ジャスも聴きたくなってみた。
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by halca-kaukana057 | 2008-01-08 22:55 | 音楽


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