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[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?

 年が明けてしまいましたが、「シベリウス生誕150年記念」シリーズで続けます。シベリウス「クレルヴォ交響曲」op.7の様々な演奏を聴こう不定期連載。前のものから間が空いてしまいました。その間に、ユニークな「クレルヴォ」を見つけました。

ARTE Concert:Tero Saarinen inszeniert Jean Sibelius' "Kullervo" in Helsinki
(言語はドイツ語かフランス語。右上にどちらかを選択するボタンがあります。ページに飛ぶと動画が再生されるので注意してください。また、重めなので、再生が始まったら一度一時停止して数分待ってから再生するとスムーズに再生されます)
※3月1日まで公開です※

フィンランド国立歌劇場:シベリウス「クレルヴォ」
ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ヴィレ・ルサネン(バリトン)
フィンランド国立歌劇場合唱団
ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団

テロ・サーリネン:振付
ダンサー:
Terhi Räsänen(テルヒ・ラサネン):クレルヴォの妹、Samuli Poutanen(サムリ・ポウタネン):クレルヴォ、David Scarantino(デイヴィッド・スカランチノ):キンモ
フィンランド国立バレエ、テロ・サーリネン・カンパニー


 2015年、フィンランド国立歌劇場で上演された、シベリウスの「クレルヴォ」バレエ付きです。「クレルヴォ」を聴いていると、踊りたくなるような箇所がある。バレエとは面白いかもしれない。と思って観てみました。

 一言で言うと、不思議です。そして、謎です。
 謎に思った点について先に書くことにします。シベリウスは各楽章にこう副題をつけています。
第1楽章:序章(導入部)
第2楽章:クレルヴォの青春
第3楽章:クレルヴォとその妹
第4楽章:クレルヴォの出征(戦場に赴くクレルヴォ)
第5楽章:クレルヴォの死

 リョンロットが編纂した新「カレワラ」のクレルヴォの章に基づき、その詩・物語通りの展開です。しかし、このバレエ版では、副題が異なる楽章があります。第1楽章から、「クレルヴォと彼の同志キンモ(Kullervo und sein kamerad KImmo/Kullervo et son compagnon Kimmo)」(動画のサイトがドイツ語とフランス語だけなので、両方表記しておきます。英語、フィンランド語がないのが困る)。キンモって誰?岩波文庫の「カレワラ」小泉保訳版の、下巻巻末の用語集には、「牛の名、kimmoは跳ねることの意」「恐ろしい悪霊で石の主の名」とある。クレルヴォの章には出てきません。第4楽章の前に「クレルヴォの出征(Kullervo zieht in den krieg)」とダンスだけの箇所があり、第4楽章は「キンモの狂気(Kimmos wahnsinn)」。第5楽章の前でも女性ダンサーが曲なしで踊る「das schweigen der frauen:女性の言及」というシーンが。でもフランス語だと「le silence des femmes:沈黙の女性」(ドイツ語、フランス語共にわからないので機械翻訳です、すみません)言及なのか沈黙なのか、どっちなの?
 キンモという存在と、副題も変えられている。シベリウスの交響曲「クレルヴォ」は演奏、独唱・合唱はそのままですが、副題や演出は変えている模様。
 調べてみたら、以前ちょっと紹介したサッリネンのオペラ「クレルヴォ」にクレルヴォの子ども時代の友達としてキンモが出てきます。「カレワラ」のクレルヴォの章とは、あちこち物語を変えています。もしかして、サッリネンのオペラでの物語、演出を混ぜているのだろうか…?
 これが謎の部分です。

 バレエ・ダンスは抽象的です。クレルヴォを象徴する振り付け…腕からひじへ、もう片方の手でなぞる振り付けがよく出てきます。クレルヴォの力を表現しているのでしょうか。衣装は現代的。クレルヴォ役のダンサー・ポウタネンさんの肉体美には見惚れます。クレルヴォの妹役・ラサネンさんも美しい。でも、どこか不思議です。

 第3楽章、男声合唱とソプラノ・バリトン独唱が入ってくる演出はかっこよかった!声楽陣は衣装が違います。声楽陣の衣装の方が好みです。ソプラノのルサネン=カルタノさん、バリトンのルサネンさん…実際にごきょうだいです。ソプラノのルサネン=カルタノさんは2015年Proms、フィンランド・ラハティ・シベリウス音楽祭でもソプラノソロを務めた方。クレルヴォの妹が今までのことを告白する箇所の痛切な歌い方が印象的です。その後の、バリトンソロのクレルヴォの嘆きもずしりと来る。合唱はオペラ、歌劇場の合唱団。簡単な動きや演技をしながらの「クレルヴォ」の合唱はなかなかない、これだけだと思います。第5楽章も合わせて「クレルヴォ」の男声合唱はとても好きです。

 オーケストラ演奏は、バレエに合わせているのか、バレエが演奏に合わせているのか、どちらなのだろう?ただ、踊りやすいテンポにはしてあるように感じました。第3楽章で、金管がアクセントをつけるようにフォルテになるところがあるのですが、クレルヴォと妹の危険を予感させるような音でした。バレエをしっかりと支えるような演奏です。

 バレエがなくても、「クレルヴォ」は物語がドラマティックで情景が浮かぶのですが、フィンランドを代表する振付師が振り付け、演出するとこうなるのか…。また別の「クレルヴォ」で、謎もありましたが楽しみました。

 次回からはCDでリリースされている演奏に戻ります。あと、「カレワラ」やクレルヴォの章、リョンロットが「カレワラ」をどう編纂したのか、ちゃんと勉強しないとわからないことも多いと感じました。持っている資料をもう一度読み返して、またCDも聴いていきます。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 ベルグルンド指揮ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
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by halca-kaukana057 | 2016-02-21 23:13 | 音楽

もうひとつの「クレルヴォ」

 シベリウス生誕150年記念(2016年になっちゃいましたが続けます)、「クレルヴォ交響曲」を聴こうシリーズの途中ですが、今回はシベリウスから離れて、別の作曲家の「クレルヴォ」を聴こうと思います。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の中でもドラマティックな悲劇の英雄・クレルヴォをテーマにした作品は、シベリウス以外のフィンランドの作曲家も書いています。

 先日、BBC Radio3の北欧特集のオンデマンドを聴いて見つけたのが、レーヴィ・マデトヤ(Leevi Madetoja : 1887-1947)の交響詩「クレルヴォ」op.15.15分程度の管弦楽曲です。

Leevi Madetoja Kullervo (1913)

 指揮演奏のクレジットがないのでどこのオーケストラの演奏なのか不明。ただ、調べてみたらCDはセーゲルスタム指揮フィンランド放送響、ストゥールゴールズ指揮ヘルシンキフィルぐらいしかない模様…フィンランドでも滅多に演奏されないのか!?
 ちなみにそのBBCで配信されていたのは、Jurjen Hempel(ジュリアン・ヘンペル)指揮BBCスコティッシュ響の演奏でした。さすがシベリウス、北欧もの大好きイギリスオケ。

 重々しく曲は始まりますが、金管のファンファーレがヒロイック。前半はシベリウスよりも明るめ?な感じ。弦も雄大でヒロイック、勇ましい英雄クレルヴォを強調しているかのよう。マデトヤはシベリウスよりも少し年下。シベリウスに師事したこともありました。シベリウスとは違う方向からクレルヴォの物語を描いているよう。金管に強さを感じます。過酷な運命に次々と立ち向かうクレルヴォの姿でしょうか。
 ただ、ラスト、クレルヴォが何もかも失い、自害するのを描いたと思われる部分は一気に暗くなります。そして静かに終わる。孤独なクレルヴォの最期のように。シベリウスの、クライマックスは主題に男声合唱も入れてフォルテで劇的に終わるのと対照的です。マデトヤの終わり方は好みです。曲の展開も。

 大体同じ時代に、同じテーマを、違う作曲家が書く(シベリウス、フォーレ、ドビュッシーの「ペレアスとメリザント」とか)…他にも様々な例がありますが、「クレルヴォ」もそういう楽しみ方が出来るんだなと思うと、また聴く楽しみが増えます。作品を聴く際の視点も増えます。マデトヤのも聴けてよかった。願わくばCD,録音、演奏機会が増えて欲しいところですね…。

 「クレルヴォ」は他にも、フィンランドの現代の作曲家・アウリス・サッリネン(Aulis Sallinen)による歌劇もあるそうで。
Kullervo 2014 Savonlinna Opera Festival

 サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバル2014のオペラ「クレルヴォ」ダイジェストがありました。歌詞はカレワラから取っているようですが、現代的な演出?不思議な感じ。
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by halca-kaukana057 | 2016-01-19 22:56 | 音楽

クリスマスと年越しの祈りの歌 シャルパンティエ:テ・デウム、真夜中のミサ

 クリスマスもシベリウス…クリスマスの歌曲もありますが、「クレルヴォ交響曲」の続きを聴こうかと思いましたが、さすがにクリスマスにあの悲劇はないよなぁ…と思ったので、クリスマスだからこその音楽を。

 17世紀、バロック時代に活躍したフランスの作曲家、マルカントワーヌ・シャルパンティエ(Marc-Antoine Charpentier/マルク=アントワーヌと表記することも)。以前声楽・オペラ特集で少し取り上げた作曲家です。オペラ(音楽劇)も「オルフェウスの冥府下り」(こと座の星座物語の元となったギリシア神話、オルフェウスの物語)、「アクテオン」(こいぬ座の星座物語の元、猟師アクタイオンが女神アルテミスの水浴びを見てしまい、アクタイオンは鹿に変えられてしまい…というお話)など、悲劇から喜劇まで幅広いです。
 一方、宗教曲も多く書いており、その中で有名なのが、「テ・デウム」ニ長調H.146、「真夜中のミサの曲」H.9。

 「テ・デウム」の前奏曲は、元日恒例、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの生中継のオープニングの曲として使われています。去年、M-A・シャルパンティエの「テ・デウム」の前奏曲だと知りました。金管楽器の軽快で華やかな音色が、まさに新年の特別なコンサートにピッタリ。選んだ人、さすがです。

 以降、8人の独唱と合唱の歌が入ります。歌詞はローマ・カトリック教会の賛美歌のひとつ。「テ・デウム」とは、「Te deum, laudamus(神よ、私たちはあなたをたたえます)」という歌い出しからつけられているのだそう。仏教徒だが、キリストへの祈りの歌詞を読んでいると、祈るという行為、感情の崇高さを思う。それが音楽になると、とても美しく、さらに崇高なものになる。M-A・シャルパンティエのニ長調の「テ・デウム」(他にもあるらしい)は明るく華やかで、やわらかくやさしい。祈りの歌ではあるけれども、身近に感じられるような音楽。伸びやかなソプラノやテノールの独唱・重唱とオルガンと木管の穏やかな、心落ち着く歌もあり、バロックの金管やティンパニの溌剌とした音楽にハリのあるバリトン・バス独唱・重唱もあり。合唱も美しい。色とりどり。J.S.バッハよりも前の時代(J.S.バッハは18世紀)。宗教音楽入門にいいかもしれないと思いました。

 「真夜中のミサの曲」は「リコーダーと弦楽器のためのクリスマスのミサ曲」と副題が付いている。リコーダーが大活躍します。やわらかくあたたかいリコーダーの音色と、「テ・デウム」よりは荘厳な雰囲気な曲調の弦楽器、オルガン、声楽独唱と合唱。クリスマスの夜、ろうそくの明かりの中で奏でられ歌われているであろう光景をイメージすると、クリスマスの夜に教会で聴いてみたいなと思いつつ…でも実際に演奏されているのだろうか?いや、どこかでは演奏されているんだろうなぁ。

 年末、1年を振り返り、思うことは沢山あります。また、平和な世界になってほしい…とも思います。様々な祈りが、この2曲の音楽には込められ、奏で歌われるのだと思います。ミサ曲など宗教音楽が数多くの作曲家によって書かれ、演奏され歌われ続けてきた理由がわかる気がしました。

 ちなみに聴いたのは、マルク・ミンコフスキ指揮、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの演奏。

・過去関連記事:オペラ事始 その3 序曲・前奏曲は楽しい水先案内人
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by halca-kaukana057 | 2015-12-25 22:34 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤

 今年の年末はベートーヴェンの交響曲第9番(第九)でもなく、ヘンデル「メサイア」でもなく、シベリウス「クレルヴォ交響曲」で過ごすことになりそうです…。先日のふたご座流星群観測の際も、観測時間の目安になると聴いてたし…。「クレルヴォ」で年越しって、かなり暗い…いや、フィンランドの日照時間の短く暗い寒い冬を思い浮かべる…フィンランドは今の季節はクリスマス(Joulu)シーズンですよ…やっぱり合わない…。
 でも聴きます。シベリウス生誕150年記念「クレルヴォ交響曲」を聴こうシリーズ第2弾。今回の演奏はこちら。

 パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
 ランディ・シュテーネ(ソプラノ)、ペーター・マッティ(バリトン)、エストニア国立男声合唱団


 前回、第1回でパーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響の演奏を取り上げましたが、そのフィンランドの名指揮者ベルグルンドにちなんで名前を貰ったというパーヴォ・ヤルヴィ。N響の首席指揮者に就任して、日本でも演奏機会が更に増えますね。そして、ちょっと過ぎてしまいましたが、12月10日のノーベル賞受賞式、その前のノーベル賞コンサートで演奏するロイヤル・ストックホルム・フィル(なので、時々「ノーベル賞オーケストラ」と呼ばれる…)。前の記事、今の季節に関連させた演奏を選んでみました。合唱はパーヴォさん(ヤルヴィだとお父様のネーメさん、弟さんのクリスティアンさんと紛らわしいので、ファーストネームで呼んでいます)の故郷エストニアの男声合唱団。エストニアは合唱大国だもんなぁ(北欧・バルト諸国の合唱は本当凄い)。

 この演奏、録音が1997年。20年近く前のものです。パーヴォさんはまだ30代。そんな前のものなのに、新鮮に感じます。30代のパーヴォさんの若さか。テンポ強弱もも全楽章ちょうどいい感じで、クレルヴォの物語を鮮明にイメージできます。低音の響きもどっしりと迫力があって、物語の重さが伝わってくる。そういえば、先日のEテレ「クラシック音楽館」でパーヴォさんが日本人若手アーティストとの対談で、音楽には物語がある、と仰っていたのですが、まさに「クレルヴォ」もそうだなぁ(ただ、当時30代のパーヴォさんがどう思っていたかはわかりませんが…)。

 第2楽章「クレルヴォの青春」、入り方が静かにそっと、テンポ遅めで入るのが凄くいいなと思いました。第1楽章「序章」はクレルヴォの物語の始まり、第2楽章からクレルヴォの悲劇が「カレワラ」クレルヴォの章で次々と語られていく。「青春」というと明るく爽やかなものを想像してしまいますが、クレルヴォの少年時代はそんなものは一切ない。ウンタモへの復讐と、奴隷として働いていたイルマリネンの家での恵まれない生活。木管はのどかなようで緊張感がある。金管も華やかなようで重く悲劇的。2楽章もいいなと思えるのが、この演奏です。第3楽章の合唱が病みつきになるのに、この演奏だと第2楽章も病みつきになります。

 第4楽章「クレルヴォの出征」の引き締まった弦も印象的です。その弦で、戦いをイメージさせる金管が映える。最後のほう、クレルヴォの勝利の部分だけは明るく。力強さが満ち溢れています。

 やはりエストニアの合唱はうまい。第3楽章、第5楽章の合唱の響きが緻密。特に第5楽章。人の声、しかも何十人もの合唱で、こんな緻密な歌い方も出来るんだ。第5楽章、合唱もオケもとても静かに入ってくる。何もかも失い、荒涼とした家があった場所で絶望に暮れているクレルヴォをイメージします。「カレワラ」のクレルヴォの章を読んでいなくてもわかるような。じわじわと破滅の時へ悲しくクレッシェンドしていくのが、心身に突き刺さります。

 現在、50代のパーヴォさんならどんな「クレルヴォ」を描くだろう?シベリウス作品でも規模やフィンランド語による独唱・合唱のため?かなかなか演奏されない「クレルヴォ」。オケや声楽独唱・合唱は変わるでしょうが、現在のパーヴォさんの「クレルヴォ」も聴いてみたいです。


・第1回:[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響
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by halca-kaukana057 | 2015-12-17 22:05 | 音楽

2015.12.8 Sibelius 150 !!

 この日を待っていました。本日、2015年12月8日は、フィンランドの作曲家・ジャン・シベリウスの生誕150年…150回目のお誕生日です。1865年12月8日、フィンランドのハメーンリンナ生まれ。おめでとうございます!!

 ということで、12月に入ってからは「まいにちシベリウス」(某元テニスプレーヤーの日めくりカレンダーから連想しましたw)と自分で勝手に題して、毎日何かしらシベリウス作品を聴いています。ちょうどNHKFMのラジオでも、先日記事を書いたハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送響の来日公演の他、シベリウスの交響曲・管弦楽曲を日本に紹介した指揮者・渡邉暁雄先生のご子息のピアニスト・渡邉規久雄さんのオール・シベリウス・ピアノ作品の演奏会、そして今週は9月のラハティ・シベリウス音楽祭から、ユッカ=ペッカ・サラステ指揮ラハティ響、レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキフィル、オッコ・カム指揮ラハティ響の回、木曜にはサイモン・ラトル指揮ベルリンフィルのシベリウスを放送とのこと。今年のラハティ・シベリウス音楽祭は過去記事でも書きましたが、毎日演奏を聴くのが楽しかった。オンデマンドでたっぷり楽しみましたが、また聴けるとは嬉しい。そして木曜のラトル&ベルリンフィルも楽しみです。あと、4日のBSプレミアムで放送していた「クラシック倶楽部」シベリウスのピアノ曲、歌曲、ヴァイオリン曲もよかった。シベリウスというと交響曲にまず目がいってしまいますが、器楽曲・歌曲も特集してくれて嬉しい。この放送のラストは舘野泉さんの左手のための「フィンランディア賛歌」(吉松隆:編曲)舘野さんもシベリウスのピアノ作品を日本に紹介し続けている方。吉松先生の編曲はじわりと来ます。

 今日は手当たり次第シベリウス作品を聴きまくっています。交響曲、管弦楽曲、声楽付き管弦楽曲、器楽曲、編曲もの…。一日じゃ勿論聴ききれない。シベリウス作品の幅の広さを実感します。

 シベリウスの音楽に出会って、好きになって、ハマって、あれこれと聴いて…約10年。まだまだシベリウスの世界は広くて深いです。しかも、シベリウス作品を演奏するフィンランド指揮者・フィンランドオーケストラ・フィンランド演奏家とフィンランドは音楽家にも恵まれている。勿論フィンランドだけではない、国籍関係なく心に残る演奏はたくさんあります。まだまだシベリウスを聴いていきたいと思っています。

 今日がシベリウスの生誕150年のお誕生日…つまり、厳密には生誕150年は今日から…?まだまだ聴き足りないので、来年の12月7日までシベリウスイヤー延長してもよろしいでしょうか?(勝手にやりなさいw)「クレルヴォ」を聴こうシリーズはまだ始めたばかり、絶対来年になってもやってるなぁ…。

 ちなみに、シベリウス没後60年は2017年(1957年没)。またシベリウス記念年演奏会などありそう。あと、2019年は日本とフィンランドの国交樹立100年だそうで、フィンランドオケ来日とかありそうだなぁ。楽しみにしておきます。

 今日聴いたシベリウス作品をメモしておきます。
・カンタータ「わが祖国(Oma maa)」op.92 / アカデミー合唱協会、パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキフィル
・火の起源 op.32 / ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)、ソヴィエト・ロシア国立アカデミー・エストニア男声合唱団、ヘルシンキ大学男声合唱団、パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキフィル
・5つの小品op.75「樹の組曲」 / マリタ・ヴィータサロ(ピアノ)
・カレリア組曲op.11(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ編曲版) / スザンナ・ミエスコネン-マッコネン(Vn)、ユッシ・マッコネン(Vc)、Nazig Azezian(P)
・アリオーソ op.3 / ソイレ・イソコスキ(ソプラノ)、ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送響
・タピオラop.112/
・ルオンノタールop.70/アヌ・コムシ(ソプラノ)
・レンミンカイネン組曲(四つの伝説)op.22
/レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキフィル
・クッレルヴォ交響曲op.7 /Marianne Rörholm(メゾソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(Br)、ヘルシンキ大学男声合唱団、エサ=ペッカ・サロネン指揮ロスアンジェルス・フィル
  /フィンランド国営放送YLEのクラシック専門ラジオ「YLE Klassinen」でちょうど放送していました。第2楽章の途中から聴いたのですが、よかった、いい演奏でした。今日はシベリウスやフィンランドの作曲家が多めです。そのまま聴いてしまって、フィンランドの18世紀の作曲家・ベルンハルト・クルーセルのクラリネット協奏曲第3番変ロ長調op.11(カリ・クーリック(Cl)、サカリ・オラモ指揮フィンランド放送響)まで聴いてしまいました。シベリウス以前のフィンランドの作曲家。朗らかでいい曲でした。
・ルオンノタールop.70/アヌ・コムシ(ソプラノ)、サカリ・オラモ指揮フィンランド放送響
  /同じくYLE Klassinenから。今日2回目の「ルオンノタール」、しかもソプラノソロも同じくアヌ・コムシさん。今度はオラモ&FRSOで(調べてみたらこのお二人はご夫婦、夫婦共演です!)。
・交響曲第5番 変ホ長調 op.82(初稿) / ユッカ=ペッカ・サラステ指揮フィンランド放送響
 /今日は、交響曲第5番(初稿)の初演の日でもあります。100年前、シベリウス50歳の誕生日に。ご存知の通り、この初演に満足できなかったシベリウスは、曲を改訂、1919年に現行版の5番を出版します。これまで5番初稿はオスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ響のCDでしか聴いてこなかった。いち資料としか聴いてこなかったのですが(おい)、初稿も何度かあちこちのオーケストラで演奏されてきました。時々聴くと、新鮮な気持ちになります。この曲を100年前に聴いていたんだなぁ…と。
・水滴 / ヤーッコ・クーシスト(Vn)、タネリ・トゥルネン(チェロ)
・アンダンテ・カンタービレ ト長調
・ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調
/ヤーッコ・クーシスト(ヴァイオリン)、フォルケ・グレースベク(ピアノ)
・響け、神への栄誉を讃えて op. 23-6a
・吹け、風よもっと優しく op.23-6b
/エルッキ・ポホヨラ指揮タピオラ合唱団、ヨルマ・パヌラ指揮タピオラ・シンフォニエッタ
・アンダンテ・フェスティーヴォ / オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ響
・フィンランディア賛歌 / フィンランドの皆さん
 /YLE Uutiset:Näin huikeasti Sibeliuksen Finlandia kajahti Helsingin Senaatintorilla – video
 ヘルシンキ大聖堂の前で、1000人以上で「フィンランディア賛歌」を合唱。皆さん一般の方々なんですよね…?声が美しい。さすがは北欧合唱大国…!!

 以上です。日付が変わってしまいました…。勿論、明日も、来年も聴きますよ。聴けば聴くほどたくさんの発見がある、フィンランドの森のような奥深さと、フィンランドの湖のような澄んだ美しさ。シベリウス作品に出会えて本当によかったなぁと思う一日でした。

 最後に、こんなものを書いてみた。
f0079085_021192.jpg

 フィンランド語でバースデーカード。おめでとうございます。

【過去関連記事】
Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
受け継がれるオーケストラの音 フィンランド放送響来日公演(テレビ・ラジオ放送)
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by halca-kaukana057 | 2015-12-09 00:27 | 音楽

受け継がれるオーケストラの音 フィンランド放送響来日公演(テレビ・ラジオ放送)

 一昨日、Eテレ(NHK教育テレビ)「クラシック音楽館」で、そして今日はNHKFM「ベスト・オブ・クラシック」で放送された、ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団来日公演のオール・シベリウス、ライヴ録音を聴きました。テレビとラジオの両方で放送って気合入っていますねNHKさん。

 シベリウス生誕150年アニバーサリーイヤーで、フィンランドからはフィンランド放送響とラハティ響が来日。勿論指揮者はフィンランド人(フィンランドの指揮者の充実っぷりは相変わらず…むしろ更に勢い増してる!!)。リントゥも2013年からフィンランド放送響の首席指揮者に。フィンランド国営放送・YLEの映像オンデマンドサイトにはコンサート映像がたくさんありますが(後でリストアップします)、そんなに聴いてこなかった。なので、今度はどんな指揮者さんなのかな、どんな演奏なのかなと楽しみにしていました。ちなみに1967年生まれ、今年で48歳。背がとても高い…180、190cmあるのか…?

 プログラムは「フィンランディア」、ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:諏訪内晶子)、交響曲第2番のシベリウスの代表的名曲。これはサントリーホールでの公演でしたが、その前にすみだトリフォニーホールで交響曲第5番、7番、「タピオラ」をやっていたので、せっかくテレビとラジオの両方で放送するなら、ラジオではこっちのほうを聴きたかった…。

 「フィンランディア」の最初の音…吼える金管を聴いた瞬間、ああ!フィンランド放送響の音だ!と感じました。フィンランド放送響は、実演を聴きに行ったことはありませんが(涙)、CDやラジオ放送、オンデマンドで結構聴いてきた、親しんできたフィンランドのオーケストラです。前の前の首席指揮者のユッカ=ペッカ・サラステ、前の首席指揮者のサカリ・オラモ。指揮者は変わっても、オーケストラのメンバーも変わったはずなのに、ほぼ同じ音がする。指揮者それぞれの個性やアプローチ、解釈は異なりますが、根底にあるもの、オケの伝統のようなものは変わってないのかも、と感じました。
 ちなみに、フィンランド放送響の「フィンランディア」は、最後一瞬弱音にして一気にクレッシェンドしてジャン!と終わるのが伝統のようです。サラステでも、オラモでもそうでした。そして今回リントゥでも。この終わり方が爽快で好きです。

 ヴァイオリン協奏曲…思えば、フィンランド放送響でシベコンはあまり聴いたことなかった、かも…?いや、ラジオで放送されたものを録音したとか、図書館から借りてきたMDとか、どこかにあるかもしれない。探してみます(大丈夫かw)
 今回のヴァイオリンソロは諏訪内晶子さん。溜めるところは溜めて、さらっと流すところは流して、オケともいい感じだったと思います。テレビでは演奏前にリントゥさんおインタビューがあったのですが、第3楽章を「白熊のポロネーズ」と表現していました。独特の表現ですね…

 で、本題。シベリウス2番。今回のリントゥ指揮のを聴く前に、CDでサラステ盤(93年サンクトペテルブルクでのライヴ盤)、オラモ盤(2006年ノルウェー・ベルゲンでのライヴ盤)を聴いて、聴き比べしてみた(全部ライヴ録音だ!)。
 冒頭の雪解け水のせせらぎのような弦…微妙なニュアンスや強弱は異なりますが、澄んだ、清々しい音色は変わっていませんでした。背が高くて大柄、振りも大きめのリントゥの指揮では、ダイナミック、迫力満点でした。第2楽章、弱音とフォルテの幅がとても大きい。第2楽章・第3楽章は明と暗で揺れ動くのですが、その差が激しい。ダイナミックだけれども、繊細なところは繊細。第3楽章もメリハリが強く、そのまま第4楽章へ。弦も管も打も一緒にあのメロディーを歌い上げる。シベリウスの交響曲は後期作品、特に4番、6番、7番が好きですが(あと、今は「クレルヴォ」も好き!)2番もやっぱりいいなぁ~と思える演奏でした。
 テレビでは、「日本では2番が何故こんなに人気があるのかわからない…」と仰っていたリントゥさんw私もなぜかはわかりません。でも、美しくて崇高で、冷たいけれども情熱を内に秘めていて、荒々しく野生的なところもあり、厳しくて、優しくて、最後は高らかに大円団で終わる。そんなシベ2が好きです。そしてぶれることのないフィンランド放送響のシベ2も好きです。ああ、だから5番7番タピオラも聴きたいですよ!

 現在のフィンランド放送響には、日本人演奏者が4人いらっしゃいます。フルートの小山裕幾さん、トランペットの櫻木厚子さん、ティンパニの森田和敬さん、打楽器の安田直己さん。安田さんはこの日の演奏会にはいらっしゃいませんでしたが、小山さん、櫻木さん、森田さんは大活躍。アンコール「ベルシャザールの饗宴」第3曲「夜想曲(ノクターン、NHKでは「夜の音楽」)」はフルートがメイン、ソロで活躍する曲。小山さんの美しいフルートに聞き惚れました。「フィンランディア」での櫻木さんもかっこよかった。フィンランド放送響で日本人奏者が活躍している、とても嬉しく思いました。
 もうひとつのアンコール、「四つの伝説(レンミンカイネン組曲)」より第4曲「レンミンカイネンの帰郷」も疾走感あふれるダイナミックな演奏にテンションが上がりました。いい演奏でした!!

 日本ではテレビとラジオで放送されましたが、本国フィンランドでもラジオ放送されました。フィンランド国営放送・YLEのオンデマンドでまだ聴けます。
YLE Areena Radio:Radion sinfoniaorkesteri ja Hannu Lintu konsertoivat Japanissa
 11月4日放送なので、多分12月4日までだと思います。公開終了が近くなると赤文字で「○h(○時間)」とあと何時間か表示されるので注意してください。

 シベリウスイヤーに、本場フィンランドのシベリウスを届けに来てくださったリントゥさんとフィンランド放送響の皆さんに感謝です!ありがとう、Kiitos!
 リントゥさんは首席指揮者になってまだ2年。これからもっと関係も深まって、演奏も変わっていくはず。見守りつつ、応援したいです。
 フィンランド放送響も勿論、ヘルシンキフィルにラハティ響、フィンランドにはたくさんのオーケストラがあります。フィンランド指揮者もそこで活躍しています。同じく見守りつつ応援したいです。

 さて、先述したフィンランド国営放送にあるリントゥ指揮のシベリウス作品のコンサート映像をまとめました。PCからはこのまま観られますが、スマホからは「YLE Areena」というアプリを入れてくださいね。
フィンランディア
 混声合唱付きです。合唱はタピオラ室内合唱団。
ヴァイオリン協奏曲
 今シーズン初めの演奏会より。ヴァイオリンは、先日オスモ・ヴァンスカ指揮読売響と共演したエリナ・ヴァハラ。
大洋の女神(波の娘)
 これも今シーズン初めの演奏会より。
ポホヨラの娘
四つの伝説(レンミンカイネン組曲)
歌曲集
 夕べに(Illalle)op.17-6、春はすばやく過ぎ去る(Våren flyktar hastigt)op.13-4、でも私の鳥は帰ってこない(men min fågel märks dock icke)op.36-2、それは夢か?(Var det en dröm?)op.37-4 
 /ソプラノ:ソイレ・イソコスキ
 歌曲をオーケストラ伴奏で。
アリオーソ op.3
 同じく、イソコスキのソプラノで。初期のマイナーな作品です。

 ついでに、歴代首席指揮者のシベリウスも。
交響曲第5番(初稿)
 つい先日の演奏会より。サラステがFRSOに帰って来ましたよー!しかも、5番の初稿!!フィンランド放送響も5番初稿やりました!

森の精(The Dryad) op.45-1
 1月の演奏会より。オラモも帰ってきましたよー!交響曲第2番の後、徐々に後期作品に移りゆくマイナーな作品。この曲でもフルート小山さんが活躍してます。

 ちなみに、メロドラマ版が元となったop.15も「森の精(The Wood Nymph)」と訳され、ややこしいです…。声楽独唱版、語りの入ったメロドラマ版、オーケストラ演奏だけの交響詩版と奥の深い作品です。
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by halca-kaukana057 | 2015-12-02 23:36 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1

 もう11月も終わり…。12月…2015年が終わってしまう。今年はシベリウス生誕150年記念年。CDに加え、オンデマンドのライヴ録音も色々と聴いています。シベリウスの誕生日の12月8日も近い。
 来年になっても、シベリウスは聴く気満々なのですが(むしろ12月8日で150年。来年の12月7日まで延長でもいいんじゃないかと前にも書きましたが、本当そう思ってます…w)、何か特集企画をやりたい。

 ということで、「クレルヴォ交響曲」op.7の聴き比べをやります!

 これまで、シベリウス作品の中でもとっつき難いと感じていた「クレルヴォ」。交響曲なのか、どうなのかともよく議論になるみたいですが…。演奏時間は大体70分(ベートーヴェンの第九と同じぐらいと考えればそれほどでもないか)。ソプラノ(またはメゾソプラノ)とバリトンの独唱と男声合唱が入る、声楽つきの規模の大きな曲。シベリウスというと私は4番以降の後期の交響曲を真っ先に思い浮かべるので、初期の、しかも規模の大きな曲はなかなか親しめずにいたのです。シベリウスイヤーなのに、この「クレルヴォ」はあまり演奏されていないし…(フィンランド語の声楽ソロと男声合唱が難しいのかなぁ。フィンランドは声楽・合唱も強いんだけどなぁ)
 それが、今年のPromsとラハティ・シベリウス音楽祭で演奏された「クレルヴォ」を聴いて、この曲いい!もっと聴きたい!と思うようになり、持っていてもあまり聴かずにいたCDを聴き始めました。

 第1回、取り上げるのは、
パーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響
ライリ・コスティア(ソプラノ) 、ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)、ヘルシンキ大学男声合唱団


 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の「クレルヴォ」の章に基づく作品。クレルヴォはカレルヴォの息子。父の兄・ウンタモに一族を滅ぼされ、幼い頃から復讐を誓う。力も精神力も強い。成長したクレルヴォは、鍛冶師のイルマリネンの家で働くことになるが、イルマリネンの妻の悪戯に激怒して殺してしまう。その後、クレルヴォは死んだはずの両親と再会、妹も生きていると聞かせれる。両親と暮らし、ある日、森の中で可愛らしい少女と出会う。その少女はクレルヴォの妹だった。それを知らず…。真実を知ったクレルヴォの妹は自殺。クレルヴォも激しく後悔、自分を責め、ウンタモ一族を滅ぼす旅に出る。ウンタモ一族を滅ぼしたものの、両親も亡くなり、家もなく…クレルヴォはこれまでの人生を振り返り、自殺する。

 この救いようのない物語も、「クレルヴォ」は親しみにくいと感じていた理由だったと思います。悲劇の英雄。英雄扱いになっていますが、実際にフィンランドの人々はクレルヴォをどんな人物と見ているのだろう?第3楽章「クレルヴォとその妹」で男性合唱とソプラノ・バリトン独唱、第5楽章「クレルヴォの死」で男声合唱が入ります。

 シベリウスの出世作になったのに、シベリウスは演奏されることを嫌がり、スコアも出版しない。シベリウスが死去した後に全曲演奏され、1970年、このベルグルンド&ボーンマス響盤が初めての録音になりました。今私が接することのできる最初の「クレルヴォ」がこのCDというわけです。さすがはベルグルンド先生。

 第1楽章「序章」、第2楽章「クレルヴォの青春」と重々しい音楽が続きます。第2楽章の静かな雰囲気は、やわらかさもあるが、やはり緊迫している。そして第3楽章。「カレワラ」をカンテレで歌う「カンテレンタル」と同じように5拍子で、軽快に明るめに始まり、「Kullervo Kalervon poika」と男声合唱が。このヘルシンキ大学男声合唱団の歌が、人の声の呼吸、やわらかな「人間の声」を感じられていい。それでいて、クレルヴォとその妹の悲劇を語る険しさ、迫力や緊張感も十分。フィンランド語の歌詞も聴きやすい。「カレワラ」は元々韻を踏むように書かれているのですが、その韻のリズムが心地いい。いい合唱だなと思いながら聴いています。

 声楽ソロの2人もいい。妹役のソプラノは甘さも持ちつつも、悲しみに。バリトンの「クレルヴォの嘆き」の部分の重さ、迫力もたまりません。

 この合唱が、第5楽章ではただならぬ雰囲気に。冒頭、オケの音は小さくひっそりとしていて、合唱がメインで聴こえる。幼い頃から誓っていた復讐を果たしたのに、何もかも失ってしまったクレルヴォの計り知れない悲しみがストレートに伝わってきます。徐々にクレッシェンドしてゆき、クレルヴォの最期が…。とても重い。重い演奏です。聴いた後、ぐったりとしてしまいます。いい意味で。クレルヴォの悲劇は救いようがないけれども、救いがなくても、過酷な運命を背負っていても、歯を食いしばり生き、そして劇的な最期を迎えるクレルヴォの生涯をちゃんと聴きたいと思う。やはり「クレルヴォ」はオペラのような部分があります。

 第4楽章「クレルヴォの出征」も、颯爽としているけれども突き刺さるような鋭さがある。弦のざわめきがいいです。シベリウスの弦のざわめき(ささやき)はいい。角笛のようなホルンや、ファンファーレのような金管もアクセントになっている。

 あと、打楽器陣も、迫力があり、演奏をビシッと引き締めている。

 「クレルヴォ」という作品を世に広めることになったこの録音に感謝です。この後に続く録音もどんどん聴いていきます。そのうち聴きどころや魅力をどんどん見つけられたらいいな。
 ちなみに、ベルグルンドはヘルシンキフィルとも「クレルヴォ」を録音しています。こちらも聴けたらいいな。

・関連記事:Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
 このPromsとシベリウス音楽祭で演奏された、サカリ・オラモ指揮BBC響の演奏が「クレルヴォ」をもっと聴きたいと思ったきっかけでした。迫力と疾走感満点のいい演奏です。声楽陣もいい。この記事のリンク先(「動画その2」)、まだ聴けます。(BBC Radio3のは11月29日まで。中身は同じです)
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by halca-kaukana057 | 2015-11-28 23:20 | 音楽

生誕150年 ニールセンの交響曲を聴こう

 今年はシベリウス生誕150年でもありますが、もうひとり、生誕150年・1865年生まれの作曲家が。デンマークのカール・ニールセン。「ニルセン」と表記されているのも多く、一体どっちがデンマーク語の発音に近いんだ?一応「ニールセン」の表記で書くことにします。ということで、シベリウスばっかり聴いてないでニールセンも聴こう、と以前から交響曲全集を聴いていました。ニールセンは6曲書いています。
 ちなみに、シベリウスとニールセン、フィンランドとデンマーク、会ったこともあるし、お互いの作品について言及したこともあるそうな。

 聴いたのは、パーヴォ・ベルグルンド指揮デンマーク王立管弦楽団の全集。シベリウスもベルグルンドから入りましたが、ニールセンもベルグルンドからになりました。間を置きながらちょこちょこと聴いてきましたが、ようやく全部聴き終わりました。

 聴いてみて、ニールセンもいい!
 シベリウスのように、聴いていて北欧の自然を思う…ということはあまりありません。フィンランドとデンマーク、「北欧」とひとくくりにされますが結構違う。ことばも全然違う、民族も国民性も文化も歴史も違う。ただ、ニールセンの音楽そのものが面白くて聴き入ります。

 どの交響曲も勢いがあって、リズミカル。弦も管も打楽器も独特で面白い。特に気に入ったのが、2番、3番、4番、5番。
 2番「四つの気質」…短気で怒りっぽい胆汁質の第1楽章、鋭く冷静、知的な粘液質の第2楽章、陰気でメランコリックな憂鬱質の第3楽章、陽気で活発な性格の多血質の第4楽章という意味で「四つの気質」(表題音楽ではないらしい)。それぞれ個性的で、特に第3楽章はきれいだなと感じました。

 第3番「ひろがりの交響曲(大らかな交響曲)」は第2楽章でソプラノとバリトンのヴォカリーズが入ります。舞台裏で歌っているらしい。何とも不思議な感じ。第1楽章の最初、金管の和音連打もかっこいい。そこから壮大なテーマ、さらに木管と弦のささやくようなメロディーが。かと思うとまた盛り上がる。この変化が気に入りました。第2楽章は木管がゆるやか、美しい。そこにヴォカリーズが入ってきて、やっぱり不思議な魅力のある曲です。第3楽章の溌剌、第4楽章は荘厳。第4楽章の弦の響きがじわりと来ます。

 第4番は「不滅(滅ぼし得ざるもの)」、ニールセンの交響曲の中では一番有名。作曲当時、世は第一次世界大戦真っ只中。ニールセンの戦争交響曲とも分析も。聴きどころは何と言っても第4部(単一楽章の曲ですが、4つの部分に分かれてCDには収められている模様)のティンパニバトル。2対のティンパニが激しい連打を繰り広げます。とてもかっこいい。第4楽章以外でもティンパニは大活躍。第3楽章の暗い弦にティンパニが映える部分が印象的です。何か不吉なものを予感させます。
 
 第5番は2楽章の交響曲。第一次世界大戦の後の暗さ、第二次世界大戦への予感などを表現している…との分析も。他の交響曲が速いテンポとフォルテの強い音で始まるのに対して、5番は静かに始まります。聴きどころは第1楽章の小太鼓(スネア)のアドリブ。これは演奏するのが大変だろうな…いや、打楽器奏者の腕のみせどころ?第2楽章のメロディーの暗いうねりも印象的。

 メロディーや響きがどこかしらショスタコーヴィチに似たところもあるとも感じました。ショスタコの方が後か。
 まだ聴き込んでいないので、これからもっと聴けば更に面白さを見つけられると思う。今回はベルグルンド盤を聴きましたが、ブロムシュテット指揮サンフランシスコ響のがいいらしい。新しい録音も出てきている。なかなか実演が聴けないけれども、もっと聴いてみたいなぁと思っています。
 実演といえば、今年4月にストックホルムで「シベリウス/ニールセンフェスティバル」なるものがあったそうで…シベリウスとニールセン、更に2人に関係する作曲家の作品を組み合わせて、北欧オーケストラ・北欧指揮者が勢ぞろい…というもの凄い企画。オンデマンドはもう聴けなくなってしまっていました…。日本でまだラジオ放送されてないよね?聴きたい…!
Sibelius-Nielsen Festival 2015 | Stockholm Concert Hall

 ニールセンの作品は、協奏曲はヴァイオリン、クラリネット、フルートの3作品。管弦楽曲も「ヘリオス」「アラディン」など。室内楽やピアノ曲もある。色々と聴いてみたいところです。
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by halca-kaukana057 | 2015-11-18 23:02 | 音楽

やわらかく、やさしく、自然に、バロックのイタリア歌曲 波多野睦美:イタリア歌曲集

 声楽を始めて、イタリア歌曲集に初めて出会いました。最初は南の方の音楽・詩に馴染めない(音楽はとりわけ北…北欧が好き。ドイツあたりも日本と比べたら北だ)と感じることもあったのですが、歌ううちにこれが魅力なのかなと、徐々に好きになっていきました。

イタリア歌曲集(1)中声用 [新版] (声楽ライブラリー)

全音楽譜出版社



 作品に取り組む前に、録音を探して聴きます。動画サイトだったり、MP3販売だったり。でも、一枚ぐらいイタリア歌曲集のCDを持っていたい。日本盤の、日本語解説のついたものがいい。あと、私の声域に合ったもの…メゾソプラノがいい。そのうち、このCDが出ていることを知りました。


TOWER RECORDS ONLINE : 波多野睦美/イタリア歌曲集
 メゾソプラノ歌手の波多野睦美さんによるイタリア歌曲集。カッチーニ、A.スカルラッティ、カルダーラ、フレスコバルディ、モンデヴェルディ、ヘンデル…とイタリア歌曲集ではお馴染みの作曲家の作品が収められています(でも、私はまだ1巻)。カッチーニ「アマリッリ」やヘンデル「私を泣かせてください」、カルダーラ「つれない人よ」あたりは声楽をやったことがなくても聴いたことがあるかも。

 聴いてまず思ったのが、波多野さんの歌がとてもやわらかくてやさしい。とても穏やかでやわらかい、ゆったりと、ふわりとした、でも響くメゾソプラノ。私が歌うと力んでキンキンした声になってしまう高音(オクターブ上のミより上)も、自然で無理がなくやわらかい。無駄な力が入っていない。高音をこんな風に自然に歌いたいと思いました。フォルテも、ただ強い大きな声ではなく、表情が様々。ピアノでもそうだった。自分の声が楽器になるのだから、もっと多彩な表情を付けられるはず。付けられるようになりたい。波多野さんの歌声は、人間の声であり、管楽器のようなところもあるし、弦楽器のような響きもあります。
 あと、いつもはオペラ歌手が大舞台で堂々とアリアを歌うように私は歌っているのですが、元々オペラアリアでも「歌曲」になっているのだから、声を張り上げずに、弱音と響きを大事にした歌い方の方が自然なのかな、と感じました。

 伴奏は、バロックハープやチェンバロ、バロックチェロ、弦楽アンサンブルによるもの。ポコポコと打楽器の音もする曲もあるのだが、楽器を叩いているのだろうか。波多野さんの歌をやさしく引き立てつつ、それぞれの楽器も存在感がある。伴奏も自然で素朴でやさしい。ピアノ伴奏もいいけれど、元々はこんなバロックアンサンブルで演奏されていたのだろうなと思うと、イタリア歌曲集の深さを実感します。

 楽譜とは異なる演奏をしていたり、歌い方も楽譜と違うところも多くありました。このCDは声楽・イタリア歌曲集の「お手本」ではない。ひとつの芸術作品だ。歌そのものの「お手本」としては難しいものがありますが、発声、発音、トリルやヴィヴラート、響かせ方…たくさんの学ぶところがあります。そして、私自身、レッスンで取り組んでいる曲という考え方でいたことを思い知りました。ずっと歌い継がれてきた芸術作品であることを、少しも考えたことがありませんでした。波多野さんの歌から、これは芸術作品なんだと実感させられました。発表会で歌う歌も、普段のレッスンで取り上げられる歌も、イタリア歌曲集の楽譜に収められている曲はレッスン用の教則本(教則本であるコンコーネ50番練習曲も歌っていて楽しいです)ではなく芸術作品であるという自覚を持って取り組もうと感じました。イタリア歌曲集に対する考え方がまた変わりました。

 やっぱり声が楽器になるって面白いな、深いな。私はまだ入り口のあたりにいる。もっと先に進んでみたいです。

 試聴できます。
Le Violette (A.Scarlatti) すみれ( A.スカルラッティ) 波多野睦美 Mutsumi Hatano


Selve amiche Antonio Caldara 優しい森よ(伝カルダーラ)波多野睦美 Mutsumi Hatano

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by halca-kaukana057 | 2015-11-13 23:06 | 音楽

アンスネスのシベリウス!?

 Proms、並びにシベリウス音楽祭で海外ネットラジオ(動画)オンデマンドの豊かさに圧倒され、以来、あちらこちらの海外の放送局のオンデマンドサイトで聴きまくっています。日本の自宅にいながら、海外のコンサートのライヴ音源を気軽に聴けるようになったとは、いい時代になりましたね…(結構昔からあったのですが、ネット環境が整っておらず、また時差もあるためなかなか手が出せなかった。オンデマンドならいつでも聴ける。ありがたい)

 主にイギリスBBCや、フィンランドYLE(ここは動画もある)、スウェーデンP2、デンマークDRP2などを聴いています。英語はまだいいのですが、フィンランド語やスウェーデン語、デンマーク語…フィンランド語は何とか。特にデンマーク語はどう発音したらいいのか分からない表記ですが、翻訳サイトを使って何とか解読しています。フィンランド語は読めるようになりたいなぁ…それ以前に英語ももっと読めるようになりたい…!

 その中で見つけたこれ。フィンランドYLEでラジオ放送され、オンデマンドで聴けるようになっています。
YLE:Areena Radio:Konsertteja Leif Ove Andsnes konsertoi Kansallisoopperan päänäyttämöllä

シベリウス:
 キュッリッキop.41
 5つの小品(樹の組曲)op.75より 第4曲:白樺、第5曲:樅の木
 5つのスケッチop.114より 第3曲:森の湖、第4曲:森の歌、第5曲春の幻
 
 ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス

 2015年10月25日 フィンランド国立歌劇場(エスポー国際ピアノフェスティバル2015)

◇公式サイト:Pianoespoo:Leif Ove Andsnes at the National Opera
◇コペンハーゲンでも同プログラム。こちらでも聴けます:DR P2:P2 Koncerten: Leif Ove Andsnes i København
◇アンスネス公式サイトでのコメント:Leif Ove Andsnes explains the new solo recital program
 ※この後にもプログラムは続いていますが、割愛します

 アンスネスがシベリウスを演奏ですと!!?
 1曲目は3つの楽章からなる「キュッリッキ」。「カレワラ」の物語のひとつ、レンミンカイネンがサーリの美女・キュッリッキに求婚するも失敗。強引に連れ帰って妻にする(レンミンカイネンらしい…w)キュッリッキはレンミンカイネンと妻になる条件を交わすも、キュッリッキの方が破ってしまう、というお話。グレン・グールドも録音していた作品です。
 その次は、ご存知「樹の組曲」op.75から、白樺と樅の木。説明は多分要らないと思います。アンスネスの「樅の木」が聴けるなんて…。ずっとアンスネスに演奏して欲しいなぁと思っていました!
 その次が、シベリウス後期のピアノ曲集「5つのスケッチ」から3曲。交響曲第6番がop.104、7番がop.105.「タピオラ」がop.112.その後の作品なので、後期も後期です。ピアノ曲も、交響曲・管弦楽曲と同じように、静かに、暗く、独特の響きをしています。でも、管弦楽とはちょっと違うピアノの響きがうまく出ている作品です。全音ピアノピースで楽譜が出ています(なぜか持ってます)。

 同じ北欧出身として、通じるものがあるのかなぁ。ノルウェーとフィンランド、違いはありますが…。これまで、アンスネスがシベリウス作品を演奏したのは、アルバム「HORIZONS」に収録された「13の小品」より「エチュード」op.76-2のみ。子どもの頃から演奏していた作品だそうです。この演奏もとても好きです。

 今後、アンスネスがシベリウス作品を録音してCDを出すのかなぁ…?だったらとても嬉しいなぁ。シベリウスイヤーの今年、交響曲はかなり取り上げられていますが、ピアノ曲や声楽、室内楽ももっと取り上げられていいのになぁ…と思っていたところにこの演奏が聴けたので、とても嬉しいです。
 ちなみに、この演奏会の他の曲、ショパンやドビュッシーも、以前は演奏していたこともあったけど最近はそんなに演奏していないはず。嬉しい演奏会です。

 いつまで聴けるかわからないので、お早めにどうぞ(オンデマンドはここが恐ろしい…)

ホライゾンズ~ピアノ・アンコール集

レイフ・オヴェ・アンスネス / ワーナーミュージック・ジャパン


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by halca-kaukana057 | 2015-11-09 23:31 | 音楽


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