月をめざした2人の科学者 アポロとスプートニクの軌跡

 少し前に、はてなブックマークでこんな記事が話題になっていました。

はてな匿名ダイアリー:ソ連宇宙オタが非オタの彼女にソ連宇宙世界を紹介するための10機

 非常に濃くて面白かったwヒロイック的なイメージのアメリカ宇宙世界もいいけど、細かいことにはこだわらずシンプルかつ実用的でタフなソ連・ロシア宇宙世界も好きだ。ソユーズは本当にタフで安定性があるし、ミールもいろいろあったけど、宇宙開発史の中で忘れられない存在。エネルギアなんてとんでもないロケットもあったし、結局有人探査は出来なかったがアメリカに先駆けて月探査を行った「ルナ計画」も印象的。ちなみに、私はルナ17号・21号に搭載された世界初の月面無人探査機「ルノホート」が好きです。

 ルノホートは、こんな探査機です。食玩「王立科学博物館 第1展示場」より「赤いロボット」ルノホート1号
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 前置きはここまでにして、この「ソ連宇宙オタが~」の記事の中に、何度も出てくる名前がある。コロリョフ…ソ連宇宙開発になくてならない人、セルゲイ・コロリョフ。このコロリョフがソ連の宇宙開発をリードしていた頃、アメリカにはヴェルナー・フォン・ブラウンがいた。そう、ドイツでロケットの研究をし、第2次世界大戦後アメリカに渡りアメリカの宇宙開発をリードする。コロリョフのライバルだ。そのコロリョフとフォン・ブラウン、ソ連とアメリカの宇宙開発競争について書かれたのがこの本。

月をめざした二人の科学者―アポロとスプートニクの軌跡
的川泰宣/中公新書・中央公論新社/2000

 お互い少年時代に空、そして宇宙へ憧れた。1930年代にはロケット・ブームが訪れ、2人はそれぞれソ連とドイツでロケットの研究・開発に尽力する。しかし、迫り来る戦争と国家の力の波。その波にのまれ身動きできなくなるコロリョフと、目指していた方向とは違うけれども使えるものは使おうと波に乗るフォン・ブラウン。この本を読んでいて強く感じたのが、宇宙開発は国家が無くては出来ないということだ。

 2人がライバルとして争った(コロリョフは死ぬまで表舞台に名前を出されることは無かったが)1960年代は、米ソが互いの威信をかけて宇宙を、月を目指していた時代。ロケットを開発するにも打ち上げるにも莫大な予算がかかる。しかも、アポロのサターンVロケットなんて巨大なロケットだと、とんでもない予算がかかる。それでも、米ソは国家の威信とライバルに打ち勝つために、お金と時間と最新技術をかけて争った。今、日本では宇宙開発予算…だけでなく科学に関する予算そのものが十分に足りていない。予算が足りないからと、実現が困難なプロジェクトも多い。そんな今の日本から見れば…勿論当時の米ソとは考え方も目的も違うけど、この時代の国が宇宙開発にかけるパワーは計り知れないものだと感じる。

 そんな国の支援を背景に、宇宙を目指すコロリョフとフォン・ブラウン。追い抜いたり、追い抜かれたり。ガガーリンとライト・スタッフだけをとっても、両国の有人宇宙飛行に対する考え方の違いが見えて面白い。そして、最初は負けっぱなしだったが月に照準を絞ることでソ連に追いついたアメリカ。一方、リードしていたのにいろいろ手を出しすぎて有人月飛行ではアメリカに追い抜かれてしまったソ連。この戦略の違いも面白い。

 ただ、ソ連の場合は1966年、コロリョフの死によって大きく狂いだす。コロリョフのリーダーシップがいかに大きかったかがわかる。コロリョフがもう少し長生きしていたら、サターンVロケットに対抗するN-1ロケットを完成させて、米ソ宇宙開発競争はもっと過熱していたかもしれない。

 コロリョフとフォン・ブラウン。国も考え方も違う2人だが、宇宙を目指していた強い思いは同じ。戦争や国の圧力にもめげず、その意思を貫いたからこそ、今の両国の宇宙開発、いや、世界の宇宙開発の今があるのではないだろうか。

 ところで、フォン・ブラウンは子どもの頃、母からピアノの手ほどきを受け、ヒンデミットのレッスンを受けたこともあったのだそう。すごい…。中学ではチェロのレッスンも受け始め、学校のオーケストラで演奏したり、作曲もしてたんだそう。ロケット研究をしていた"秘密基地"ペーネミュンデでも研究者たちと弦楽四重奏団を結成してモーツァルトやハイドン、シューベルトなどを演奏していたのだそうだ。フォン・ブラウンのチェロ演奏を聴いてみたかった!作曲した作品も、どんな作品だったんだろう?

 最後に、この本を読んでいる間、こんなしおりを使っていました。
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 JAXAの宇宙飛行士候補生募集の宣伝しおり。友人からもらいました。友人は科学館で見つけたらしいが、本屋にも置いてあったらしい。面白いものを作ったなぁ、JAXA.いいぞいいぞw
 宇宙つながりで脱線しまくりでしたがこの辺で。
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by halca-kaukana057 | 2008-08-19 23:12 | 本・読書


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