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”心地よい”を求めて 「フィンランドのくらしとデザイン展」本編

 本編まで、前置きが長かった…。青森県立美術館特別展「フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展」の展示内容について書きます。以前の記事で、4月7日の初日のトークセッション、展示そのものは4月中旬と先日観てきました。書いていることは、2回の観覧が混ぜてあります。

青森県立美術館:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展

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 後ろにフィンランド国旗でも掲げてあるかと思ったけど、無かったよ。

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 上が4月、下が先日の写真。4月は中旬でも、まだ雪があった青森。今は風が清々しく、緑が麗しい。

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 この白い建物は、いつ観ても大好きです!この建築そのものが展示、芸術ですよ。入り口のところの屋根の曲線が好きです。

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 4月に行った時は無かったもの。駐日フィンランド大使のヤリ・グスタフソンさんも以前いらっしゃった。その時、青森県知事にプレゼントしたものがエントランスに展示されていました。サイン入りの図録。
 ちなみに、駐日フィンランド大使館といえば、公式twitterが話題になってますね。「全て把握しております。」私も愛読してます。

 展示を観る時、音声ガイドを借りることもできます。借りて聞いて見ました。ナレーションは、アニメ「楽しいムーミン一家」のムーミン役・高山みなみさん。所々で、「ムーミン」原作の一説を朗読する部分もあり、ムーミンと一緒に展示を観ているかのよう。ちなみに、私にとってのアニメムーミンはこの「楽しい~」。現在BSプレミアムで放送中。しっかり録画してます。
 さて、展示ですが、まず現在世界中で愛されているフィンランドのデザイン・プロダクトができる発端となった、19世紀末~20世紀初頭のフィンランドのナショナル・ロマンティズムについて。アクセリ・ガレン=カレラを中心に、この時代のフィンランドの画家達が描いた”スオミの風景”の絵が展示されています。日本では滅多に見られない作品ばかり。ガレン=カレラと、エーロ・ヤルネフェルト(ジャン・シベリウスの妻・アイノのお兄さん)ぐらいしか知らなかったのだが、こんなに沢山。描かれているのは、雪景色や湖、森。まさに”スオミ”の風景。青森でも、私の住む地域でも、観られる・似ている風景に親近感を持ちました。

 次が、フィンランドのナショナル・ロマンティズム、そして”スオミ”の文化・精神の源流ともいえる民族叙事詩「カレワラ」について。ガレン=カレラが「カレワラ」の挿絵を描いていて、その原画に魅入った。雄大な「カレワラ」の世界を、独特のタッチで描いている。そして、ヴァイナモイネンとアイノの絵…勿論フィンランドからこの展覧会のために持ってきた作品…これを日本で観られることに感動。この「カレワラ」は、ガレン=カレラだけでなく、フィンランドの多くの芸術家に影響を与えた。代表的なのが、シベリウスの作曲作品。「トゥオネラの白鳥」をはじめとする「レンミンカイネン組曲」、「クレルヴォ交響曲」、交響詩「ポホヨラの娘」「ルオンノタール」などなど。交響詩「タピオラ」も、「カレワラ」に関連する作品かな(「カレワラ」に出てくる森の神・タピオのいる森を表現した作品)。このシベリウス他、ヘルシンキ郊外・トゥースラ湖のほとりに住んでいた芸術家たちと、彼らの家の紹介も。シベリウスの家・アイノラのところでは、食い入るように観てましたwここで、音声ガイドで、「フィンランディア」等シベリウスの作品が流れればよかったのになぁ。

 エリエル・サーリネンの建築にも興味を持ちました。ヘルシンキ中央駅など、実際に行ってじっくり観てみたいなぁ。

 このナショナル・ロマンティズムを前提に、フィンランドのプロダクトデザインは花開いていきました。カイ・フランクのイッタラの食器。古いものから新しいものまで展示が凄い。次はアルヴァ・アアルトの椅子の数々。このアアルトの椅子の展示では、何と展示に触ってよし、座ってよし、写真撮影もOK!なんと!
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 黒い椅子が、有名なパイミオ・サナトリウムで生まれた”パイミオ・チェア”。
 こんな感じで、自由に座れます。これまで、アアルトスツールに少しだけ座ったことが合ったが、こんなにアアルトの椅子を目の前にしたのは初めて。そして実際に座れるなんて。全部座ってきました。白樺のやわらかい曲線の手触りが心地いい。そして座り心地も、しっかりしていてゆったりと座れる。座り比べもできます。
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 スツールの裏には、アルテック社のロゴが。
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 一番気に入ったのが、このアームチェア。座り心地抜群。落ち着きます。家に欲しい…。
 アアルトの作品は椅子だけでなく、白樺で作ったパネルも。これはスツールに使う部品のあまりで作ったのかな?なんてものもありました(実際どうなのかは不明)。

 そのそばに、トーヴェ・ヤンソンの「ムーミン」の挿絵原画が。また、初期のムーミンも。トークセッションで、ヤンソンは「ムーミン」の作者、ではなく、画家であると紹介されていたのですが、そのヤンソンの油絵も。若い頃の自画像と、抽象画。ヤンソンはこんな絵を描いていたんだ、こんなイメージを頭の中で描いていたんだ…。色使いがカラフルでした。

 次はマリメッコ。青森県立美術館は、内装も白を基調としているのですが、その白い展示室にマリメッコのテキスタイル、衣服の数々がずらりと展示されている。映える!マリメッコの彩り、鮮やかさがより強調されていました。でも、派手過ぎず、くどすぎない。耳の部分にある「MARIMEKKO SUOMI/FINLAND」の文字もしっかりと確認してきました。本当に華やかだ。着ている人を幸せにする。

 イッタラ・アラビアの食器にしろ、アアルトの椅子にしろ、マリメッコの服や小物にしろ…使う人を幸せにするデザインだなと感じました。使っていて心地いい。楽しくなる。観ていて心が和やかになる。しかも丈夫、しっかりしている。長く使える。世界中で愛される理由ですね。

 そして、現在、フィンランドではデザインや暮らしはどう変わってきているのか…最後に少し展示がありました。森・自然とともに生きるため、エコ住宅をデザインするアアルト大学。公共鉄道、フィンランド郵政・イテラ社の取り組み。若いデザイナーの育成。アルテック社の椅子を、長く使うための工夫…。興味深い内容でした。フィンランドの切手の数々の展示には魅入りました。シベリウス切手が特に。直筆のスコアがデザインされた切手もあったのですが、何の曲だったんだろう?書いてなかった。
 さらに、同じ北国として、青森での取り組みも。風力発電の風車がありますが、地吹雪に見舞われる青森。その環境に合わせた風車の展示も。うちわで扇いで、実際に発電させることもできます。普通の風車だと雪がついたり、折れたりしそう。北国の暮らしには、工夫が必要。

 自然とともに生き、暮らし、厳しい環境に身を置くフィンランドの人々。彼らが生み出したデザイン、暮らしが見せてくれる、心地よく生きるということ。自分の身の回り、暮らしを振り返り、見直したいと感じました。イッタラやマリメッコをただ単に「素敵」と表現していないところがよかった。それらを使えば「素敵」「心地よい」というわけではない。実際、使ってみると「素敵だな」「長く使いたいな」と思うのですが、その想いが先にあって、イッタラもマリメッコも生まれた…という点がよかった。更に、その背景には、ガレン=カレラやサーリネン、シベリウスら芸術家たちによる、フィンランドそのものを見つめ、絵画や建築、音楽で表現した、ということも。いい展示でした。

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 というわけで、図録を買いました。結構ボリュームがあります。ガレン=カレラなどの絵のポストカードもいっぱい買っちゃいました。
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 初日、あのサルミアッキ入りのチョコレートがあり、その時は買えなかったので今度買う!と思っていたら、無くなっていた…。がっかり。フィンランドのお菓子メーカー・Fazer社のチョコレートを購入。美味しいです。日本のチョコレートより、若干甘い。けれども、そんなに差はないかも。

【過去関連記事】
自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション
自然も空気も味もスオミ気分 フィンランドのくらしとデザイン展・序章
この土地で生きてゆくという意志の”design” 「フィンランドのくらしとデザイン展」を観て


 常設展も観てきました。常設展と言っても、シーズンによって展示内容は変わります。棟方志功の板画(志功は「版画」ではなく「板画」と表記していました)の力強さ。ガレン=カレラのカレワラの挿絵に通じる点があるかも。
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by halca-kaukana057 | 2012-05-31 23:08 | フィンランド・Suomi/北欧

この土地で生きてゆくという意志の”design” 「フィンランドのくらしとデザイン展」を観て

 青森県立美術館特別展「フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展」(以下「フィンランド展」)の記事続きです。本編行きます。と言っても、展覧会の内容が充実していて、内容と私が感じたことを一緒の記事にすると、大変な量になる…。ということで、先に、展示を観て思ったこと、考えたことを書こうと思います。展示内容についてはまた別記事で。

青森県立美術館:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展

 これまで、私はフィンランドの自然や芸術文化、暮らし・ライフスタイルやデザインプロダクトなどに惹かれてきた。その理由は…国は違えど私も北国生まれの北国育ちで、暮らしや自然、それらに対する考え方が共通するところがある。フィンランドの、四季や自然に対する考え方に触れて、自分の身の回りの環境や生活を見直すきっかけになった。素材の質感を大事にし、シンプルで機能的なデザインが飽きず、素敵。その一方で、マリメッコのような大胆な色使い・柄もあるが、寒くて暗い北国の生活を彩る、という意味を知ってからはその発想が素敵だと思った…などなど。今回、「フィンランド展」を観て思ったのは、マリメッコやイッタラ、アルテック、「ムーミン」の物語の背景にあるのは、フィンランドの人々の「この土地で生き、快適に暮らす」という観望と決意を表現したものなのではないか…と。

 展示の一番最初で、19世紀末から20世紀初頭のフィンランドの画家たち…アクセリ・ガレン=カレラやペッカ・ハロネン、ヴィクトル・ヴェステルホルムらが描いた風景画が展示されている。森や湖、雪景色。それらは”スオミ(Suomi)の風景”。ロシアの支配下の中で、ナショナル・ロマンティズム(民族的ロマン主義)が活発になり始め、ロシアからの独立をフィンランドの人々は目指していた。この頃よく言われた「ロシアでもない、スウェーデンでもない」という言葉がある。ロシアでもなく、その前にフィンランドを支配していたスウェーデンでもない、スオミ/フィンランドとは。民族叙事詩「カレワラ」も注目されていたが、フィンランドの画家達が描いた”スオミの風景”をこんなに一度に観たのは初めて。初めて聞く名前の画家も。でも、その風景は、たとえ暗く寒い冬の雪景色でも、”スオミ”を描こうという想いが感じられた。雪もただの白だけじゃない。陰影、光の当たり方で白だけでは表現できない。その雪の表現に魅入った。そして、ガレン=カレラやペッカ・ハロネン、作曲家ジャン・シベリウスはヘルシンキ郊外のトゥースラ湖のほとりに住んでいた。スオミの森と湖にいつも触れられる場所に。その自然は、時に厳しいこともあるけれども、恵みもある。フィンランドの人々は、自然とともに生き、暮らしている。厳しい自然を克服しようとか、対抗しようとか考えず、身を置いている。まずここで、フィンランドの人々と自然の関係を再確認。

 そして、それを前提に、カイ・フランクによるアラビア・イッタラの食器、アルヴァ・アアルトのアルテックの椅子やランプ、マリメッコのテキスタイルと衣服が展示されている。冬が長く、しかも日照時間がとても短いので家の中で暮らすことが多いフィンランドの人々。その自然・環境の中で、心地よく暮らすために、これらのデザインプロダクトが生まれた。機能的で、シンプルで、だけど色彩は豊か。アルヴァ・アアルトの椅子は、白樺の木から作られているが、そのしっかりしているけどやわらかい質感(次の記事で書きますが、アアルトの椅子に座れる展示もあります)。この土地での日々の暮らしを、日常を心地よく、彩りのあるものにしたい。私自身、これまでイッタラのグラスやマリメッコの製品を手にして、身近にあることが、使うのがワクワクすると感じていたのですが、今回、ワクワクするだけではなく、強い決意と意志を感じました。この土地で、快適に暮らそう、という。


 展覧会から話がずれるが、NHK教育「きょうの料理 ビギナーズ」のテキスト5月号に、フィンランドの家庭料理についてのエッセイがあった。

NHK きょうの料理ビギナーズ 2012年 05月号 [雑誌]

NHK出版


 フィンランドのイメージは「お洒落」だと、作家・西加奈子さんはこのエッセイに書いている。ところが、フィンランドには「お洒落」という言葉は無いのだそうだ。「フォルムがいいとか、着心地がいいとかはありますけど、お洒落って言葉はないんです」と…。私も初めて知った。西さんから見れば「お洒落」だと思うことも、フィンランドの人々にとっては、「心地いい」ことをしているだけ…なのだそう。着飾るつもりも、見せびらかすつもりも無い、「心地よさ」を貫くこと。それが、日本人には「お洒落」に見える。このエッセイから、フィンランドの人々が大事にしていることが何なのか、ちょっとつかめたと思っていたのだが、展覧会を観て、なるほどそうか!ともう少しつかめたと感じています(実際にフィンランドに行って見なきゃわからないと思うけど)。


 この展覧会で、フィンランドと、フィンランドの暮らしやデザインについての観方が変わりました。展示されているものが、何故こんなデザインになったのか。デザイナーたちは何を考えていたのか。これから、フィンランドのデザインプロダクトを手にとった時、私はフィンランドという土地の自然と、そこに生きる人々の想い、大切にしていることを想うだろう。実際、思っています。

【フィンランド展過去記事】
自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション
自然も空気も味もスオミ気分 フィンランドのくらしとデザイン展・序章

【過去関連記事】
北欧デザインの背景にあるもの
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by halca-kaukana057 | 2012-05-29 23:53 | フィンランド・Suomi/北欧

自然も空気も味もスオミ気分 フィンランドのくらしとデザイン展・序章

 青森県立美術館で開催中(今週末、6月3日最終日!)の「フィンランドのくらしとデザイン ~ムーミンが住む森の生活展」(以下「フィンランド展」と略します)にようやく行ってきました。4月7日の開催初日のトークセッションの時は雪が降っていました。その後、4月中旬にも一度行っていたのですが、その後諸々あり忙しく…展覧会のことを反芻する暇も無く今に至ります。その時図録を買っていなかったので、買いに行きたいし、もう一度観たい。常設展も観たい。ということで、もう一度行って来ました。今回、記事にするのはその2回の観覧記です。

 その前に、序章と題して、青森が「フィンランド展」にぴったりな環境だった点について書こうかと。

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 今が見頃のライラック(リラ)と、ナナカマドの白い花。可憐なライラック、白くてふわふわのナナカマドの花。北国の初夏を象徴する樹の花です。
 以前も書きましたが、ナナカマドはフィンランド語で「Pihlaja(ピヒラヤ)」。シベリウスのピアノ曲「5つの小品(樹の組曲)」op.75の第1曲「ピヒラヤの花咲く時」、このイメージにピッタリ。曲も、花そのものだけでなく、五月のそよ風に揺れるナナカマドの樹、青空をゆったりと流れる雲、穏やかな陽の光とその影。そんな情景が、目の前にありました。

 青森市・弘前市では、この「フィンランド展」に合わせて、沢山の飲食店や雑貨店がフィンランド料理やフィンランド・北欧のデザインプロダクトや雑貨を取り扱う「あおもり北欧フェア」を開催中。なんと素晴らしい!そのお店も回ってきました。
青森県立美術館:「あおもり北欧フェア」始めます
 まずこちら。
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 「ホテル青森」のレストランによる「AOMORIキーッセリ」。「キーッセリ(Kiisseli)」とは、ベリーや果物の実とジュースで作った、とろっとしたデザート。離乳食のような感じで、小さい子どもも食べられる。私も初めて知りました。そのキーッセリを、青森を代表するリンゴのブラマンジェにかけたのがこのデザート。青森市はベリーの一種であるカシス(黒すぐり、ブラックカラント)の生産量も日本一。フィンランドと気候が似ているからかな。青森産カシスを使っています。とても優しい甘さの味で、美味しかったです。

 キーッセリを作るのは難しいのかな、と思ったらそんなことはない、簡単らしい。レシピがいくつか合ったのでリンクを貼っておきます。
scope:Hannan Pikku Juttuja ハンナの小さなお話 vol.12 お母さん、キーッセリ作っていい?
makon makoisia herkkuja:キーッセリ色いろ
キーッセリの作り方
moi-moi:kiisseli キーッセリ
All About:りんごを使ったフィンランドの離乳食レシピ

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 洋菓子店「ジークフリート」の「北の森タルト」。フィンランドではリンゴのタルトもよく食べるそう。リンゴ…やっぱり青森か!w フィンランド料理でよく使うシナモンやカルダモンで味・風味をつけました。これも美味しかった。

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 パン屋さん「eat fun!」のシナモンロールと、サーモンキッシュ。シナモンロールは、言うまでも無く、フィンランドを代表する菓子パン。映画「かもめ食堂」を思い出します。ふわっとして、シナモンも効いていて美味しかった。リンゴもはいってました。またしても…w
 フィンランドでは、サケもよく食べます。そういえば、先日のNHK「スタジオパークからこんにちは」で、ピアニスト・舘野泉さんが、「フィンランドではどこへ行ってもサーモンが出てくる。一生分食べたかも…」なんてことを仰っていた。サーモンに、フィンランドの主食であるジャガイモ、ほうれん草が入っています。これは私のイチオシ。やさしい味で、本当に美味しかった。
 ちなみに、「あおもり北欧フェア」のパンフレット・あおもり北欧マップによると、青森市はサケの消費量日本一なんだとか。どこまで共通点があるんだ…。そんな共通点をうまくいかして、街ごと展覧会を楽しめる企画。最高ですね。

 5月の清々しい空気と、美味しいものも目いっぱい楽しんで、展覧会本編、行ってみましょう!

 (次回に続く)

・トークセッションの記事:自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション
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by halca-kaukana057 | 2012-05-28 23:43 | 旅・お出かけ

自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション

 先日、4月7日から、青森県立美術館で始まった「フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展」
 豊かな森と、北国の厳しい自然とともに生きるフィンランドの人々の暮らしと、フィンランドで生まれその暮らしの中に息づくデザインの数々。そんなデザインは何故どのようにして生まれたのか。
 まだ独立していなかった19世紀「フィンランドらしさ」を求め始めた芸術家たちの作品とその中にある「フィンランドらしさ」。民族叙事詩「カレワラ」の精神。それらが、今フィンランドを代表するモダンデザインに繋がってゆく。また、フィンランドを代表するトーヴェ・ヤンソンの「ムーミン」の物語。「ムーミン」の物語に描かれている「フィンランドらしさ」やフィンランドの人々の暮らしを見つめる特別展です。

 フィンランドの自然、暮らし、デザインプロダクト…。私の興味関心のストライクゾーンど真ん中な展覧会。これは、行くしかない。

 ということで、初日のトークセッションに行って来ました。この日は、展覧会そのものは観ず。今度ゆっくり行きます。

青森県立美術館:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展
フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展
 ↑公式サイト。青森だけでなく、宇都宮美術館、静岡市美術館、長崎県美術館、兵庫県立美術館を周ります。

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 この日、青森は雪でした。4月でも雪の降る青森。

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 豪雪だったこの冬。美術館の周りには、深く雪が積もっていました。その雪の中に、いつもの白い美術館が。何度観てもいいなぁ、この建築。

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 トークセッションには、ムーミンの展示があるフィンランド・タンペレ市立美術館・ムーミン谷博物館の学芸員のエリナ・ボネリウスさん、宇都宮美術館学芸員でフィンランドのデザインに詳しい橋本優子さん(ボネリウスさんの通訳も務めてました)、青森県立美術館の学芸主幹・池田亨さんと、池田さんの通訳の方が登壇。

 舞台上の机の上に、ペットボトルが置かれていたのですが、その横に置かれていたグラスが、イッタラのカルティオでした。完璧だ…!

 トークセッションの内容を、全部書くと大変なことになるので…要点だけ。

 まず、ボネリウスさんが「ムーミン」の作者であり、画家であるトーヴェ・ヤンソンについて、ムーミン谷博物館の展示についてをスライドで説明。ムーミン谷博物館は、タンペレ市立美術館とタンペレ市立図書館がある建物の、市立図書館の側の地下にあります。「ムーミン」の挿絵原画や、「ムーミン」のもととなったイラストが描かれている雑誌「ガルム(GARM)」の表紙、ムーミンの家のミニチュアなどが展示されています。行ってみたいなぁ。

 ここで、トーヴェ・ヤンソンを、「画家である」と書きました。ボネリウスさんもそう仰っていました。そう、日本では”「ムーミン」の作者として”有名ですが、ヤンソンは元々画家を目指していて、作品も残っている。今回の展示には、ヤンソンの油絵も展示されています。日本では滅多に観られない作品です。

 橋本さんによると、この「フィンランド展」は5年ほど前から企画していたとのこと。美術とデザインは違うものとして捉えられているが、ひとつのものとして展示したい。そう思っていたのが形になったのだそう。

 このトークセッションでは、「ムーミン」の中から、フィンランドの暮らしやデザインについて考察します。「ムーミン」の物語の舞台は、自然の中。その自然の中で、ムーミンは様々な人々と交流する。ここが一番フィンランド的なところ。ヤンソンは小島に、、その前の時代のフィンランドの芸術家たち…画家のアクセリ・ガレン=カレラ、作曲家・ジャン・シベリウス、小説家アレクシス・キヴィなどは、森の中に住み、その中で創作活動をしていた。後に、日常生活を大切にし、自然の中での暮らしに入ってゆくデザインプロダクトが次々と生まれた。アアルトの椅子や建築、カイ・フランクの食器、マリメッコのテキスタイル…。そして、フィンランドの人々はそれらを育み、デザインを産業として振興し、よりよいものを世界の人々とも分かち合おうとした。それが現在、花開いている。自然、日常生活、ユニバーサルで社会に寄り添う。これがフィンランドのデザインの特徴。

 また、ユニークだと感じたのが、「ムーミン」と「カレワラ」の関係。全く違う世界観ですが、根っこは一緒なのだという。どちらもフィンランドの自然に根ざしている。冬は長く、寒く暗く、厳しい。夏は白夜だが、短い。このコントラストの激しい自然が、文化に反映されている。また「カレワラ」は英雄譚。ワイナモイネンやレンミンカイネンが、壮大な冒険を繰り広げる「カレワラ」。「ムーミン」もまた、ムーミンと仲間たちが大冒険を繰り広げる。英雄の活躍を、「ムーミン」を通して見る。この見方には驚いた。この2つには、全く共通点がない、同じフィンランド生まれの作品でも違うものと思っていたのに。詳しいことは、販売している図録に書かれているそう。図録…買わねば。

 登壇者のトークセッションの後、会場からの質問コーナーも。その中からいくつか。
 フィンランドは、自然とともに暮らしているイメージがあるのだが、実際はどうなのか、という質問。ボネリウスさんによると、ヘルシンキなどの街では、自然は生活の中の一部分だけ。遠ざかっているのだという(ここに関しては、違う本でも書かれてあったので、そのうち書くつもり)。街での生活と、伝統的な森での生活は分かれてきている。それでも、街に住む人も、湖畔にサマーハウスを持ち、夏になるとそこで過ごすのが理想であり、楽しみになっているのだそう。
 フィンランドも、色々変わってきているのだと実感しました。

 ヤンソンは、ヘルシンキに住んでいたのに、何故ムーミン谷博物館はタンペレにあるの?という質問。確かに。
 これは、よく聞かれる質問なのだそう。ヤンソンが生きていた時、ヘルシンキの美術館に「ムーミン」の原画を含む絵を寄贈しようとした。しかし、ヘルシンキの美術館は、その絵を”美術”と認めず、断った。その後、ヤンソンの友人が協力して、個展をタンペレで開催。それが始まりだったそう。ちなみに、後にヘルシンキの美術館は悔しがっていたとかw

 最後に、登壇者からメッセージが。

 ボネリウスさん:この展覧会で、フィンランド文化の様々な側面・深みを、日本の皆さんに観てほしい。そのひとつが「ムーミン」。その中にある生活も観てほしい。

 橋本さん:日本は、フィンランドをはじめ北欧に対して友好的。これは、表面的なことではないと思う。フィンランド、北欧のものがナチュラルで使いやすいのは何故か。厳しい自然・生活の中で、「全ての人にとってよいものを、よい社会を」という考えが生まれ、それが形になった。だから日本で人気がある。

 池田さん:青森とフィンランドには共通点がある。フィンランドの絵画などを観て、冬、雪を美しく描いていると感じた。青森ではそのものは描くのはあまりない。雪は大変なものと思われている。フィンランドから、青森を見つめ直して。

 以上、こんな感じでした。


 終了後、ミュージアムショップにも寄ったのですが、大変なことになっていました。マリメッコ、イッタラ、アラビア、アルテック、ムーミングッズ、フィンランドのお菓子、雑貨が沢山!もうどうしようかとパニックになりました。嬉しい悲鳴でしたw
 今度は、ゆっくりと展覧会の中身を観に行きます。
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by halca-kaukana057 | 2012-04-18 22:09 | フィンランド・Suomi/北欧

木いちごの王さま

 先日、見つけた気になる絵本です。


木いちごの王さま
サカリアス・トペリウス:原作/きしだえりこ:文/やまわきゆりこ:絵/集英社/2011

 サカリアス・トペリウスは「フィンランドのアンデルセン」とも呼ばれる、フィンランドの作家・童話作家・詩人。短編の作品を多く残しています。そのトペリウスの作品のひとつが、日本で絵本になりました。しかも、絵は「ぐりとぐら」でお馴染みの山脇百合子さん。表紙の山脇さんのやわらかな絵と、木いちごの赤に惹かれます。

 物語は、テッサとアイナの姉妹が、森で採ってきた木いちごを洗っている時、木いちごの中に隠れていた虫を助け森に返すところから始まります。再び木いちごを採りに森へ行くテッサとアイナ。この森での描写が、まさにフィンランドの森だ、と感じました。

 フィンランドでは、ご存知の方も多いかと思いますが、私有地であれ、森で採れる果実やベリー、きのこなどは、誰もが収穫する権利を持っている、とされています(勿論マナーや限度は守って)。森は皆の財産、皆にとって恵みの存在。フィンランドでは夏になれば、この物語のように、森へ出かけベリーを摘み、そのまま食べたりジャムにしたりします。そんなフィンランドの森と、森とともに生きる人々の様子が描かれていて、嬉しくなりました。

 そして、森でテッサとアイナが出会ったもの。これまたフィンランドらしい。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」とはちょっと違うけど、こんな”存在”がいても不思議ではないのがフィンランドの森。

 物語の中で、ミルクコーヒーが出てくるのですが、これもまたフィンランド。さすがはコーヒー消費量世界一の国です。こどもでも、ミルクは入っているけどコーヒーを飲む文化がある。日本のコーヒー牛乳とは違う。何と言うか…驚かされます。

 短い絵本ですが、物語そのものも面白いし、山脇さんの絵もあたたかく柔らかく、親しみやすい。そしてフィンランドの自然・文化・人々の生活の様子も伺える。素敵な絵本です。文字だけのページもあるので、読み聞かせにはちょっと向かないかもしれない(絵本を読むと、つい読み聞かせモードに入ってしまいます…)。でも、こどもと1対1で朗読するなら、とてもいい絵本だと思います。小学生(低学年)がひとりで読むのもおすすめかと。

 トペリウス作品をもっと読みたいなら、こちらをどうぞ。

星のひとみ (岩波少年文庫 (1004))

トペリウス / 岩波書店


 岩波少年文庫で復刊した、トペリウス作品集。こちらも、フィンランドの自然や文化をじんわりと味わえる作品です。
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by halca-kaukana057 | 2012-04-05 21:37 | 本・読書

ありがとう、マエストロ・パーヴォ・ベルグルンド

 今日は悲しいニュースを…。

読売新聞:パーボ・ベルグルンド氏=フィンランドの指揮者

YLE:Kapellimestari Paavo Berglund on kuollut
 ↑フィンランド国営放送YLE。フィンランド語です。
HS.fi:Kapellimestari Paavo Berglund on kuollut
 ↑フィンランドの主要紙「HELSINGIN SANOMAT」。フィンランド語です。
THE Washington Post:Finnish conductor Paavo Berglund, known for Sibelius recordings, dead at age 82
 ↑ワシントン・ポスト紙。英語です。

 フィンランド人指揮者・パーヴォ・ベルグルンド死去…ですって…!? 25日、82歳だったそうです。長く闘病生活を送っていたそうです。
 このニュースを見た瞬間、ただただショックでした。そして、涙が…。

 ベルグルンドといえば、やはり同じくフィンランドの偉大な作曲家・シベリウスの作品が挙げられます(勿論、シベリウス以外の作曲家の作品の演奏もあります)。ベルグルンドは1929年生まれ。シベリウスは1957年死去。同じ時代にフィンランドに生き、2人は会ったこともあるのだそう。ベルグルンドは元々はフィンランド放送交響楽団のヴァイオリン奏者だった(熱血漢で、楽曲の解釈が合わないと指揮者と論争したことも…)。その後、フィンランド放送響を始め、様々なオーケストラと共演。また、左利きで、左手に指揮棒を持つ指揮者としても知られていました。

 私にとって、ベルグルンドは、シベリウス作品に触れるきっかけであり、シベリウス作品が大好きになるきっかけでもあり、そしてクラシック音楽に親しむようになったきっかけでもある。今の私に無くてはならない指揮者・マエストロでした。

 以前も書いたとおり、クラシック音楽を聴き始めた頃、ピアノ曲や器楽ソロ、管弦楽の小品には親しんでいましたが、交響曲となると”長い、重い、難しい”というイメージが払拭できずなかなか親しめずにいました。そんな時、「シベリウスの交響曲(特に後期交響曲)がいい」というコラムを読みました(ちなみに、今だから話そう…そのコラムの筆者は、大河ドラマ「平清盛」の音楽も担当している作曲家・吉松隆さん。シベリウス6番交響曲のような作品を書きたいと作曲家を志し、シベリウスを師と仰いでいることを、この時は知りませんでした)。そして、図書館で借りてきたのが、ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団の交響曲全集。シベリウスの交響曲は7曲。さて、どれから聴こうかと迷い、1楽章のみで演奏時間の短い7番から聴いてみた。そして、聴いた瞬間「わあっ…」と思った。音が澄んでいる、透明。静かで、音がゆったりと揺れ動くよう。メロディーも、出てきたかと思うと消えてしまう。そして、あの神々しいトロンボーンのソロ。演奏時間約20分。聴き終わった時、私はすっかり魅了されていた。それまで私が抱いていた交響曲のイメージを、いい意味でぶち壊してくれた。7曲全部聴いて、シベリウスの音楽をもっと聴きたい、他の作曲家の交響曲ももう一度ちゃんと聴いてみたいと思うようになっていた。このベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管のシベリウス交響曲全集は、私のクラシック音楽に親しむ道標のような存在になった。

 その後、ベルグルンド指揮フィルハーモニア管弦楽団による「フィンランディア」などの交響詩・管弦楽曲や、ヘルシンキ・フィルとの交響曲・管弦楽曲も聴いた。ヘルシンキ・フィルとの演奏は、ヨーロッパ室内管よりもあたたかい演奏だと感じた。この演奏には感動しました。

 他の指揮者によるシベリウスも色々聴いたけど、やっぱり最後に戻ってくるのはベルグルンドが指揮した演奏だった。落ち込んでいる時、ひとりになりたい時は、いつも交響曲第4番を聴いている。果ての無い暗い曲だが、聴いていると落ち着いてくる。雪が降ると、5・6・7番を聴きたくなるし、春が近づくと2番、初夏には3番を聴いている。ベルグルンドのシベリウスは、どんな時も心の支えだった。私の心にピッタリ来る音楽だった。

 今夜はベルグルンドのシベリウスを聴きまくろうと思う。

 ベルグルンド先生、ありがとうございました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 最後に、ベルグルンドの指揮動画を。
Jean Sibelius - Symphony No. 5

 1971年、日本フィルとの交響曲第5番。

Jean Sibelius' tone poem The Bard
 フィンランド放送響との「吟遊詩人」op.64.ハープが美しい、私もお気に入りの作品です。

Sibelius: Symphony No.7 - Berglund(2002Live)
 動画ではなく音源だけ(イラストは気にしない)。10年前、2002年、BBC交響楽団との交響曲第7番です。

Jorge Bolet and Paavo Berglund in Rehearsal
 シベリウスではないのですが、珍しい動画を。ベルグルンドが、ピアニスト・ホルヘ・ボレットと一緒にラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」を打ち合わせ・練習。オケはなく、ピアノだけ。ベルグルンドが指示を出しています。ベルグルンドが話しているところを観たことが無かった。何と言っているのかわからないのが悔しい…。

Beethoven - Piano Concerto n.3 Emil Gilels - Philharmonia Orchestra, dir. Paavo Berglund
 こちらも、シベリウスではないのですが。エミール・ギレリスのピアノで、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」。オケはフィルハーモニア管。ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で、第3番が一番好きなんです。このコンビでこの曲が聴けるとは嬉しい。1984年のものです。

【関連リンク】
The Giant Conductor: a maestro mourns
 フィンランドを代表する指揮者・サカリ・オラモによる、追悼文。オラモもフィンランド放送響のヴァイオリン奏者(コンマス)で、後にフィンランド放送響の指揮者となった。ベルグルンドと同じように。

森と湖の詩:Kiitoksia Maestro Paavo Berglund
 オスモ・ヴァンスカのお弟子さんで、シベリウス作品に精力的に取り組んでいる指揮者・新田ユリさんの公式ブログより。新田さんも、ベルグルンドに会ったことがあるのだそう。その時の思い出を語ります。


【過去関連記事】
やっぱり フィンランド人指揮者でシベリウス
 ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管のシベリウスについて語ってみました。
アアルト風シベリウス フィンランド人指揮者でシベリウス・ふたたび
 こちらはヘルシンキ・フィル盤。
冬から春へ…節分に聴きたいシベリウス
 ヘルシンキ・フィルとの2番。
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by halca-kaukana057 | 2012-01-27 22:42 | 音楽

ヤコブへの手紙

 少し前に、面白そうなフィンランドの映画を見つけました。私の地域では上映されなかったのでDVD待ち。ようやく観ました。

ヤコブへの手紙(原題:postia pappi Jaakobille) [DVD]

監督・脚本:クラウス・ハロ/出演:カーリナ・ハザード,ヘイッキ・ノウシアイネン,ユッカ・ケイノネン,エスコ・ロイ/ネエプコット/2011(フィンランドでの公開は2009)



 1970年代のフィンランド。終身刑で12年間刑務所にいたレイラは、恩赦で釈放される。釈放されても行くあてもないレイラだが、勧められしぶしぶ年老いた盲目の牧師・ヤコブのもとで住みこみで働くことに。仕事は、ヤコブに届いた手紙を読み、返事を代筆すること。ヤコブに届く手紙には、人々の悩みや相談、祈っていて欲しいということが書かれている。レイラはその手紙を読みつつも、内容やヤコブの話すことに理解を示さず、ヤコブや郵便配達人と距離を置いていた。
 そんな中、ヤコブのもとに手紙が一通も届かなくなってしまう。落ち込むヤコブ。そんなことは自分には関係ない、どうでもいいと思いつつも、レイラは…。

 75分と短めの映画です。牧師さんがメインキャストであること、タイトルの「ヤコブへの手紙」も新約聖書の「ヤコブ書」を意識していることなど、キリスト教の思想が根幹にある作品です。なので、キリスト教に疎い私が観ても大丈夫だろうか…と思っていたのですが、観て、キリスト教というひとつの宗教に限定されない、「生きること」全てに共通するものを感じました。

 終身刑という重い罪(何の罪なのか、何を犯したのかはネタバレになるので伏せます。物語の最後で出てきます)を負い、人と距離を置き分かり合おうとはせず、いつも周囲を警戒し、威嚇しているレイラ。更に大柄で恐そうな顔。一方、年老いて盲目ではあるけれども、人々から毎日手紙が届き、相談にのっている心優しいヤコブ牧師。全く正反対の2人。レイラが刑務所を出て、ヤコブの住む牧師館へやってきた時も、ヤコブは歓迎するが、レイラは何故自分はこんなところに来なければいけないのだと言わんばかりの態度。手紙を届けに来る郵便配達人も、ヤコブを慕う一方で、レイラは終身刑だった女だと知っており、恐れてなるべく関わらないようにしている。レイラからすれば、わけのわからない老牧師と、どうでもいい手紙を読み、郵便配達人にもイライラする。レイラは何か事件を起こすんじゃないかとハラハラしていました。

 しかし、時間は淡々と流れる。牧師館の周囲は、白樺の林が美しい。まさにフィンランドの田舎だ。レイラとヤコブの食事やお茶の時間も、ぎくしゃくしているようでどこかゆるやかな空気が流れている。そして、”静か”だ。レイラがどんなにイライラしていても、雨で牧師館のあちらこちらで雨漏りがしていても。この静けさに、レイラの凍りついた心の奥にある何かが見えてくるようだ。

 そして、突然来なくなったヤコブ牧師への手紙。手紙を心待ちにしていたヤコブにとってはショックである。自分はもう必要となくなってしまったのではないか。レイラも、ドアの前で郵便配達人を待つが、素通りしてしまう。来なくなった手紙、そしてレイラの一言が、今度はヤコブ牧師を変えてゆく。牧師ではなく、ひとりの人間として。

 ヤコブにとって、手紙は何だったのか。牧師であることは、どんなことだったのか。そして、レイラも恩赦で釈放されたが、”元終身刑”であることを引きずっている。本当は終身刑の受刑者のままでいい、そうあるべきだとさえ思っている。2人を取り巻いていたもの、支えていたものが無くなり、孤独な2人の人間が、肩書きの無い人間として「生きること」「生きてゆくこと」を語り始める。誰からも必要とされなくなっても、孤独でも、生きる。生きる道はある。生きる意味はある。レイラからヤコブへの”手紙”、ヤコブに届いたある人からのレイラへの手紙。その深みが、じわりじわりと心に届きます。

 レイラは来るべくしてヤコブのところへ来たのだろうし、ヤコブもレイラが来なければ気づけないことがあった。人間が「生きる」ことを、控えめに、ひっそりと、でも崇高な思いを持って伝えようとしたこの作品に、静かに拍手を贈りたいです。音楽もいい。

「ヤコブへの手紙」オフィシャルサイト (*ジャンプすると予告動画が自動再生されるので、注意してください)

 ところで、この公式サイトに、「郵便配達人を巡るギモン」というのがあった。ん…確かに、郵便配達人の視点からこの物語を観ると、全然違った物語になる。郵便配達人の行動も、謎めいているところがあるし…。郵便配達人は、一体何者なんだ?何なんだ、この映画…。

 ちなみに、この映画から生まれたサイドストーリー絵本「シニッカさんどうしたの?」(絵・文:七字由布)も出ているとのこと。アマゾンにはないようだが、読みたいなぁ。
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by halca-kaukana057 | 2012-01-16 23:40 | フィンランド・Suomi/北欧

吉祥寺でフィンランドを味わう その2- marimekko編

 旅行記の続きです。吉祥寺のカフェ「moi」さんをあとに、吉祥寺の町を歩きます。路地を歩いていてふと、NHK「世界ふれあい街歩き」みたいだなと思い、脳内でひとり街歩き開始。つまり、取材&ナレーション:自分w(あ、町並みの撮影忘れたw
 町行く人々、あちらこちらにある惹かれるお店…見知らぬ町を歩くのは楽しいです。歩いている人々も、吉祥寺で暮らしている人々なのだろうか。私は観光で来たけれども、ここで暮らし、生きている人がいる。そう想いながらすれ違う人々の姿を見ているとますます楽しくなってきます。子どもたちの元気な歓声が一番印象に残っています。

 そんなこんなで、駅方向へ歩いてきました。目指すはここ!
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これは!!
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 フィンランドのデザインファブリックメーカー・marimekkoのお店です!表参道店を皮切りに、日本でも直営店が全国各地にオープンしました。直営店でなくても、マリメッコ製品を買えるお店はありますし、ネットショップもある。しかし、私の住む近場には直営店もマリメッコ製品を扱っているお店も無く、せっかくなら直営店で実際に製品を手に取って買いたい。そして、あの鮮やかなデザインに囲まれてみたい…。そう思っていました。吉祥寺にも直営店があったので、フィンランド関連として行くことにしました。

marimekko home

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 ショーウィンドーを見ているだけでもワクワクする…!

 中へ。憧れのマリメッコだらけです。全部マリメッコ!(当然だw)マリメッコの定番・UNIKKO(ウニッコ)を中心に、色鮮やかなデザインプロダクトが並んでいます。やっぱり見ているだけでもワクワクする、楽しくなる。ちょうど雨の日で、外はモノクロな雰囲気。そんな雰囲気をガラリと変えてしまう、カラフルで大胆、でも派手・強すぎる自己主張ではないデザインの数々。日照時間が非常に短い長い冬、家の中で過ごすことが多いフィンランドの人々が家の中で楽しく暮らせるように…との願いとともに生まれ、フィンランド国内は勿論世界中で愛され続け、今年で60周年のアニバーサリーイヤーを迎えたマリメッコ。その愛され続けられてきた理由がわかる気がしました。いつも、そばに置いて、楽しい気持ちにさせてくれる。マリメッコのデザインには、そんな力があるのだ、と。

 1階はインテリア製品や食器、小物、バッグなど。2階は生地や衣類がありました。生地を買って、自分の好きなものを作るのもいいなぁ…手芸はそんなに得意ではないけれど…。

 これまで、マリメッコを特別なデザインとして見てきました。自分の身近に入手できるお店がない、というのも理由です。でも、日々の暮らしに取り入れ、使って、毎日を彩りたい…そんなことを感じました。

 さて、せっかく来たのだから何か買おう。迷いに迷いました。
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 定番のウニッコで。しかもウニッコの定番、赤!がま口ポーチです。小物などを入れるのにちょうどいい大きさです。左のように小さめのものもありますし、大きめのものもあります。小さいほうは、小銭入れとして母にプレゼントしました。赤は自分用。デジカメケースにしています。同じサイズをもうひとつ欲しかったかも…。

 吉祥寺は雨の重さが、一気に軽くなったような気持ちになる、そんな街でした。今度はもっとゆっくり、1日いっぱい楽しみたいです。

 この後、また別所に移動して…と思ったのですが、電車に乗ったら疲れをドッと感じたのでホテルへ向かうことに。2日目は今回の上京の本題の所用があったので観光はなし。3日目、新幹線に乗る前に、この後予定していたところへ行くことにしました。と言うことで、まだ続きます!
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by halca-kaukana057 | 2011-08-31 22:33 | フィンランド・Suomi/北欧

吉祥寺でフィンランドを味わう その1-カフェ・moi編

 旅行記の続きです。宇宙科学研究所(ISAS)相模原キャンパスを出て、淵野辺駅から横浜線で八王子へ。八王子から中央線に乗り換えて、目指すは吉祥寺。宇宙から、ガラリと雰囲気変えます。吉祥寺には、北欧・フィンランドの雰囲気を味わい、その文化やライフスタイル、デザインに触れられるところがあります。いくつかあるのですが、まずは以前からずっと行ってみたいと思っていたカフェ・moi(モイ)さんへ。

カフェ[モイ] home

 雨は小降りに。JR吉祥寺駅をパルコ方面に出て、東急のある大通りを歩いて行くと、「大正通り」という小さめの商店街が。この大正通りには、北欧デザインプロダクトを扱っていたり、北欧料理を味わえるお店が並んでいます。北欧通り…?その通りの奥に、「moi」さんもありました。

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 白が基調の、小さなカフェです。お隣さんも北欧雑貨を扱っているお店です。ここも素敵でした。
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 中へ。平日の午後、空いていたのでゆっくり出来ました。店内も木と白が基調で、とても落ち着いています。
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まずこの雰囲気に一息。宇宙研では大雨に降られて疲れていたので、尚更落ち着きました。穏やかな店主さんが持ってきてくれたお水…グラスがiittala(イッタラ)のカルティオ。シンプルで落ち着いた店内の雰囲気にピッタリ。

 私が注文したのはこれ。
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 フィンランドのフレーバーティー「レイニー・デイ」(雨だから…と選びましたwしかもこの日は気温も低めだったので、ホットのお茶が欲しかった)と、お店のイチオシ・シナモンロール(*平日限定です)。映画「かもめ食堂」でも出てくるあのパンです。
 このシナモンロールが…焼きたてなのか、熱々ほくほく。外はカリッと、中はふわふわ。美味しい…!!ちょうどおやつの時間帯、しかも疲れていたのでちょうどよかった。もう一度言います、美味しいです!フレーバーティーも、紅茶がベースなのですが様々な花や果実がブレンドしてあっていい香り。再び一息。ゆっくりとお茶とシナモンロールを味わい、お店の雰囲気・空気も味わい…読書もしてゆっくりと過ごしました。上の画像にキャンドル(しかもイッタラのキャンドルホルダーに!)が置いてあって、更に落ち着きました。

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 冒頭の画像で、店内に絵葉書がずらりと並んでいるのがわかるかと思いますが、ここmoiさんは、絵葉書やレターセット、北欧雑貨、北欧関連書籍・CDも取り扱っています。

◇詳しい記事:手紙の書き方:お手紙カフェ 01 「moi」

 と言うわけで、店内で手紙は書かなかったものの…素敵な絵葉書を何枚か購入。こんな落ち着いたカフェで手紙を書いたら、その時の雰囲気も届きそうです。字も落ち着いて、丁寧に書けそうだ。

 とても素敵なお店でした。上京したら、また来たいです。いや、行きます。常連になりたいカフェです。

 お店の最新情報などは、ブログとツィッターでどうぞ。
moiのブログ~日々のカフェ2
twitter:moicafe (@moikahvila)

 吉祥寺町歩きは続きます。ひとり「世界ふれあい街歩き」(NHKの紀行番組。私も大好きです)のテーマを脳内再生しつつ、歩きます…。
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by halca-kaukana057 | 2011-08-29 22:43 | フィンランド・Suomi/北欧

シベリウスが音で「フィンランディア」に込めたもの

 NHKBSプレミアム・北欧スペシャル、毎日楽しんでいます。どの番組も興味深いです。

 北欧スペシャルの一環として、これまでの北欧関連の番組の再放送もされていますが、そのひとつ「名曲探偵アマデウス」の、シベリウス「フィンランディア」の回を観ました。本放送の時はパラボラアンテナをつけていなかったため観れず残念な想いをしたのですが、今回このような形で観れて嬉しい限りです。

 交響詩「フィンランディア」というと、帝政ロシアからのフィンランド独立を願って作曲された、愛国心に燃えた作品と言われます。圧政の苦しみを表現した金管の重い響きから、フィンランド国民を奮起させるような勇ましいメロディーとリズム。そして中間部の美しい「フィンランディア賛歌」の部分。聴いているだけでも、シベリウスが何を表現したかったのか感じられますが、スコアを、音符と休符のひとつひとつを読み解いていくと、さらに深いメッセージが見えてくる。45分間「おおー!」「そうだったのか!!」と唸ってばかりいました。面白かった!!

 興味深かった点として、休符と、付点の使い方。休符はただ音を出さない、という意味ではない。一瞬でも音を出していないことで、次に出す音へ緊張感を持たせることも出来る。これにはなるほどと思いました。そして、付点。普段のピアノの練習でもそうなのですが、付点が苦手です…。でも、付点ひとつで、メロディーのリズム感や、アクセントを変えることが出来る。付点があるのと無いのとでは、全然異なって聴こえる。音符・休符の、ひとつひとつが集まって音楽はできるわけだが、そのひとつひとつ、どれも意味のないものはない。そう改めて実感しました。音楽を聴く時も、演奏する時も、なぜその音符・休符なのか、その意味も考えて向き合わなければなと感じました。

 もうひとつ、「フィンランディア賛歌」の部分で、木管はあの美しいメロディーを奏でますが、その時、ヴァイオリンとヴィオラがトレモロをしていたこと。言われて初めて気がつき、番組を観た後持っている「フィンランディア」を片っ端から聴きました。木管が歌ったメロディーを後に第1ヴァイオリンも受け継ぎ、更に伸びやかに歌いますが、第2ヴァイオリンとヴィオラはひたすらトレモロ。でも、このトレモロが無いと、響きが全く変わってしまう…。このトレモロは、風の音や樹木のざわめきを表している。フィンランドの森と湖に囲まれて育ち、作曲家になってからもフィンランドの自然を愛したシベリウスだからこそ、作ることのできた響きだと思いました。そして、改めて内声の重要さも実感。特にヴィオラは、普段は目立たない存在で、時においしいメロディーを奏でその存在感をアピールすることもありますが、ひたすら伴奏や内声に徹底している時でも、その存在無しにはその音楽は成り立たない…。ますますヴィオラが好きになりました。

 それにしても、4拍子の中に5拍子を混ぜて最終的にうまく合うようにしてあるとか、フィンランド語独特の促音便のリズムが用いられているとか…。凄すぎる。これまで何気なく聴いていていいなと思っていた部分に、そんな意味もあったんだと本当に目からうろこでした。解説は、あのフィンランド人指揮者・オスモ・ヴァンスカのお弟子さんでもあった、指揮者の新田ユリさん。新田さんのブログでも、シベリウス作品をはじめとして音楽や、フィンランドの面白い話がよく出てきますが、テレビでもいいお話が聞けました。

 これまで、オーケストラのスコアは自分には無理!と思って敬遠してきましたが、オーケストラのスコアリーディングもやってみたくなりました。スコアを読めたら、もっと音楽を楽しく、興味深く聴けるだろう!問題は、移調楽器。書いている音と違う音が実際に鳴っている…道は長そうです…。とりあえず、「フィンランディア」のスコアはネットで手に入れました。

 シベリウスの音楽を、自分は何故こんなに好きなのだろう?その理由が少し分かった気がした番組でもありました。同じく「アマデウス」ではシベリウス「交響曲第2番」も取り上げましたが、それも観たいなぁ。
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by halca-kaukana057 | 2011-07-27 18:08 | 音楽


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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