宇宙の果てまで

 3月21日に、こんな切手が発売されます。
特殊切手「日本天文学会創立100周年」(日本郵便)
日本天文学会の創立100周年を記念した切手。宇宙好きにはたまらん切手です。太陽系やX線天文衛星「すざく」、小惑星探査機「はやぶさ」、野辺山の45m電波望遠鏡など、日本の天文学・宇宙科学を支えてきた観測機がずらり。これ絶対買う。で、その中にハワイ島・マウナケア山に建設された「すばる」望遠鏡も。来年で「すばる」も運用開始10周年か…。今回の本は、その「すばる」建設を推進した天文学者による、「すばる」のノンフィクションです。

宇宙の果てまで―すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡 (ハヤカワ文庫NF)
小平 桂一/早川書房/2006(単行本は文芸春秋社/1999)

 著者の小平さんは日本を代表する天文学者の一人。その小平さんが海外の望遠鏡を使ううちに、日本にも巨大望遠鏡が欲しいと願う。外国の望遠鏡だと、自由に使うことができないからだ。次期望遠鏡計画が持ち上がった1960年代、日本最大の望遠鏡は岡山天体物理観測所の188センチ。一方、「すばる」は8.2メートル。世界最大級だ。

 望遠鏡を建設する。これには多くの問題がつきまとう。まず、望遠鏡そのもののハードの部分。8メートルもの巨大な望遠鏡の眼となる鏡をどうやって作るか、その鏡を支えるにはどうしたらいいか。そして、望遠鏡を建てる場所も問題だ。日本国内よりも、空気の薄い高山であるマウナケアやチリのアンデスの方が、望遠鏡の性能をよりよく発揮することができる。しかし、外国の領土内に、日本が国で運用するものを建設することができるのか。法律はどうなっているのか。どういった手続きを取ればいいのか。

 一方望遠鏡を運用する、ソフトの部分も欠かせない。まず、望遠鏡を建設するための予算。億単位の予算を取るにはどうしたらいいのか。建設にかかる人員をどうするか。望遠鏡が完成しても、天文学者を”外国の領土にある日本の施設”に配置するには、法律や給与の面で曖昧になっているところがある。それを整備するにはどうしたらいいのか。そして、誰が行くのか。ハワイで暮らすことになるわけで、ハワイでの暮らしや、天文学者の家族の仕事・教育の問題もある。問題は絶えない。

 小平さんも天文学者であるから、望遠鏡建設だけに従事するわけにも行かない。研究か、建設か。しかも、建設には長い時間がかかるため、完成し運用開始の時には定年で退官になってしまう可能性もある。しかし、これからの天文学を支える最先端の望遠鏡の実現を信じて、これら沢山の問題をひとつひとつ解決していった。予算が決まったのは1990年代に入ってから。さらに建設には8年もかかった。夢の望遠鏡ができるまでの長い長い道のり。天文学自体、宇宙で起こっている事象を長い眼で、根気強く観測・研究する必要のある学問だが、その研究に使う望遠鏡の建設も長い眼で見なければならない。計画・建設に携わった小平さんらプロジェクトチームの研究者たちに、頭が下がる。

 私が宇宙が好き、宇宙のことをもっと知りたいと思うのは、ここにも理由があるのかもしれない。謎だらけの宇宙の実態が解明されてゆくことに知的興奮を覚えるのと同時に、その謎に立ち向かう科学者・技術者・研究者たちのことが好きだ。宇宙のことをもっと知りたい、それを知るための技術を作りたいと一心に願い、研究し続けている人たちの熱い想いが好きなんだ。この本でも、小平さんはじめ多くの天文学者や、望遠鏡建設に携わる技術者たちの想いを読み取ることが出来た。その想いと、今私たち一般市民も目にすることが出来る「すばる」が捉えた画像を見て、時間もお金も沢山かかったけれど、いい望遠鏡が出来て本当によかったと感じる。完成からもう10年近くも経ってしまったが、「すばる」建設に携わった人たちに心からお祝いとお礼を言いたい。ありがとう、と。

 それと、こういった望遠鏡や、人工衛星などの大きな科学プロジェクトには、政治や経済は関係ないと思ってきた。予算を決める上で政府や省庁・政治家や官僚は関係してくるけれども、そういうプロジェクトを推し進める科学者の敵のような見方をしていた。でも、そうじゃない。確かに、お役所の人たちに「なんの役に立つのか」なんて質問はされるけれども、理解を得られれば力になってくれる。理解してくれないとは限らない。予算が出ても、国の経済状況で左右されることもある。科学も国の仕組みの中で動いていたんだ。政治や経済に支えられて、科学も成り立っていると思うと不思議な感覚を覚える。

 ハワイは日本人にとってとても身近な外国。行けたなら、ビーチで遊ぶのも勿論だけど、マウナケア山に登って、「すばる」を見てみたい。(ただ、高山のため高山病が心配だ…)






 この際なので、「すばる」望遠鏡に関するサイトや本のまとめを以下に。

国立天文台・すばる望遠鏡
 公式サイト。最新観測結果から、観測画像ギャラリー、観測画像の壁紙、子ども向けサイトも。アンドロメダ銀河の画像から、星の生まれているところを探すアストロゲームも。これが結構難しい、でも楽しい。クリアすると可愛い壁紙がもらえます。

★「すばる」関連本
「すばる」がさぐる宇宙のはて(吉田典之/PHP研究所/2000)
 子ども向けの読み物。天文学や望遠鏡の仕組みも図解されていて、わかりやすいです。

まんがサイエンス (7) (ノーラコミックスDELUXE)
あさりよしとお/「5年の科学」編集部/学研/2001

 ご存知あさりよしとおの科学漫画。7巻は「見る」科学がテーマ。よしおくん、あさりちゃんたちがハワイで「すばる」の仕組みを学びます。あやめちゃんのボケがまたしても…。





すばる望遠鏡の宇宙 カラー版―ハワイからの挑戦 (岩波新書 1087)
海部 宣男/岩波書店/2007


 「すばる」望遠鏡建設に携わり、その後国立天文台長になった海部宣男さんによる「すばる」・天文本は沢山出ています。これが一番新しいかな?…実ははまだ読んでません。また積読本が…。でも読みたい!
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by halca-kaukana057 | 2008-02-08 16:53 | 本・読書


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