タグ:シベリウス ( 86 ) タグの人気記事

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう オラモ&BBC響

 フィンランド独立100年の記念日を過ぎましたが、まだ聴いた「クッレルヴォ」があるので続けます。寒波襲来で、「クッレルヴォ」は猛吹雪に合う気がします。



 今回もCDなのですが、ちょっと普通のCDとは違います。
サカリ・オラモ:指揮、BBC交響楽団
ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ワルテッリ・トリッカ(バリトン)、
ポリテク合唱団、BBCシンフォニーコーラス(男声合唱)

 2015年のBBCプロムス、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音です。BBC Music Magazine 2017年9月号で付録のCDになりました。一般に販売しているCDではないですが、CDではある。BBC Music Magazine は聴きたいCDが付録の時や、興味のある記事の時買います。読み込めてないですが…。

◇公式サイト:classical-music.com:September 2017
◇HMVならまだ買えるみたいです。:HMV:BBC Music Magazine 2017年 9月号

・その時のプロムス シベリウスプログラムまとめ:Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
 2015年はシベリウス生誕150年。その記念の公演。その時、BBC radio3 のオンデマンド配信も聴きました。改めてCDで聴いてみて、その時の印象とはまた違った感想を持ちました。
 ちなみに、前回はアメリカのオーケストラ。今回はイギリスのオーケストラ。イギリスオケはベルグルンド&ボーンマス響以来です。

 最初に聴いた時は、まだ「クッレルヴォ」をそんなに聴いたことがなく、私にとっては目新しいものとして聴きました。「カレワラ」のクッレルヴォの章は、救いがない。でも、クッレルヴォは悲劇の「英雄」。「英雄」なんです。過酷な運命に毅然と力強く立ち向かうクッレルヴォの姿を思い浮かべました。

 というイメージは変わってはないのですが、付け足された感想がいくつか。テンポは速めですが、すごく速いというわけでもない。第3楽章は結構速いなとは感じます。それよりも、演奏時間約71分、流れに勢いよく乗って、クッレルヴォの章、ドラマを紡いでいく印象です。でも、さらさらと流しているわけではなく、語るところは語る。急緩も全部流れに乗っている。例えば第2楽章の「ジャーン!ジャジャジャジャン!」と強いところがありますが、その後休符が数秒。その無音、休符で何を語っているのだろう?強弱もコロコロと変わる。アクセントも随所につける。それらも全部ひとつの、この演奏全体の「流れ」に感じます。自然に思える。それが、ドラマティックに思う所以なのかなと思いました。若干響きがソフトに感じるのはあの大きなホール、録音のせいだろうか?

 第3楽章、ポリテク合唱団とBBCシンフォニーコーラスの合唱は滑らかでアクセントも効いている。役者寄りの合唱かな、と。ヨハンナ・ルサネンさんはもうお馴染みのクッレルヴォの妹役。澄んだソプラノはどの録音でも素敵です。クッレルヴォに自分のことを明かす部分は悲痛。バリトンのワルテッリ・トリッカさんは、フィンランドの若手バリトン。クラシックだけでなく、ポップス歌手とのコラボなど、多方面で活躍しているバリトンさんです(Spotifyでソロアルバムを聴けます。いい感じです)。「クレルヴォの嘆き」の部分が結構速いです。ショックで叫び、悲しみ、自分を責めているような歌い方。伴奏のオケも強い鋭い音を出して、クッレルヴォの叫びを代弁しています。若々しく、たくましいバリトンです。若手のクッレルヴォ歌手がこれからどんどん増えて、育ってきて欲しいなと思いました。



 ちなみに、「クッレルヴォ」から少し離れますが、シベリウス繋がりなので。今シーズンのオラモさんとBBC響はシベリウス・チクルスをやっています。BBC radio3のオンデマンドで現在聴けるものがあるので、リンク貼っておきます。
BBC radio3 : Radio 3 in Concert : Sakari Oramo Sibelius Cycle: Symphony No 6
 4番、6番。その間にスウェーデンの作曲家・ヒルボルイのヴァイオリン協奏曲第2番。12月29日ごろまで配信。
BBC radio3 : Radio 3 in Concert :Sakari Oramo Sibelius Cycle: Symphony No 1
 報道の日 祝賀演奏会のための音楽(イギリス初演)、2つの荘重な旋律 Op.77、1番。「Finland Awakes」と銘打って、フィンランド独立100年記念日の12月6日が演奏会でした。1月6日あたりまで配信。
 残る2番と7番、加えて「ルオンノタール」は1月6日(日本時間7日早朝)。

 それと、オラモさんとBBC響で忘れちゃいけない、BBCプロムス ラストナイトが放送されます!今週日曜深夜です!
NHK : プレミアムシアター
NHK番組表:プレミアムシアター プロムス2017/NHK音楽祭「ドイツ・レクイエム」
 12月18日 午前0時30分から。お忘れなく!


【これまでのの「クレルヴォ」特集まとめ】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤
 ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう スロボデニューク&ラハティ響
 ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団 (2017年 シベリウス音楽祭より)
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう ロウヴァリ&エーテボリ響
 サンットゥ=マティアス・ロウヴァリ:指揮、エーテボリ交響楽団 (2017年の演奏会より)
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう サロネン&ロスフィル
 エサ=ペッカ・サロネン:指揮、ロスアンジェルス・フィルハーモニック


[PR]
by halca-kaukana057 | 2017-12-13 22:16 | 音楽

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう サロネン&ロスフィル

 今日、12月8日はシベリウスのお誕生日。今年で152年目です。150年から2年経ったんだな。去年は何を書いたっけと過去記事を見てみたら、書いてなかった。去年は忙しくて聴いて記事を書けなかった。聴いてはいた。今年は聴いている。そして書こう。お誕生日おめでとうございます!! Hyvää syntymäpäivää !!

 「クレルヴォ(クッレルヴォ)」を聴こうシリーズを続けます。今日はCD。
エサ=ペッカ・サロネン:指揮、ロスアンジェルス・フィルハーモニック
マリアンネ・ローホルム(Marianne Rörholm)(ソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)
ヘルシンキ大学合唱団

 1992年の録音です。ジャケットのサロネンが若いです。来年還暦の今も若々しいです。

 テンポは全体的に速め。重厚にクッレルヴォの物語を語るというよりも、次々とクッレルヴォを襲うかのような過酷な運命を鋭く突き刺すように提示していきます。でも、ここぞというところで溜める。ここぞというところで弱音にする。その力加減が絶妙だなと思いました。クッレルヴォの運命を重々しく語ることも出来るし、サスペンスドラマのようにショッキングに語ることもできる。

 第3楽章、ヘルシンキ大学合唱団による男声合唱はソフトな印象です。第5楽章も。合唱は「カレワラ」のクッレルヴォの章を歌詞にして歌っていますが、少し離れた位置からナレーションのような合唱なのかなと思いました。盛り上がる部分は熱っぽく歌っています。朗読するような合唱もあるし、オペラのように役者として演じているような合唱もある。ヒュンニネンによる「クッレルヴォの嘆き」の部分は重々しい。バスかと思うぐらいの低さ、重さです。クッレルヴォが犯してしまった罪を劇的に歌っています。

 ロスアンジェルス・フィル(ロサンゼルス、ロサンジェルス、LA…有名だけれども表記に悩む地名です)の演奏も巧み。これまで、このシリーズではフィンランドと北欧のオーケストラばかり取り上げていたことに気がつきました。アメリカのオーケストラは初めて。サロネンといい関係だったんだなと思えます。ティンパニの響きが印象的です。
 サロネンのシベリウスの録音は少ない(実演は多いです)ので、この録音が残っていてよかったなと思いました。

 ちなみに、シベリウスの誕生日の12月8日は、フィンランドでは「フィンランド音楽の日」とされています。フィンランドYLEのクラシック専門ラジオ YLE Klassinen では一日中フィンランド作曲家の作品を放送しています。初めて聴く曲も多いので楽しいです。何か音楽を聴きたいけど何を聴くか決まっていない方は、是非どうぞ。
YLE Klassinen ←リンクに飛ぶと、再生が始まります。


【これまでのの「クレルヴォ」特集まとめ】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤
 ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう スロボデニューク&ラハティ響
 ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団 (2017年 シベリウス音楽祭より)
[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう ロウヴァリ&エーテボリ響
 サンットゥ=マティアス・ロウヴァリ:指揮、エーテボリ交響楽団 (2017年の演奏会より)

[PR]
by halca-kaukana057 | 2017-12-08 22:14 | 音楽

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう ロウヴァリ&エーテボリ響

 フィンランドの独立記念日が明後日に迫っています。シベリウス:クレルヴォ交響曲(クッレルヴォ)を聴こうシリーズ。今日も演奏会のオンデマンド配信のものです。
サンットゥ=マティアス・ロウヴァリ:指揮、エーテボリ交響楽団
ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ヴィッレ・ルサネン(バリトン)
オルフェイ・ドレンガル
GSOplay:Sibelius’ sibling drama
◇上の動画が重い場合は:SIBELIUS Kullervo - Rouvali

 この秋から、エーテボリ響の新首席指揮者に就任したロウヴァリさん。5月にはタンペレ・フィルと来日してましたね。聴きに行きたかった…。以前のシリーズでエーテボリ響は、ネーメ・ヤルヴィ指揮のCDを取り上げましたが、あれは1985年の録音。あれから30年以上。若い指揮者とどう演奏するのか楽しみです。声楽ソロは、前回のラハティ響と同じルサネンきょうだい。

 動画を再生して視聴していたのですが、最初から驚きます。いきなりテンポを遅くする。えっ、ここで?とびっくりする。他のところでも、えっ、こうするの?と驚く箇所があちこちに出てくる。でも、ずっと聴いていると、説得力がある。「クレルヴォ」の物語ってこうだったんだ、と思う。いつの間にかロウヴァリさんの「クレルヴォ」の世界に入っている。すごい。完全にやられました。
 ロウヴァリさんの指揮はご存知の通り個性的。華奢で小柄な身体をいっぱいに使って、踊るような、大きな動きをする。こちらも最初はびっくりするのですが、オーケストラ側からのアングルで見てみると、わかりやすい指示だなと思う。しなやかに、力強く、ゆるやかに、決然と…多彩。自由自在。本当に面白い。

 声楽ソロは前回スロボデニューク&ラハティ響と同じルサネンきょうだいなのですが、歌い方が全然違う。まず、登場の演出に驚きました。まさに、クレルヴォと妹が森の中で出会うような。歌も力強い。クレルヴォが森で出会った女性(この時はまだ妹と知らない。妹も兄とは知らない)を誘うところで、最初は妹が思いっきり罵倒するのですが、力強い口調で早口で罵る。その後も2人の掛け合いや、告白、嘆きなどは力強く、ただ歌うだけじゃない、セミステージ方式のオペラを観ているかのよう。
 男声合唱のオルフェイ・ドレンガルのうまさにも驚きました。揃ったハーモニー。層が厚い。さすがです。これもまた、オペラのように感じます。

 一度だけで無く、2度3度聴くとハマってきます。まだコンビを組んだばかりなのに、こんな面白い演奏をするなんて、これからのロウヴァリ&エーテボリ響が楽しみになります。エーテボリ響とも来日しないかなぁ。


【これまでのの「クレルヴォ」特集まとめ】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤
 ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう スロボデニューク&ラハティ響
 ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団(2017年 シベリウス音楽祭より)
[PR]
by halca-kaukana057 | 2017-12-04 22:40 | 音楽

[フィンランド独立100年記念]続・シベリウス クレルヴォ交響曲を聴こう スロボデニューク&ラハティ響

 今年はフィンランド独立100年。夏のBBCプロムスの記事でも何度も書きました。独立記念日は12月6日。もうすぐじゃないか!独立100年記念企画を何かやろう…と考えていました。音楽面なら、シベリウスだけじゃなくて、フィンランドの音楽全般について書きたい、と思っていたのですが、勉強不足な部分が多く、記事にならない(そこまで完成された記事にしないといけないのか、とも思いますが)。色々と考えて、シベリウス生誕150年の時にやった、「クレルヴォ交響曲」op.7の演奏色々について、さらに取り上げることにしました。あれ以来、クレルヴォ(クッレルヴォ)はさらに聴きました。前回はCDとして出ているものをメインに書きましたが、今回はコンサートのオンデマンド配信になっているものも取り上げたいと思います。フィンランド独立100年記念で、「クレルヴォ(クッレルヴォ)」を取り上げるオーケストラも増えています。いいことだ。

 最初に取り上げるのはこちら。
ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団
ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ヴィッレ・ルサネン(バリトン)
YL男声合唱団

◇演奏会動画:classic Live:Lahti Symphony Orchestra Sibelius:Kullervo
 今年のラハティ シベリウス音楽祭での演奏です。ラハティ響は、前回の特集でヴァンスカとの録音を取り上げましたが、今回は現在の音楽監督 ディーマ・スロボデニュークによる指揮です。声楽ソロは、「クレルヴォ」ではお馴染みのルサネンきょうだい。男声合唱はYL男声合唱団。シベリウスホールは本当にきれいなホールですね。行ってみたい。

 「クレルヴォ」はシベリウスの初期、若い頃の作品、さらに「クレルヴォ」の物語からも、荒々しいイメージがあります。この演奏を聴いていると、「カレワラ」の世界の、黎明期のスオミの原野をイメージします。荒々しいというよりは、素朴で、素朴と言ってもほっこりしたイメージではなく、荒涼としていて素に近い。弦はざらざらという感じではなく、でも絹のような滑らかさというわけでもない。ウールの毛糸と麻と綿が混じったような手触り(難しい…)。金管はクレルヴォのむき出しの強い感情を代弁するかのように時々吼える。男声合唱は力強く、クレルヴォの世界観を語る。力強いけれども、弱音をとても大事にしている。最初は霧の中から音楽が聴こえてくるような感じ。随所で弱音を効かせている。今もラハティ響の魅力は弱音ですね。最後、「ジャーン ジャン!!」と勢いよくならず、残響を長く響かせるように終わるのも、この演奏に合っているなと感じました。

 声楽ソロのルサネンきょうだいも、さすがの落ち着き。ヨハンナさんの澄んだソプラノ。ヴィッレさんの、「クレルヴォの嘆き」の部分、時々内面を打ち明けるように歌う(語っているようにも聴こえる)のが印象的です。


【前回の「クレルヴォ」特集まとめ】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤
 ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

[PR]
by halca-kaukana057 | 2017-12-03 14:59 | 音楽

ラハティ シベリウス音楽祭2017 演奏会動画まとめ

 毎年恒例のフィンランド ラハティ シベリウス音楽祭(Lahti International Sibelius Festival 2017)。ラハティのシベリウスホールにて、8月30日から9月3日まで開催されました。今年は、フィンランド独立100年記念ということで、ラハティ交響楽団(ディーマ・スロボデニューク:指揮)だけでなく、ゲストオーケストラに、サントゥ=マティアス・ロウヴァリ:指揮、エーテボリ交響楽団も招待されました。
 ラハティ響の演奏会動画を公開しているサイトで、ようやく全公演揃ったので、まとめます。動画へのリンクを貼っておきます。


【1日目】
 ・男声合唱集
 ・6つの歌 op.18 (6 laulua)
  失われた声 (Sortunut ääni)
  ようこそ 月よ (Terve kuu)
  船の旅 (Venematka)
  島では燃えている (Saarella palaa)
  森の男の歌 (Metsämiehen laulu)
  私の心の歌 (Sydämeni laulu)

 ・恋するもの (Rakastava) JS160a
 ・異郷にあるわが兄弟たち (Veljeni vierailla mailla) JS217
  / パシ・ヒョッキ:指揮、YL男声合唱団

 ・クッレルヴォ (Kullervo) op.7
  / ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ヴィッレ・ルサネン(バリトン)、YL男声合唱団
   ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団
 1日目は、まず、オーケストラはなく、YL男声合唱団によるアカペラの男声合唱から。シベリウスの合唱曲の中でも有名な「6つの歌」、前半4曲はカンテレンタルの歌です。「恋する者(ラカスタヴァ)」は管弦楽曲でも有名ですが、合唱曲も大好きです。「異郷にあるわが兄弟たち」(1904年作曲)は「追放者の歌」とも呼ばれているそうです。離れていた祖国に戻って来た男が、まだ異郷の地に残っている仲間(兄弟)のことを思って歌う歌。異郷の地とはロシアのことでしょうか。フィンランドが独立する前、ロシアに支配されていた厳しい時代を歌っています。
 そのあとで、「クレルヴォ」。1日目から「クレルヴォ」です。「カレワラ」の悲劇の英雄・クッレルヴォの物語を題材にしたこの曲。カンテレンタルに基づく「6つの歌」と一緒に聴くと、フィンランドのルーツに触れるような気がします。歌男声合唱は引き続きYL男声合唱団。独唱は「クレルヴォ」ではお馴染みのルサネンきょうだい。


【2日目】
 ・大洋の女神(波の娘) (The Oceanides)op.73

 ・歌曲集
  ・Jubal op. 35-1
  ・トンボ (En slända) op.17-5
  ・秋の夕べ (Höstkväll) op.38-1

 ・ルオンノタール (Luonnotar) op.70

 ・レンミンカイネン組曲 (Lemminkäinen) (四つの伝説) op.22
  / アヌ・コムシ(ソプラノ)、ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ響
 2日目は、まず「大洋の女神」。その次に、ソプラノソロの歌曲の管弦楽伴奏と、「ルオンノタール」。歌うのは、2015年のシベリウス音楽祭でも「ルオンノタール」のソロを歌っていたアヌ・コムシさん。歌曲の「Jubal」の和訳がわからないのですが、歌詞の和訳を見るとこれは固有名詞なのかな?歌曲3曲はスウェーデン語の歌詞。「ルオンノタール」は「カレワラ」からの歌詞です。
 「大洋の女神」と「ルオンノタール」は、曲調も題材も全く異なりますが、女神をテーマにしているので混同してしまいそうになるかも。
 後半は「レンミンカイネン組曲」。一般的には、第1曲:レンミンカイネンと島の乙女たち、第2曲:トゥオネラの白鳥、第3曲:トゥオネラのレンミンカイネン、第4曲:レンミンカイネンの帰郷、となるのですが、今回は第2曲と第3曲が入れ替わっています。この順番での演奏も時々あります。


【3日目】
 ・木の精 (The Wood-Nymph / Skogsrået /Metsänhaltijatar)op.15 , エン・サガ op.9
 ・交響曲第5番 変ホ長調 op.82
  /サントゥ=マティアス・ロウヴァリ:指揮、エーテボリ交響楽団
 この秋から、エーテボリ交響楽団は、フィンランド出身のロウヴァリさんを首席指揮者に迎えました。ロウヴァリさんは、今年タンペレ・フィルと来日もしましたね。3日目はこの船出したばかりのコンビの演奏です。
 「木の精」と「エン・サガ」は、なんと続けて演奏されます。どういうこと?ぜひ聴いてみてください。びっくりです。驚きです。ロウヴァリさんは指揮が独特ですが、客席側ではなく、オーケストラ側から見ると、ここはこういう指示なんだなと納得できてしまうので、こちらも驚きです。


【4日目】
 ・報道の日 祝賀演奏会のための音楽 JS137
  1.前奏曲、2.ヴァイナモイネンの歌、3.フィン人の洗礼、4.トゥルク城のヨハン公、5.30年戦争、6.大いなる敵意、7.フィンランドは目覚める
 ・交響曲第2番 ニ長調 op.43
  /ディーマ・スロボデニューク:指揮、ラハティ交響楽団
 音楽祭を締めくくる4日目。後に「歴史的情景」第1組曲と、「フィンランディア」の原型になる、「報道の日 祝賀演奏会のための音楽」が演奏されました。まさに、フィンランド独立100年のシベリウス音楽祭で演奏されてほしい曲です。最後は2番。アンコールでは「フィンランディア」が恒例なのですが、「フィンランドは目覚める」を演奏したためか、今年のアンコールではなかったそうです。

 今年も盛りだくさんのシベリウス音楽祭です。まだ動画を全部視聴出来てないので、これから楽しみます。

・昨年のシベリウス音楽祭:ラハティ シベリウス音楽祭2016 まとめ
[PR]
by halca-kaukana057 | 2017-11-09 23:03 | 音楽

ラハティ シベリウス音楽祭2016 まとめ

 もう3ヶ月も前…9月8日~11日までフィンランドのラハティで開催された、シベリウス音楽祭。今年で17回目です。昨年はシベリウス生誕150年で普段よりも規模も大きく盛り上がりました。今年は通常の音楽祭の形式に戻って、オーケストラはラハティ交響楽団。あと室内楽の演奏会もあります。昨年はフィンランド国営放送(YLE)で放送がありましたが、今年はなし。でも、ラハティ響の演奏会の動画を配信しているサイトで公開しています。その一部の演奏会映像の公開期限が迫ってきた…ので、覚え書きで記事にします。
(動画が全部揃うまで時間がかかった&10月は忙しかった、というのが言い訳です…汗)

 今年の注目ポイントは、ラハティ響の音楽監督が交代したこと。オッコ・カムさんの後を、ディーマ・スロボデニュークさんが引き継ぎました。スロボデニュークさんはロシア人ですが、シベリウス音楽院指揮科・ヨルマ・パヌラ門下生で、フィンランド放送響他フィンランドのオーケストラとは縁の深い方。フィンランド語も堪能とのこと。新しい音楽監督のお披露目演奏会・シーズンオープニングにもなった今年のシベリウス音楽祭。聴けるうちにどうぞ。

【1日目】
タピオラ op.112(11月18日まで)
ポヒョラの娘 op.49(11月19日まで)
交響曲第1番 ホ短調 op.39(11月21日まで)
鶴のいる情景 op.44-2[アンコール](12月16日まで)
美しい組曲 (Suite Mignonne) op.98a[アンコール](12月17日まで)

 今年も「タピオラ」から始まりました。続いて「ポヒョラの娘」、カレワラ作品続きです。アンコールの「美しい組曲」は弦楽とフルートがまさに美しい作品です。

【2日目】
森の精(The Dryad) op.45-1(11月22日まで)
テンペスト 第2組曲 op.109-2(11月22日まで)
交響曲第4番 イ短調 op.63(11月25日まで)
伯爵夫人の肖像 JS88[アンコール](12月20日まで)
ベルシャザール王の饗宴 第2曲:孤独 op.51-2[アンコール](12月26日まで)

 今年はシェイクスピア没後400年。夏のBBCプロムスでもシェイクスピアに関連した作品がいくつも取り上げられましたが、シベリウス音楽祭でもシベリウスのシェイクスピア作品「テンペスト」を取り上げています。今年のアンコールでも「伯爵夫人の肖像」出てきました。

【3日目】
ペレアスとメリザンド op.46(12月3日まで)
パンとエコー op.53(12月5日まで)
交響曲第3番 ハ長調 op.52(12月9日まで)
フィンランディア op.26[アンコール](12月12日まで)

 珍しい作品「パンとエコー」が登場。舞踏的間奏曲、優美なワルツ、溌剌としてドラマティックな舞曲。最後は恒例の「フィンランディア」で締め。

 ちなみに来年は、シベリウス没後60年&フィンランド独立100年。来年もゲストを呼びます。フィンランドの若手指揮者・サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮エーテボリ交響楽団。2017年秋からロウヴァリさんはエーテボリ響の首席指揮者に就任するので、就任したばかりの演奏会になります。

・過去関連記事 去年のシベリウス音楽祭:Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
[PR]
by halca-kaukana057 | 2016-11-07 22:46 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤

 昨年からゆっくりと進めてきた、シベリウス「クレルヴォ交響曲」op.7 聴き比べ企画。今回で一旦最終回です。このシリーズの最初に、「クレルヴォ」の世界初の録音となったパーヴォ・ベルグルンド:指揮 ボーンマス交響楽団で始めたのですが、最後もベルグルンドで締めたいと思います。今度は地元フィンランドのヘルシンキフィルとの演奏です。

パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
エーヴァ=リーサ・サーリネン(メゾソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)
ソヴィエト・ロシア国立アカデミー・エストニア男声合唱団
ヘルシンキ大学男声合唱団


 ボーンマス響との録音が1970年。このヘルシンキ・フィルとは1985年の録音です。以前取り上げたネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響と同じ年です。第3楽章、クレルヴォの妹役のサーリネンさんはメゾソプラノ。バリトンのヒュンニネンさんは他の録音でも大活躍。フィンランドの名バリトンであり、名クレルヴォ・バリトンです。

 初録音から15年。速度はそんなに変わりありません。しかし、1楽章は引きしまった感じがしますし、強音から弱音までの幅が広くなった。冒頭はゆっくりめに始まるのはボーンマス響もヘルシンキ・フィルも変わりないのですが、弦が澄んでいる。静寂を大事にするところは長く取って次の音をより印象的に。特に第2楽章後半で弱音からじわじわと強音へ上げてくるところは息をのみます。
 第4楽章はこれまでヒロイックな金管に注目していましたが、管楽器の高音も弦楽器のうねりも印象に残ります。それから、4分40秒あたり、金管の2音の連打からの、うまく言葉に出来ないのですが…この部分がロックな音をしているなと感じました。ウンタモを滅ぼそうと出征し、怒りで感情が制御できないような。
 男声合唱はヘルシンキ大学男声合唱団と、当時はまだソヴィエトだったエストニアの男声合唱団と2つの合唱団が参加。力強い合唱。クレルヴォとクレルヴォの妹の歌も悲痛。クレルヴォの妹は今回メゾソプラノですが、ソプラノのような澄んだ高音も出せていて、悲痛だけど美しいと感じました。クレルヴォの嘆きは重々しく。この重々しさから第4楽章、そして第5楽章へ進むのに、物語を感じます。スケールの大きな演奏です。

 このCD(国内版)、2枚組で、第1~3楽章が1枚目、第4・5楽章が2枚目と分かれています。わざわざCDを入れかえる必要があるのが面倒です…。でも、2枚目にはカンタータ「故郷(祖国)」op.92、「火の起源」op.32と男声合唱とオーケストラのための作品が入っています。どちらも大好きな作品。これが入っているのが嬉しいです。「火の起源」は「クレルヴォ」と同じく「カレワラ」に基づく作品。「故郷(祖国)」は、その名の通り、フィンランドの美しい自然や「カレワラ」を讃える歌。美しいです。

 ということで、今回で「クレルヴォ」聴き比べは一旦終わり。新しい演奏を聴いたら、また書くと思います。

 なかなか演奏機会も少ない「クレルヴォ」ですが、来年、日本で演奏されます。生で聴けるチャンスです!
東京都交響楽団:2017年ラインナップ発表
東京都交響楽団:第842回 定期演奏会Aシリーズ
2017年11月8日(水) 19:00開演

指揮:ハンヌ・リントゥ
ソプラノ:ニーナ・ケイテル
バリトン:トゥオマス・プルシオ
男声合唱:フィンランド ・ポリテク男声合唱団

シベリウス:クレルヴォ交響曲 op.7

 昨年フィンランド放送交響楽団と来日したリントゥが、都響で「クレルヴォ」をやります!!シベリウス没後60年&フィンランド独立100年の2017年、ぴったりのプログラムです。
 日本のプロオケが「クレルヴォ」を演奏するのは何年ぶり、何十年ぶりなんだろう…?(昨年新田ユリ:指揮で演奏したアイノラ交響楽団はアマオケ)。男声合唱はプロムスでも歌ったポリテク合唱団。まだまだ先ですが、いいなぁこれ。
 ちなみに、リントゥはフィンランド放送響では「クレルヴォ」を指揮してない…おそらく、2017年秋から始まる2017-18年シーズンの始めでフィンランド放送響で演奏して、それを都響に持ってくるかと思います。まだ予定が出てないので予想です。シベリウス生誕150年の昨年も多かったですが、来年はまた「クレルヴォ」の演奏が増えるんだろうなぁ。嬉しいです。
[PR]
by halca-kaukana057 | 2016-10-18 22:13 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤

 今日はシベリウスの命日。59回目です。来年は没後60年(&フィンランド独立100年).この頃、プロムスの溜まっているオンデマンドばかり聴いて、シベリウスをあまり聴いていませんでした。今年のプロムス、シベリウスは1公演1曲しかなかった…(去年たくさんやったでしょうが)。来年は没後60年だからまた増えるといいな。

 まだ続いている「クレルヴォ」交響曲を聴こうシリーズ。まだあるんです。店頭で見つけて、指揮者の名前にこれは聴いてみたい!と思い買ったCDです。

ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
ヨハンナ・ルサネン(ソプラノ)、エサ・ルーットゥネン(バリトン)
ラウルン・イスタヴァト男声合唱団


 指揮は、今世界各地で活躍しているフィンランド指揮者たちを育てた、元シベリウス音楽院指揮科教授のヨルマ・パヌラ。パヌラ先生が指揮をしている録音をあまり聴いたことがなかったので、これは聴きたいと思いました。男声合唱は前回のネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響と同じくラウル・イスタヴァ男声合唱団。1996年の録音です。

 シベリウスの番号つきの交響曲と、「クレルヴォ交響曲」の違いは、はっきりとした基づくものがあるかどうか。番号つきの交響曲は、それぞれの作曲の際のエピソードやシベリウス自身の言葉も残されていて、聴く手がかりにはなりますが、自由に想像します。
 一方の「クレルヴォ交響曲」は、「カレワラ」の「クレルヴォ」の章に基づいている。悲劇の英雄クレルヴォを描いている。第3・5楽章では「カレワラ」から引用した声楽独唱と男声合唱が入る。明確に、クレルヴォのこの章とわかる。
 でも、これまで様々な「クレルヴォ交響曲」を聴いてきて、悲劇の英雄クレルヴォも一様ではないなと感じた。きっと幼い頃から「カレワラ」に親しんできたフィンランドの人たちの抱くクレルヴォと、日本語訳の「カレワラ」を読んで私が抱くクレルヴォのイメージは異なる。また、「カレワラ」は叙事詩。語り口調や表現は普通の物語とは違う。1,2,4楽章は副題から、クレルヴォの章のこの部分とわかるけど、その章全部を描いているのか、ある一部分だけど描いているのか(すみません勉強不足なだけです)、わかりにくいところもある。それぞれの演奏を聴いて、それぞれのクレルヴォ像に触れられるのが興味深い。

 パヌラ先生の「クレルヴォ」は、繊細なところもはっきりと聴こえる。強いけれども、憎しみや苦しみで心に暗い影のひだを沢山を持っているようなクレルヴォ。第1楽章はゆっくりめに始まるけれども、第3楽章の始めのほうでは速めで、独唱部分になるとゆっくりになり、よく語り歌う。ソプラノのルサネンさんの透明な声がきれい。ルーットゥネンさんのバリトンは、オケとのバランスがあまりよくなくて残念ですが、悲痛な叫び。第3・5楽章の男声合唱も、北欧らしい澄んだ、やわらかい、繊細さを持っている。先ほども書いたように、豪快で「爆演」なネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響のと同じ合唱団。録音された年は10年ほど違いますが、これ同じ合唱団?と思ってしまう。第5楽章、最後は、オーケストラはジャン!ジャーン!と強い音で劇的に終わるのですが、パヌラ盤はソフト。あれ?と思ってしまう。消え入るようなクレルヴォの死。これはこれで印象深い。

 「クレルヴォ交響曲」がますます興味深くなる演奏です。
 ちなみに、演奏のトゥルク・フィルの現在の首席指揮者はレイフ・セーゲルスタム。シベリウスの管弦楽曲を次々と録音していて、こちらも興味深いです。

 「クレルヴォ」シリーズ、あと1回で区切りをつけようと思います。


【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
[PR]
by halca-kaukana057 | 2016-09-20 22:13 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤

 忘れてませんよこのシリーズ。シベリウス「クレルヴォ交響曲」聴き比べシリーズ。ゆっくりゆっくりですが進めます。来月、シベリウスの命日の9月20日には一区切りできればいいなぁ(その後は2017年になれば今度は没後60年)

 先月、Eテレ「クラシック音楽館」で、ネーメ・ヤルヴィ指揮N響の演奏会が放送されていました。以前このシリーズで、ご長男のパーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤を取り上げましたが、ネーメパパも「クレルヴォ交響曲」を録音しています。今回はネーメパパ(ムーミンパパみたいな…w)の演奏です。

 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
 カリタ・マッティラ(ソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)
 ラウル・イスタヴァ男声合唱団


 1985年の録音。古めの分類に入ってきました。
 まず、この演奏のいいところは、シベリウス:交響曲全集の中に入っていること。ネーメさんは、エーテボリ響と2回シベリウス交響曲全集を出していますが、これは1回目のBISからのもの。交響曲全集の中に「クレルヴォ」も入ってるのは嬉しいなと。最近のシベ全は、純粋に交響曲だけで、「フィンランディア」も「タピオラ」も「悲しきワルツ」も「トゥオネラの白鳥」も入ってないのが多い…別に管弦楽曲集を出していればいいのだが、交響曲だけでちょっと寂しいなと思います。せめて「フィンランディア」と、最後の大き目の規模の管弦楽曲(第8交響曲と呼ばれることもある)「タピオラ」は入れてほしいです。ちなみにこの全集には、「クレルヴォ」の他に管弦楽曲は入ってません。後にグラモフォンから管弦楽曲集を出しています。

 演奏は、一言で言うと「爆演」です。この演奏を聴いてから、他の演奏を聴くと大人しく聴こえてしまいます。テンポも速い、1・2楽章は特に速いです。全体で67分。前回取り上げたヴァンスカ&ラハティ響の演奏は遅めでしたが、対照的。

 荒っぽいところはあります。でも、その荒っぽさが、クレルヴォの荒々しい面…第1楽章の序章:クレルヴォの悲劇の始まり、第2楽章「クレルヴォの青春」恵まれず苦渋を味わい続けた少年~青年時代の乱暴な面や胸に秘めた敵討ちが表現されているように聴こえます。第4楽章「クレルヴォの出征」も速め、荒々しさが出ています。
 第3楽章、冒頭の男声合唱は速めで、ピッチも高めです。あれ?と思います。でも、クレルヴォの妹のソロ、続くクレルヴォのソロはたっぷり重々しく。第5楽章も、ゆっくりめでところどころ弱音に落としたり、死に向かうクレルヴォの悲痛さを歌う男声合唱を、じわじわと聴かせてくれます。ただ「爆演」「豪快」なだけでなく、テンポを落すところは落として、迫力は維持したままじっくり聴かせるネーメさん、うまいなぁと思います。オケも気迫があっていいなと思います。


 ちなみに、現在のエーテボリ響ですが、首席指揮者が不在でした。が、2017-18年シーズンからの新首席指揮者が決まりました。フィンランドの若手・サンットゥ=マティアス・ロウヴァリ(Santtu-Matias Rouvali)さん。今年で31歳。トゥルク・フィルハーモニーの首席指揮者でもあります(来年5月、来日決定してます)。以前、YLEでトゥルクフィルとのシベリウス4番を聴いたが、とてもよかった。エーテボリ響というと、このシベリウス全集だけでなく、他にもネーメさんとの録音がとても多いです。ロウヴァリさんとのこれからも楽しみです。落ち着いたら「クレルヴォ」演奏、録音してほしいなぁ。
 ネーメパパもどこかでまた「クレルヴォ」演奏しないかなぁ。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団

シベリウス誕生日記念、管弦楽曲特集
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ響のシベリウス管弦楽曲集(グラモフォン)
[PR]
by halca-kaukana057 | 2016-08-03 22:26 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤

 前回の投稿からかなり間が開いてしまいました。体調がよくなく、集中して長い曲を聴く気力体力がありませんでした。回復してきたので再開します、シベリウス:クレルヴォ交響曲聴き比べシリーズ。生誕150年記念…過ぎてしまったじゃないか…いいえ。シベリウスの150年の誕生日の間、2016年12月7日までは生誕150年だと考えています!(何度も書きますw)シベリウスが12月生まれでよかったですw

 前回は150年記念の特別演奏会での演奏でしたが、今回からは一般に発売されているCDの録音にに戻ります。
 今回取り上げるのはこちら。
オスモ・ヴァンスカ指揮、ラハティ交響楽団
リッリ・パーシキヴィ(メゾソプラノ)、ライモ・ラウッカ(バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(男声合唱)


 シベリウスと言えば、ヴァンスカ&ラハティ響のコンビは外せません。勿論「クレルヴォ交響曲」も録音しています。2003年の来日公演でも演奏されました。日本で「クレルヴォ交響曲」を聴ける機会はなかなかないですね…。

 この演奏、まず、長い。平均的な演奏時間は73分程度。ベートーヴェン第九と同じぐらい、と前に書きました。しかし、ヴァンスカ&ラハティ響盤は80分あります。特に第2楽章「クレルヴォの青春」はゆっくりと。一般的な演奏は14~15分のところを、19分かけて演奏しています。溜めるところをじっくり溜め、休符もたっぷりと休符をとる。全体的にやわらかい音色。ヴァンスカ&ラハティ響お得意の「スーパーピアニッシモ」が随所でいかされていて、その緊張感にはっとします。緊張感と言っても、鋭い突き刺さるような緊張感というよりも、「静寂がものを言う」「音が鳴っているけど静寂を感じる」シベリウスの音楽を表現するような弱音、緊張感です。

 この演奏の特徴的なところがもうひとつ。第3楽章「クレルヴォとその妹」で出てくるクレルヴォの妹役がメゾソプラノであること。普通はソプラノです。まれにメゾソプラノが歌う録音が存在します。歌うのはフィンランドの名メゾソプラノ・リッリ・パーシキヴィさん。ソプラノに負けない澄んだ高音と、メゾソプラノだからこその低音が映えます。クレルヴォも過酷な運命に立ち向かうことになりますが、妹もやはり過酷な運命を背負っている。クレルヴォに出会った時に投げつける乱暴な言葉や、自身の過去、そして嘆きの歌は深いメゾソプラノの方が合うかもしれない、とも思いました。
 クレルヴォの嘆きの部分も、ハリのある深いバリトン。この歌に入る前に、長く休符をとっています。

 ヘルシンキ大学男声合唱団の合唱も、ソフトな感じです。他の録音ならもっと鋭利な歌い方をするところを、儚いようなやわらかい歌い方をしています。でも、第5楽章「クレルヴォの死」の最後は劇的に。ヘルシンキ大学男声合唱団は、このシリーズ1回目のベルグルンド指揮ボーンマス響の演奏でも歌っています。同じ(とはいえ時代もメンバーも変わった)合唱団でも、解釈により歌い方を変えているのが興味深いです。カレワラのクレルヴォの章をどう読み込んでいるかでも違いが出ているのでしょうか。面白いです。

 音、各パートの構築も緻密で、他の録音ではあまり聴こえてこなかった楽器も聴こえてきて、そうだったのかと思うところもありました。さすがは優秀録音のBISです。

 ヴァンスカさんは現在音楽監督を務めるミネソタ管でも、以前クレルヴォ交響曲を演奏していました。ミネソタ管は色々ありましたが、持ち直してきて、途中で止まっていたシベリウス交響曲全集も再開するそうです。本当によかった…一時はどうなるかと…。クレルヴォ交響曲も入るとのこと。楽しみです。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 ベルグルンド指揮ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 サラステ指揮フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
[PR]
by halca-kaukana057 | 2016-05-29 22:33 | 音楽


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

お知らせ・別サイト

管理人HN:(はるか)
 熱しやすく冷めにくい、何が好きになるかわからない好奇心のかたまり。このブログでは好きなものを、好き放題に語ってます。

プロフィール
*2014.9.5:更新
はてなプロフィール:遼(halca-kaukana)



web拍手を送る



はてなブックマーク
Mielenkiintoinen!

気になること、関心のある記事や参考にしたサイトなどのブックマーク集。コメント多め。

◆ピアノ録音置きブログ:Satellite HALCA

☆「はやぶさ2」、小惑星リュウグウ目指して順調に飛行中!☆
管理人・遼も小惑星探査機「はやぶさ2」を応援しています。



あかつき特設サイト
JAXA:金星探査機「あかつき」特設サイト

☆祝!「あかつき」は金星の衛星になりました☆
金星軌道上で観測中!

最新の記事

[フィンランド独立100年記..
at 2017-12-13 22:16
映画「ドリーム(Hidde..
at 2017-12-10 22:30
[フィンランド独立100年記..
at 2017-12-08 22:14
物語 フィンランドの歴史 ..
at 2017-12-06 23:17
Suomi Finland ..
at 2017-12-06 22:26
マッティ、旅に出る。 やっぱ..
at 2017-12-05 22:01
[フィンランド独立100年記..
at 2017-12-04 22:40
[フィンランド独立100年記..
at 2017-12-03 14:59
冬のグリーティング切手&特印..
at 2017-12-01 22:19
Im ~イム~ 8
at 2017-11-28 22:39

カテゴリ

はじめにお読みください
プロフィール
本・読書
宇宙・天文
音楽
奏でること・うたうこと
Eテレ・NHK教育テレビ
フィンランド・Suomi/北欧
イラスト・落描き
日常/考えたこと
興味を持ったものいろいろ
旅・お出かけ
information

タグ

以前の記事

2017年 12月
2017年 11月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
more...

検索