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博士の愛した数式

 コミック版「数学ガール」に続き、数学関係本をもう1冊。わりと有名な作品だが、「面白いのかなぁ…」と思って読まずにいた。でも、まずは読んでみる。



博士の愛した数式
小川 洋子/新潮社・新潮文庫/2005(単行本は2003)

 家政婦である"私"は、とある老人の家に派遣されることになった。その老人は数学の博士であったが、事故の後遺症で、事故以後の記憶が80分しかもたなかった。"私"と博士と、"私"の息子である「ルート」は博士と数学の話をしながら交流を深めてゆく…。

 私がこの作品を読まずにいたのは、「泣ける」とか「感動の物語」とかいう広告を見て、警戒していたからだ。あからさまなお涙頂戴ものは、正直言うと苦手だ。「絶対泣ける」と言われても、逆にしらけてしまう。そんな作品だと思っていた。

 でも、読んでみてそうではないと感じた。とても静かで、温かい作品だった。劇的なドラマが待っているわけではない(何度か物語の山はあるが)。博士と"私"の日常を描いた作品だ。ただ、博士は80分しか記憶が持たない。80分を過ぎると、また1からやり直し。"私"とも初対面の関係になってしまう。それでも、博士と"私"、そして"私"の息子の「ルート」は友情を育んでゆく。思い出は残らない。楽しいことも、辛いことも、博士の記憶には残らない。それでも博士は毎日を生きてゆく。思い出となる過去や、未来ではない、「今この瞬間」を生きているのだ。記憶に残らなくても、今この時間を大事に生きることが大事…。そう感じさせてくれた。

 そして、この物語の大きなカギとなるのが数学。博士にとって数学・数字は言葉。"私"に対しても誕生日や電話番号など様々な数を問い、その数が何なのかを語ってくれる。事あるごとに数学の奥深さ、面白さ、そして美しさを教えてくれる。「数学ガール」と合わせて読んで、私にとって数学は無味乾燥な数字の羅列ではなくなった。どの数・数式にも意味があり、物語があり、歴史がある。何気ない数字にも、隠された秘密がある。それを紐解こうとすることの面白さを、私も体験してみたくなった。数学ってすごい学問だ。

 とにかく物語の続きを読みたくて、一気読みしてしまった。数学と一緒に語られる野球の話も面白い。そういえば、映画にもなっていたっけ。映画版も観てみよう。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-31 20:58 | 本・読書

[コミック版]数学ガール 下

 青春数学小説のコミック版「数学ガール」の下巻が出ました。待ってました!

・上巻:[コミック版]数学ガール 上

数学ガール 下
原作:結城浩/作画:日坂水柯/メディアファクトリー・MFコミックス・フラッパーシリーズ/2009

 数学が好きな”僕”と、数学をこよなく愛し”僕”の憧れであるミルカさん。”僕”を慕う後輩のテトラちゃん。3人は相変わらず数学に向き合い、問題を解き続ける。そんな中で、少しずつ変化しつつある僕らの関係。そして、3人でフィボナッチ数列に取り組むことに…。

 上巻では”僕”とミルカさん、”僕”とテトラちゃんの関係が中心で、ミルカさんとテトラちゃんが言葉を交わすことはほとんどなかったのですが(むしろ、テトラちゃんが酷い目に…)、下巻ではその関係に変化が訪れます。確かに、女子ってちょっとしたきっかけで仲良くなったり、気まずくなったりすることがある。不思議なものだ。

 下巻で主に取り上げられるのが、「フィボナッチ数列」。隣接した2項を加えて、次の項を得る数式。この漫画を読んで初めて知りました。足していけば、どんどん数列が進んでゆく。面白い数列だなぁ。フィボナッチ数列について、3人がそれぞれ問題をもって取り組む。ひとつの数列があっても、それに対するアプローチの方法はいろいろ。”僕”は”僕”なりの、ミルカさんはミルカさんなりの、そして、テトラちゃんはテトラちゃんなりの。このマンガを読んでこれまでよりは数学に興味をもったものの、やっぱり数学はちょっと苦手…と感じる私は、”僕”やミルカさんのようにはなれない。でも、テトラちゃんのようにひとつひとつ、進んでいくことは出来る。数学って、近づこうと思えば近づける学問なのかもしれない。一見とっつきにくく見えるけど、じっくり付き合えばその魅力もわかってくる。数式のシンプルさ、美しさ。数という無限の世界にある、様々なルールを見つける冒険のような面白さ。数学が得意な人でも、「全てが一気にわかるとは限らない。これまで自分が知り得た手がかりを基にして少しずつ答えに近づくんだ」(64ページ)。そこが数学の魅力なんだと思う。

 そんな数学に、甘酸っぱい想いも歴史上の大数学者への想いも詰め込んで、解き続ける3人。とても魅力的です。ミルカさんはクールで無駄なことはひとつも考えていないようなのに、自分の想いは行動でさらっと表現してしまう潔さ…とてもカッコいいです。上巻ではテトラちゃんの視点で読むことが多かったのですが、下巻ではミルカさんにも親しみが持てました。どちらも可愛くて、一緒に勉強出来たら楽しいだろうな。ちくしょう、”僕”がうらやましいぞw

 さて、コミック版も読み終えたし、今度こそ原作「数学ガール」を読むぞ。今度こそは挫折しないぞ…!
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by halca-kaukana057 | 2009-08-28 20:54 | 本・読書

人間自身 考えることに終わりなく

人間自身―考えることに終わりなく
池田 晶子/新潮社/2007

 哲学者である池田晶子さんの本を、初めて読みました。雑誌に連載されていたコラム・エッセイをまとめたもので、時事の話題も多く登場します。そのため、辛口エッセイかと思ったのですが、読み進めていくうち、哲学本だと実感しました。

 哲学というと、ソクラテスや孔子、カントやヘーゲルなど、歴史上の哲学者たちがこの世の中をどう考え、どんな言葉で表現したのか、そういう学問だというイメージがある。ところが、池田さんは身近な時事問題から、世の中の、人生・命の本質について追究しようとしている。哲学は身近なところにもあるんだ。そう感じさせてくれた。文章は辛口だけど、ストレートで思い切りがいい。こういう文章を書ける人って、すごいなといつも思う。自分の思うことを余計な媚や婉曲などなしに、スパッと言葉にする。ストレートに表現することで、それをよく思わない人もいたかもしれない。でも、私は好きだ。

 この本を読んでいて、生きるとはどういうことなのか、何を大事にして生きるべきなのか、じっくりと考えさせられた。日々、生活上の様々なごたごたや憂鬱なニュースに一喜一憂する。日常の些細なことに翻弄されがちだが、本当に大切にしなくてはいけないことは何なのか。一文一文が重く、けれども目の前にある生きる上でのもやもやを晴らしてくれるよう。特に「どうすればいいのか」、その通りだと強く感じた。
 世の中これだけ情報が溢れていても、本当に必要なことを、誰も知らない。ケータイ情報の扱い方を知ってはいても、本当に必要なこと、人生の一大事、自分や家族の生きるか死ぬか、そんな時どうすればいいのかは、誰も知らないのだ。そしてうろたえ、互いに問いかけ合っている。「私は、我々は、どうすればいいのでしょうか」。
 むろん私だって、私は、我々は、どうすればいいのかを知らない。知っているわけがない。人生とは、それ自体が、知らないものを生きることだからである。それが何なのか、それがどうなるのか、自分が知らないものを生きるのが人生である。しかし、知らないのでなければ、どうして人は考えるだろうか。知らないからこそ、考えるのだ。
(66~67ページ)

 今後も池田さんの著書を読んでいきたい。若くして亡くなられたのが残念でなりません。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-26 20:52 | 本・読書

ブログ再開に寄せて 私とネットという場

 新しいパソコンが、家にやってきました。まだ以前のPC環境は整いきれていませんが、ひとまず久々にネットにつなぐことができてほっとしています。お騒がせいたしました。PC環境を整えながら、ゆっくりと再開していきたいと思っています。PCが無かった間、本を結構読んだので、その感想が中心になると思います。

 先の記事で、自分にとってブログとは、何か感じていることをネット上にアウトプットする事とはどういうことか考えていると書きました。PCが無くなって、最初のころは寂しい思いをしていましたが、徐々慣れてきてブログを書かなくても生きていけるなと感じました。本を読んでも、別にネット上に感想を書かなくてもどうだっていいじゃないか。でも、結局戻ってきている。その理由は何だろう?

 ひとつ目の理由は、以前も書いたように、好きなことについて語りたい。誰が読んでいるとか関係なしに、好きなもの、興味のあることについて文章にして、表現してみたい。もし同じような趣味・嗜好の人と巡り合えたらとてもうれしい。そんな気持ちでやってきた。書く側としてもそれを大事にして書いてきたし、読み手としても、文章に楽しんでいる姿勢や好きだという感情があふれているブログを好きで読んでいます。

 もうひとつは、ネット上にはそんな楽しいことをしている人がたくさんいるのだから、自分も混ざりたい、一緒に盛り上がりたいという気持ちもあります。好きなことを文章にして表現するだけなら、ネット上でなくても人に見せない日記や、ワードで書いて公開せずに保存して…という方法もあります。実際、私自身人に見せない日記帳も書いています(アナログ)。なぜネット上に公開するのか。ネット上には、様々な人々のブログや、サイトがある。それぞれが、日々の想いや好きなことなどを綴っている。その様が楽しそうで、自分もやってみたいとブログが流行る前から思っていた。ブログでなく他のことでも、楽しそうなことをしている人がいると、自分もやってみたい、仲間に入りたいと思う。そんな気持ちも、ブログを続けている原動力になっているのだと考えるようになりました。

 ネット上には、楽しいことばかりがあるわけではない。目をそむけたくなるようなものや、見たくないものも存在する。でも、自分はネットというツールを使って、何をしたいのか、何ができるのかと考えたら、自分の好きなことを書き綴って、楽しみたいと思うのです。今後も、ネットという場で自分がどう振舞っていくのか、考えながらブログを楽しめたらなと思っています。

 久々にブログ記事を書いて、楽しかった。やっぱり文章を書くのは楽しい。携帯でちまちまと入力するのとは違うね。でも、無理はせず、少しずつ復帰していこうと思います。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-24 21:56 | 日常/考えたこと

もう少し夏休み

パソコンが壊れて1週間以上。初めは壊れたパソコンと消えたデータと、パソコンが使えないことにかなりショックを受けていましたが、数日経つとショックも薄れ、パソコン無しの生活も余裕があって良いものだと感じ始めました。メールやブログ巡りが出来ないのは不便ですが、無いなりに本を読んだり音楽を聴いたり、天気の良い夜には星を観たり、のんびりと過ごしています。先日までは大きな仕事も抱えていたので、ネット環境が不自由な方が仕事に集中も出来ました。

今、自分にとってブログとは、何か感じていることをネット上にアウトプットする事とはどういうことか、考えています。正直なところ、ブログ無しでも生きていけると今は感じています。ブログ運営に対する疑問や悩みはありませんが、それでもブログを書き続けようとする原動力は何なのか。ブログから離れて、考えるようになりました。更新再開の時に答えを出せたらいいなと思っています。

近いうちに再開する予定です。もう少し夏休みしてきます。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-22 21:49 | 日常/考えたこと

Kesaloma

お知らせです。
昨年に続き、再びパソコンが壊れましたorz 修理して1年で壊れるって…。私の使い方が悪いのか、元から悪いのか。悲しい限りです。

と言うわけで、このブログもしばらく夏休みを取ることにします。コメント、トラックバック欄も閉じさせていただきます。何かありましたら、メールフォームをお使いください。ただ、お返事は遅くなるかと思います。ごめんなさい。web拍手のコメントも同様です。

タイトルはフィンランド語で夏休みの意です。本当は、最初のaにウムラウトが付きます。


それでは、楽しい夏をお過ごしください。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-11 22:44 | information

音の粒を揃えること

 前回のピアノ練習記事「ソナチネはごまかせない」から約3週間。未だにクレメンティのソナチネ7番op36-1第1楽章から抜け出せずにいる。音のひとつひとつが雑で、粒が揃わない。スケールが荒っぽく、流れるような音が出ない。少し速度をあげると、すぐにつまづいたり、よろけたり…。散々です。本当に難しいよソナチネ、古典派…。適当なところで終わらせようかと一度考えたこともありましたが、ここでテキトーに終わらせたら、後で後悔すると思う。あとあとモーツァルトのK545や、ベートーヴェンのソナチネなどではもっと力を試されると思う。ここはソナチネ、古典派の入り口なんだから、徹底的にやってみよう。今はそんな気持ちでいます。もうやるだけやってやる。



 一方、「プレ・インヴェンション」はテレマンシリーズの最後、リゴドンを仕上げ。この曲も音が雑に、荒っぽくならないように丁寧に演奏することが求められる曲。こちらも苦労しました。
テレマン リゴドン ピアノ録音置き場ブログに飛びます。
 たった25秒の曲なのに…集中力の高さが求められていると感じました。粒が揃っていないところがありますが、あの波のような16分音符の連続をこの速度で弾くのは、私にとってきつい。一旦ここで切り上げます。



 もうひとつ、ブルグミュラー25のおさらい。第6曲「進歩」。これも、両手の音と粒を揃えて弾くのが難しかった。でも、後半部分の左右の追いかけっこが楽しい。
進歩 同じくピアノ録音置き場ブログに飛びます。

 以前の記事「新しい気持ちで…のはずが」で、2小節目にはクレッシェンドが付いているのに、6小節目には付いていないことが何を意味しているのだろうと疑問に思っていた。多分、2小節目はその後3小節目を盛り上げるために、2小節目でクレッシェンドしておく。一方、6小節目は次の7小節目ではなく、8小節目をより強く盛り上げるために抑え目に弾く…のではないだろうか、と読んだ。
 以前の記事では、子どもたちが兵隊さんごっこをして遊んでいるような曲…と書いたのだが、後半部分を聴いていると、この追いかけっことその音の響きを純粋に楽しむ、それだけでもいいと感じるようになった。
 ブルグおさらい、次は「清い流れ」。…来ましたよ、難曲が。でも、この曲は本当に美しい曲だと思う。美しく演奏できるように頑張ろう。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-09 21:03 | 奏でること・うたうこと

2009年度クインテットコンサート新曲

 「クインテット」コンサート新曲の季節がやってきました。待ってました!全4曲。ひとつひとつ感想を。

◇ヨハン・シュトラウス:アンネン・ポルカ
 ヨハン・シュトラウス2世の作品が今年も登場。以前、ドラマパートでも演奏されたことがあり、フラットさんが「アンパンポルカ」と勘違いしたことも(うろ覚え)。
 オーストリア皇帝フェルディナント1世の皇后マリア・アンナに捧げられたとされているそうです。シュトラウス一族と言えば、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート。今年のニューイヤーコンサートでも演奏されました。その時の演奏が以下。

YouTube:ウィーンフィルニューイヤーコンサート2009 アンネン・ポルカ Annen-Polka
指揮はダニエル・バレンボイム。ゆったりとしたポルカのメロディーに、和みます。クインテット版では、チーボーがティンパニとトライアングルの両方を担当。ちょっと忙しそうなのだけれど、どこか優雅。


◇オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」
 運動会のBGMで有名なあの曲です。カンカン踊り(フレンチカンカン)、「♪3時のおやつは文明堂~」のカステラの文明堂の曲としても有名ですね。
 原題は「地獄のオルフェ」。その中の「地獄のギャロップ」がこの曲。こと座の星座物語としても知られるオルフェウスの物語を、お互いに愛人を作り、決して愛し合っているわけではないのに体面だけを気にして仕方がなく妻を取り戻しにいくという偽善に満ちた夫婦の滑稽さを風刺した作品に改変。第二帝政期のフランス社会が抱えていた偽善性や矛盾の風刺が含まれているそうです。「クインテット」で放送されたことがきっかけで、この作品について調べてみたが、こういう内容だったのか。知らなかった。しかも、私が最も好きな星座物語であること座のオルフェウスの物語に関係しているとは。きっかけを与えてくれて、ありがたしクインテット。

YouTube:Jacques Offenbach: "Orphée aux Enfers" Can can
 クインテット版では、フラットさんがフルスロットル!コンサート前に、「初めての曲を演奏する前は緊張する」と言っていましたが、これは緊張するわ。シャープ君はさすがですね。演奏も堂々としたものです。やはり大物です。


◇ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲
 まさかのヨハン・シュトラウス2世、2曲目。「美しく青きドナウ」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」とここ数年シュトラウスの作品が演奏されていますが、これで4曲目。新年特番の曲が増えましたね(来年の新年も期待していいですか?)。
 はじめこの曲は、「手に手をとって」(Hand in Hand)という題名が付けられていたが、ドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世がオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世を表敬訪問した折に、「両皇帝の友情の象徴」として、現在の呼び名に改められたそう。「皇帝」とは、ヴィルヘルム2世とフランツ・ヨーゼフ1世のことを指すのか。これもまた勉強になりました。

YouTube:Johann Strauss, Kaiser Walzer, op.437
2008年ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートより。ジョルジュ・プレートル指揮。プレートルの指揮好きだ。
 原曲は結構長いです。クインテット版もゆったりとした、華麗なウィンナ・ワルツに仕上がってます。オーケストラ版と聴きくらべても、楽器の少なさを感じないんだよな。


◇リムスキー・コルサコフ:くまばちは飛ぶ
 超絶技巧曲として有名なこの曲が登場。ピアノから、トランペットやら、トロンボーンやらでとんでもない技巧の演奏を聴きます。…凄いです。クインテットもついにこの曲に挑戦です。
 歌劇「サルタン皇帝」の第3幕で、主人公のグヴィドン王子が魔法の力で蜂に姿を変え、悪役の2人の姉妹を襲う場面で使われる曲だそうです。確かにこの曲、蜂に襲われている気持ちになる。

YouTube:Rimsky Korsakov - Flight of the bumblebee
ズービン・メータ指揮、ベルリンフィル。
YouTube:Cziffra - Flight of the Bumblebee (Paris, 1957)
シフラ編曲ピアノ版。もう…凄いとしか言いようがない。
 この日のドラマパートで、フラットさんが「今度の曲、私のパートは難しい」と言っていた。さらに、コンサート前にも蜂蜜を食べたフラットさんが、蜂に追われる。相変わらずフラットさんは不憫…。でも、この「くまばちは飛ぶ」の演奏は素晴らしかった。またしてもフラットさんのクラリネットフルスロットル!アリアさんのヴァイオリンも負けてはいない。ドラマパートでは集中できないと嘆いていたフラットさんでしたが、本番での集中力は相当のもの。凄いわ。
 この曲はこれまでのコンサートで最も短い曲かもしれない。全ての曲の演奏時間を計ったことはないのだが、短い。そう感じました。

 以上が今週の新曲でした。個人的には、短調のゆったりとした曲も入れてほしかった。CDで聴くのが楽しみです…来年の発売だろうけど。


 コンサート曲以外でも、見どころ。月・水のドラマパート「こどもなぜなぜ相談室」…これは、夏休みにラジオ第1で放送されている夏休み 子ども科学電話相談に似ている?この番組、大好きです。大人になってからはあまり聞けなくなってしまったけど、聞いているととても面白い。素朴な質問から、宇宙規模の科学者たちも頭を抱え込む質問まで。楽しいです。クインテット版は、かなりざっくばらんです。フラットさん、子どもからの質問に大笑いしていいのか…。

 「夢のつづき」もいい曲だなぁ。いいところで夢が終わる…よくあります。途中で終わってしまった不可解な夢ほど気になる。ゆったりとした雰囲気が好きです。CDには勿論入るよね?
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by halca-kaukana057 | 2009-08-07 22:09 | Eテレ・NHK教育テレビ

松風の門

 以前ニコニコ動画にアップされていた山本周五郎名言集を観て、読んでみたいと思った本。
・以前の記事:山本周五郎のことばをそばに


松風の門
山本周五郎/新潮社・新潮文庫

 表題作の「松風の門」他、13の短編が収められています。武家もの、下町もの、滑稽もの、切なく哀しい恋物語、さらには現代ものまで幅広い。山本周五郎と言えば武家もの、下町ものというイメージがあったのだが、それだけではない。物語の幅がこんなに広かったのかと思い知った。

 13の作品の中で最も心に響いたのが、以前観た動画でも気になっていた「鼓くらべ」。
 江戸時代、小鼓の打ち手であるお留伊はある老人と出会う。旅の絵師だというその老人は、お留伊の鼓を聴きに彼女の家へやってくるようになった。その頃、お留伊はお城で催される鼓のくらべ打ちに出るつもりであった。そのお留伊に、老人は鼓くらべに関するある話をするのだが…。
 音楽とは、芸術とは何なのか。何のために存在するのか。そして、芸術家はそれをどう扱うべきなのか。とても考えさせられる。動画でも引用されていた、この部分。
すべて芸術は人の心をたのしませ、清くし、高めるために役立つべきもので、そのために誰かを負かそうとしたり、人を押退けて自分だけの欲を満足させたりする道具にすべきではない。鼓を打つにも、絵を描くにも、清浄な温かい心がない限りなんの値打ちもない。(中略)音楽はもっと美しいものでございます、人の世で最も美しいものでございます
(41~42ページ)

 趣味で細々とピアノを弾く自分にとって、とても重い言葉だ。演奏する側だけへの言葉ではない。聴く側に対しても、この言葉は重く響くと思う。鼓くらべに出たお留伊が、もう1人の打ち手の表情を見てこの老人の言葉を思い出したシーンが印象的だ。音楽や芸術は、勿論作品そのものが美しいから、人々を魅了するのだと思う。しかし、それだけでは足りない気がする。作曲家であれ演奏家であれ、芸術家たちのその作品に込めた想いや、作品に対する謙虚で、真剣で真摯な姿勢があってこそ、より美しい、人々を魅了するものになるのではないかと思う。演奏家が「音楽と一体になっている」という言葉があるが、まさにそのような。芸術を追求することの楽しさや喜びを感じられるような演奏をしたい…とこの作品を読んで強く思う。

 「鼓くらべ」のほかにも、魅力的な作品ばかり揃っている。「失恋第五番」はこの短編集唯一の現代もの。戦後間もない時代を舞台に、男たちのハードボイルドな生き方がとてもカッコよく描かれている。でも、主人公の千田二郎は仕事は出来ないし、ふられてばかりだし…。どこか人間臭いところがまた魅力的だ。「砦山の十七日」は極限状況に置かれた者たちがどうなるのか、サスペンス風に描かれていてドキドキする。一方、「湯治」は下町の家族の想いが細やかに描かれていて、最後のシーンではとても切ない気持ちになってしまった。

 山本周五郎の短編には、人々の生き様と感情がぎゅっと詰まっている。そう感じた13作品でした。
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by halca-kaukana057 | 2009-08-05 22:39 | 本・読書

フィンランド・森の精霊と旅をする

 2007年に放送されたNHKスペシャル「世界里山紀行 フィンランド 森・妖精との対話」。実はこの番組には、原書があったのだそうだ。それの日本語版がこれ。



フィンランド・森の精霊と旅をする -Tree People-
リトヴァ・コヴァライネン、サンニ・セッポ/訳:柴田昌平/監修:上山美保子/プロダクション・エイシア/2009

 この本は、1997年フィンランドで「もっとも美しい本」賞に輝き、訳者の柴田氏がこの本を読み、ドキュメンタリー番組として製作することになったのだそう。写真家である著者の2人が、1990年からフィンランド各地に残る古い木とその歴史を調べてゆく。フィンランド人にとって、森とは、木とは何なのか。森や木にまつわる神話や慣習、信仰を美しい写真と共に紐解いていきます。

 フィンランドはご存知の通り、「森と湖の国」と呼ばれる。フィンランドの人々にとって、森は暮らしと切っても切れない関係。その森が誰の所有であれ、誰でも散歩したり、きのこやベリーを採取したりできる「すべての人の権利」という慣習がある。人々の生活のすぐそばにある森や木々。それにまつわる話もたくさんあります。「カレワラ」とはまた違う話もあり、とても興味深いです。「カレワラ」で「悪魔」や「死者の国」を意味する「ヒーシ(hiisi)」も、元は「聖なる森」という意味だったらしい。きっかけはキリスト教の伝来。森や木々に対する信仰から、キリスト教へと変わり、信仰の対象であった木は切り倒された。そして徐々に、かつては良きものとされた「ヒーシ」も、悪魔的なものに変わっていったのだそうだ。(と言うことは、カレワラはキリスト教の影響もあるのかも。実際、カレワラを編纂したエリアス・ロンリョートが聞き集めた話をまとめる際、創作・編集している部分もあるそうだ)

 この本に収められている木々の写真は、どれも印象的だ。どれも立派な木で、畏れ多くもある。森はいかにも静かで、写真を見ているだけなのに不思議な気持ちになる。日本で言えば、「御神木」や神社の森のよう。家々のそばには「守護の木」があり、子どもが生まれるとその子どもの「分身の木」を植える。そして代々その木を守り、後世へ伝えてゆく。また、死んだら「カルシッコ(karsikko)」という、松の木に生年と没年、イニシャルを木に刻み、死者の思い出を木に残す。木と人がつながり、共に生きている。木や森は畏れ多い存在でもあるが、身近な存在でもある。フィンランドの人々にとって、やはり木々や森は切っても切り離せない、大切な存在だと感じた。

 森や木と密接に暮らしてきたフィンランドでも、森林開発が問題になっているそうだ。自然は、環境の面、科学的な面からだけでなく、文化的な面や精神的な面からも語ることができる。人間も自然の中で、自然と共に、自然に学んで生きている。自然を大切にすることは、人間の文化や歴史、精神的なものも大切にすることができる。考え直さなければいけないことだなと感じた。

 フィンランドの人々の自然観がうかがえる、まさに「美しい本」です。ただ美しいだけではない、深く、力強い本でもあります。文章にも、写真にも引き込まれます。「読む」というよりはじっくり味わって、雰囲気に浸り、のまれる気分になります。

・以前の記事:NHKスペシャル 世界里山紀行 フィンランド(2007.8.26)
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by halca-kaukana057 | 2009-08-02 22:02 | フィンランド・Suomi/北欧


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