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ツタンカーメン 少年王の謎

 少しずつ古代エジプトに関する本を読んでいます。何度も言いますが、古代エジプトはピラミッドで有名な古王国時代から、ツタンカーメンやトトメス3世などの新王国時代、クレオパトラなどのプトレマイオス朝と本当に時間軸が長く、同じ古代エジプトでもそれぞれの時代で特徴や文化が異なる。ローマの影響を受けたプトレマイオス朝はかなり違う。なので、一言で「古代エジプト」と言っても、どの時代を指すのか、とにかく範囲が広い。どの時代も魅力的だけど、やっぱりツタンカーメン王あたりは王名表からも消され、謎も多く…魅力的です。知りたいことがたくさんあります。


ツタンカーメン 少年王の謎
河合望/集英社・集英社新書/2012

 この本は前半と後半で内容が分かれています。
 前半はハワード・カーターとカーナヴォン卿によるツタンカーメン王墓発掘の物語。「王家の谷」発掘の歴史と、もう発掘し尽くしてしまった、もう何も出てこないと考古学者たちは諦めていた王家の谷に、まだ未知の王墓があると信じて発掘を続けたカーターとカーナヴォン卿。そして王墓への階段を見つける…このあたりは以前読んだカーター自身による「ツタンカーメン発掘記」あたりでも読んだのですが、研究者の第三者の視点から、そして王墓発掘に関しても新しい事実がわかってきたりと興味深い。「もし…」と思うこともあり、色々と考えてしまう。

 後半部分は、ツタンカーメン王がどんな王だったかに関する新しい研究について。アメンホテプ3世に遡って話は始まります。アクエンアテン王(アメンホテプ4世)がそれまでの古代エジプトの多神教から、いきなりアメン神の一信教に変え、都も変えてしまった。そのせいで、ツタンカーメン王やその前後の王は王名表から消されてしまった。だが、碑文などにツタンカーメン王に関する記述があり、そこからツタンカーメン王の生い立ちやその父のアクエンアテン王、王の周囲にいた人々に関して詳しいことがわかってきている。それがまず驚き。ツタンカーメン王は決して消されたファラオじゃなかった。

 さらに、現代技術が王の家系に迫る。ミイラのDNA鑑定で、父親、母親について調べている。このあたりはテレビでも取り上げられそれも観ました。ツタンカーメン王は18歳ぐらいで亡くなった。その死因に関しても。王の苦労、人間模様が活き活きと浮かび上がってくる。ツタンカーメン王墓からはたくさんの遺品が見つかったけれども、それでもツタンカーメン王やアンケセナーメン妃、その周囲の人々に関する記録は足りない(他の副葬品が既に盗掘されてしまっていたファラオよりは充実しているけれども)。その足りない部分を、他の出土品や碑文などから見つけてきて、ピースをはめる。考古学は面白いなぁと思う。

 ツタンカーメン王は激動の歴史の渦中にいたファラオだった。ほぼ未盗掘の墓や様々な出土品、碑文から、激動の中でファラオがどう生きたのか、その死後どんなことが起こったのか、少しずつ解明されていっている(現在進行形で)。これからの研究にも注目したいです。

 ツタンカーメン王墓といえば、今話題になっていますね。
CNN:古代エジプトの王妃の墓、ついに発見か
ナショナルジオグラフィック日本版:エジプト王妃ネフェルティティの墓に新説
毎日新聞:ツタンカーメン:墓に未発掘ネフェルティティの部屋?
NHK:隠し部屋の出入口か ツタンカーメン墓で発見
 ツタンカーメン王墓の玄室(王の棺が置いてあった部屋)に、2つの隠れた出入り口があり、そこにツタンカーメン王の母親のネフェルティティ妃の墓があるのでは?という論文。これを確かめるため、現在ツタンカーメン王墓で調査が行われています。もし何か見つかれば、ただでさえドラマティックな発見だったツタンカーメン王墓が更に大変なことに。調査の結果を楽しみに待ちます。

 もうひとつ、ツタンカーメン王に関して楽しみなものが。
海外ドラマNAVI:ツタンカーメン王の墓発掘の軌跡を描くITVのミニシリーズ『Tutankhamun』にサム・ニールが出演
 イギリスの民放ITVが、ツタンカーメン王墓発掘の物語をドラマ化します。これまで、BBCもドラマ化(「エジプト 甦るツタンカーメン」)したことがあったのですが、各回50分全2回、観てみたらちょっと時間が足りない、物足りないかな…という内容でした。カーターやカーナヴォン卿を演じる俳優さんたちは好演でした。
 今度のこのITVのドラマは、各回60分全4回。BBCのよりも濃い内容を期待していいですかね?ちなみに、ITVは大ヒットドラマ「ダウントン・アビー」を製作しているテレビ局。傘下にはグラナダテレビ…ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」のテレビ局。これはやっぱり期待していいですかね?そういえば、「ダウントン・アビー」の舞台となっているお屋敷は、カナーヴォン伯爵家のハイクレア城でロケを行っていることを、以前このブログでも取り上げました。はい、カーナヴォン卿が住んでいた、城主のお屋敷です。つまり、『Tutankhamun』でもハイクレア城がロケ地になるのでしょうか…本当のカーナヴォン卿のハイクレア城として。だとしたら楽しみで仕方ありません!日本での放送はいつになるかなぁ?
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by halca-kaukana057 | 2015-10-08 22:46 | 本・読書

新編 あいたくて

 秋になると、詩を読みたくなります。(夏の昼下がり、風が心地いい窓際や、冬の夜などにも合いますが)

新編 あいたくて
工藤直子:詩/佐野洋子:絵/新潮社・新潮文庫/2011

 工藤直子さんといえば、「のはらうた」シリーズ。ユーモアたっぷりの動物・虫たちの本音や声を描いた詩はいつ読んでも楽しくて、とても好きです。読み聞かせをしていた頃、「のはらうた」を朗読したこともありました。Eテレ(NHK教育)「おはなしのくに」のように、その動物・虫たちになりきって、表情豊かに。最初は照れもあるのですが、子どもたちの反応も楽しくて、だんだんノリノリで一緒に楽しんで読みました。普通に読んでも、朗読しても、本当に面白い、楽しい。

 その工藤直子さんの代表作といば、この詩集「あいたくて」も外せません。数年前、この新編が文庫で出ました。「あいたくて」は平原綾香さんが歌っているのもあります。綾香さんの歌声と、曲で、この詩に込められているであろう想いがより強く、やさしく、やわらかく、じわじわと感じられます。
 何かに「あいたくて」…そんな想いから発展してゆく詩が、どれもいい。思わず共感してしまう詩、自分ではうまく表現できなかった気持ちを代弁してもらったような詩、思ったこともないような発見を感じた詩、心の奥底を覗くような詩…。何度も読み返します。

 私は、何かを言葉で表現しようとする時、文章が長くなる(苦笑)。あれこれ細かく説明して、長くなってしまう。一文も長いし、単語も多いし、その割には語彙のバリエーションが貧弱、表現が下手くそで…。読みにくいなぁ、これじゃわかりにくいじゃないかと、以前書いたこのブログ記事やノートに書き続けている日記を読み返しては思います(この一文も長い)。
 詩は、短い文章、シンプルな言葉で、その内面に込められているものを伝える。読むのは好きですが、書くのは難しい(学生時代こっそりと書いていた経験あり)。それも今読み返すと、「これは詩か?」と思う。とにかく詩は難しい。むしろ、子どもたちがそれぞれ思っていることや日常のことをストレートに書いたものの方がわかりやすい、伝わりやすい。

 だから、この詩集は何度でも読み返します。よくわかっていない何か、誰か、自分の中の気付いていない部分に「会いたい」。佐野洋子さんの絵も味わい深い。

 文庫版のためのあとがきは、詩ではなく「あとがき」なのですが、そこにも共感しました。工藤さんが30代の頃、何故自分は生まれてきたのか、この世に何の用があるのだろうか…と悩み、申し訳なく思いジタバタしていた、と。そこにも重なるものがあって、工藤さんにもそう思ったことがあったのか…。そんな工藤さんに、ご友人がかけた言葉にハッとした。凄い視点、考え方だなと思った。それが「会いたい」という感情なのだろう。

 小説も、ノンフィクションも、エッセイも、漫画も好きです。でも、詩はまた言葉と表現、そして人間という生き物の可能性を感じさせてくれて、とても好きです。
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by halca-kaukana057 | 2015-10-04 21:25 | 本・読書

[コミック版]天地明察 8

 感想を書こう書こうと思ってなかなか書けず…ようやく書きます。

天地明察 8
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2015

 宣明暦から授時暦への改暦へ、勝負を挑んだ渋川春海(安井算哲)。日食、月食の予報をどちらが当てるか外すか。最後の食の予報を外してしまい、授時暦への改暦はなくなってしまう。絶望の淵に突き落とされる春海。道策との勝負碁にも負け、道策の天才的な後の才能・力を認める一方で、自分は天文も暦も碁も中途半端だとますます落ち込んでしまう。星や日の観測にも意味を見出せなくなった時、えんが春海のもとにやって来る。塾に来るように、関孝和が春海に出題していたことを教えに。塾でその問題を見た春海は、かつて自分が関に出題した「病題」と同じ、問題そのものが間違っている問題だと気付く。何故そんな問題を今自分に出題したのか…春海は関に会う決心をする…。

 8巻、最後の前の最大の山場…
 ついに関孝和登場です!!
 その前に、改暦・授時暦側の春海の敗北、絶望…前巻7巻では妻・ことを亡くしてしまい、追い討ちをかけるように改暦失敗。このあたりは原作小説を読んだ時もとても辛かった。碁でも道策は目指す新しい碁をつくりあげるべく研鑽し、勝負碁でも勝ち続けている。一方のは春海は…。

 渋川春海のすごいところは、本業は碁打ち、算術や天文、天文観測、暦に関してはアマチュアなのに、どれもプロ以上の知識や技術を持ち、それらを組み合わせて改暦に挑むところ。いい意味でジェネラリストで、その強みを存分に発揮する。あと、多くの人々から信頼され、精進すること、研鑽を続けることを怠らないところも。でも、それは裏返すと弱点にもなる。広く手を出してもどれも中途半端。何も為せずに終わってしまう危険性もある。春海はその葛藤をずっと続けてきたが、多くの人々が春海のことを認め、信頼し、改暦による新しい時代のはじまりの希望を春海に託し、春海もそれで自信をつけてきた。それが、改暦失敗で何もかも崩れてしまった。春海の失望の様が、漫画だとさらに強く伝わってきます。

 そして、関孝和登場!どんなキャラデザで描かれるかな?と楽しみにしていました。イメージ通りです。初めて顔を合わせる2人。春海に怒りをぶつける関。春海を「盗人」と怒鳴る関ですが、何の「盗人」だったっけ…と原作小説を再読しました。原作小説では、改暦のために春海たちがたくさんの算術家たちが見出した術理を駆使して計算する…という内容が説明されているのですが、漫画では少しだけしか書かれていなかったので「あれ?」と思ったのでした。あと、春海の内面よりも、関の怒りのほうに注目してしまう。小説だと関に怒鳴られている春海の心の中も細かく描写できますが、漫画だと関の怒りの強さを表現するために春海の内面の描写は少なくなっている。これは小説と漫画の表現の違いで仕方がない。

 漫画で読んで、小説を再読して、関孝和という人は本当にすごい人だな…と思う。道策と同じように天才なんだけれども、道策とはまた違う雰囲気。関はひとりで授時暦を研究し、考察した。同じように授時暦を研究していた春海たちとは違う視点で。ただ、関はひとりだった。算術、数理に関しても天才過ぎて、孤独。碁打ちの家系に生まれ碁打ちであるべきなのに、算術や天文に興味を示し、本業よりも改暦に人生を捧げることになった春海の孤独。
この人は孤独だっただろう…
天才故に理解もされず その鋭さ故に収まる場を持たず
流浪する思いで一人で生きてきたのだろう
(80~81ページ)

 春海のことを理解していたからこそ、改暦に失敗した怒りは大きなものだった。あの怒りには悔しさも含んでいたのだろう。そして、関による授時暦の研究・考察も「託された」春海。受け取った春海の思いと覚悟、言葉、表情に引き込まれました。やっぱり、春海にしかできない。春海はやっぱりすごい。

 再び改暦へ歩みだした春海。「士気凛然、勇気百倍」絶望から一気に這い上がった春海のこの言葉、大好きです。そしてえんさんへの求婚。えんさん、本当に美人で聡明で、強くて、しっかりしていて…素敵な女性です。ここで、「安井」姓から「保井」に改姓します。道策が相変わらずですw道策、本当にいいキャラですw

 えんさんと婚礼を挙げ、一緒に星空を見上げながら、天文を熱っぽく語る春海…かつて同じようにことさんにも語っていた。ことさんも、えんさんも、春海が天文について熱弁するのを微笑んで聞いている…哀しい別れもあったけど、春海はいい奥さんに恵まれたなぁ。ことさんとも、えんさんとも、いい夫婦です。
 また、春海も齢をとった。顔が老いてゆく描写もいいです。

 また活き活きと天文を学び、目指すところが見えた春海。関とも親しくなり、その新たな目指す暦について語り合うシーンが好きです。建部さん…!春海の口から「精進せよ精進せよ」の言葉が…涙腺攻撃まともにくらいました…。

 さぁ、物語はクライマックス。次の9巻が最終巻です。冬発売の予定。終わっちゃうのが寂しいですが、待っています。春海が最後に見るものを、見たいです。

・7巻感想:[コミック版]天地明察 7
・6巻感想:[コミック版]天地明察 6
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by halca-kaukana057 | 2015-10-02 23:50 | 本・読書

宇宙兄弟 26

 読んだ本、漫画の感想を今日も書きます。今日はこれ。

宇宙兄弟 26
小山宙哉/講談社・モーニングKC/2015

 六太たち「ジョーカーズ」の乗ったアレスⅠロケットは無事打ち上げ成功。オリオン宇宙船の飛行も順調、月への旅が始まった。せりかと絵名もいるISSとランデヴーし、着陸船「オクトパス」とドッキング。六太は月への飛行の間、宇宙での暮らしや無重力を紹介するビデオレター「週刊六太」を始める。そして月が近づいてきた時、六太に緊急の連絡が。シャロンが自力で呼吸できなくなり、人工呼吸器をつけることになった、と…。


 ムッタ、ついに宇宙にやってきました!!喜んで大はしゃぎの「ジョーカーズ」のクルーたち。特にフィリップは超ハイテンションで大騒ぎwそんなムッタに一通のメールが。ちゃんと打ち上げを見ていたんだ…!じわっと来ました。

 徐々に地球から離れ、地球の丸みがわかる距離になるあたりも胸が熱くなります。現実では、アポロ計画以来、有人の宇宙飛行は地球周回軌道だけ。現実に、再び人類が月を目指す時が来るのか、どうなのか…と思ってしまいます。
 そんな中で始めた「週刊六太」。人類が再び月を目指す時代になっても、宇宙での暮らしや無重力では物体の動きはどうなるのか、気になるのかなと思いました。今よりは宇宙は身近になっているだろうけど、やっぱり疑問には思うだろうし、地球周回軌道と月へ向かうあたりでは違いもあるはず。いつの時代も、宇宙は不思議でいっぱい、興味津々です。

 そしていよいよ月が近づいてきたところで、シャロンに異変が。ついに自力で呼吸が出来ない、人工呼吸器をつけることになった。その手術の日は、「ジョーカーズ」が月に着陸する日。その着陸で起こったトラブル。手術中、シャロンの希望で着陸の中継をBGMとして流している。夢の中のシャロンが"見た"ムッタの姿が印象的。緊急事態にビンスさんたちNASAも焦りを隠せない…。そんな中、ムッタがとった行動がすごい。手に汗握るシーンでした。本当にムッタはやってくれます。

 月面での第一歩…日々人の大ジャンプを思い出しますが、ムッタはどう来る…こう来たか!!wムッタ父のコメントが的確過ぎて笑えますwそして26巻でも、ムッタ父からのメッセージがいい。本当にムッタ父はかっこいいと思えました。

 27巻の予告が最後に書いてあるのですが…27巻、今度は何が起きるんだ…?とても心配です…。

・25巻感想:宇宙兄弟 25
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by halca-kaukana057 | 2015-09-19 22:43 | 本・読書

世界を、こんなふうに見てごらん

 夏に読んだ本の感想が溜まっています…漫画も、文庫や新書、単行本も。連休に消化できるかなぁ…。


世界を、こんなふうに見てごらん
日高敏隆/集英社・集英社文庫/2013(単行本は2010年)

 動物行動学者の日高敏隆先生の最後の本(2009年歿)です。昆虫やいきものに興味を持ち始めた子どもの頃から、生物学の研究の道に進み、その中で「なぜ」その動物はそんな行動をするのかを研究する動物研究学会を立ち上げる。いきものの面白さ、いきものや人間は何を見ているのか、科学の考え方などを若い人向けに書き綴った本です。

 夏休みの間にNHKラジオ第一で放送していた「夏休み子ども科学電話相談」では、こどもたちが身の回りにいるいきものや飼っているいきもの、動物園・水族館で見たいきもの、テレビや図鑑で見たいきものなどが、なぜこんなことをするの?という質問がよく寄せられる。こどもたちはよくいきものを見ているなと思う。答える先生方も、こどもたちがわかるように、丁寧にやさしく答える。素朴な質問だけれども、そう言えばそうだよな…と思うことがたくさんある。

 日高先生も、こどもの頃から身の回りのいきものに対して、なぜこんなことをしているの?どこに行くの?何を探しているの?と問い続けてきた。一体何が目的なのか。そこから始まった動物行動学会。今思うと当たり前にあるような学問だけど、日高先生が立ち上げた当時は、立ち上げることがわからないと思う研究者もいたそうだ。

 この本では、いきものは皆「イリュージョン」を持っている、とある。そのいきものがどのように世界をとらえているのか。人間は真実を追究しているようで、ある種のまぼろしを真実と思い込んでしまっている…つまり「イリュージョン」を持ってしまっている。人間には人間の見方、見え方があり、チョウにはチョウの見え方がある。人間が見える世界だけが世界ではない。人間の認識している世界は、その範囲でしかない。科学もひとつのものの見方に過ぎない。それは限界を意味しているようにも思えるが、私にはとても面白いと感じた。わからない、曖昧な領域があることが面白い。「いろんな生き方があっていい」の章でそれを実感した。

 そして「イリュージョン」を否定するのではなく、それを楽しもうとしているところがまた面白い。人間が「そうなんだろう」と思うことが、どんどん変わっていく。「イリュージョン」がどんどん出てきて、そこから大発見に繋がる可能性がある。日高先生のおおらかでやわらかな考え方に、可能性を感じます。

 「行ってごらん、会ってごらん」を読んでいると、これは科学に限らないなと思う。よく、好きなミュージシャン、バンド、音楽家のライヴやコンサートには行けるなら行ったほうがいいという話を聞く。生の音楽はその時だけのもの、もしかしたらそのミュージシャンや音楽家の音楽をもう生で聴く機会がなくなるかもしれない、そのバンドは解散してしまうかもしれない…。美術もそうだと思う。なかなか展示しない作品なら尚更。相手が人なら、会いに行けるなら、会いに行ってみると歓迎してくれるかもしれない。

 いきものの行動を観察し、人間がどういういきものなのかも見えてくる。日高先生の最後の本にふさわしい内容だと感じました。
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by halca-kaukana057 | 2015-09-18 22:27 | 本・読書

イプシロン、宇宙に飛びたつ

 2年前、2013年の今日、JAXAの新型固体ロケット「イプシロン」初号機が打ち上げられました。もう2年も前のことなのか…と驚いています。ということで、イプシロンロケットに関する本を。
 ちなみに、2007年には、月周回衛星「かぐや(SELENE)」も打ち上げられました。


イプシロン、宇宙に飛びたつ
森田泰弘/宝島社/2015

 「イプシロン」プロジェクトマネージャの森田先生自らによる、イプシロン開発とこれからのドキュメント、ノンフィクションです。
 「サンダーバード」に憧れ、アポロ11号の月面着陸などで宇宙に夢を抱き、宇宙開発の道に進んだ森田先生。大学・大学院生の頃、東大宇宙航空研究所(のちのISAS・宇宙科学研究所)で「ハレー彗星探査計画」が進んでいた。当時の日本の固体ロケットはM-3SⅡ型。固体ロケットで惑星探査をすることに興味を持ち、宇宙研へ。そして、当時大学院博士課程3年だった「はやぶさ」プロジェクトマネージャの川口淳一郎先生に誘われ、森田先生はロケットの誘導制御を担当する。
 しかし、森田先生の研究者としての道はロケットのようにまっすぐではなかった。博士課程を修了したが当時の宇宙研には助手のポストがない。その頃カナダからやって来たビノッド・J・モディ教授から声をかけられ、カナダでロボットアームの研究員をすることになる。その後宇宙研に戻り、M-Vロケットの開発へ。1997年、M-Vロケット初号機は無事打ち上げに成功(この時のペイロードが電波天文衛星「はるか(MUSES-B)」)。M-Vは改良と打ち上げを重ねるが、2000年の4号機、「ASTRO-E」打ち上げは失敗してしまう。失敗を教訓に、挑んだ2003年打ち上げの5号機…小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」の打ち上げは成功。その後、宇宙研は宇宙・航空関係機関が統合し、JAXA・宇宙航空研究開発機構に。そこで森田先生はM-Vのプロジェクトマネージャになり、ISASだけでない、旧NASDAのスタッフとも一緒にM-Vを打ち上げることになる。そして、2006年、7号機で「ひので(SOLAR-B)」を打ち上げ、M-Vは廃止になってしまう…。

 M-Vがなくなり、新しい個体ロケットの構想を考える森田先生。コストを抑えて、もっとシンプルなロケットを。これがイプシロンロケットに繋がってゆく。逆境でこそ挑戦し、力を発揮する新しい個体ロケット開発チームの人々が頼もしい。イプシロンが形になってゆくにつれて、チームも大きくなる。この本では、チームの様々なエンジニアや研究者が登場する。彼らを信頼し、いい関係を築いている森田先生のお人柄がうかがえる。

 この本を読んでいると、本当にイプシロンは夢のようなロケットだと思う。プラモデルのようにシンプルで、人工知能を持ち成長することが出来る。新しい固体燃料の作り方も自転車のパンクしないタイヤからヒントを得たり、フェアリングも工業用のシリコンフォームを使うなど、身近なものからヒントを貰う。手作りのような雰囲気なのに最先端。イプシロンが更に面白い、興味深いロケットに感じられました。

 射場のある内之浦の人々との交流も心温まる。宇宙への敷居を下げるだけではない、多くの人に支えられ、見守られ、応援される「みんなのロケット」なのだなと感じた。

 現在イプシロンは、「ジオスペース探査衛星」(ERG)を打ち上げる2号機を開発中。この「ERG」を打ち上げるには、初号機の能力では足りない。そこで、強化型イプシロンを開発することに。2016年度に打ち上げの予定。さらに、2018年、5号機では月面着陸機「SLIM」を打ち上げ予定。初号機から間があいてしまっていますが、パワーアップしたイプシロンの活躍を楽しみに待つことにします。
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by halca-kaukana057 | 2015-09-14 21:56 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 16

 読んだ漫画の感想が全然進まない…溜まる一方…そんなに多くは読んで無いのに…。ひとつひとつ。まずは「ヴィンランド・サガ」16巻。表紙、トルフィンが赤ん坊にごはんを食べさせている…!?真剣だけど優しそうなトルフィンの表情に成長と心境の変化を感じるとともに、一体何があったのか…!?と思ってしまいました。


ヴィンランド・サガ 16
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2015

 結婚式の夜、花嫁のグズリーズは花婿のシグルドを無意識に刺し、逃げた。一方、ギリシアに向けて出航の準備をしていたトルフィンたち。グズリーズに気付き、話を聞く。やっぱり船乗りになりたい、生き方を自分で選びたい。そう言うグズリーズを、トルフィンは一緒に行こうと誘う。レイフたちの了承も得て、すぐに出航。シグルドはトルフィンたちがギリシアに向かったことを知り、船を出し追う。海を渡り数日後、北海のシェトランド諸島の島に立ち寄ると、人々が襲われていた。トルフィンは島の家の中で、赤ん坊を抱いた母親に出会う…


 15巻のラストが大変なことで終わってしまい、続きが気になっていました。
みんなが……当たり前にできることが できなきゃいけないことが……っ できない……
(15ページ)

このグズリーズの言葉に、とても共感しました。私も皆が当たり前に出来るようなことが出来ない…と悩み、悔しい思いをすることがよくあります。グズリーズが普通にお嫁に行って、妻となり母となり家庭におさまることができないと涙する…11世紀なら尚更です。でも、21世紀も変わらない…「普通」から外れれば、変に見られる。トルフィンみたいな人がいたら、どんなに気が楽になるだろう。トルフィンも苦しんで、「普通」から外れて、ようやくここまでたどり着いたのですが…。

 トルフィンは、ノルドの戦士の生き方から外れ、剣や戦のない社会を望んでいる。それは、父・トールズも同じだった。しかし、トルフィンが幼い頃に見たトールズの最期、トールズも結局最期まで剣は持っていた、捨てられなかったという話にドキリとした。アシェラッドを相手に、剣を抜いた…。ギリシアまでの旅路で、人を傷つけるかもしれない。そんな心配をしているトルフィンと、話を聞くエイナル。エイナルがとても頼もしい。トルフィンも強いけど、エイナルも精神的に強くなった。2人の友情にじんわり。

 その後立ち寄った島で、一族同士の争いに巻き込まれ、息絶える間際の母親から赤ん坊・カルリを託されたトルフィン。旅に新しい仲間が増えましたが…赤ちゃんの世話の仕方を誰一人知らない…。11世紀は育児は女性・母親の仕事。レイフおじさんも知らない。勿論トルフィンも知らない。グズリーズも…。悪戦苦闘しつつもお世話する様はユーモラスです。
 その一方で、家族を殺されてしまったカルリが、大きくなってからそのことを知ったら、その対立していた一族に復讐する義務がノルドの男にはある…という話は辛い。復讐をしなければ臆病者として社会から外される。人を殺したら復讐されるというルールがあるから社会は保たれている…ノルドの現実を語るトルフィンの表情が、とても重いです…。しかも、これが結構重要な話で…。

 しかし、トルフィンたちはただギリシア目指して旅をしているのではない。シグルドから逃げなければいけないという使命もある。本当に大変な旅です。

 海を渡り、ノルウェーのベルゲンに到着した一行。ベルゲンと聞いて、作曲家・グリーグの故郷だ!と反応してしまったw(勿論、時代は全然違います)グリーンランドやアイスランドでは少ない森林に驚くグズリーズ…そうだなぁ…確かに…。
 そこで出会ったもの…まずは熊。久々にトルフィンの戦闘シーンを見ました。やっぱり強い…。そしてもうひとり、女性の狩人・ヒルド。物静かな女性ですが…過去を語り始め…なんてこった!!ラストシーン、一体これはどうなるの!?17巻、17巻早く読みたいです!!気になります!!

・前巻感想:ヴィンランド・サガ 15
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by halca-kaukana057 | 2015-09-10 22:07 | 本・読書

山羊座の友人

 今回も普段は滅多に読まない少年誌から。ネットの「ジャンプ+」で連載された漫画です。偶然「ジャンプ+」を読んだら、タイトルが気になって(私も山羊座なので)読んだら面白かった。単行本化して嬉しいです。元々は小説が原作の漫画です。


山羊座の友人
原作:乙一/漫画:ミヨカワ将/集英社・ジャンプコミックス/2015

 高校生の松田ユウヤの部屋は強い風がいつも当たってきていて、ベランダには様々なものが飛んでくる。その中に、1ヵ月後の日付の新聞記事の切れ端があった。学校では、ユウヤは平穏に過ごしているが、若槻ナオトという同級生の男子が、金城アキラという不良に目をつけられ、いじめられていた。気にはしていたが、見て見ぬ振り、何もしないでいた。そんなある夜、家に帰る途中のユウヤは声をかけられる。声の主は若槻ナオト。手には血のついたバットを持っていた。金城アキラを殺した、というのだ。これから逃げるという若槻を、ユウヤは引き止める。部屋に匿い、更に一緒に東京に逃げることにした。ベランダに飛んできた1ヵ月後の日付の新聞記事には、高校生が殺害された事件で事情聴取を受けていた高校生が自殺した、と書いてあった。若槻を助けたい。そう思うユウヤだったが…。

 この漫画の感想をいつ書こうか迷っていました。先日、いじめが原因で高校生が自殺したのは本当に痛ましい。この漫画でもいじめのシーンは容赦なく描かれています。読むのが辛い。でも、惹き込まれた。ユウヤの部屋の不思議なベランダ。未来の新聞。ユウヤと若槻の逃避行。ユウヤの姉の夫は刑事で、若槻が語る事件の詳細に疑問を抱いたユウヤは逃げながらも、姉に捜査のことを聞いてみる。ユウヤが導いた結論。若槻の選択。そして…。最後はまさかの展開でした。ユウヤがなかなか賢い。鋭い。

 タイトルの「山羊座」。若槻が山羊座生まれで、ヤギに関する雑学に詳しい。身代わりに人々の罪を背負う山羊。若槻がスケープゴートの話をする…。この物語の鍵です。

 ユウヤから見て、自分と同じ普通の高校生の若槻。その若槻が殺人を犯したとは思えない。そして、ベランダに飛んできた未来の新聞記事が本当なら、若槻が自殺するのを阻止したい。自首しようとする若槻を、その日付までは自首させまいとするユウヤ。それまでは友達でもなかった2人。でも、ユウヤはいじめに対して何も行動できなかったから、今度こそは助けたいと思う。一方の若槻は淡々と、でも心には何かを押し込んでいる。感情をあまり表現しないからこそ、若槻君の感情を想像できる。

 ユウヤの周りの同級生にはもうひとり、本庄ノゾミという女子生徒がいる。ユウヤのベランダのことを知っていて、若槻へのいじめについて先生に相談をしていた。真面目で、なかなか賢そうな眼鏡っ娘。ユウヤのベランダに飛んでくるものに興味を持っている。逃避行中は勿論出てこないのですが…。

 最初は、ただ物語の発端になる新聞記事が飛んでくる、ということのためにこのベランダがあるのかなとおもっていたのですが、それ以上の意味があった…それがわかる最後がとてもかなしかった。とにかく、この漫画は最後まで読まないとわからない。

 感想を詳しく書きたいのですが、この作品はネタバレしたくない。是非最後まで読んで欲しい。ということで詳しく書けない…もどかしい…!

 ちなみに、原作は乙一さんの同名小説。原作小説も読んでみようと検索したのですが、ない。単行本・文庫化されていない。雑誌に掲載されたものらしいのですが、その雑誌も何年も前のもので入手困難。単行本・文庫化しましょうよ…。漫画の単行本が出ると決まった時、もしかしたら小説も一緒に出るのかなと思ったら違った。一緒に出してくれたらよかったのに。漫画は原作そのままなのか変えているのかわかりませんが、原作も読みたいです。
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by halca-kaukana057 | 2015-08-16 21:35 | 本・読書

Im ~イム~ 1

 新しく読む漫画が増えました。いつものペースだと2巻が出てしまうので、その前に感想書きます。


Im ~イム~ 1
森下 真/スクウェア・エニックス・ガンガンコミックス/2015

 高校1年の羽羽方陽乃芽(はわかた・ひのめ)は、家は代々続くオカルト蒐集家、昔から呪われている一族と噂され、人々に避けられていた。特に陽乃芽は8年前口から火を噴いて倒れたと噂され、陽乃芽は8年の間声を出せず、関わると呪われると噂されていた。入学した高校でもひとりぼっちの陽乃芽。そんな陽乃芽の前に突然、不思議な少年が現れる。わけのわからないことを話し、町の人々に追われていたその少年を家に連れ帰った陽乃芽。"イムホテプ"と名乗るその少年…古代エジプトの大神官で後に神とあがめられた存在。イムホテプは瞬時に陽乃芽は偽物の神「マガイ」に憑かれ呪われていると見抜く。イムホテプの力で一時的に声を取り戻した陽乃芽。しかし、陽乃芽に憑いているマガイを倒さねば陽乃芽の呪いは解けない。イムホテプは陽乃芽の部屋で、マガイの元凶となっているあるものを見つける…。


 古代エジプト神話がモチーフになっている漫画と聞いて読んでみました。少年漫画、アクションものはこれまであまり読んだことのないジャンル。でも、すんなりと読めました。主人公のイムホテプですが、カバーを外した表紙にも史実の解説が書かれています。古王国時代、第3王朝のジェセル王(今後出てくる模様)の宰相。古代エジプト最初のピラミッドはこのジェセル王の階段ピラミッドで、設計をしたのはイムホテプ。内科医でもあった。この漫画のイムホテプは、その史実のイムホテプとはちょっと違う感じになっています。
 しかし、古代エジプトでも初期の第3王朝。解説にも書いてあるのですが、ツタンカーメン王(第18王朝)とは1300年ほど離れている。ツタンカーメンの時代を現代だとすると、イムホテプの時代は奈良時代、という例えがわかりやすい。確かに。古代エジプトの歴史は本当に壮大、長い。考えるだけでクラクラしてきます…(でも好きw)

 話を漫画のイムホテプ(通称:イム)に戻して、現代日本に甦りやって来たイム。偶然出会った陽乃芽は、偽物の神マガイに憑かれていた。イムが現代に甦ったのは、マガイを祓うため。独りぼっちの陽乃芽が、心の拠りどころとしたあるもの。独りぼっちの陽乃芽にとって、現実世界は辛い場所でしかない。それよりも自分だけの拠りどころがあればいい。そんな陽乃芽の心を読み取り、「貴様は人と向き合うのが怖いだけだろう?弱虫め」(31ページ)と厳しいけれどもその通りのことを言うイム。見た目は少年だが、大神官だからかなり賢く、人生経験はあるのだろう。

 この漫画には、陽乃芽だけでなく、心の奥底に他者とは分かり合えないと思い込み、自己を追い詰める孤独や弱さ、罪悪感を抱えた人が登場する。陽乃芽に拒絶されつつも友達になりたいと近づいてきたクラスメイトの白花こぶし。何かと恐ろしい噂のある「御空神社」にお参りに来た少年・竜。人の目を気にしすぎてしまうこぶし。とても危険なこと、恐ろしいことが起こるかもしれないが、すがれるもの、希望を託せるものがそれしかない竜。そんな弱さを持つ心の内を理解しようとするのは陽乃芽にしかできないことだな、と。

 特に竜が抱えていたものは重かった。時に人は、それがネガティヴ、負の結果をもたらすものだとわかっていても、それを生きる支えとしてしまうことがある。悪循環で成り立っている人生。それを変えようとするのはとても難しい。でも、負の連鎖を生み抜け出せなくなるものを支えにしているのはやはりよくない。陽乃芽にとっても、竜にとっても。

 そんな人の弱さにつけこむマガイ。イムとマガイのバトルシーンは迫力があります。だが、イムも何かを抱えている…?落ちこぼれの見習いで、一人前の神になるためにイムの元で修行をすることになったアヌビス(アヌビス神が三頭身…可愛い…!)や、最後に登場した男が、イムを「大罪人」と言う。過去に何があったのか。それは2巻で明かされる、か?(単行本派なので最新話は読んでません)これから面白くなってきそうです。最後に出てきた男にイムが話しかけていた言葉は、古王国時代ではなかったよなぁ。このあたりも創作ですね。でも、実際の古代エジプトの神々をモデルにしているマガイや、こんな用語も調べていけば古代エジプトに詳しくなれるかも。漫画はこういう気軽なところから入れて面白い。

 2巻は9月発売予定。来月ですよ。少年漫画のペースは早いですね…。

 最後に。陽乃芽の姓・「羽羽方」の由来はこれ(の著者)ですよね?すぐにわかりました。気が強く、徐々に心を開き始める、ツインテールの陽乃芽ちゃん、可愛いです。こういうキャラ好きですw
 となると、最後に出てきた男には名前の由来はいるのか?ちょっとわからない…。
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by halca-kaukana057 | 2015-08-10 23:35 | 本・読書

ヴェネツィアの宿

 久々に須賀敦子さんの本を読みました。


ヴェネツィアの宿
須賀敦子/文藝春秋・文春文庫/1998(単行本は1993)

 戦争末期・終戦後の頃、イタリアに留学した頃、父と母と、父の愛人のこと、ミラノで結婚した頃のこと…須賀さんの様々な年代の思い出を語る12編のエッセイ。

 立秋も過ぎ、当地は一気に秋めいてきた。まだ夏だけれども、陽の照り方、空の色や雲、風の温度や触感、日の短さ、暮れゆく空…秋の気配を感じる。真夏のギラギラした太陽の下、強烈に明るい雰囲気から、陰りを感じる季節へ。読んでいたら、そんな夏から秋へ移り変わる頃の陰りを思い浮かべた。

 須賀さんが留学し、住んだイタリアやフランスは、南の国のイメージがある。日本のような酷暑ではないけれども、カラッと暑くて、太陽の光が降り注ぎ、明るく、人々も陽気で、街も賑やか。でも、須賀さんが描くイタリアやフランスの情景は、そんなカラッとした陽気なものではない。その光の陰にある、人々の憂鬱や心の奥底が際立っている。周りが明るくポジティヴな印象が強いから、暗いネガティヴな様が浮かび上がりやすいのだろうか。

 今年は戦後70年。戦時中、終戦後に関するエッセイもある。「寄宿学校」は終戦後のカトリック学校の学校生活や寄宿舎でのことが書かれている。戦後の混乱の中、外国人のシスターたちはどんな想いでいたのだろう、と思う。学校での学業や生活は楽ではなかった。その「寄宿学校」の最後が印象的だった。

 以前読んだ「コルシア書店の仲間たち」に関するエッセイもあります。夫のぺッピーノとの話は、何度読んでもつらい。

 様々な人と出会い、別れ。その時、様々なことを思うけれども、はかなく過ぎ去ってしまう。短い夏のような、切なくなる本です。

 ところで、須賀敦子さんの本を読もうと思ったら、河出文庫から全集が出ているじゃないですか。全集でそろえるか、それぞれのを買うか…迷います。全集だと分厚くて持ち歩きにくいのが難点…。
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by halca-kaukana057 | 2015-08-09 23:17 | 本・読書


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