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道標を見失う

 先日の記事「課題を持って取り組むこと」で書いたことに対する、自分の答えを見つけ出せずにいる。宇宙でも、ピアノでも、自分が何をしたいのか…何を学んでいきたいのか、それをどうしたいのかなど、わからなくなってしまった。ただ好きなことを追いかけているだけ、目の前にあるものをただ追いかけているだけの自分でいいのだろうか。

 好きなものに対する姿勢や、好きなものにどのように取り組むかは人それぞれだ。宇宙・天文なら、望遠鏡で観測するのがメインの人、星座の伝説や民俗について調べる人、星空案内人の資格を取って沢山の人に宇宙の魅力を語り伝えたいという人、ボーっと眺める人、宇宙の本を片っ端から読む人…それぞれのやり方でいいと思う。ピアノでも同じことが言える。基礎から徹底的に積み上げてゆく人、弾きたい曲だけを何年かかっても練習する人、特定の時代・作曲家の作品を深く読み込みながら演奏する人、気が向いた時に気楽に演奏する人…。本当に自由だと思う。

 今、私はその「自由」の中で、自分がどうしていきたいのかを見失ってしまった。同時に、身体面でも不安定な状態にある。何かに向かって活動している時間よりも、寝転がって休んでいる時間の方が多い。寝転がりながら、早く元気になりたいと思いつつ、こんなことを考えている。

「……地球上のあちこちで、膨大な時間の中で、数学者たちはさまざまな問題の解を探し求めてきた。何も見つからずに終わることも多いだろう。では、探すことは無駄かな?違う。探さなければ、見つかるかどうか、わからない。やってみなければ、できるかどうか、わからない。……私たちは旅人だ。疲れることがあるかもしれない。道を間違うことがあるかもしれない。それでも、私たちは旅を続ける」

「疲れたなら、休めばよい。道を間違えたなら、戻ればよい。――そのすべてが、私たちの旅なんだから。」
結城浩「数学ガール」297ページより


 今、「数学ガール」原作のミルカさんのこの言葉をかみしめています。私も旅の途中、どこへこれから向かおうか…。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-29 21:33 | 日常/考えたこと

宇宙兄弟 7

 ISSへ結合後のHTVはとても順調です…ということで、「宇宙兄弟」7巻です。表紙は日々人メイン。ムッタ小さいぞw


宇宙兄弟 7
小山 宙哉/講談社・モーニングKC/2009

 日々人の乗るロケットが打ち上げられた。見守るムッタや両親、ケンジたち。ロケットは順調に飛行、月へ向かう軌道に乗り月へ向かった。ムッタたちが挑んだ宇宙飛行士選抜試験最終選考も終了し、ムッタはヒューストンで日々人が月に降り立つのを待つ。毎日のように管制センターに通うムッタは、家族を連れた吾妻を見かける。吾妻に声をかけるムッタだが…。

 表紙の通り、日々人がメインです。日々人が月へ向かい、日本人で初めて月へ降り立つ。打ち上げのシーンや宇宙船「オリオン」内での様子、月に到着した部分を読んでいると、日々人の高揚感が伝わってくる。宇宙へ、夢見続けた場所へ向かうことは、なんてエキサイティングなんだ。その時の感情をストレートに表現する日々人を見ていると本当に気持ちがいい。そしてミッションの過程ひとつひとつを楽しんでいる姿も。努力はしていても、苦労を人に見せない。子どもの頃の回想シーンでの、日々人のこの言葉がとても好きだ。
そうだな 世の中には"絶対"はないかもな
でもダイジョブ 俺ん中にあるから
(39ページ)


 そんな日々人を見守る六太。この物語が始まった頃は、弟に先を越され、夢をあきらめてしまった不甲斐ない兄だった。ところが、宇宙飛行士選抜試験や日々人、NASAの人々と出会い、宇宙への想いが強くなっている。弟に先を越されたなんてどうでもいい。それよりも子どもの頃から一緒に宇宙を夢見続けた弟の夢の実現を強く強く願っている。そんなムッタの心境の変化がとてもすがすがしい。打ち上げや月到着のシーンでの喜びよう…もうムッタは不甲斐ない兄ではない。

 もうひとつ、不甲斐ない兄ではないムッタの姿が表現されるのが、吾妻さんとのシーン。吾妻さんの人となり、「宇宙飛行士」という仕事への考え方、日本人初の月面着陸が吾妻さんではなく日々人である理由が語られます。吾妻さんの人間性に惹かれました。吾妻さんも、他の宇宙飛行士と同じように宇宙が好きで、宇宙飛行士という仕事を精一杯こなしている。ただ、「宇宙飛行士」という仕事の特殊性には戸惑いを感じている。それだけなんだ。そんな吾妻さんと打ち解けようとしているムッタ、さすがです。以前、南波兄弟なら吾妻さんときっとうまくやれるはずと書いたが、やっぱり南波兄弟だ。

 いつか近い未来、現実に日本人が月に降り立ったら、私はどんなことを思うだろう。そんなことも考えてしまった。

 さぁ、お待たせしました。いよいよ宇宙飛行士選抜試験結果発表です。まず一人合格。8巻は合否結果ですか…。待ち遠しい。ムッタは宇宙飛行士になれるのか。8巻は緊張の連続だろうな。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-26 21:31 | 本・読書

シベリウスの"光への道"

 昨日、モーツァルトのピアノ協奏曲から2作品について書いたが、似たテーマで今日はシベリウスについて書く。シベリウスの交響詩に「夜の騎行と日の出」op.55という作品がある。第4交響曲の少し前、1908年に作曲された。
 この曲は、タイトルの通り夜、馬に乗って駆けてゆき、そのうち日の出を迎えるという様を描いている。冒頭は小刻みな音が繰り返される。とても不思議な曲だと思う。でも、しばらく聴いていると暗い木管のメロディーがもの寂しく鳴り、他の楽器を巻き込んでゆく。7分30秒ごろの弦の切ない響きを経て、ホルンが夜明けを告げる。この暗闇から夜明けの描写は、何度聴いても心打たれる。

 この作品が作曲された頃、シベリウスは体調を崩していた。その後、喉に腫瘍が見つかり手術を受ける。この「夜の騎行と日の出」以前に作曲された第3交響曲でも内面的な表現が出始めているが、「夜の騎行と日の出」ではさらに内面的な表現が強くなる。作曲者自身、「闇夜の林を独り騎馬で駆け抜けていく普通の人の、内面的な(個人的で霊的な)経験が表現されている」と述べていたそうだ(ウィキペディアより)。そして、喉の腫瘍の手術を経て、さらに内面へ向かう第4交響曲。その暗闇から抜けだしたかのような第5交響曲。作曲家にとって、作品は人生を表すものなのだろうかと考えてしまう。

 私自身、今、夜明けを待っているような状態にある。暗い闇の中にいるが、夜明けの時刻はいつなのか、むしろ今の時刻すらもわからない。いつか夜は明けるだろうか。いや、明けるはず。明けない夜はない。そう思いながら、この曲を聴いている。

 聴いているのは以前「シベリウス誕生日記念、管弦楽曲特集」で書いたN.ヤルヴィ&エーテボリ響のほかに、A.ドラティ&ロンドンフィル、K.ザンデルリンク&ベルリン交響楽団も。ドラティ&ロンドンフィルは弦の美しさ、ザンデルリンク&ベルリン交響楽団はホルンの神々しさが聴きどころかな?

 ニコニコ動画にこの曲がアップされているので、聴いたことのない方は是非どうぞ。YouTubeにもあるのですが、YouTubeでは2分割になってしまっていて聴きづらい。

ホルシト・シュタイン指揮、スイス・ロマンド管弦楽団。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-25 22:17 | 音楽

モーツァルト・ピアノ協奏曲の"光の道"

 「ピアノ マスターワークス(50CD)」から、最近よく聴いているのが34枚目、モーツァルトのピアノ協奏曲20番二短調&23番イ長調(スティーヴン・コヴァセヴィチ(P)/ロンドン交響楽団/サー・コリン・デイヴィス(指揮))。20番と23番をカップリングにしたのは、とてもよかったと思う。両方とも好きな曲、一緒に聴きたい曲だ。好きな曲という理由だけでなく、この2曲を順番に聴いていると、気持ちが落ち着き、元気が出てくるという理由もある。

 20番はモーツァルトの"短調"作品。モーツァルトの短調というとト短調を思い浮かべるが、この曲は二短調。二短調は私が特に好きな調性。落ち着いているけれども、内に鋭いものとため息のような暗さを感じさせる。この暗さが好きなんだ。この曲を初めて聴いたのは、小林研一郎さん指揮、仲道郁代さんピアノの日フィルのコンサート。そこで聴いて以来、とても気に入った。
熱血ベートーヴェン
このCDの演奏は、その演奏よりは穏やかで、落ち着いた演奏。でも、時折焦りや迷いのような暗さを感じさせる。焦っている時、迷っている時、イライラしている時、暗い気持ちをどこに置いたらわからない時…この曲を聴くと自分の心を投影しているようで、落ち着きます。

 そんな20番を聴いた後、朗らかな23番を聴くと音楽も心も明るい方へと向かっているように感じます。でも、まっすぐに明るい方へと向かうのではなく、第2楽章の嬰ヘ短調の静かなメロディーが、20番での暗さを思い出させる。思い出させはするが、20番とは異なる暗さ。淡い、穏やかな暗さ。確実に和らいでいる。そして第3楽章でのはじけるような快活なメロディー。この第3楽章を聴く時には、だいぶ元気になれている。

 という想いで、私はモーツァルトのピアノ協奏曲20番&23番を聴いています。静かに音楽を聴いていたい今の季節にはぴったりです。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-24 20:41 | 音楽

ETVオールスター夢の共演!

 教育テレビ50周年を記念した特別番組「ETV50「キャラクター大集合 とどけ!みんなの元気パワー」~輝け!こども番組元気だ!大賞~ 」観ました。まずは一言、楽しかった!!

NHK:ETV50「キャラクター大集合 とどけ!みんなの元気パワー」~輝け!こども番組元気だ!大賞~

 ETVのキャラクターたちが勢ぞろい。舞台で歌って、踊って、とても楽しいステージでした。おかいつのだいすけお兄さん&たくみお姉さんや「いないいないばあっ!」のワンワン、ストレッチマンのステージベテラン陣は素晴らしいし、ステージにはあまり出てくることのなかった番組や、新番組のキャラクターたちもそれぞれの個性・実力発揮。「えいごであそぼ」の4人が結構頑張っていたなぁ。

 さらに、番組を越えてのコラボも実現。ETV主要番組キャラクターでストレッチに「ぐるぐるどっか~ん!」、「ぱわわぷたいそう」に「つくってあそぼ」のワクワクさん&ゴロリも参加。これはめったに見れないでしょう!さらに、「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」のまいんちゃんが、「たまごまごまご」を歌う。正直に言います。萌えました。可愛すぎます。たくみお姉さんとはまた違う可愛さ。この2人が一緒に歌っているところを見られるなんて。素晴らしいです。まいんちゃんに関しては、登場シーンでテーマ曲の振りをアニメではなく実写で見れたところは貴重だと思ったし、「私の彼はフライパン」もスペシャルバージョンで盛り上がり、放送開始1年も経たないうちにETVを代表する番組として成長していることは嬉しい。

 さて、注目していた「クインテット」「みいつけた!」はステージには現れず、画面のみ。やはりステージで「クインテット」の操演、コッシーを動かすのは無理なのか?「クインテット」は楽器演奏はなかったから、出来ないわけでもなさそうだけど…(さすがに楽器演奏は無理か)。しかも、ステージに来られなかった番組に関してはあまり映らない(放送を支える3人がストライキを起こし、映らなくなってしまう)悲劇。最初の部分と、「ドンスカパンパンおうえんだん」を皆で一緒に歌ったぐらい。物足りない。残念だ…。

 という残念な点もありましたが、全体的には楽しかったです。ETV50年で、まさにNHKの本気ですね。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-22 20:40 | Eテレ・NHK教育テレビ

宇宙へお届けもの HTV,ISSに到着!

 9月11日にH2Bロケットで打ち上げられた日本の無人宇宙輸送船「HTV」。1週間かけて国際宇宙ステーションへ近づき、今日無事に到着、ドッキング完了しました。おめでとうございます!今朝早く、起きてISSのロボットアームによる把持を見ようと思っていたのだが、寝過しましたorz

JAXA:宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機の国際宇宙ステーションとの結合完了について


 ISSのロボットアームで把持した時の動画。ISSとHTVはお互い、秒速8kmの速さで飛行中。HTVは筑波からのコントロールでISSへ近づいてゆき、ISSのロボットアームがつかむ。把持完了の瞬間、筑波宇宙センターの管制室で拍手したり、肩を抱き合って喜ぶチームの姿がとても印象的でした。

f0079085_2026077.jpg


 その後、ロボットアームでHTVはISSの結合部へ移動。結合(JAXAでは正式にはドッキングと呼ばずに、結合と呼びます。装置が違うから)も成功。打ち上げから結合まで目立ったトラブルもなく、とても精度が高くスムーズな運用でした。素晴らしいです。

 ところで、何故HTVはロボットアームを使ってISSに結合するのか。ロシアのプログレスやヨーロッパのATVは自動でドッキングできる。これは、使う結合部・ハッチが異なるから。プログレスとATVはロシアの結合部を使い、ロシアの結合部は自動でドッキングできる。ところが、HTVは「きぼう」日本実験棟の隣にある「ハーモニー」モジュールの結合部を利用。この結合部はハッチが広く、大きなものも搬入できる。でも、ロシアの結合部のような自動装置は付いていない。なのでロボットアームを使うことになったのです。ロボットアームを使っても、秒速8kmで飛行しているISSへ近づけるのはなかなか難しいこと。それを一発でやってのけた。宇宙飛行技術が着々と進歩していることをうかがわせます。

 今後HTVは明日ハッチオープン。1ヶ月後にISSを離れ、大気圏で燃え尽きます。ISSから離れるまでがミッションです。そして今後1年に一度、2015年まで7回の飛行が予定されています。今後も技術と経験を積み重ね、安定した運用で世界の宇宙開発の舞台で活躍することを願っています。


【おまけ】
HTV成功のお祝いに、イラストを描きました。
f0079085_22364953.jpg

 ペンタブを使ったのですが、地球を描くのが難しい…難しすぎます!
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by halca-kaukana057 | 2009-09-18 20:27 | 宇宙・天文

課題を持って取り組むこと

 現在、結城浩さんの小説「数学ガール」を読んでいる。以前はページをペラペラとめくっただけで、出てくる数式に圧倒され読まずに本棚に戻してしまったのだが、コミック版を読んで今度こそ原作小説を読もうと心に決めた。やっぱり"僕"やミルカさんの取り組む数式は難しい。複雑な記号の羅列にしか見えない時もある。それでも、その数式には簡単にはわからないからこそ面白い数学の秘密と宝物と、歴史と数学者たちの想いが詰まっているんだなと思うと構えている気持ちがほぐれてくる。ゆっくりでいいから、読むつもりだ。


 その「数学ガール」では、主人公の"僕"と数学をこよなく愛する才女ミルカさん、"僕"の後輩で"僕"から数学を教えてもらっているテトラちゃんが様々な数式に取り組む。自分で問題を見つけたり、ひとつの数式から課題を見つけて解いてみたり。問題はいくらでも作ることが出来る。どんな方向にも進むことが出来る。そんな"僕"たちの様子を読んでいて、私はあれ?と思った。

 私も、何か興味のあることに課題を見つけて、自分で考えて取り組んだことがあっただろうか?

 たとえば宇宙。私は宇宙が好きだ。天文学、宇宙科学、宇宙論、宇宙開発に宇宙探査。星座の神話や民俗など、宇宙と人間の暮らし・文化に関することにも興味がある。だが、私はそれらをただ追うだけで、自分はこれを学びたい、考えたいと課題を持って追求したことがあっただろうか。目の前に宇宙に関する本があれば読む。宇宙に関するニュースがあれば見る。でも、ただ追い、知り、覚えるだけ。実際に夜空を見上げ、星座を探したり望遠鏡で星を見る時も、あれが何座で星座の由来は…と覚えたことをなぞるだけ。望遠鏡で星を見ても、これが木星で、縞模様と4つのガリレオ衛星も見える。きれいだなぁ…。で終わってしまう。「宇宙」というものに対してのアプローチ方法が、いつも一緒なのだ。宇宙に関する学問は、とても幅が広い。宇宙論のように理論からのアプローチもできるし、望遠鏡などで観測もする。天体写真を撮る人もいれば、新天体発見に力を注ぐ人もいる。科学的なアプローチだけではない。哲学的なアプローチもできる(オカルト的なものは除く)。文化や民俗方面を追究する人もいる。プロもアマチュアも、自分が宇宙の何を知りたいのか、解き明かしたいのか、発見したいのか、課題を持って取り組んでいる。追いかけるのではない。自分で考え、創ってゆく。

 音楽・ピアノでも同じだ。今、私はピアノで行き詰まっている。ブルグミュラー25では、25曲それぞれに課題を見つけ、どこが魅力的な部分なのか、何を表現したいのか、課題を持って取り組めていたと思う。ところが、ソナチネに進んで、課題を見つけられなくなってしまった。表題がない、ロマン派と古典派の違い、曲の構造の違い…求められるものがグッと増え、ついてゆけなくなってしまった。現在ようやく課題を見つけて取り組めつつあるが、まだまだだ。

 趣味だけではない。私的な話になるが、仕事でも自分の課題を持ち、意識して取り組んだことがあっただろうか。ただ毎日の仕事に追われているだけになっていないだろうか。

 自問自答は続く。今までの自分は、受け身だったと感じている。知識をため込んで満足しているだけではだめなんだ。「学ぶ」とは何なのか、考え直している。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-17 20:43 | 日常/考えたこと

雨のみちのく・独居のたのしみ

 これまで山本周五郎は小説ばかりを読んできましたが、たまにはエッセイも読んでみたくなった。

雨のみちのく・独居のたのしみ
山本 周五郎/新潮社・新潮文庫

 「樅ノ木は残った」の取材のために宮城・山形を旅した「雨のみちのく」や、「青べか物語」の舞台である浦粕を30年ぶりに訪れた「三十年後の青べか」、日常のことや食事のこと、家族と離れての独り暮らしのこと、世相・社会・町に生きる人々のことなどが描かれている。既に読んだ「樅ノ木は残った」「青べか物語」といった山本周五郎の小説にはこんな背景があったのだなぁと感心しつつ読みました。まだ読んでいない「虚空遍歴」や「季節のない街」に関する文章もあったので、これを手掛かりに読んでみようと思う。

 山本周五郎の日常生活について読めるのも興味深かった。家族は居るけれども独り暮らしをしていた周五郎。独り暮らしの気楽さや、自炊生活のこと、好きな酒のことがユーモアも交えて語られる。これまで読んだ小説が、どんな環境で生まれたのか、どんな想いで執筆していたのかがうかがい知れて興味深い。「曲軒」とあだ名されたこともあり、私は周五郎はもっと堅い人だと思っていた。ところが、エッセイにはユーモアも溢れているし、「旅館について」では、旅館で迷い自分の部屋へ戻れないまま大部屋でのんだくれた話まで。周五郎の作品が人間味に溢れているように、周五郎自身も厳しくも人間味に溢れる人だったのだろう。

 読みどころはⅢ章。年末の町の様子、人々の様子を描いた歳末随想。さすがは周五郎。暮れの庶民の様子を事細かに描いている。年末は新しい年への希望もあるけれども、借金の取り立てなど、苦しい面もある。この随想が書かれた昭和30年代は戦後の高度成長の時代。景気は良くなり、人々は豊かになっていったが、それが全てではない。苦しむ人もいるし、豊かになれない人もいる。そしてその後の不況。そんな人々への視点は、周五郎ならではだと思う。この本の最後に収められた「人生の冬・自然の冬」は、大不況と呼ばれる今に通じるものがあると思う。少し引用します。
 いまさらのようだが、人間の生活には波があって、好況があれば必ず不況がある。好況のときにはスポーツ・カーなどを買って乗り廻したり、キャバレーで金をばらまいたりする。そして不況、倒産となると、すぐに一家心中とか自殺にはしってしまう。もちろん、そこに至る経過は単純ではなく、多くの複雑な因果関係が絡みあっていることだろうが、自分が苦しいときは他人も苦しいということ。その苦境は永久的なものではなく、いつか好転するということをなぜ考えられないのだろう。
(212ページ)

どんなに産業がマンモス化しマスプロ化し、ボタン作業が発達しても、人間の力がまったく不要になることはないだろう。社会はつねにあなたがたを求めているのだ。事業の失敗や失業は経験であって、絶対なものでもないし、社会関係との断絶でもない。時に離合があり対立があるかもしれないが、しかもあなたはまぎれもなく社会の一員であり、社会はあなたを求めているのです。
(212ページ)

 つまづいて転んだままのびてしまう人を見ると、見ている者までが脱力感におそわれる。これに反して、転んでも転んでも起きあがってゆく人を見ると、こちらまで勇気づけられる。これはどんな状態になっても人間はひとりではなく、いつも人間どうしの相互関係でつながれている、ということだろう。子供っぽいことをいうようだが、人間感情の本質的な面に触れようとすれば、哲学的であるより、子供っぽいすなおさをおそれてはなるまい。不況はなおも続くもようである。苦しいときほど人間がもっとも人間らしくなるときはない。お互いにがん張ってゆきましょう
(213~214ページ)


 苦しい時を生き抜くのは、たやすいことではない。この苦しみが他人にわかるものか…そう思い塞ぐこともあるだろう。でも、貧しい人々や豊かになれない人々を見つめ、時にともに暮らした周五郎は、彼らの暮らしが苦しみばかりではないことを実感している、それを文章にしている。引用した文章は少し厳しい内容かもしれない。私自身、はじめ読んだ時は厳しい言葉だなと感じた。弱気な時にはあまり読みたくない文章だとも感じた。でも、皆でいつか好転する日を信じて、起きあがって歩いてゆこう。そんな励ましの言葉と受け取りました。

 エッセイを読んで、山本周五郎の作品をもっと楽しめると感じました。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-16 20:27 | 本・読書

シベリウス後期作品の魅力

 昨日の「N響アワー」はシベリウス2本立て。9月になり、シベリウスを聴くのにいい季節になりました。もちろん、春に聴いても真夏に聴いても、真冬に聴いてもそれぞれの味わいがあるのですが、シベリウスの音楽に合う季節はやっぱり秋かなぁと思うのです。

 まず、交響曲第6番。指揮はフィンランドの若手ピアニストであり指揮者であり、作曲家でもあるオッリ・ムストネン。以前、「フィンランディア」も指揮し放送されてました。実は、ムストネンに対して、私はあまりいいイメージを持っていませんでした。フィンランドのピアニストということで、以前ムストネンのベートーヴェンを聴いてみたのですが…私のイメージするベートーヴェンとはかけ離れていて、それ以来苦手意識が。昨日の放送を観る前も、ピアノはいまいち自分には合わかなったけれども、指揮はどうだろう?と考えていました。

 で、聴いてみて…良かったです。テンポは少々速めだけど、6番の魅力…澄みきった透明感や爽やかさ、ほの暗さを堪能できました。シベリウスの6番はやっぱり美しい。ムストネンに対するイメージも、少し変わりました。以前購入した「ピアノ マスターワークス」にムストネンがピアノ演奏しているショパンとグリーグの協奏曲が入っていた。まだなんとなくしか聴いていないので、今度はじっくりと聴いてみよう。


 2曲目は交響詩「タピオラ」。指揮はN響ではおなじみのヘルベルト・ブロムシュテット。番組の最後で長寿作曲家の話があったが、ブロムシュテットも長寿指揮者(しかもとても元気でいらっしゃる)です。「タピオラ」は6番とはまた違う雰囲気だけど、好きです。静かで暗い、人間の世界とはかけ離れた深い森。以前、どこかで「シベリウスの作品には人間は出てこない」と読んだことがあるのですが、まさにそう。でも、近づきがたいわけではない。交響曲4番以降のシベリウス後期作品には、そんな味わいがあるなと感じました。「カレリア組曲」や「フィンランディア」、交響曲第2番などの情熱的な前期作品も好きですが、シベリウスと言ったらやっぱり後期作品と私は感じます。

秋のフィンランドを想いつつ、シベリウス作品を堪能したいと思う夜でした。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-14 22:07 | 音楽

おかいつとロケットの関係 「ボロボロロケット」

 「おかあさんといっしょ」9月の歌になりました。「ボロボロロケット」、久々にスタジオで遊び歌です。動きはそんなに難しくない。座ったままでも出来ます。

 で、この「ボロボロロケット」。その名の通り、オンボロロケットが宇宙を旅する歌です。楽しげな宇宙旅行の歌なのですが…H2Bロケットの打ち上げに合わせたんですか、NHKさん?H2Bはボロボロじゃないよ!新型のピカピカのロケットだよ!と突っ込まずにはいられませんでした。

 おかいつでロケットの歌とくれば、あきひろ&りょうこ時代の「クレヨンロケット」。クレヨンで描いたロケットの絵から、宇宙への夢が広がる歌なのですが…
クレヨンロケット 飛ぶよね
飛びたいんだから 飛ぶよね
たまたま1回だめでも いつかは飛ぶからね

という歌詞だった。ちょうどこの歌の放送の頃(2002年2・3月)、日本のロケットは混迷の時代で「これは日本のロケット開発を励ましたいのか、それとも…」といろいろと深読みしてしまった。マッドサイエンティスト、もしくはヒロイックな宇宙飛行士のイメージだったあきひろお兄さんもよかったけど、仕事はキチッとこなす技術者、もしくは温和でミッションにベストを尽くす日本の宇宙飛行士のようなイメージで、だいすけお兄さんにも歌ってほしいな。

【追記】
 9月にこの歌が放送されたのは、9月12日が「宇宙の日」(毛利さんがSTS-47・エンデバー号宇宙へ飛んだ日を記念して制定された)で、その「宇宙の日」にちなんでJAXAがいろいろとイベントを催したり…というのにも関係しているんじゃないかと深読み。NHKさん、宇宙好きですよねぇ…。


 さて、NHk教育テレビ50周年記念番組が、また放送されます。
NHKオンライン:ETV50「キャラクター大集合 とどけ!みんなの元気パワー」~輝け!こども番組元気だ!大賞~

 9月21日、9:00~10:15放送。出演陣はETVの人気キャラ大集合!だいすけ&たくみコンビはもちろんのこと、「いないいないばあっ!」のことちゃん・ワンワン、「つくってあそぼ」のワクワクさんにゴロリ、「シャキーン!」のあやめちゃんとジュモクさん、「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」のまいんちゃん、ストレッチマンに「みいつけた!」のスイちゃん・サボさん・コッシー、そして「クインテット」の5人も!!ETV特別番組で「クインテット」メンバーも登場するのは初めて。とても楽しみです。絶対録画します。
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by halca-kaukana057 | 2009-09-13 22:23 | Eテレ・NHK教育テレビ


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)

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