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北欧に学ぶ、冬を"楽しむ"方法

 毎号楽しみにしている「北欧スタイル」の最新号が出たのですが、その特集が「手ざわりのいい北欧デザイン」だった。ノルウェーの毛布会社・ロロスツイード社がある小さな町・ロロス(Røros)を取材、寒い北欧の冬には欠かせないブランケットを作る過程、そしてそのブランケットに込めるロロスの人々の想いが綴られている。

北欧スタイル14 (エイムック 1472)
/エイ出版社/2008


 ロロスツイードのブランケットに関して初めて知った。10ページの、人々がどうやってこのブランケットを使っているかについての文章が目に留まった。




ブランケットは、ただ室内でおとなしく"ひざ掛け"として使われるだけでなく、山へピクニックに行けば湿った地面に直接敷かれ、乳母車の中の赤ちゃんを優しく雨や雪から守り、公園でタフに子どもたちの玩具にもなる。とにかく生活道具の一部として、どこに行くにもブランケットを持参し、使い込む。「汚れたら洗えばいい」……デザインのよい上質のブランケットだが、決して"よそ行き"ではないのだ。

 人々の生活に根付き、使い込まれるブランケット。いいものだからともったいぶることなく、徹底的に使う。いいものだからこそ、徹底的に使って、そのよさを実感できるのだと思う。いいなぁ、この姿勢。デザインプロダクトと特別視していないのがいい。

 そんなロロスツイードのブランケットをはじめとして、今号では北欧の冬を彩り、生活には欠かせない暖かな小物が沢山紹介されていた(しかも全て日本で入手できるところがいい)。そんな特集を読んでいて、ふと思った。北欧の人々は、厳しい冬も楽しんでいるのだ、と。

 先日、私の地域のローカル番組で、豪雪地帯の人々の雪に対する考え方というのをある専門家が話しているのを観た。私の地域は、とにかく雪が多い。冬になると、人々の挨拶は決まって「よく降りますねぇ」。そんな地域で、雪に対する考え方が変わってきたらしい。

 昭和の中頃までは、豪雪は自然によるもの、どうしようもないものとして諦める「諦雪」という考えを人々は持っていた。それは同時に、雪を手なずけ共存する知恵を各地域で育てていったことでもあった。
 しかし、科学技術が進み、除雪機や道路が整備されると、今度は多い雪でも立ち向かおう、科学技術で何とかしようという「克雪」という考えが広まり始めた。これは雪はマイナスでしかないという考え方であり、雪・冬の厳しさに、人々は地域的な劣等感を持つようになったのだ。冬の寒さが厳しくても、温室で農業ができる。融雪で、雪かきの必要もなくなった。
 …だが、冬にも、雪にもいいところはあるのではないか。雪や冬の寒さを活用することもできるのではないか。冬を全否定するよりも、それを地域の特色と考えることも出来るのではないか。今そんな「親雪」という考えも広まり始めた。各地で「冬まつり」などのイベントを開催したり、「地吹雪体験ツアー」のように雪を観光名物にしてしまう取り組みもある。「諦雪」の時代と違うのは、「克雪」の経験も活かしていること。雪を排除し、活用するバランスをうまく保つこと。これが「親雪」の考え方だ。

 北欧では、この「諦雪」「親雪」に当たる考えが日本よりも早いうちに発達し、冬を有意義に楽しむ姿勢が受け継がれてきたのではないかと思う。例えば、フィンランドの「スキー休暇」もそのひとつに含まれるだろう。同じ"冬""寒い"と言っても、日本のものと北欧のものは異なる(雪の多さ、気温の低さなど)。ライフスタイル・生活様式に対する根本的な考え方の違いもあるだろう。だから一概に比べることはできないけれど、北欧の冬を楽しもうとする姿勢は、日本の「親雪」の考え方にとってヒントとなるものがあるんじゃないかと考えた。

 もうひとつ、厳しい寒さの環境を活かした(と思われる)例を。
北欧に学ぶ、冬を\"楽しむ\"方法_f0079085_22545545.jpg

 イッタラ(iittala)の「Gaissa(ガイサ)」というシリーズのグラス。自分で買ったのではなく、友人からの頂き物なのですが、実はこのシリーズについて全く何も知らなかった。タピオ・ヴィルカラ(Tapio Wirkkala)デザインのこのグラス、底の部分にご注目。
北欧に学ぶ、冬を\"楽しむ\"方法_f0079085_2259218.jpg

底の部分をひっくり返して撮影。透明なガラスが氷のように見える。フィンランド・ラップランドの山々に由来しているのだそうだ。厳しい寒さ、人を寄せ付けない冷たさと同時に、澄んだ美しさ、デザインの温かさも感じる。厳しい冬の地域だからこそ生まれたデザインだと思う。

 私の住む地域は、今日も雪。北欧の寒さもまだまだ緩まないだろう。辛い季節ではあるけれども、それをどう活かし、どう楽しむか。北欧の暮らしに、そんなヒントを見つけた気持ちになりました。

諦雪・克雪・親雪については、以下のサイトも参考にどうぞ。
克雪・利雪・親雪
今週の本棚『雪国学 地域づくりに活かす雪国の知恵』を読んで


*「Gaissa」の読み、「ガイサ」で良いんだろうか。「ガイッサ」?
by halca-kaukana057 | 2008-02-01 23:09 | フィンランド・Suomi/北欧

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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