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二都物語

 NHK人形劇「シャーロックホームズ」第4話「消えたボーイフレンドの冒険」で、ワトソンが読んでいた小説がこの「二都物語」(A Tale of Two Cities)。この小説が、人形劇本編の物語に関係がある…というので読んだ。ディケンズを読むのは「クリスマス・キャロル」以来2作目です。
クリスマス・キャロル(原作&NHKFM・青春アドベンチャー)


二都物語
チャールズ・ディケンズ:著/加賀山卓朗:訳/新潮社・新潮文庫/(加賀山訳は新訳版、2014)

 1775年、イギリス。ドーヴァーに向かっていた郵便馬車に乗っていたテルソン銀行の銀行員・ジャーヴィス・ローリーはある手紙を受け取る。「ドーヴァーにて令嬢を待て」。ローリーは「人生に甦った」という返事を出す。そしてドーヴァーに到着すると、銀行から手紙を貰いロンドンからやって来た若い女性・ルーシー・マネットと会う。幼い頃死んだとされていた父で医師のアレクサンドル・マネットがバスティーユ牢獄から解放されたというのだ。18年間の投獄生活で記憶も曖昧、パリで酒場を営むドファルジュ夫妻に保護されていたマネット医師だが、娘と再会し共にロンドンに向かい、一緒に住み始める。
 5年後、マネット医師はすっかり回復し、ロンドンで暮らしていた。ローリーとマネット父娘がイギリスに向かう船に一緒に乗っていたフランス人・チャールズ・ダーネイがスパイ容疑で裁判にかけられていた。ローリーとルーシーは証人として出廷し、無実を証言していた。その法廷には、チャールズの弁護士・ストライヴァーと、ストライヴァーの同僚の弁護士のシドニー・カートンもいた。チャールズとシドニーはとてもよく似ていた。無実で釈放されたチャールズ、そしてシドニーはルーシーに恋をする。シドニーは弁護士ではあるが、普段は酒びたりの生活を送っていた。また、チャールズにはある隠された過去があった…

 読んでいて、舞台を観ているような気持ちになっていました。主要人物のルーシー、マネット医師、チャールズ、シドニー、ローリー、ドファルジュ夫妻だけでなく、ちょい役の登場人物たちも実に活き活きとしていて、物語に彩りを添えている。「クリスマス・キャロル」も庶民を描いた人間味溢れる作品だったが、「二都物語」も極平凡な庶民の生活の中にあるルーシーたちの運命が、イギリスらしい皮肉や庶民の目線から描かれている。読んでいて、それぞれの登場人物の言動が個性豊かで、面白かった。

 「人生に甦る」という不思議な言葉で始まる物語。「人生に甦る」のは牢獄生活から解放されたマネット医師のことでもあるし、過去にある秘密を抱えたチャールズのことでもある。また、弁護士なのに酒びたりの生活を送っていて、自分でもどうしようもないと思っているシドニーのことでもある。彼らの「人生に甦る」鍵になるのがルーシー。理想的なヒロインである。そのヒロインに恋するチャールズとシドニー。2人が顔がよく似ているというのがまた鍵になる。様々な鍵、パズルのピースが散りばめられていて、後からそれが伏線だったとわかる。最後の怒涛の伏線回収が凄い。

 堕落した人生を送っているシドニー。ルーシーのことは愛しているけれども、この自分は変えられそうにない…と嘆くシーンが何とも言えない。そんなシドニーに希望ある未来を願うルーシー…それなのに…。シドニーの境遇が辛いが、一方のチャールズも辛い立場にある。そして、それが明るみになる…フランス革命が、彼らを運命の渦に巻き込んでゆく。

 2回読み返しましたが、どの登場人物からも目が離せない。最後のまさかの展開に、人間という生き物の不思議さを覚えます。最初に書きましたが、小説、文章だけ(挿絵はあります)なのに、舞台を観ているみたいです。

 訳は、現在入手しやすいのがこの新潮文庫の新訳版のみ。宝塚歌劇団や、他にも舞台化、映画化された作品なのに、訳がこれしかないというのは残念。他の出版社からも出て、他の訳でも読んでみたい。あと、他のディケンズ作品も。長編がほとんどですが…。


 ちなみに、冒頭で人形劇「ホームズ」がきっかけで読んだ…と書きましたが、ノベライズ版ではこの「二都物語」のあらすじが物語の鍵になっている。2人の男が1人の女を愛する物語。しかし、共通点、鍵はそれだけではなかったことが読んでわかりました。脚本の三谷幸喜さんはそれをわかってワトソンが「二都物語」を読んでいる、というのを入れたのだろうか…。
 あと、最初手にした時は結構ボリュームがある本を、15歳のワトソンが愛読しているとは…と思いましたが、読んでみてわかる気がしました。
・詳しくは:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 赤毛クラブの謎
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by halca-kaukana057 | 2015-04-23 23:12 | 本・読書

クリスマス・キャロル(原作&NHKFM・青春アドベンチャー)

 クリスマス・イヴなので、クリスマスらしい作品を。
 先週、NHKFM「青春アドベンチャー」で、ディケンズ「クリスマス・キャロル」を放送していました。興味があったので聴いてみた。原作は読んだことがなかったので、簡単なあらすじだけ頭に入れて聴きました。
NHK:NHKオーディオドラマ:青春アドベンチャー「クリスマス・キャロル」
原作:チャールズ・ディケンズ、脚色:吉田小夏、音楽:森悠也
出演:伊武雅刀、戸田恵子、平田広明、井上裕朗 他
 クリスマス前日。強欲な老商人スクルージは、甥のフレッドにパーティに誘われるが例年どおり「くだらない」とはねつける。その夜、かつての共同経営者で7年前に亡くなったマーレイの亡霊が出現。「これからお前を、三人の精霊が訪れる」と予告して去って行く。精霊たちがスクルージに見せたものは…。
 世界文学史上でも屈指の人間嫌いスクルージに訪れる「クリスマスの奇跡」を描いた文豪ディケンズの古典的名作を、今あらためてオーディオドラマ化してお送りする。


 聴いて、面白かった。古典作品、ファンタジー性も古典的だけど、オーディオドラマなので、聞き手が幽霊のマーレイや、3人のクリスマスの精霊たち、スクルージの表情を想像するのがより楽しい。オーディオドラマ向きの作品だと思った。戸田恵子さんの語りが愛嬌と哀愁を帯びていて、伊武雅刀さんのスクルージはまさにスクルージの雰囲気。音楽も、クリスマスキャロルの歌、鐘などの音の演出も印象に残る。とても面白かった。

 ということで、原作も読んでみました。

クリスマス・キャロル

チャールズ・ディケンズ/村岡花子:訳/新潮社・新潮文庫


クリスマス・キャロル

チャールズ・ディケンズ/ 池 央耿:訳/光文社・光文社古典新訳文庫


 書店にこの2つの訳があったので、両方を読んでみました。昔からある村岡花子訳の新潮文庫版と、光文社古典新訳版。

 物語に関しては、19世紀のイギリス・ロンドンが舞台なのに、そんなに古臭く感じない。近現代のテクノロジーは出てこないけど、クリスマスそのもののお祝い、そしてその精神には変わりはないのだな、と。日本ではロマンスが先行しがち。または、わいわいとパーティーで飲んで食べる。もしくは、家族であたたかい食卓を囲む。クリスチャンなら教会で祈りをささげる。仕事でそれどころじゃない人。関係ない人。どれも、その人なりのクリスマスの過ごし方。私はこうしてひとりブログを書いている。

 主人公のスクルージは守銭奴な老人。クリスマスなどくだらない、そんなことより仕事しろ、金を稼げと考えている。クリスマスを祝おうとする甥や会社の書記がクリスマスを祝おうとすると全否定。そこへ、ともに仕事をしていた亡きマーレイの幽霊がやってくる。マーレイが死後、生きていた頃、目の前の自分の利益だけにとらわれ死後それが重荷になってスクルージの前に現れた時も引きずって、旅を続けている、と…。そんなスクルージの考えを、考えが導くであろう未来を阻止するため、マーレイは3人のクリスマスの精霊をスクルージの前に連れてくる。かつてはクリスマスを純粋に祝っていた子どもの頃・青年のスクルージ。しかし、いつしか屁理屈な守銭奴になってしまい、恋人とも別れることになってしまう。そして現在。会社の書記のボブとその家族のつつましくもあたたかな暮らしとひとつの不安。屁理屈だけど憎めないと自分のことを話す甥。スクルージの心が動き始める。

 私も一度、スクルージのようなクリスマスを迎えたことがある。学生時代、恋人がいる人は恋人と過ごし、いない人は皆で集まってパーティーをしていた。一緒に過ごす人もいない、パーティーに行くのも億劫…人に会いたくない。クリスマスで騒いで何が楽しい?お金もかかるし。料理もいつものものでいい。それよりひとりにしてほしい。そう思って、勉強があるから…とパーティーを断った。読んでいて、そのことを思い出した。

 過去のクリスマスの記憶、現在の自分のいないところで身近にいる人がどんなクリスマスを過ごしているか…それを目の当たりにしたスクルージの心に変化が表れる。スクルージは、ケチで屁理屈な守銭奴だが、悪い人ではない。会社をマーレイと起こし、マーレイが亡き後も真面目に仕事をしてきた。貧乏ではないが、生活も切り詰めている。とても生真面目で、自分自身と、モノ・お金の管理に厳しい。周りにも厳しいので、そこが煙たがられてしまっている。スクルージも庶民、人間なのだ。冷血で無慈悲のようにみえるが、心の中にはあたたかいものを持っている。

 そして、最後の精霊が見せたもの…。スクルージと、書記のボブの家族の運命…。

 現在のクリスマスの精霊が説く言葉が印象に残っています。「無知」と「欠乏」、そして「破滅」。何が、それらを私たちの心の中に芽生えさせる、呼んで来るのか…。あのパーティーを断ったクリスマスの時にも、私の心には現在のクリスマスの精霊が説く言葉が、芽生えていたのだろう。

 クリスマスの精神…クリスマスの日限定のものではない。人々への優しさ、あたたかさ。そんな気持ちを呼び起こしてくれる作品です。
 ちなみに、光文社新訳版の解説に、ディケンズは庶民の目線で、庶民の側に立った作品を書いたということで、日本で言えば山本周五郎とたとえられていてなるほどと思った。もし、山本周五郎がクリスマスの物語を書いたら、どうなっただろう?こんな感じになっただろうか。勿論、山本周五郎は20世紀の作家で、主に書いていたのは時代物、クリスマスなんて縁の無い作家でしたが…。

 原作だけだとイメージしづらいところもあるので、青春アドベンチャー・オーディオドラマ版も聴いてより楽しめました。

 では、皆様もあたたかいクリスマスを。
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by halca-kaukana057 | 2013-12-24 23:48 | 本・読書


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