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土星堪能星見 + 今日は伝統的七夕

 先週末、天気がよかったので久しぶりに望遠鏡を持って星見してきました。春に、星仲間さんたちと観望会をしたのですが、その時も久しぶりに望遠鏡を出したので、望遠鏡操作にもたつくところも少なくなく…お客さんに申し訳なく思い、夏の間に自主練をしようと思っていました。それに、今は土星が見ごろ。土星を観たくて、望遠鏡を出して見晴らしのいいところへ。

 望遠鏡の組立て、ファインダーの調整(これをおろそかにすると、見たい天体を導入するのが遅くなる=操作にもたつく)もすんなりできました。この日は風が強め。雲も時折流れてきます。最初、月を見ようとしたのですが、雲の中に…。

アストロアーツ:【特集】土星を見よう(2017年)
 今年の土星は、傾きにより、環が広く太めに見えます。これを見ておきたかった。私の望遠鏡ではそんなに大きくは見えない、寧ろ小さいですが、環もしっかりと見えました。ずっと見ていました。
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アイピースにカメラをくっつけて、辛うじて撮れた土星。環の感じ、伝わりますかね?

 ずっと土星を愛でていたら、月は沈んでしまった…。他に見たい天体…夏なら、はくちょう座の二重星・アルビレオ。しかし、この時天頂近くにあり、望遠鏡の角度の限界、導入できません。残念、見られませんでした。秋になってもしばらくは見られるので、また今度…。

 アルビレオの話題が出たところで、今日は伝統的七夕です。
アストロアーツ:【特集】七夕/伝統的七夕(2017年)
 7月7日の七夕は梅雨で曇りやすい上に、月の満ち欠けがその年によって異なり、満月近くで星見には適さないことがある…ので、旧暦7月7日を「伝統的七夕」と呼んで、よりこと座・わし座や天の川を観察しやすいようにキャンペーンしています。旧暦7月7日は月は上弦のあたりで、月明かりの影響も受けずに済みます。
 今年の7月7日は満月でした。天気は晴れ。星が見えていました。今年は梅雨明け後も曇り雨のところが多かったですね。週末は晴れたものの、今日は曇りです。伝統的七夕前倒しということで…。

 その7月7日に、面白いツイートを読みました。フィンランド大使館さんのツイートです。
フィンランド語で「りんぬんらた」ってなーんだ?りんとぅ=鳥で、らた=道。つまり、鳥の道。これは天の川を意味するよ。古代フィンランドでは、南に暖かな「鳥の住処」があって、そこに鳥が道を通って毎年移動すると信じられてたんだ。ちなみに#七夕 の習慣はないよ #フィンたんのふぃん単
駐日フィンランド大使館‏ @FinEmbTokyo:2017年7月7日 15:17
 へぇ、初めて聞いた。調べてみました。「Linnunrata」=天の川、つまり、天の川銀河、銀河系のこと。フィンランド語では、神話の上だけではなく、天文学の銀河系のことも「Linnunrata」と呼んでいるそうです。古代からの神話、言い伝えで今でも「鳥の道」と呼ぶなんていいな、素敵だなと思いました。フィンランドの神話といえば民族叙事詩「カレワラ」ですが、「カレワラ」には「Linnunrata」の記述はありません。イルマタル(大気の精、シベリウスの「ルオンノタール」)の宇宙創造はありますが、古代フィンランドの宇宙観、世界観については書かれていません。現在の「カレワラ」を編纂したリョンロットも書ききれなかったフィンランドの歴史と神話があるんだなと思いました。
参考にしたのはこちら:ウィキペディア:フィンランドの神話
◇フィンランド語での「Linnunrata」のウィキペディア:Linnunrata

 今日、晴れている地域の皆さんは織姫星と彦星、夏の大三角を探して見てくださいね。


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by halca-kaukana057 | 2017-08-28 21:58 | 宇宙・天文

四人の交差点

 前回もフィンランド発の本について書きましたが、今回もフィンランドでベストセラーになった小説の日本語版を。フィンランド文学が次々と日本語に翻訳され、日本に紹介され読めるようになるのは嬉しいです。


四人の交差点
トンミ・キンヌネン:著、古市真由美:訳 / 新潮社、新潮クレスト・ブックス / 2016

 フィンランドの北部のある村で、マリアは助産師をしていた。その娘のラハヤは写真技師。ラハヤの息子のヨハンネスの嫁のカーリナはその家に漂う重い空気を変えたかった。ラハヤの夫のオンニは大工で、家を建て大きくしていった。その家には100年の歴史と、暮らしと、重さと、秘密があった。


 この本のあらすじを書けと言われても、ちょっと難しいです。マリアは19世紀末からこの家に住み、助産師として働いていた。それから20世紀末までの、一家・一族、この家にまつわる物語が始まる。4人の視点で物語が語られる。それはどこにでもありそうな家族の姿でもあるし、この家にしかない秘密でもある。

 読んでいて、シベリウスの後期の交響曲(4番以降)を聴いているような気持ちになった。静かで、美しく儚くもあり、重く暗い。家族に何かが起こり、怒ったり怒鳴ったりもするが、その声もそこに残らず、すぐに消えてしまう。楽しいことがあっても、楽天的ではない。根底にあるのは静けさで、森のような、日照時間の短い冬の夜のような暗さである。

 そして、閉鎖的でもある。この家はどんどん建て増しをして大きくなるが、外に開かれていない。この家族だけで終わってしまう。孤独で、何かあっても助けも何もない。フィンランドというと福祉国家で、子育てや介護などが充実しているイメージがあるが、それは明るい部分、いい部分だけを見ていたのかもしれないと思ってしまう。ヘルシンキから遠く離れているのも鍵かもしれない。この作品で描かれる喜びも悲しみも、嘆きもこの家族だけで完結してしまう。奔放に見えるようなラハヤも、やはり閉鎖的な苦しみを抱いている。

 でも、描かれる日常は、どこにでもある日常だ。料理…パンケーキやスープ、サウナ、サマーハウスなど、フィンランドの日常にあるものが、リアリティをもって描かれている。詳しくて、その部分は鮮やかだ。鮮やかなのに、根底はモノクロの雰囲気。

 この家に嫁いできて、家の空気を何とか変えたいと思うヨハンネスの嫁のカーリナ。頑固な姑のラハヤに抵抗し、自分の思い描く"家"を作ろうするが…。カーリナとラハヤの関係に、胸が痛む。

 そして、カーリナの方が後の時代だが、最後にラハヤの夫オンニの物語を語るのは理由がある。フィンランド、北欧ならずっと進んでいそうなことだが、解説を読むとそうでもなかった。オンニが、現代に生まれていたら…と思う。オンニが教会の礼拝堂で祈るシーンは、心が痛む。

 物語では、第二次大戦中の継続戦争も鍵となります。フィンランドも第二次大戦の敗戦国。継続戦争中、一般市民はどうしていたのか、出兵した男たちはどうなったのか。これもフィンランドの歴史で現実。フィンランドも紆余曲折あった国なんだなと思う。

 前回の記事の「マッティは今日も憂鬱」では、面白おかしく、自虐ジョークも入れてのフィンランド人が描かれていたが、この「四つの交差点」はもっと生々しい部分でのフィンランドの人々と暮らしと歴史を描いている。フィンランドの静けさと深さと、強さを感じられる物語です。

・過去関連記事:マッティは今日も憂鬱
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by halca-kaukana057 | 2017-07-01 22:43 | 本・読書

マッティは今日も憂鬱 フィンランド人の不思議

 夏至は21日でしたが、この週末は北欧では夏至祭。フィンランドもユハンヌス(Juhannus)です。いつもは夏至、夏至祭、白夜の季節に聴きたいフィンランド、北欧の音楽について書いてきましたが、今年は本を。


マッティは今日も憂鬱 フィンランド人の不思議
カロリーナ・コルホネン:著、柳澤はるか:訳 / 方丈社 / 2017

 フィンランドで大人気、ベストセラーのコミック「FINNISH NIGHTMARES」の日本語版です。これまで、何度も海外向けのフィンランドの情報ツイッターアカウントで紹介されていて、気になっていました。日本語訳出版が決まった時はとても嬉しかったです。これ絶対買う、と。

 この本の主人公、マッティは典型的なフィンランド人男性。そんなマッティが日々遭遇する「苦手なこと」「避けたいこと」「憂鬱なこと」「フィンランド人あるある」をコミカルに、時に自虐的ジョークを交えて書かれています。マッティが可愛いです。シンプルな、愛らしいキャラクターです。フィンランドのキャラクターはムーミンだけじゃない!?これからはマッティもよろしく!

 帯に、「なぜか日本人にそっくり!?」とあるのですが、読んでいると、「わかる」「あるある」「マッティ、君は私か」と思うところばかり。これまで、他の本やメディアでも、フィンランド人の性格・国民性と日本人のそれは似ていると言われてきました。この本は日本向けに書かれたものではありません。フィンランド人のコルホネンさんが、フィンランド人を紹介するために書きました。それが、日本でも、日本人に似ているんじゃないかと受け入れられている。それが不思議ですし、嬉しくもあります。

 平穏と静けさと個人的領域(パーソナルスペース、他者と自分との距離。フィンランド人は広め)を大事にしているマッティ。シャイで、照れ屋で、目立つのが苦手。自己主張するのも苦手。多くは書きません。是非ともこの本を手にとって、読んでください。「あるある」「わかる」の意味がわかると思います(多分)

 フィンランド本国で出版されている本も、本文は英語です。でも、サウナやクリスマスのミルク粥など、フィンランドの文化も出てきます。あと、フィンランドのバスの乗り方や、フィンランド人と信号、ハロウィンなど、フィンランドに旅行する際、住む際に注意したほうがいいことも書かれているので、フィンランドに行く予定がある方には是非オススメします。

 森と湖の民と呼ばれるスオミ(Suomi)の民。湖のほとりの森の中で暮らしている(都市で生活している人も休みになれば質素なサマーハウスで暮らす)人々の由縁がわかる気がします。ユハンヌスは、湖のほとりでかがり火を燃やし、なかなか暗くならない、すぐに明ける夜を謳歌します。短い夏を存分に楽しもうと。ユハンヌスのフィンランドの人たちには、この本にある「憂鬱なこと」が起きないで楽しく過ごせるよう、願うばかりです。

 フィンランド本国では第2弾も出版されたそうです。第2弾も日本語訳の出版、よろしくお願いします!
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by halca-kaukana057 | 2017-06-23 22:49 | 本・読書

ラハティ シベリウス音楽祭2016 まとめ

 もう3ヶ月も前…9月8日~11日までフィンランドのラハティで開催された、シベリウス音楽祭。今年で17回目です。昨年はシベリウス生誕150年で普段よりも規模も大きく盛り上がりました。今年は通常の音楽祭の形式に戻って、オーケストラはラハティ交響楽団。あと室内楽の演奏会もあります。昨年はフィンランド国営放送(YLE)で放送がありましたが、今年はなし。でも、ラハティ響の演奏会の動画を配信しているサイトで公開しています。その一部の演奏会映像の公開期限が迫ってきた…ので、覚え書きで記事にします。
(動画が全部揃うまで時間がかかった&10月は忙しかった、というのが言い訳です…汗)

 今年の注目ポイントは、ラハティ響の音楽監督が交代したこと。オッコ・カムさんの後を、ディーマ・スロボデニュークさんが引き継ぎました。スロボデニュークさんはロシア人ですが、シベリウス音楽院指揮科・ヨルマ・パヌラ門下生で、フィンランド放送響他フィンランドのオーケストラとは縁の深い方。フィンランド語も堪能とのこと。新しい音楽監督のお披露目演奏会・シーズンオープニングにもなった今年のシベリウス音楽祭。聴けるうちにどうぞ。

【1日目】
タピオラ op.112(11月18日まで)
ポヒョラの娘 op.49(11月19日まで)
交響曲第1番 ホ短調 op.39(11月21日まで)
鶴のいる情景 op.44-2[アンコール](12月16日まで)
美しい組曲 (Suite Mignonne) op.98a[アンコール](12月17日まで)

 今年も「タピオラ」から始まりました。続いて「ポヒョラの娘」、カレワラ作品続きです。アンコールの「美しい組曲」は弦楽とフルートがまさに美しい作品です。

【2日目】
森の精(The Dryad) op.45-1(11月22日まで)
テンペスト 第2組曲 op.109-2(11月22日まで)
交響曲第4番 イ短調 op.63(11月25日まで)
伯爵夫人の肖像 JS88[アンコール](12月20日まで)
ベルシャザール王の饗宴 第2曲:孤独 op.51-2[アンコール](12月26日まで)

 今年はシェイクスピア没後400年。夏のBBCプロムスでもシェイクスピアに関連した作品がいくつも取り上げられましたが、シベリウス音楽祭でもシベリウスのシェイクスピア作品「テンペスト」を取り上げています。今年のアンコールでも「伯爵夫人の肖像」出てきました。

【3日目】
ペレアスとメリザンド op.46(12月3日まで)
パンとエコー op.53(12月5日まで)
交響曲第3番 ハ長調 op.52(12月9日まで)
フィンランディア op.26[アンコール](12月12日まで)

 珍しい作品「パンとエコー」が登場。舞踏的間奏曲、優美なワルツ、溌剌としてドラマティックな舞曲。最後は恒例の「フィンランディア」で締め。

 ちなみに来年は、シベリウス没後60年&フィンランド独立100年。来年もゲストを呼びます。フィンランドの若手指揮者・サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮エーテボリ交響楽団。2017年秋からロウヴァリさんはエーテボリ響の首席指揮者に就任するので、就任したばかりの演奏会になります。

・過去関連記事 去年のシベリウス音楽祭:Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
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by halca-kaukana057 | 2016-11-07 22:46 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤

 昨年からゆっくりと進めてきた、シベリウス「クレルヴォ交響曲」op.7 聴き比べ企画。今回で一旦最終回です。このシリーズの最初に、「クレルヴォ」の世界初の録音となったパーヴォ・ベルグルンド:指揮 ボーンマス交響楽団で始めたのですが、最後もベルグルンドで締めたいと思います。今度は地元フィンランドのヘルシンキフィルとの演奏です。

パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
エーヴァ=リーサ・サーリネン(メゾソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)
ソヴィエト・ロシア国立アカデミー・エストニア男声合唱団
ヘルシンキ大学男声合唱団


 ボーンマス響との録音が1970年。このヘルシンキ・フィルとは1985年の録音です。以前取り上げたネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響と同じ年です。第3楽章、クレルヴォの妹役のサーリネンさんはメゾソプラノ。バリトンのヒュンニネンさんは他の録音でも大活躍。フィンランドの名バリトンであり、名クレルヴォ・バリトンです。

 初録音から15年。速度はそんなに変わりありません。しかし、1楽章は引きしまった感じがしますし、強音から弱音までの幅が広くなった。冒頭はゆっくりめに始まるのはボーンマス響もヘルシンキ・フィルも変わりないのですが、弦が澄んでいる。静寂を大事にするところは長く取って次の音をより印象的に。特に第2楽章後半で弱音からじわじわと強音へ上げてくるところは息をのみます。
 第4楽章はこれまでヒロイックな金管に注目していましたが、管楽器の高音も弦楽器のうねりも印象に残ります。それから、4分40秒あたり、金管の2音の連打からの、うまく言葉に出来ないのですが…この部分がロックな音をしているなと感じました。ウンタモを滅ぼそうと出征し、怒りで感情が制御できないような。
 男声合唱はヘルシンキ大学男声合唱団と、当時はまだソヴィエトだったエストニアの男声合唱団と2つの合唱団が参加。力強い合唱。クレルヴォとクレルヴォの妹の歌も悲痛。クレルヴォの妹は今回メゾソプラノですが、ソプラノのような澄んだ高音も出せていて、悲痛だけど美しいと感じました。クレルヴォの嘆きは重々しく。この重々しさから第4楽章、そして第5楽章へ進むのに、物語を感じます。スケールの大きな演奏です。

 このCD(国内版)、2枚組で、第1~3楽章が1枚目、第4・5楽章が2枚目と分かれています。わざわざCDを入れかえる必要があるのが面倒です…。でも、2枚目にはカンタータ「故郷(祖国)」op.92、「火の起源」op.32と男声合唱とオーケストラのための作品が入っています。どちらも大好きな作品。これが入っているのが嬉しいです。「火の起源」は「クレルヴォ」と同じく「カレワラ」に基づく作品。「故郷(祖国)」は、その名の通り、フィンランドの美しい自然や「カレワラ」を讃える歌。美しいです。

 ということで、今回で「クレルヴォ」聴き比べは一旦終わり。新しい演奏を聴いたら、また書くと思います。

 なかなか演奏機会も少ない「クレルヴォ」ですが、来年、日本で演奏されます。生で聴けるチャンスです!
東京都交響楽団:2017年ラインナップ発表
東京都交響楽団:第842回 定期演奏会Aシリーズ
2017年11月8日(水) 19:00開演

指揮:ハンヌ・リントゥ
ソプラノ:ニーナ・ケイテル
バリトン:トゥオマス・プルシオ
男声合唱:フィンランド ・ポリテク男声合唱団

シベリウス:クレルヴォ交響曲 op.7

 昨年フィンランド放送交響楽団と来日したリントゥが、都響で「クレルヴォ」をやります!!シベリウス没後60年&フィンランド独立100年の2017年、ぴったりのプログラムです。
 日本のプロオケが「クレルヴォ」を演奏するのは何年ぶり、何十年ぶりなんだろう…?(昨年新田ユリ:指揮で演奏したアイノラ交響楽団はアマオケ)。男声合唱はプロムスでも歌ったポリテク合唱団。まだまだ先ですが、いいなぁこれ。
 ちなみに、リントゥはフィンランド放送響では「クレルヴォ」を指揮してない…おそらく、2017年秋から始まる2017-18年シーズンの始めでフィンランド放送響で演奏して、それを都響に持ってくるかと思います。まだ予定が出てないので予想です。シベリウス生誕150年の昨年も多かったですが、来年はまた「クレルヴォ」の演奏が増えるんだろうなぁ。嬉しいです。
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by halca-kaukana057 | 2016-10-18 22:13 | 音楽

インスタント サーモンスープ 再び

 寒くなってきて、あたたかい食べ物が食べたい季節になりました。寒い日に食べたくなるのが、フィンランドのサーモンスープ「ロヒケイット(Lohikeitto)」。今年も手軽に食べられるインスタントのスープが登場しました。

永谷園:「冷え知らず」さんの生姜サーモンクリームスープ フィンランド風
 生姜で身体をあたためるシリーズにフィンランドのサーモンスープ味が登場です。
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 作ってみました。お湯を注ぐだけ。
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これまでのインスタント・サーモンスープと比べると、クルトンが入っていません。ジャガイモやニンジンも入っていません。小松菜、そして生姜がたくさん入っています。
 食べる前に、鮭を探したのですが、小さい…。ほとんど粒です。
 食べてみた。生姜を先に食べてしまうと、生姜が強過ぎてあとはミルクの味しかしません。ショウガを後回しにしても、ディル入ってるのこれ?と思うほどディルの風味が薄い。ディルよりも生姜の存在感が強いです。
 生姜が好きな人にはおすすめします。まぁ、「フィンランド」なのでね…多分…。味は美味しいです。

 サーモンスープではなく、フィンランドと一言も書かれていないのですが、こちらのほうがサーモンスープの味に近いと思います。
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Q・B・B:ワインに合うベビーチーズ サーモン&ハーブ入り
 4個入りのベビーチーズ。サーモンとハーブなど(バジル、オレガノ、ローレル、タイム、ローズマリー、オニオン、ガーリック)が入っています。ディルは入ってなかった。でも、タマネギや様々なハーブとサーモンは、サーモンスープを思わせます。ワインがなくても美味しいです。

 またサーモンスープ(ロヒケイット)は作って食べます。
【これまで出たインスタント・サーモンスープ】
「フィンランドサーモンスープ」を食べてみた
2011年、エースコックより
ムーミン・フィンランドサーモンミルクスープを食べてみた
2014年、日清食品より
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by halca-kaukana057 | 2016-10-15 21:52 | フィンランド・Suomi/北欧

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤

 今日はシベリウスの命日。59回目です。来年は没後60年(&フィンランド独立100年).この頃、プロムスの溜まっているオンデマンドばかり聴いて、シベリウスをあまり聴いていませんでした。今年のプロムス、シベリウスは1公演1曲しかなかった…(去年たくさんやったでしょうが)。来年は没後60年だからまた増えるといいな。

 まだ続いている「クレルヴォ」交響曲を聴こうシリーズ。まだあるんです。店頭で見つけて、指揮者の名前にこれは聴いてみたい!と思い買ったCDです。

ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
ヨハンナ・ルサネン(ソプラノ)、エサ・ルーットゥネン(バリトン)
ラウル・イスタヴァ男声合唱団


 指揮は、今世界各地で活躍しているフィンランド指揮者たちを育てた、元シベリウス音楽院指揮科教授のヨルマ・パヌラ。パヌラ先生が指揮をしている録音をあまり聴いたことがなかったので、これは聴きたいと思いました。男声合唱は前回のネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響と同じくラウル・イスタヴァ男声合唱団。1996年の録音です。

 シベリウスの番号つきの交響曲と、「クレルヴォ交響曲」の違いは、はっきりとした基づくものがあるかどうか。番号つきの交響曲は、それぞれの作曲の際のエピソードやシベリウス自身の言葉も残されていて、聴く手がかりにはなりますが、自由に想像します。
 一方の「クレルヴォ交響曲」は、「カレワラ」の「クレルヴォ」の章に基づいている。悲劇の英雄クレルヴォを描いている。第3・5楽章では「カレワラ」から引用した声楽独唱と男声合唱が入る。明確に、クレルヴォのこの章とわかる。
 でも、これまで様々な「クレルヴォ交響曲」を聴いてきて、悲劇の英雄クレルヴォも一様ではないなと感じた。きっと幼い頃から「カレワラ」に親しんできたフィンランドの人たちの抱くクレルヴォと、日本語訳の「カレワラ」を読んで私が抱くクレルヴォのイメージは異なる。また、「カレワラ」は叙事詩。語り口調や表現は普通の物語とは違う。1,2,4楽章は副題から、クレルヴォの章のこの部分とわかるけど、その章全部を描いているのか、ある一部分だけど描いているのか(すみません勉強不足なだけです)、わかりにくいところもある。それぞれの演奏を聴いて、それぞれのクレルヴォ像に触れられるのが興味深い。

 パヌラ先生の「クレルヴォ」は、繊細なところもはっきりと聴こえる。強いけれども、憎しみや苦しみで心に暗い影のひだを沢山を持っているようなクレルヴォ。第1楽章はゆっくりめに始まるけれども、第3楽章の始めのほうでは速めで、独唱部分になるとゆっくりになり、よく語り歌う。ソプラノのルサネンさんの透明な声がきれい。ルーットゥネンさんのバリトンは、オケとのバランスがあまりよくなくて残念ですが、悲痛な叫び。第3・5楽章の男声合唱も、北欧らしい澄んだ、やわらかい、繊細さを持っている。先ほども書いたように、豪快で「爆演」なネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響のと同じ合唱団。録音された年は10年ほど違いますが、これ同じ合唱団?と思ってしまう。第5楽章、最後は、オーケストラはジャン!ジャーン!と強い音で劇的に終わるのですが、パヌラ盤はソフト。あれ?と思ってしまう。消え入るようなクレルヴォの死。これはこれで印象深い。

 「クレルヴォ交響曲」がますます興味深くなる演奏です。
 ちなみに、演奏のトゥルク・フィルの現在の首席指揮者はレイフ・セーゲルスタム。シベリウスの管弦楽曲を次々と録音していて、こちらも興味深いです。

 「クレルヴォ」シリーズ、あと1回で区切りをつけようと思います。


【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
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by halca-kaukana057 | 2016-09-20 22:13 | 音楽

【映画】劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス

 昨年公開された映画「劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス」(原題:Moomins on the Riviera/Muumit Rivieralla)をようやく観ました。劇場では観れず、DVD待ちでした。

劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス[通常版] [DVD]

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◇公式サイト:映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』公式サイト
◇原作本公式サイト:筑摩書房:映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』特設サイト
 原作は、ムーミン・コミックス第10巻「春の気分」に収録されている「南の島へくりだそう(Familjen Lever Högt)」.

ムーミン・コミックス(10) 春の気分

トーベ・ヤンソン、ラルス・ヤンソン:著/冨原眞弓:訳/筑摩書房


南の海で楽しいバカンス

トーベ・ヤンソン:原作/末延弘子:訳/冨原眞弓:監修/筑摩書房


 原作を元に、映画を絵本化。2014年、フィンランドで刊行されたものの日本語版。

 これまで、ムーミンの物語はフィンランド本国ではアニメ化されていませんでした。今回、初めてフィンランドでアニメ化。全編手描きです。手描きでこそムーミンです。音楽もとてもいいです。サントラあるといいのにな。

 ムーミン谷の近くの海。ある日、海賊船が難波しているのをムーミンたちが見つけます。船から逃げ出した捕虜のミムラ、ミィ姉妹に出会い、船の中には何があるだろう…ムーミンとムーミンパパ、ムーミンママは船の中へ。熱帯植物の種や花火を見つけます。
 一方、フローレン(スノークのお嬢さん)は南の海のリゾート・リヴィエラについての記事を雑誌で読み、行きたいと言い出します。行くことに決めたムーミン一家とミィは、ボートに乗りリヴィエラを目指します。途中嵐に遭いながらも、何とかリヴィエラに着いた一行。ムーミン谷とは全く異なるリゾートに、ムーミン一行は…。

 まず、アニメの絵。日本のアニメ「楽しいムーミン一家」のようなカラフルなパステル調とも違う、あたたかな、幻想的な色遣い。ムーミンたちのキャラクターデザインは原作のムーミンコミックスを再現しているので、アニメのムーミンと言えば「楽しいムーミン一家」の私は慣れるまで時間がかかりました。

 物語は不思議です。海賊の箇所など、原作のムーミン・コミックスにはないところもあります。ミィとミムラとの出会いも、何故こんなところで、こんな時に…?ストーリーで、首を傾げたくなるところは少なくありません。そう、この何かズレてる不思議な感覚が、この映画ムーミンの持ち味なのだと思います。ムーミン谷を出て、全く違う世界にやって来たムーミン一行。リヴィエラでのヴァカンスを楽しむフローレン、友・モンガガ侯爵という話し相手が出来たムーミンパパ。一方で、ムーミンママは部屋や食事などで、豪華なホテルでの暮らしに馴染めない。ムーミンも、フローレンが金持ちのクラークと仲良くしていたり、大女優・オードリー・グラマーに夢中なのに納得がいかない。ミィはいつものマイペースです。ムーミンパパがモンガガ侯爵と飲みながら過去の冒険を語り合ったりしているのはいつものムーミンパパだなとは感じるのですが、フローレンが何かズレている。金持ちたちの中に入ろうと、華やかな服を買おうとしてあることをしたり、クラークとの付き合いが何か合わない。「ムーミン」の物語の世界は、ムーミン谷。ムーミン谷で「イモを育て、平和に暮らしている」。自給自足で、(北欧がモデルの舞台?の)ムーミン谷の自然の中で、様々な人々や動物たちと気ままに暮らしている。一方、リヴィエラはお金が無いと何も出来ない。ホテルや金持ちたちとの社交パーティでは、そのコミュニティでのルールがある。ムーミンママはチップのルールも知らない。知らなくて当然、そんな世界とは無関係に暮らしてきたのだから。ムーミン視点で見ると、リヴィエラは何か違う、何かズレた世界。

 クラークやオードリー・グラマーはリヴィエラの世界の住人。モンガガ侯爵がキーパーソンになります。金持ちの貴族だけれども、質素で自由なボヘミアンな生活に憧れている。実は芸術家。ムーミンパパとの出会いで、自分もムーミンパパのように暮らしてみたいと、邸宅から離れて、芸術に没頭する暮らしを始めるが…。それから、もうひとり(人ではないが)キーパーソンが犬のピンプル。ピンプルも原作には出てこないキャラクタです。犬だけど、ネコしか好きになれない。ムーミンママはそんなピンプルの友達を探し、あることを思いつきます。

 そのコミュニティ(リヴィエラ)に馴染んでいる、そこでの生活が当たり前だと思っている人。一方で、今いる場所に違和感を覚え、違う世界で生きたいと思っている人。リヴィエラで、ムーミンたちはそんなふたつのタイプの人たちに出会います。違う世界で生きたいと思っている人はどうするか。それは映画を観てのお楽しみ。特にピンプルは深いキャラクタです。

 これまで様々な媒体で、「ムーミン」の物語とトーヴェ・ヤンソンの想いに触れてきましたが、この映画でもヤンソンの想いが反映されていました。反映されてなければ「ムーミン」じゃない。「ムーミン・コミックス」は「たのしいムーミン一家」が英訳され、イギリスで人気が出た後に、ロンドンの夕刊紙「イブニング・ニュース」に連載されたもの。「ムーミン・コミックス」では一気に世界的作家となったヤンソンの心の内を垣間見ることができます。この原作「南の海にくりだそう」でも、人気作家ヤンソンの心の内が表現されているのかな、と思ったりもしました。

 可愛いアニメのムーミン…と思って観ると、ちょっと拍子抜け、もしくは違和感を覚えるかもしれません。是非原作もお供に、「ムーミン」とヤンソンの独特の世界に触れられるアニメです。

 最後に、映画の中では問題発言?も出てきます。それ言っちゃイカンだろ!wとツッコミたくなるセリフがいくつか。元のフィンランド語、英語版でも同じなんだろうか…。こんなシニカルさもムーミンの持ち味です。
 あと、フローレンですが、この名前は日本語版での名前。アニメ「楽しいムーミン一家」がベースになっています。フィンランド語ではNiiskuneiti(ニース(フィンランド語版でのスノーク)のお嬢さん)、英語ではSnorkmaiden(スノークのお嬢さん)です。
◇英語版ウィキペディア。日本語版はない!:Wikipedia:Moomins on the Riviera
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by halca-kaukana057 | 2016-06-20 21:59 | フィンランド・Suomi/北欧

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤

 前回の投稿からかなり間が開いてしまいました。体調がよくなく、集中して長い曲を聴く気力体力がありませんでした。回復してきたので再開します、シベリウス:クレルヴォ交響曲聴き比べシリーズ。生誕150年記念…過ぎてしまったじゃないか…いいえ。シベリウスの150年の誕生日の間、2016年12月7日までは生誕150年だと考えています!(何度も書きますw)シベリウスが12月生まれでよかったですw

 前回は150年記念の特別演奏会での演奏でしたが、今回からは一般に発売されているCDの録音にに戻ります。
 今回取り上げるのはこちら。
オスモ・ヴァンスカ指揮、ラハティ交響楽団
リッリ・パーシキヴィ(メゾソプラノ)、ライモ・ラウッカ(バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(男声合唱)


 シベリウスと言えば、ヴァンスカ&ラハティ響のコンビは外せません。勿論「クレルヴォ交響曲」も録音しています。2003年の来日公演でも演奏されました。日本で「クレルヴォ交響曲」を聴ける機会はなかなかないですね…。

 この演奏、まず、長い。平均的な演奏時間は73分程度。ベートーヴェン第九と同じぐらい、と前に書きました。しかし、ヴァンスカ&ラハティ響盤は80分あります。特に第2楽章「クレルヴォの青春」はゆっくりと。一般的な演奏は14~15分のところを、19分かけて演奏しています。溜めるところをじっくり溜め、休符もたっぷりと休符をとる。全体的にやわらかい音色。ヴァンスカ&ラハティ響お得意の「スーパーピアニッシモ」が随所でいかされていて、その緊張感にはっとします。緊張感と言っても、鋭い突き刺さるような緊張感というよりも、「静寂がものを言う」「音が鳴っているけど静寂を感じる」シベリウスの音楽を表現するような弱音、緊張感です。

 この演奏の特徴的なところがもうひとつ。第3楽章「クレルヴォとその妹」で出てくるクレルヴォの妹役がメゾソプラノであること。普通はソプラノです。まれにメゾソプラノが歌う録音が存在します。歌うのはフィンランドの名メゾソプラノ・リッリ・パーシキヴィさん。ソプラノに負けない澄んだ高音と、メゾソプラノだからこその低音が映えます。クレルヴォも過酷な運命に立ち向かうことになりますが、妹もやはり過酷な運命を背負っている。クレルヴォに出会った時に投げつける乱暴な言葉や、自身の過去、そして嘆きの歌は深いメゾソプラノの方が合うかもしれない、とも思いました。
 クレルヴォの嘆きの部分も、ハリのある深いバリトン。この歌に入る前に、長く休符をとっています。

 ヘルシンキ大学男声合唱団の合唱も、ソフトな感じです。他の録音ならもっと鋭利な歌い方をするところを、儚いようなやわらかい歌い方をしています。でも、第5楽章「クレルヴォの死」の最後は劇的に。ヘルシンキ大学男声合唱団は、このシリーズ1回目のベルグルンド指揮ボーンマス響の演奏でも歌っています。同じ(とはいえ時代もメンバーも変わった)合唱団でも、解釈により歌い方を変えているのが興味深いです。カレワラのクレルヴォの章をどう読み込んでいるかでも違いが出ているのでしょうか。面白いです。

 音、各パートの構築も緻密で、他の録音ではあまり聴こえてこなかった楽器も聴こえてきて、そうだったのかと思うところもありました。さすがは優秀録音のBISです。

 ヴァンスカさんは現在音楽監督を務めるミネソタ管でも、以前クレルヴォ交響曲を演奏していました。ミネソタ管は色々ありましたが、持ち直してきて、途中で止まっていたシベリウス交響曲全集も再開するそうです。本当によかった…一時はどうなるかと…。クレルヴォ交響曲も入るとのこと。楽しみです。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 ベルグルンド指揮ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 サラステ指揮フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
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by halca-kaukana057 | 2016-05-29 22:33 | 音楽

フィンランド 白夜の国に光の夢

 図書館で見つけて、面白そうだと借りてきた本。タイトルだけで気になりました。


フィンランド 白夜の国に光の夢 (世界・わが心の旅)
石井幹子/日本放送出版協会/1996

 NHKBS2で放送された「世界・わが心の旅」シリーズのフィンランド編の書籍化です。番組は見たことはありません。照明デザイナーの石井幹子さんが大学卒業後の1965年、北欧デザインを紹介した本を読んだことがきっかけで、フィンランドで働きながら留学したいと考える。特に気になった女性デザイナー・リーサ・ヨハンソン・パッペさんの下で照明デザインの勉強をしたいとフィンランドへ。ヘルシンキにある、ストックスマン・オルノ社で働きながら、フィンランドの自然や人々、そして光に対するフィンランド人の感性に触れ暮らす毎日。


 本を読んで、これは番組を観たかったなぁ。本にも写真はいくつが掲載されているのですが、季節や時間で変化する光とヘルシンキの町並み、石井さんがどのようにデザインの仕事を手がけていったのか、作られた照明器具などは映像で観たかった。書籍では、石井さんがフィンランドに仕事をしながら留学した時のこと、フィンランド人の光に対する捉え方や暮らし、番組で30年ぶりにフィンランドを訪れたエッセイになっています。

 北欧デザインというと、フィンランドだとマリメッコのようなカラフルなテキスタイル、アルテックのような木のぬくもりを感じられるシンプルな椅子、イッタラやアラビアのような生活に溶け込む食器を思い浮かべますが、照明も忘れてはいけません。石井さんがフィンランドに留学した後の作品ですが、ハッリ・コスキネンの「ブロックランプ」…氷のようなガラスに電球を閉じ込めたようなライトなど、やわらかくあたたかい光を演出するデザインの照明機器が多いです。シンプルで、木やすりガラスを使っているあたりは日本と似ているような感じもします。そんな照明デザインがどのように生まれたのか。フィンランドの人々の暮らし、フィンランドの気候にヒントがありました。

 春分を過ぎ、昼の時間が長くなってきましたが、夜の時間が長く、さらに雪雲で日照時間も少ない冬場は暗く、冬季うつ病になりやすい…わかります。雪明りでまだ明るいとも思えますが、吹雪の日は本当に暗い。さらに寒い。これだけでもう気分は落ち込み、憂鬱になります。北日本でもこの有様なので、フィンランド・北欧諸国ではもっと厳しいのだろうなと思います。冬をなるべく明るく暖かく過ごそうと、照明やキャンドルで光を演出し、大事にするフィンランドの人々。一方、夏になり、白夜の季節でも、その明るさの中で思う存分楽しむ。自然の中の光と闇の狭間で、フィンランドの人々の光への感性が磨かれていくのだなと感じました。

 その照明も、ただ明るくすればいいというものではない。日本のような蛍光灯の白い明るさの強い照明で部屋を均一に明るく、というのはない。間接照明でやわらかく、本を読む時など明るい照明が必要な時はライトでそこだけを明るくする。闇を全否定しない。暗い冬の長い夜、光で闇を一切なくすのではなく、共存している感じがある。グラデーションを大事にしている。

 フィンランドの人々との出会いや彼らの暮らしにも書かれています。サウナや、家で食事に頻繁に友人たちを招く。現在と同じように、1960年代から既にフィンランドは女性の社会進出が盛んな国だった。また、スウェーデン語系フィンランド人についても触れています。あと、旧ソ連との関係も。1960年代、冷戦真っ只中です。

 30年後に石井さんがフィンランドを訪れて向かったのは、フィンランディアホール。アルヴァ・アアルト設計のヘルシンキの名所です。かつてはフィンランド放送響、ヘルシンキフィルの拠点となっていましたが、音響が悪いとずっと言われてきました…。そこで現在は、サントリーホールの音響も手がけた永田音響設計による、ヘルシンキ・ミュージック・センターが出来、2つのオーケストラの拠点であり、シベリウス音楽院でも利用し、ヘルシンキの演奏会・音楽界の拠点になっています。とはいえ、やはりアアルト設計のあの白い内壁のデザインは美しいなと思います。照明の関係で譜面台にひとつずつライトが付いているのも、演奏する側からはどうかわからないのですが素敵。まさに光と暗さを共存させている。この2つのホールの証明の使い方を見ると、とても対照的だなと感じます。

 石井さんは旅の締めくくりにロヴァニエミ、ラップランドへ。オーロラを見て、「光のシンフォニー」と。フィンランドはやわらかな光と共に暮らしている。そんなフィンランドに、またさらに惹かれました。
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by halca-kaukana057 | 2016-03-23 22:27 | 本・読書


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