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八月の博物館

 タイトルが「八月」…もう11月ですよ…。でもいいんです。11月にも合う小説だと思います。

八月の博物館
瀬名秀明/角川書店・角川文庫/2003(単行本は2000)

 亨は小学6年生。時は夏休み。本を読むのが好き、特にエラリー・クイーンの推理小説が好きで、別のクラスの友達の啓太と自作の推理小説などを載せた雑誌を出そうと案を練っている。図書室の係で、鷲巣という女子と一緒に貸し出しを担当している。そんな夏休みが始まる日、帰り道で亨はいつもとは違う道を歩く。たどり着いたのは「THE MUSEUM」と書かれた建物。中に入り、しばらくすると不思議な少女「美宇」や「ガーネット」という紳士に出会う。この博物館が何なのか。美宇と一緒に博物館の中を歩くようになる。そして、2人は1867年のパリ万博の会場に向かうことになる。そこで、亨と美宇はフランス人考古後学者・オーギュスト・マリエットに出会う…

 あらすじを書くにもどう書いたらいいのかわからない…。物語のメインは亨と美宇の"ミュージアム"での冒険。そこに同時進行で、19世紀エジプトでのオーギュスト・マリエットのこと。更に現代の"私"という人物、3つの時代の話が同時進行で進んでいく。最初あらすじを読んで、少年少女の冒険物語かと思ったら、どんどん思いもしない方向に話が進んでいって驚きました。

 この本を読もうと思ったきっかけは、オーギュスト・マリエットが出てくるというところ。19世紀のフランス人エジプト学者。サッカラの聖堂・セラペウムを発掘し、現在のカイロ・エジプト博物館の母体となる博物館をつくり、それまで発掘品に関する法も何もなく海外流出してしまっていたのを憂い、発掘を取り締まり出土品を管理するエジプト考古局をつくった人。また、ヴェルディのオペラ「アイーダ」の原作者でもあります。考古局設立のことや、サッカラのセラペウムのことは、以前紹介した山岸凉子作の漫画「ツタンカーメン(旧題:封印)」で登場したので、よく覚えています。でも、それ以上にマリエットのことはよく知らない。マリエットの伝記・歴史小説としても読めます。マリエットの後に考古局の局長になったガストン・マスペロ、そしてハワード・カーターのことも少し出てきます。11月はツタンカーメン王墓発掘月間(4日に最初の階段を見つけ、5日に最初の漆喰の壁にたどり着く。26日に最後の漆喰の壁に穴を開け、カーターとカーナヴォン卿がツタンカーメン王墓を「発掘」する)。なので11月にも合うんです。

 そのマリエットと亨と美宇が出会う。セラペウムに祀られている聖なる牛・アピスも関係してくる。関係ないような世界が関連を持ち始める。現代の"私"とも。SFの要素も入り、さらに博物学、「物語」に関する考察もあり…何度も頭の中が混乱しました。混乱したけど、読み終えた後、面白いと思った。

 「物語」が何故存在するのか。「感動する」とはどういうことか。「物語」をつくる人は、「感動すること/させること」を考えて書いているのか。「物語」はつくりもの、現実にはないフィクションだとわかっているのに、心を揺さぶられる。その心を揺さぶるものとは何なのか。これは瀬名さん自身の作家としての「物語」というものへの問いかけのように読めます。実際、現代の"私"は瀬名さんっぽい。

 私も何度か、絵本を書いた/描いたことがあります。小学生の時のクラブ活動、大学の頃の部活で。その時は、作品のテーマや物語の流れ、子どもたちに読み聞かせたわけではありませんが絵本なので子どもたちが親しみやすいかどうか…などは考えましたが、ただ単純に自分が書きたい/描きたい、面白いと思うものを書きました。自然とペンが進みます。絵本なので、絵や絵と文章の位置も考える必要はありました。後で人に読んでもらい、感想を聞くのは恥ずかしくもあり、面白かったと言ってもらえると嬉しかったです。今こうしてブログを書き続けているのも、時々イラストも描くのも、何かを書きたい/描きたいという気持ちがあるから続いていると思います。その根底に、自分の「面白い」という気持ちがあるから。

 そして、「物語」は人々の心の中に生き続ける。クライマックスシーンで亨が叫んでいた言葉、決意がまさしくそうだと思いました。「物語」は小説だけじゃない。音楽も、博物館も。マリエットがオペラ「アイーダ」の原作者であることも、また関係してくる。様々なものがどんどん繋がっていく様が面白いです。

 この「八月の博物館」という「物語」を純粋に楽しむことも出来る。その一方で、「物語」の中にある「物語」を深読みすることも出来る。今まで読んだことのないタイプの小説でした。

 読後、エラリー・クイーンの推理小説、それから「アイーダ」も観たくなりました。オペラは全幕音声では聴いたことがあるのですが、映像は部分しか観たことがない。有名な「凱旋行進曲」の部分。マリエットが原作者と知った時、ますます興味を持ち始めました。

 あと、この本は新潮文庫からも出ているのですが、どこか違うところはあるのだろうか。何故新潮文庫からも?とは言え、どちらもほぼ絶版というのは何とも…。

・以前読んだ瀬名秀明さんの作品:虹の天象儀
 読んだのは2007年…随分前でした…。
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by halca-kaukana057 | 2015-11-07 23:19 | 本・読書

愛おしい日常を愛らしいシンプルな絵で 「誕生60周年記念 ミッフィー」展

 先日、「成田亨」展に続き再び青森県立美術館へ行ってきました。今度は「ミッフィー」展。今年は「ミッフィー(うさこちゃん)」生誕60年。その企画展が全国巡回しています。

青森県立美術館:誕生60周年記念 ミッフィー展
誕生60周年記念 ミッフィー展

 この日の青森は快晴。青く青く広がる空が気持ちいい。
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 いつもの白い建物がお出迎え。青い空に映えます。…あれ、いつもと何かが違う。

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 何かある…!
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 青森県美の白い壁に、うさこちゃんの顔が!!!青森県美が真っ白な建物だったから実現できた…ということか?

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 エントランスにもうさこちゃんがいっぱい。日本とオランダで開催されている「ミッフィー・アートパレード」の一環のよう。

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 展示室に下りるエレベーターも、いつもは白いのに、ブルーナの絵本カラーに!

 ミッフィーというと、絵本やテレビのクレイアニメで少し観る程度。そんなに思い入れはない…実は。でも、シンプルな線で描かれるうさこちゃんをはじめとするキャラクタは親しみやすく、愛らしい。そんなミッフィーシリーズがどのように生まれたのか。展示を観ていたら、ミッフィーに愛着が沸いてきました。

 本国オランダでは、「Nijntje(ナインチェ)」と呼ばれているうさこちゃん。「ミッフィー」は英訳した際の愛称。1955年、ブルーナさんが息子さんに描いた小さなうさぎの絵本が、うさこちゃん・ミッフィーシリーズの始まりでした。その、1955年初版の原画は世界初公開とのこと。1963年の第2版からの現在のうさこちゃんも可愛いですが、初版「ファースト・ミッフィー」の方が愛着が沸きました。姿も丸く、素朴な、まさに手描きのイラスト。どんな絵本でも、原画を観るのは楽しいです。
 
 その後のミッフィーシリーズの原画も数多く展示されていて、ブルーナさんはこんな風に絵を描いているのだなと伺えます。そして会場には、机の上に絵本が並び、ゆっくりと読めるようになっています。原画を観て、絵本を読んで…制作途中と完成品を一緒に観られるのも楽しい。
 ブルーナさんがうさこちゃんを描いている映像を観られる展示もあるのですが、これが面白い。真っ白なうさこちゃん像がスクリーンの隣にあって、ブルーナさんが線を引くと、そのうさこちゃん像に反映される。一筆一筆、ゆっくりと描いていっています。目を描けば、うさこちゃん像にも目が描かれる。プロジェクションマッピングです。最後は、様々な模様の服を着て、うさこちゃんプロジェクションマッピングショー。NHKの人形劇「シャーロックホームズ」のオープニング映像の、ホームズ像のプロジェクションマッピング、と言えば「あれか!」とわかる方もいるかと思います。

 「ミッフィー・アートパレード」のコーナーでは、日本のアーティスト、デザイナーたちが60年のお祝いと感謝を込めて、自由なうさこちゃんを創り上げています。この展覧会は、一部は撮影可。「アートパレード」も撮影可で、気に入った作品の画像を撮ってました。

 他には、ブルーナさんの油彩や水彩画、奥様のために毎日のことなどを描いた「朝食メモ」も。「朝食メモ」…絵日記のようなものと言えばいいだろうか。これは楽しい。私も毎日じゃなくてもやってみたら楽しそうだなと感じました。

 うさこちゃんの物語は、日常のヒトコマを切り取ったものが多い。だからこそ親しみやすい。その親しみやすい物語を、親しみやすいシンプルな絵で表現している。だからこそ、子どもも大人も愛着をもてるのかもしれない。日常のヒトコマも愛おしいもの…ブルーナさんの「朝食メモ」でも、ミッフィーシリーズでもそう思える。それを伝えるには、シンプルな絵が一番ストレートな方法になるのかもしれない。展示そのものの数は多くないので、ゆっくりと絵本を読みながらそんなことを考えました。

 青森県美の特別展展示室のうちの2部屋は、物販コーナーになっていました。こんなの初めて見た。いつもならグッズはミュージアムショップにある。ミュージアムショップだと狭いからなぁ。とにかくグッズが多くて、展示でうさこちゃんに親しみを持ってしまった私には大変危険な空間でしたw物欲がw手にしていたのは、やはり初版のうさこちゃんグッズが多めでした。初版、「ファースト・ミッフィー」可愛いよ。

 今回は常設展はパス。常設展は9月までやってるので、またゆっくりと来ます。物販コーナーで一気に疲れてしまいました…。
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by halca-kaukana057 | 2015-07-12 17:26 | 興味を持ったものいろいろ

怪獣に込めた芸術 「成田亨 美術/特撮/怪獣」展に行ってきた

 もう常連の青森県立美術館。今年度の展示を見てきました。現在、開催されている特別展は「成田亨 美術/特撮/怪獣」展。青森にゆかりがあり、「ウルトラマン」シリーズの怪獣などのデザインを手がけた成田亨(なりた・とおる)。青森市内には、青森県立美術館への案内看板にウルトラマンシリーズのウルトラマンや怪獣が描かれています(開館の際、著作権の関係で色々あって、少しの間ビニルシートを被せられ公開されなかったことがありました…)。常設展でも、成田亨の怪獣スケッチの展示があり、常設展を観る度に目にしてきました。
 とは言え、私はウルトラマンシリーズはほとんど観たことがない。リアルタイム世代でもない、いわゆる「懐かしのテレビ番組特集」みたいなものでウルトラマンが怪獣と戦うシーンぐらいしか観たことがない。怪獣はバルタン星人やカネゴンぐらいは知っている…。あと、常設展で観てきたスケッチ程度。その程度ですが、この「成田亨」展の青森県美さんの宣伝がかなり力が入っていて、よくわからないけど面白そうだな、と思い前売りを買っていたのでした…。

青森県立美術館:成田亨 美術/特撮/怪獣

 普通、チラシ(フライヤー)は1種類、あっても2種類程度ぐらいだと思うのですが、
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 6種類も出している。ここがまず普通じゃない。さらに、
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 前売りで買うとシークレットフライヤーとステッカーがもらえる。さらに、会場内限定のフライヤーもある。前8種。尋常じゃない。ちなみに、ミュージアムショップにはこのフライヤーのデザインのポスターも売ってました。力の入れようがこのフライヤーを見てもわかります。

 ということで、行ってきました。
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 いつものこの白い建物。桜は満開を過ぎ散っていたのですが、新緑が爽やかな青森の春です。
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 エントランスのこの曲線もやっぱりいいなぁ…おや、何かある。
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 「ウルトラセブン」に出てくるポインター。かっこいい!

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 写真撮影可能なエントランス部分。青森県美のオリジナルフォントが、近未来的な雰囲気に合ってます。

 展示を観て…まずそのスケールと展示の多さに圧倒されました。スケッチや絵画が多く、どれも濃い。最初の展示室は成田亨初期の作品。彫刻「八咫」とそのスケッチの力強さ、勢いのある線にまず惹かれました。その次に、「ウルトラ」シリーズや特撮の仕事をしながら進めていた「モンスター大図鑑」「ナリタ・モンストロ・ヒストリカ」。古今東西の神話や伝承に出てくる神・化け物・妖怪・妖精…モンスターを描き、雑誌に掲載されたもの。成田亨自身のコメントも付いていて、絵にも、コメントもじっくり観ていました。「モンストロ・ヒストリカ」には、メソポタミア文明の神々や、古代エジプトの神々(ホルス神、アヌビス神、バステト神ほか)も。古代エジプトの絵は他の絵よりもじっくり魅入ってしまっていました。古代エジプト好きです。成田亨がホルス神を描くとこうなる、コメントからこんなことも考えていたのか…と。そして、それ以上に惹かれたのが、様々な鬼の絵や彫刻。日本のモンスターということで鬼の作品も数多く描き、彫刻にしていた。その鬼の描写が、やはり力強く、躍動感があり、肉体は美しくたくましい。でも、かなしさやさみしさ、暗さや強さで隠した弱さも感じられる。人間が持つ暗の部分が鬼に投影されていたと思うのですが、成田作品から、うめき声のような、心の叫びのようなものが感じられました。もしかしたら、これが怪獣へと繋がっていくのかな、と。怪獣もただ地球を襲いに来た悪役ではないから…。

 展示の途中のところどころに、著書やインタビューからの成田亨の言葉も掲げられていたのですが、それを読むと、仕事としてデザインしつつも、芸術とは何かと追究しようとしていたこと、様々な想いも込められていることが感じられました。

 それらを経て、「ウルトラ」シリーズや他のヒーローシリーズのデザイン画の展示へ。未発表の怪獣のスケッチ、企画案だけで終わってしまったもの、視聴率が振るわず録画も存在しない(家庭用録画機も無い時代だったが…テレビ局に何故残ってない!?)作品も。でも、有名な「ウルトラ」シリーズであろうと、そのような企画案だけで終わったもの・視聴率が振るわなかったものだろうと、成田亨の怪獣やヒーロー、メカニックの造形・デザインは「芸術」なのだなと感じました。ウルトラマンのカラータイマーには否定的だったこと、テレビ番組のためだけど商業だけを考えているわけではなかったこと…。「ウルトラ」シリーズの展示室の外に、ウルトラマンの墓と「鎮魂歌」があり、それを読んで葛藤しながらの制作だったのかな、と考えてしまいました。

 最後の展示室。90年代以降、晩年の作品です。画家になりたいと美術を志し、後に彫刻の方向へ。それが特撮美術の仕事に結びつき、数多くの怪獣やヒーローを生み出してきた。が、それらの仕事から解放され、彫刻とは何か、芸術・美術とは何か、と葛藤し始める。芸術はただの自己満足なのか。デザイナーと芸術家は違う。でも、テレビ番組のためのデザインの仕事もしてきた。そんな中、成田亨は町ですれ違った子どもが「ウルトラ」シリーズの怪獣の人形を大事そうに持っているのを見て、グッと来たのだそう。それから、それまで生み出してきた怪獣やヒーローたち、メカニックを題材にした油彩や彫刻を制作し始める。ヒーローと怪獣は、テレビ番組のように戦うことはない。ただ、そのヒーローや怪獣、メカニックそのものを描きたいように、表現したいように表現している。それらの作品を観て、葛藤はしていただろうけれども、成田亨にとって怪獣やヒーローたちは、成田亨の芸術だったのだなと感じました。精巧なメカニック。想像力の賜物である怪獣の造形、個性。ヒーローたちの肉体美、たくましさ、強さ、躍動感。それらの作品を観ていて、絵が描きたくて仕方なかった。私の描く絵はしょぼいですが…。身体の各部分の骨格や筋肉のつき方、動き。メカニックや細々した建物・風景を描くのは苦手だが、こんな風に精巧に描けたらな、と。凄い作品に圧倒され、いつしか憧れていました。

 ただかっこいいだけでも、怖いだけでもない。上述の通り、「ウルトラ」シリーズも、その他の作品もほとんど知らなかった私が、展示を観終わった時にはすっかり魅了されていました。気がついたら、ミュージアムショップで、怪獣やヒーローのポストカードを買いこんでいました…。

 開館時間直後に入ったのですが、特別展を観終わったのは2時間半ぐらい後。その後、常設展へ。常設展でも、成田亨関連の展示や、青森県美らしい個性的な芸術家達の作品を取り上げていました。絵本「11ぴきのねこ」シリーズで知られる馬場のぼるの展示も。青森出身です。以前、馬場のぼる特別展もあり、行きました(感想記事書いてなかった)。「11ぴきのねこ」シリーズは、以前読み聞かせをしていた頃、お世話になりました。大好きな絵本です。今回は展示は少なかったですが、絵本原画とその物語、漫画が展示されていました。展示を観ながら、物語を心の中で読み聞かせしていました。漫画はねことその飼い主の奥さんの四コマ漫画なのですが、馬場のぼるらしいユーモアたっぷりで、ねこが可愛い漫画。展示室に私一人でよかった。きっとニヤニヤしながら観ていたと思いますw棟方志功は鷹の絵。成田亨とタイプは違うけれども、躍動感あふれる力強い線に共通するようなものを感じました。

 この常設展を観終わって、トータル3時間半。もうお昼でした。これから行く方は、時間に十分余裕を持ってお出かけください。

 青森県美の展示は、作品との距離が近い。成田亨作品の息遣いが感じられる距離で、じっくりと観ることができて本当に楽しかった。完全に魅了されました。本当に凄い展覧会。青森県美のスタッフの方々に猛烈にお礼が言いたいです。本当にありがとうございます。凄いものを観られました。あの躍動感が、眼に、心に焼き付いています。

 最後に、ミュージアムショップには缶バッヂガシャポンもあります。オリジナルグッズもたくさんです。
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 ヒューマン1号・2号が出ました。
 あと、成田亨のサインは「Tohl NARITA」の表記なんですね。絵のサインを観て、いちいちカッコイイサインだー!と思っていました。
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by halca-kaukana057 | 2015-04-28 23:09 | 興味を持ったものいろいろ

少女という文化と変遷を紐解いたら 「美少女の美術史」展に行ってきた

 いつもユニークで先駆的な企画展と、個性的な常設展、そして建物そのものが魅力的な青森県立美術館。現在、開催されている特別展が「美少女の美術史」展。2010年、「ロボットと美術」展を企画したスタッフが再び集まり、ロボットの次は美少女。美少女という言葉から、漫画やアニメなどのサブカルチャーをイメージしましたが、それだけじゃないらしい。それだけで終わるわけが無い。会期もあと少し…前売り券を買っておいたので、行ってきました。

青森県立美術館:美少女の美術史  少女について考えるための16の事柄
美少女と美術史展・公式サイト

・2010年「ロボ美」感想:”人間”を投影する、機械以上の存在 「ロボットと美術」展

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 いつもの真っ白な建物が出迎えてくれました。朝からたくさんの人が来ていました。

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obさんによるライブペインティングイベント作品。撮影・ウェブアップロード可。7月中に制作されていたそうです。

 この「美少女の美術史」展、かなり気合が入っています。いつもの常設展の展示コーナーも特別展の会場に。いつもの特別展よりもボリュームあります。あれ、いつもならここに棟方志功の作品があるはずなのに…いつもと違う意外さ、新鮮さもありました。

 展示は、江戸時代の掛け軸や屏風に描かれた浮世絵、美人画に始まり、明治に入り女性の教育環境や社会的立場の変化に合わせて女性像も変化、「女学生」「少女」の期間が生まれたこと、更に昭和に入り少女文化も発展、現在の漫画やアニメに描かれるポップカルチャーの美少女たち…そんな歴史や「少女」像の変遷から、「少女」とは何か、どんな存在なのか、を紐解いていきます。

 近年、「○○女子」「○○ガール」という言葉が増えました。それまで男性のものと思われてきた趣味を、女性たちが活き活きと楽しむ。ディープな楽しみ方もするけれど、ファッションも怠らない。「山ガール」なら、カラフルでポップな登山服や登山用品、「宙ガール」なら天体望遠鏡や双眼鏡を可愛い柄のマスキングテープで彩ったり、こちらも夜間の観測を安全に且つ可愛く楽しめるようなファッションも欠かさない。私自身「宙ガール」「天文女子」と呼ばれるのには抵抗がありますが、天文好きな女性、というところでは当てはまるかも。マイ望遠鏡に可愛いステッカーやマスキングテープで彩ってみたいとも思いますし、星や月など天文関係のアクセサリーを見つけると反応してしまいます。でも、数年前までは天文好きな女性というのは、ちょっと肩身が狭かった。男性の趣味と思われていたから。「オタク」「暗い」というイメージもつきまとっていた。それが今では、堂々と出来る。言葉の氾濫はあまり好ましくないと感じるけれども、喜ばしいことだ。

 展示の中で、明治の頃、「少女」は嫁入りまでの期間を指す、というものがあった。学校に通い、嫁入りのための教育…針仕事やお料理を覚える。良妻賢母になるために。嫁入りすると「少女」では無くなる。「少女」は通過の期間であり、結婚までの猶予期間でもあった。
 その一方で、美人画には色っぽい花魁が描かれる。禿(かむろ)もマスコット的存在として見られていたようだ。禿というと、創作も入ってますが大河ドラマ「平清盛」で出てきた禿が印象的過ぎて、それを思い浮かべました。そういえばあれも少女だ。

 それが、明治・大正・昭和に入って変わり始める。「女学生」「モダンガール」が登場する。「少女」の期間を活き活きと楽しみ始める。少女向けの雑誌も出版され、「美少女」が描かれる。松本かつぢの絵が特に好きです。「セクション7:お部屋で/お庭で」で少女たちの日常のひとコマを描いた油絵が印象的でした。でも、「少女」は楽しいことばかりじゃない。大人になることへの不安、自己に対する目線、葛藤、憂いを持った存在でもある。それを描いた太宰治原作の「女生徒」のアニメの、通奏低音のような憂いに惹き付けられました。私も「少女」というと、どちらかというと憂いの方が強いかもしれない。

 そんな活き活きとした面と、憂いの面。現代では両方を合わせ持った美少女たちが二次元で活躍する。魔法少女ものなんて、その典型だよなぁ。「ロボットと美術」展でも登場した初音ミクがここでも登場。ミクも、活き活きとした面と、憂いのある面を、歌で、表情で表現する。いまやミクは交響曲やオペラにも登場するほど。ただ、可愛いから、だけではない。

 上記展覧会紹介看板にも描かれているMr.さんの「Goin To A GO-go!」。原画で観ると、描き込みがとても細かくて驚きました。一見すると可愛らしい女の子たちのポップな絵。女の子たちの周りには、様々なものが描かれている。文字もある。”カオス”と言ってもいい。そんな”カオス”の中で、様々な表情を魅せる少女たち。同じ展示コーナーに、アニメのフィギュアもあり、モダンガールあり、美人画もあり…”カオス”でした。

 日本の美少女文化は、今に始まったものじゃない。江戸時代、いやその前から美少女文化はあった。少女たちを見つめ、描き続けてきた。少女たちの姿に、何かを投影し続けてきた。子どもの頃憧れたもの、大人になって懐かしいと思うもの、心の痛みや憂い、苦味とともに思い出すもの…。それらは、大人になった私の心の中にある。現代の漫画やアニメの美少女たちは、そんな日本文化の中で描かれ続けてきた少女たちの先にあるものだったんだ。そう強く感じました。

 美少女は理想であり、憧れであり、心の投影である。若い方からご年配の方まで男性のお客さんも多く見かけたのだが、男性のお客さんはどう観ただろう。「少年」側のアプローチもやってみて欲しいなぁ。「少女」と何が違うのか。

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 25000人達成記念ポスター。「美少女なんて、いるわけないじゃない」がこの展覧会のテーマなのですが、「美少女、いるじゃない」になっています。はい、美少女はいます。

 青森県美は9月7日まで。その後、静岡県立美術館、島根県立石見美術館も巡回します。行けない…と言う方も、図録が一般発売されています。

美少女の美術史 -浮世絵からポップカルチャー・現代美術にみる"少女"のかたち

青幻舎



 非常に面白い特別展でした。特別展の後は、いつものようにシャガール「アレコ」背景幕をのんびり観て、常設展にも。常設展も、寺山修司、棟方志功の少女・美人画でまとめてます。志功の女神の板画(志功は「版画」ではなく「板画」)、好きだなぁ…。
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by halca-kaukana057 | 2014-08-25 23:01 | 興味を持ったものいろいろ

吹雪の中で 冬の青森県立美術館

 久々に行きたくなったので行きました。青森県立美術館。昨年夏の「種差」展以来です。

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 現在開催中の特別展「日本の民家」展。常設展も今日は観ます。

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 あの白い建物が、真っ白な雪原の中に。全部白。

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 美術館に向かって歩いていると、徐々に吹雪いてきた。建物の屋根の雪が吹き飛ばされている。

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 美術館入り口も風が強く、吹雪に。寒いけど見惚れてしまった。

青森県立美術館:日本の民家 一九五五年 二川幸夫・建築写真の原点
 まずは特別展の「日本の民家」展。建築写真家・二川幸夫と、建築史家・伊藤ていじによる、1950年代の日本各地にある古い・歴史的な民家の写真を集めた「日本の民家」全10巻。それを元にした展覧会。
 中に入って驚きました。写真の展示の仕方が斬新!普通は壁に一枚ずつかけていくのですが、ワイヤーで天井から吊るしてそのまま床に固定し、写真は宙に浮いているかのよう。しかも、整列させてではなく、迷路のように展示してあるのでますます不思議な空間。青森県美の特別展展示室の土の壁と、モノクロの写真がよく似合っていた。

 1950年代は、戦争からの復興と、1960年代からの高度経済成長期の狭間の時代。そういえば、この時代のことをよく知らなかった。高度経済成長期に向けて、都市部は大きく変化していったであろう時代。一方で、地方、農村には、昔ながらの民家が残っていて、人々が暮らしていた。戦争の被害も無く、よく残っていてくれたなぁと思った。人々の生活の様子が写っている写真もあるが、民家だけの写真も多く、当時ここでどんな暮らしをしていたんだろうと思いながら観ていました。

 そして、これらの民家を探しに全国各地を歩いた二川氏と伊藤氏の2人。時代の流れとは正反対の民家を見たい、その姿を残したいと撮影して歩いた。その情熱も感じました。写真がとにかく美しかった。


 特別展の後、常設展へ。常設展も、弘前市出身の工藤甲人の特集をしていました。幻想的な鮮やかな絵から、モノクロな絵まで。冬を始まりとして、春を描く作品に、まさに今の季節、外の吹雪を思い出しました。この冬、吹雪の中でも何かをあたためて、春を待つ。北国の精神だなと感じました。
 展示室に、千住博さんの著書があったので少し読んだのですが、千住さんは藝大時代工藤氏の指導を受けたことがあったのだそう。その時、工藤氏の絵を幻想的と皆言うけれど、工藤氏にとっては「幻想」ではなかった、「現実」のものだったと話していたことが書かれていて、そんな視点でこれらの絵は描かれたのかと感じました。「幻想」と思うことも、その人にとってはそうじゃないかもしれない。絵に描いてしまえば「現実」になる。絵画、芸術って不思議だな、魅力的だなと感じました。

 棟方志功も、いつもと違う展示が。ヨーロッパ、アメリカ旅行に行った時に制作された板画(棟方志功は「版画」ではなく「板画」と表記しました)が展示してある!棟方志功が見た、そして板画で表現したヨーロッパ。フランス・パリもスペイン・マドリッドもあの志功の板画になっている。これは初めて観ました。棟方志功の板画といえば、仏教にもとづいたものが多いので、意外でした。「賜顔の柵」はルーブル美術館に展示してあったニケ像からイメージした板画。志功のニケ像はこうなるのか!ととても面白く観ました。これは面白かった!

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 青森県美といえば、奈良美智「あおもり犬」。雪が降る中、静かに、雪の帽子を被ってたたずんでいました。この雪の帽子は、これから積雪が増えればまた形が変わります。

 最後はシャガール「アレコ」をゆっくり観て、外へ。
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 思い切り吹雪いてました。視界真っ白。いや、この真っ白な中の真っ白な建物がいいんですよ!そして、吹雪の中で春を待ちながら育てるものがある。吹雪の中だからこそ見えるものもある。そんなことを考えながら歩いてました。

 でも、やっぱり寒かったw防寒対策はばっちりしていきました。
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by halca-kaukana057 | 2014-01-11 23:06 | 興味を持ったものいろいろ

東山魁夷の2つの「道」 「種差 よみがえれ 浜の記憶」展 その2

 以前行ってきたこの特別展。東山魁夷の「道」が、試作から本作に展示が入れ換えられました。試作を観たら今度は本作!再び行ってきました。

青森県立美術館:三陸復興国立公園指定記念「種差 ―よみがえれ 浜の記憶」
・前回のレポ:美しき、活きている浜 「種差 よみがえれ 浜の記憶」展 その1

 ちなみに、前売券で試作と本作が両方観られる仕組みになっています。素晴らしい仕組みです。

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毎度おなじみになってしまっている青森県立美術館。あれ?シンボルマークのライトが昼間なのについている?

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やっぱりついています。昼間なのに付いているのは初めて見ました。珍しい。ということで記念に撮影。
このシンボルマークのライトは、夜はとてもきれいです。白い建物にとても映えます。夕方、日没の頃も陽のかげり具合に映えて、またきれいです。

 2度目ですが、もう一度展示をゆっくりと観ることに。種差海岸近辺の縄文遺跡から出土した土器や石器、貝塚からの出土物を観て、以前読んだ小説「ライアの祈り」(森沢明夫)を思い浮かべていました。小説の感想に書くのを忘れていたのですが、「ライアの祈り」には種差海岸も出てきます。かなり重要なシーン、重要な場所として描かれています。ライアたちのような縄文の人々が、これらの土器や石器を使って、種差でどんな暮らしをしていたのだろうと想像しつつ、小説のことも思い浮かべつつ観ていました。
・「ライアの祈り」についてはこちら感想記事で:ライアの祈り

 前回の記事で書かなかったところも。現代のアーティストによる作品。まず、リチャード・ロングの作品のスケールに圧倒されました。一番広い展示室の、壁3面をキャンバスのように使っている。「津波の断層」の大きさといったら凄い。種差海岸を襲った津波、そして復興へのメッセージが、シンプルで力強い。
 もうひとり、笹岡啓子の種差海岸の写真。ごつごつした岩肌、海岸に寄せる波、海岸の人々。種差の空気が伝わってくる写真です。

 吉田初三郎の鳥瞰図も、やっぱりどうやって描いたのだろうと思う精巧さと鮮やかさ。細かいところまで魅入ってしまいます。

 そして、東山魁夷の「道」本作。観て、試作と違う点がいくつか。まず大きさ。試作は小さめの作品だったのが、本作は大きい。また、本作は鮮やかになっています。道も、試作よりもよりはっきりと描かれている。遠くから観るとシンプルに道と緑の草原をはっきりと描かれているように見えるけれども、近くで観るとタッチがやわらかい。
 この「道」の道は、まっすぐ伸びていて、途中で曲がり道が途切れているように見える。でも、道の続きも描かれている。試作だけでなく、スケッチも多数残されていてその解説もあったのですが、何度も何度も描いて、表現したかった一本の道。曲がっている先は、今ここから見え難いけれども、もう少し先に行けば見えるだろう。また新しい道が見えてくるだろう。そんなことを考えながら黙って見つめていました。
 「凪」も何度観ても惹かれる作品。東山魁夷の作品を観て、穏やかな気持ちになっていました。やわらかであたたかい雰囲気。寺院や神社、教会にいるような、落ち着きと厳かさを感じました。やっぱり今回も、椅子に座ってしばらく居座ってしまいました。ちょうどいい位置に椅子(ベンチ)があるので…。同じように居座っている方も何人かいらっしゃいました。

 「道」(本作)は東京国立近代美術館で展示されていますが、その絵のモデルとなった種差海岸に関する特別展、というテーマ(枠)の中で観られたのは貴重でした。いい特別展でした。

 特別展を出て、アレコホールでいつものようにソファに座って、ゆっくりと「アレコ」背景画を鑑賞。常設展は、体調が芳しくないので今回もパスしました…。特別展は、「道」本作を何としてでも観たかったので、力尽きました…(無理するな

 以前の記事で書いた、吉田初三郎鳥瞰図展には行けなかったなぁ。残念。あと、「ライアの祈り」関連で三内丸山遺跡も…これはまた今度。

 
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by halca-kaukana057 | 2013-08-31 22:05 | 興味を持ったものいろいろ

美しき、活きている浜 「種差 よみがえれ 浜の記憶」展 その1

 先日行ってきました。
青森県立美術館:三陸復興国立公園指定記念「種差 ―よみがえれ 浜の記憶」

 青森県八戸市の種差海岸。今年、「三陸復興国立公園」に指定されました。これまで、多くの芸術家たちを惹き付けてきた種差海岸。東日本大震災では、津波の被害を受けてもいます。その種差海岸の歴史と、種差海岸に惹かれた芸術家たちの作品を通して、種差の魅力に迫る、ローカルな特別展です。

 今回、私がこの特別展に行こうと思ったのは、あの東山魁夷の「道」が展示されるから。北欧を描いたことがきっかけで、東山魁夷作品に惹かれてきたのですが、その作品の実物を観たことはありませんでした。昨年宮城県立美術館で「東山魁夷」展が開催されたのですが、行けず。いつかどこかで、と思っていたら、これまで何度も訪れている青森県立美術館で観られる。しかも、代表作の「道」。この「道」は、種差海岸にある道から生まれた作品。しかも、試作と本作の両方を展示する…観るしかない!

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 チラシは2種類あります。

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 いつもの真っ白な建物。何度観ても青森県美の建築は美しい。この日は、爽やかに晴れた空に映えていました。

 展示は、古代から始まります。種差海岸の遺跡・貝塚から出土した土器や骨。古代の人々も、種差の海の恵と共に生きてきました。江戸時代に描かれた八戸・種差の浜の絵にも活気があります。昭和に使われていた木造の「カッコ」と呼ばれる小舟も。漁が盛んだったことが伺えます。

 そして、種差に魅せられた2人の芸術家へ。まずは、鳥瞰図絵師として活躍し、アトリエを種差に建てた、吉田初三郎。初めて知りました。その鳥瞰図の数々が展示されています。
 観て、驚きました。なんて鮮やかで精巧なんだ、と。八戸の鳥瞰図では、八戸を中心に、十和田や山を越えた弘前や青森、さらにお隣岩手・久慈に遠くには北海道や東京も描かれています。以前、「Art and Air」展でももっと昔の鳥瞰図が展示されていましたが、吉田初三郎はどうやってこの鳥瞰図を描いたのだろう?観ながら疑問に思っていました。身近なところは細かく、でも遠くまで描いている。飛行機はあった時代だけど、やっぱり想像力なのだろうか。
 他の地域の鳥瞰図も多数展示されています。温泉街の観光用の鳥瞰図も多数。これを片手に、当時の人々は旅を楽しんだのだろうか。印象に残ったのは、関東大震災の鳥瞰図。火事で燃えている関東が描かれています。もし、吉田初三郎が東日本大震災を観たら、何か描いただろうか。アトリエを構えるほど愛した種差の浜にも津波が押し寄せた。どう観て、何を感じただろうか…。

 もうひとり、種差に魅せられた芸術家・東山魁夷。来ました。「道」(試作)。実物を目の前にして、感無量。涙も出そうになりました。この「道」を描いた時の魁夷の状況、エピソードもあわせて観ると、この絵に何を込めたかったのか、想像してしまいます。
 「道」だけでなく、魁夷は種差を舞台にした作品を多数描いています。穏やかな淡い色の波辺で馬の親子が佇んでいる「凪」など、その色の透明感や空気感に魅せられました。画像ではわからない、タッチや色合い、息遣い。しばらく魁夷作品のコーナーに居座っていました。動けない。
 ちなみに、「道」は、7月28日まで試作が、7月30日からは本作が展示されます。「夕汀」「静日」も7月28日まで。どうぞお早めに!
 「道」は、前売券を買うと試作・本作の両方を観られる仕組みになっています。ということで、もう一度、今度は本作を見に行きます。

 最後に現代。大震災の津波の被害を受けた種差海岸。それでも、浜は復興へ向かい、その風景は現代の芸術家たちをも惹き付けています。
 笹岡啓子の種差の写真の数々は、浜の力強さや荒々しさも写し出している。吉田初三郎の鳥瞰図とはまた違う鮮やかさ。惹かれました。

 種差海岸にはまだ行ったことがありません。でも、東山魁夷の「道」の舞台になったところがどんな場所なのか見たいし、復興に向かう浜の姿も観たい。是非行きたいです。

 ちなみに、吉田初三郎の鳥瞰図はここでも。
青森県立郷土館
 企画展「吉田初三郎鳥瞰図展~大正・昭和に描かれた観光パノラマ絵図~」これも今度観に行かなくては。
 7月24日(水)~9月1日(日)。

 あと、次は常設展も観ます。今回は特別展だけ。

 ミュージアムショップは、予想通り…東山魁夷グッズが沢山…。叫びそうになりましたw画集が欲しいよ…。
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 吉田初三郎の鳥瞰図ポストカードは迷わず買いました。いいなぁこれ。

 「道」本作のその2に続く。いつになるかは未定です。でも絶対行きます。
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by halca-kaukana057 | 2013-07-23 22:28 | 興味を持ったものいろいろ

表情の奥の多面的な、絡み合った感情 「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」

 今シーズンの青森県立美術館が、私の興味関心嗜好のストライクゾーンど真ん中ばかりで大変です(嬉しい悲鳴w
 昨年4月~6月の「フィンランドのくらしとデザイン」展、7月~9月の「Art and Air 空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」展。どちらも魅了されました。素晴らしかった。


 そして現在開催中なのが、人気アーティストの奈良美智さん(弘前市出身、地元開催です)の個展「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」。元々青森県立美術館には、郷土の芸術家として、奈良さんの作品が展示されています。青森県美のマスコット的存在ともなっている「あおもり犬」や、数々の絵・イラスト。これまで奈良さんの作品を観てきて、可愛いな、ポップだなと思ってきたのですが、奈良さんの作品の魅力はそれだけなのか?「あおもり犬」の瞑想しているような、どこかかなしげな表情。可愛い女の子の絵も、目つきが鋭く怖い印象もあったり、やはりかなしげなところもある。そして今回の「君や僕にちょっと似ている」というタイトル。とにかく、よくわからないから、奈良さんの作品をもっと観てみたい。そんなことを思いながら、行って来ました。

青森県立美術館:奈良美智:君や僕にちょっと似ている
◇展覧会公式:奈良美智:君や僕にちょっと似ている
↑横浜の後青森に。1月26日~4月までは熊本へ行きます。

 行ったのは12月末。青森は雪の中でした。
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 いつもの真っ白な美術館の建物は、真っ白な雪の中。そしてこの日は吹雪いていて、とても寒かった(気温マイナス5度)。

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 美術館に入る前、強い風が。美術館屋根の雪が吹き飛ばされて、吹雪のような状態に(屋根の雪が吹き飛ばされているのが確認できるでしょうか)。寒い、風強い!と思いつつも、この光景に惹かれて撮影。過酷な青森の冬。撮影していたのはいいが、手袋を外してカメラを持っていたので、手が凍りつきそうでした…(吹雪の中では手袋をしましょう。本当に凍るかと…手が冷たい、を通り越して血の気が引きそうだった。

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 入り口も真っ白です。

 中に入ると、暖房があたたかい。そして、こんな素敵なお出迎えが。
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 ツリーだ!クリスマスだから?と思ったらちょっと違うらしい。「もみのき」プロジェクトというのもので、奈良さんの作品の題材にもなっている樅の木ちなんだもの。撮影スポットともなっています。
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 ツリーには奈良さんの作品ぬいぐるみが。可愛いなぁと魅入ってしまいました。

 では、展覧会本編へ。

 中に入って、「あれ?」と思いました。絵や、奈良さんが初めて挑戦するブロンズ彫刻が展示されているのですが、ゆったりとした感じで配置されている。これまでの特別展は、作品がたくさん展示され、展示室にぎっしりという感じだった。それが、今回はひとつの展示室に大きな作品が2つ3つぐらい。小さめの鉛筆スケッチが10作品ぐらい固まって展示されているところもあるのですが、大きな作品となると、その展示室の壁一面に一作品、という感じ。ブロンズ像もぽつりぽつりと。今までと違う…。

 展示を見ながら、これはただの展示じゃない、展示室そのものも「作品としての空間」にしてしまっているのだと感じました。展示されている作品だけが作品なのではなくて、展示室全体が作品そのもの。作品の置き方で、展示室の空気も雰囲気も変わる。青森県美の展示室は外と同じ真っ白な空間あり、地下(実際地下にあるのですが)の暗く土壁のような空間ありと特徴的なのですが、その展示室の個性と奈良さんの作品が調和している。作品だけじゃない、展示室の特徴も活かして展示室全体を作品にしてしまうなんて…凄い。まずここで驚きました。

 そして、次に驚いたのが大型の絵画。奈良さんの描く女の子は、これまで可愛くてポップで、でも目つきが鋭くてちょっと怖い…そんな印象があったのですが、今回の女の子の絵は、これまでと違った。やわらかく暖かな色調、グラデーション。目つきは鋭いのですが、その瞳の色やグラデーション、輝きが鮮やか。これまでの女の子の目は、こんな目をしていなかった。鋭いけれどもあたたかみがある。やわらかいけれども、まっすぐ何かを見つめている真剣な表情。ポスターにもなっている「春少女」をはじめとして、「Cosmic Eyes(未完)」では、瞳に文字が描かれている。

 一方で、目を閉じている女の子の作品も多い。ブロンズ像や、「In the Milky Lake/Thinking One」.目を閉じて、うつむいて何かを考えているように見える。かなしんでいるようにも見える。何を考えているのだろう?何がかなしいのだろう?

 そんな風に作品を観ていて、自分もこんな表情をしていることはないだろうか、と考えた。顔の表情はひとつでも見方によっては、何を考えているのか、何を訴えようとしているのか、何を見つめているのか、違った見方が出来る。そしてその表情の奥、心の中にはさまざまな想いがある。笑っているけどかなしそうでもある、可愛いけれども攻撃性を持っている、強い想いを訴えてくるものもある。自分もそんなことがあるな、と。

 奈良さんはこの個展で、作った作品が奈良さんご自身の肖像画だけではなく、観た人が自分自身や家族や友人知人に似ている、その人自身だと感じることもある、とメッセージに書いている(展覧会公式サイトの「作家からのメッセージ」を参照ください)。だから、「君」や「僕」に「ちょっと似ている」。私も、作品を観ていて自分に似ているような、誰かに似ているような、そんなことを感じた。顔が似ているということではなく、表情の奥にあるであろう感情に。複雑に絡み合っていて、ひとつじゃない。様々な見方もできる。嬉しい・楽しいけど、かなしい、さみしい。穏やかだけど、鋭い。好きだけど、攻撃したい。瞑想している、祈っているけれども、疲れている、眠たい。これは、私の中にもある絡み合った感情だ。

 そして大型の作品だけでなく、ささっと描いたスケッチのような鉛筆描きの作品にこそ、本音が表現されていると感じました。言葉が書いてあるからというのもあるけど、鉛筆で描く作品には、その時の感情が表現されやすいと自分でも描いていて思います。私のはただの落描きですが…。封筒の裏に描かれたものもあって、驚きました。

 勿論、これまでのようなポップで可愛い作品もあります。ひとりの人間が表現する面は多彩。その人自身なのだなと感じました。

 特別展展示室を抜けて、いつものアレコホールへ。アレコホールにも、奈良さんの作品が。じゅうたんのようなもの?「触らないでください」などの注意書きが無かったので、あれは触れた、座ってもよかったのかな?アレコ背景画を観ながら椅子に座ってひと休みした後、常設展へ。今回は常設展も、特別展のチケットで入れます。

 常設展の奈良さんの作品コーナーも少し変えてありました。そして「あおもり犬」は人気もの。写真撮影可なので、カメラを向けて記念撮影する人多し。
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 私も。雪が降り始めると、あおもり犬の頭にも雪が降り積もり、帽子のようになります。この帽子はニット帽みたい。更に積もれば、ベレー帽やシルクハットのようになります。その時、積雪の状態によって異なる。冬の見どころです。

 奈良さんの作品だけではありません。「ウルトラマン」の怪獣デザインの成田亨。版画の棟方志功。棟方志功の作品はとても好きで、いつも魅入ります。「花矢の柵」のスケールの大きさと迫力、色遣い…大好きです。そして、作品ではないのですが、棟方志功の写真も見どころ。板に顔を近づけるだけ近づけて、一心不乱で彫り続ける姿と打って変わって、カメラに向かって笑顔の志功の写真。その笑顔がとてもにこやか。こちらも笑顔になります。

 青森県美で知った芸術家も多いのですが、そのひとりが写真家・小島一郎。1950年代(昭和30年代)、青森の四季、特に冬・雪景色を撮影し続けました。地吹雪の激しさ、厳しい冬と、その中で生きる人々。美術館に入る前遭遇した強風と吹雪を思い出します。凍りつくように寒く、冷たく、荒々しく、厳しい。でも、そんな中に美しさを感じてしまう。私も雪の多い地域に住んで、冬の厳しさを実感していますが、それと同時に美しさも感じている。真っ白な雪、凍りつくような澄んだ空気、雪が舞う空の雲の切れ間の青空。吹雪の中にいても、その寒さが愛おしいと思うこともあります。と言っても半分は、寒いから、風が強くて息をするのも大変だから早く治まってくれ、早く建物の中に入りたいとも思っていますが…。小島一郎の写真を観ていると、そんな厳しさの中の美しさ、愛おしさを思い出します。

 展示を観終わって、ミュージアムショップでお土産を物色後、外へ。
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吹雪はやんで、ほのかな夕暮れ色に。
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夕暮れ時、そして夜になると、表情が変わるこの建物。やっぱりこの建築が大好きです。建物そのものも美術作品!
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by halca-kaukana057 | 2013-01-10 23:51 | 興味を持ったものいろいろ

空と飛行機に魅せられて 「Art and Air」展

 もう11月…なのに、夏に行った展覧会のことを書きます。今更…ですが、この展覧会のことは書いておきたい。何故今頃になってしまったか…えっと…何故だろう…?

 すっかりリピーターとなってしまっている青森県立美術館。春の「フィンランドのくらしとデザイン」展は最高でした!夏はうって変わって、空と飛行機がテーマの展覧会。「Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」。2010年に「ロボットと科学」展も開催したことを思い出しました。今度は飛行機か!こっちも大好きですよ。行きますよ。

◇春のフィンランド展:”心地よい”を求めて 「フィンランドのくらしとデザイン展」本編
 ↑フィンランド展の記事はいくつかに分けてあります。この記事の一番下に、他の記事へのリンクがあります。
◇2010年の「ロボットと科学」展:”人間”を投影する、機械以上の存在 「ロボットと美術」展
 ロボットを科学、美術、文化と様々な面から観てみる。面白かった!


青森県立美術館:Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語

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 行ったのは8月でした。
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 行く度に見惚れてしまうこの白い建物。夏は青い空とのコントラストがいい。この建築も、自然・光の当たり方・四季をバックにした「美術作品」なんだなぁ。
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 美術館前の、芝生の広場もお気に入りです。なだらかに広がる緑。

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 エントランスに入ると、ここにも作品が。青秀祐さんの「Operation "A"」。ひとつひとつの紙飛行機が、大きな飛行機を形作っている。

 人間は、空に憧れてきた。空を飛ぶことに科学・技術で挑戦し続けてきた。空、空を飛ぶこと、空を飛ぶための乗り物・飛行機。人間がどのように憧れ、挑んできたか。そして飛行機が出来て、その飛行機と人間はどのように空を飛んだのか。飛行機が当たり前となった現代での、空を飛ぶことに対する人間の思考・芸術とは。このような切り口から、様々な展示が広がっています。

 私はよく空を見上げる。昼間の空も、夜の空・星空も。星空は宇宙を意識しているが、昼間は空そのものを意識している(同じ空なのに、昼間だって空は宇宙に続いているのに不思議なものである)。空の青さや太陽の角度による色の移り変わり、雲の動きや色、形。ぼーっと眺めながら、刻々と変わるその表情に見惚れている。そして、空を飛ぶ鳥や飛行機。飛行機に乗ってどこかに行きたいなぁ、空を飛んでみたいなぁなどと思う。白鳥などの渡り鳥を見ると、今年もよく飛んで来たなぁ、自分の翼で遠くからよく飛んでくるなぁと思う。こうやって空を観ている時、心の中には空への憧れの気持ちがある。広くどこまでも続いている空。この地上と繋がっているけれども、手を伸ばしてみると「届かない」と思う。空を飛んで、見たことも無い世界を見たい、遠くへ行きたい。空から地上の世界を観てみたい。今日も歩きながら、やはり空を見ていた。

 空に憧れた人間の歴史から、展覧会は始まりました。ギリシア神話のイカロスの物語。「昔ギリシャのイカロスは ロウで固めた鳥の羽 両手に持って飛び立った~」の「勇気ひとつをともにして」の歌でも有名なイカロス。イカロスは作った翼で飛ぶが、ご存知の通り太陽の熱でロウが溶け、翼が壊れ墜落してしまう。そう、空を飛ぶことは、重力に逆らうこと。墜落するリスクを抱えている。墜落=死。空への憧れは、手が届かないだけじゃなく、物理法則に逆らおうとすること、そして墜落という危険もあるからこそ「憧れ」なんだと感じました。そのことが、頭から抜けていた。光だけ見つめていたけど、影の存在を意識しました。確かに、飛行機に乗る時事故がないといい、と思っている。でも、ここで考える事故とは、乱気流や台風に巻き込まれるなどの類で、墜落までは考えていない。
 その後、レオナルド・ダ・ヴィンチやライト兄弟、サン=テグジュペリ、リンドバーグと飛行機を考え・作り・乗って空を飛んだ人々について語られます。海外だけでなく、日本人の飛行の歴史も。日本人の飛行の歴史はここで初めて読みました。そういえば、海外の飛行家たちの伝記はあっても、日本人の飛行家の伝記はないなぁ。

 飛行機が存在する以前から、人は空から見た地上の世界を描いてきた。鳥瞰図である。この鳥瞰図を「神の視点」として歴史を追って紹介している。歴史の教科書にも平安時代の絵巻にある空から見たような絵が載っているし、それ以降にも俯瞰構図の絵は多数存在している。飛行機も無い、高い塔も無いのに、どうやって描いていたのだろう?人間の想像力?と考えながら展示を見ていました。思うと不思議です。
 空からの視点は、空を飛ぶことだけでなく、山の頂上や高い塔・タワーからも見ることが出来る。そんなタワーの最先端である、東京スカイツリーも紹介されています。高さといい、構造といい、よく造ったものだよなぁ。今度東京に行ったら観に行こう(登るかは未定)。

 そして、飛行機は進化を遂げ、戦争にも使われる。戦闘機の歴史や、戦闘機を描いた絵が展示されているコーナーが結構広かった。戦闘機は、先述した重力に逆らうことと、墜落=死をはっきりと意識させる。効率よく飛び、攻撃する。攻撃されれば墜落する。空は憧れだけの世界じゃない。厳しい世界だ。ちょうど8月に観たので、戦争というテーマを意識して観ていました。
 戦闘機の図面も展示されています。シャープで、無駄のない図面。図面の用語などはわからないのですが、図面も美術作品として観ることも出来る、と感じました。機械的のようで、完全な無機質な「機械」には思えない。でも、無駄が無い。惹かれます。

 戦闘機の一方で、旅客機も登場してきます。たくさんの人々を乗せ、目的地へ安全・快適に飛んでいける旅客機。戦闘機とは違う、飛行機の形。戦闘機は訓練された飛行士しか乗れないけど、旅客機は一般の人も乗れる。飛行機が、空が身近になる。旅客機の広告や写真は、戦闘機のものとは大きく違います。明るさがある。でも、飛行機であることには変わりは無い。やはり、空を飛ぶことのリスクはある。

 飛行機は様々な美術作品に描かれている。飛行機そのものの「かっこよさ」をストレートに出した絵、デフォルメされた絵。空と人間を結んだ飛行機の描かれ方も、憧れの光の方を意識するか、影の墜落を意識するかで変わる。また、機械としての見方も。
 飛行機や空を描いた漫画家・松本零士さんのコーナーも。ここに、H2Bロケットと宇宙輸送船・HTV(こうのとり)の模型や、開発中止となってしまったGXロケットの模型もあって驚いた。まじまじと見つめていたのは私ですw戦闘機乗りを描いた松本さんの漫画も展示されていて、読みふけってしまいました。
 もうひとつ、まじまじと見てしまった展示が。「日本ロケットの父」糸川英夫博士の、一式戦闘機「隼」のスケッチ。展覧会に行く前から、糸川博士に関する展示もあると聞いて、楽しみにしていたのです。ロケットの開発の前、戦時中は戦闘機の開発をしていた糸川博士。その「隼」の性能について説明する際に描かれたというスケッチ。これが糸川博士の書いたものなんだ…とまじまじと観ていた、というわけです。
 戦後、日本での飛行機開発は禁止されてしまい、そこで糸川博士はロケット開発を始めるのです。そう、糸川博士の戦闘機も「隼」、後に「イトカワ」と名づけられた(探査機が打ち上げられた後のことですが)小惑星に向かい、タッチダウンしてサンプルリターンを成し遂げた小惑星探査機も「はやぶさ」。糸川博士と「隼(はやぶさ)」の原点はこれなのか…とも思いつつ観ていました。

 戦後から現代へ。飛行機は、旅客機が飛躍的に進化し、またSF漫画やアニメにも描かれます。ここは日本の美術館。日本のサブカルチャーについても展示します。「マクロス」などに出てくる戦闘機、「アイドルマスター」のキャラクターが描かれた「アイマス機」模型…いわゆる「痛飛行機」まで。うん、日本だなぁw
 プラモデルの箱に描かれる絵も多数展示。精巧な飛行機を、水彩画で描いている。どうやったらこんなタッチ、色の重ね方が出来るのだろうと観ていました。機械を描くのが苦手なので…。

 更に、飛行機は新しい形へ。映画「風の谷のナウシカ」に出てくる滑空機「メーヴェ」。「ナウシカ」を観る度に、メーヴェって不思議な飛行機だなぁと思っていました。それを実際に作って、飛んでいる方がいるのです!知りませんでした。八谷和彦さん。機体の実物が展示されていました。しかも撮影可!
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これが「メーヴェ」…映画で観たのと同じだ!
 実際に飛ばした映像も流されていました。本当に飛んでる!人が乗って飛んでいる!よく作ったなぁ。作ったもので飛ぶのも、気持ちがいいだろうなぁ。と思ったら、壁に、宇宙開発に関するコラムや著書でおなじみの松浦晋也さんの寄稿文が!国産旅客機・YS-11の引退と、八谷さんのプロジェクト、自分で飛行機を作って空を飛ぶこと。じっと読みふけりました。宇宙好きにもたまらない展覧会ではないですか…!

 いつもの青森県立美術館での特別展は、特別展スペースで終わるのですが、今回は常設展のスペースも一部使っていました。いつもより広い。最後に見たのが、押井守監督による「東京スキャナー」。東京の街を飛んでいる映像作品で、東京の名所を次々と「スキャン」してゆく。SFのような視点。飛んでいる感覚がありました。この映像作品の入り口に、押井監督のコラムが掲げられているのですが、印象深い内容だった。人間は飛んでも、重力に逆らいきれてはいないのだ、と。

 この飛ぶことと墜落することは、稲垣足穂の作品に繋がってゆきます。稲垣足穂の文章には惹かれます。


 初めて知ったことも、得た視点も多い展覧会でした。とても見ごたえがありました。美術館から出て、また空を見上げていました。すると、空に何かが見える。
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 鳥の群れでした!何の鳥だろう?渡り鳥?夢中で追いかけ、カメラを向けます。
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 鳥は空の向こうへ飛んでゆきました。ああ、やっぱり空には、人間の知らないことがたくさんある。届かないものがある。飛行機がどんなに進化しても、人間にとって飛ぶことは特別なことなのかもしれない。そんなことを思いました。

 この「Art and Air」展は、青森県立美術館だけの企画。他の美術館での展示はなし。でも、図録(カタログ)が一般発売されています。

Art and Air ~空と飛行機をめぐる、 芸術と科学の物語 或いは、人間は如何にして天空に憧れ、飛行の精神をもって如何に世界を認識してきたか。(P-Vine Books)

Art and Air展実行委員会、工藤健志(青森県立美術館) / スペースシャワーネットワーク


 読んでいると、展覧会のことを思い出します。工藤健志さんの「あとがきにかえて」には、この「Art and Air」展に至るまでの経緯、作り方などが書かれています。考えさせられる内容です。飛行機と人間、技術と人間という読みもあるけど、「展覧会」というものそのものへの問いかけもある。このような面白く、意欲的な展覧会、どんどんやって欲しいです。

 この本には、CDもついてきます。ミュージシャン・伊藤ゴローさんによるサウンドトラック。展覧会のサウンドトラックなんて初耳です。でも、聴いていると空への憧れと、手の届かない気持ちを思います。ギターとチェロの音が澄んでいて、落ち着きます。空を見ながら聴きたい音楽です。

 現在、青森県立美術館では、奈良美智展を開催中。これも行くんだ…今年の青森県立美術館の特別展は私のツボばかりついてきます。嬉しいw
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by halca-kaukana057 | 2012-11-02 23:50 | 興味を持ったものいろいろ

杜の街・仙台を歩く

 前回の記事から間があいてしまいましたが、仙台旅行の続き。今回は行った場所について。
・前回の記事:美味しい仙台食べ歩き

 仙台市内中心部、仙台の名所めぐりには「るーぷる仙台」という市内周遊バスが便利です。仙台の名所にバス停があります。一日券が600円。レトロな小さめのバス(写真撮るの忘れた…)で、細い道も通るのがいい。更に、運転手さんが通過したところのガイドアナウンスをしてくれます。運転手さんの中にはユーモアたっぷりに案内をしてくれる方もいて、車内笑いが絶えないこともありましたw
仙台市交通局:るーぷる仙台
 ↑詳しくはここを見てね。

 仙台駅を出発して、まず向かったのが「瑞鳳殿」。伊達政宗公の霊屋(おたまや)です。仙台の歴史に触れたいと思って来てみた。
バスを降りると…
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この坂。さらに
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この階段。結構きついです…。でも、森の中を歩くのは心地いい。緑がきれいです。

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ここが、政宗公が眠る瑞鳳殿。1636年造営。しかし、1945年戦災にて焼失してしまいます。現在のものは1979年に再建されたものです。とても煌びやかです。
 この横には資料館があって、再建の際に発掘された副葬品や、政宗公の姿を等身大で再現した人形が展示してあります。この瑞鳳殿のほかに、2代目忠宗公の感仙殿、3代目綱宗公の善応殿もあります。
 伊達政宗公のことをあまりよく知らないまま来たのですが、仙台の歴史と伊達家について触れられました。そういえば、3代目綱宗公の頃の伊達家「お家騒動」は、山本周五郎の「樅ノ木は残った」で描かれていますね。小説と、歴史と、土地が一致しました。
◇感想記事:樅ノ木は残った
◇周五郎が小説執筆の取材で宮城を訪れたことも書かれているエッセイ:雨のみちのく・独居のたのしみ

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 この森から、政宗公は今も仙台の街を見守っているかのようでした。

 瑞鳳殿の次は、仙台に来たらここにも訪れたいですね。
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 仙台城(青葉城)跡。政宗公の像…カッコイイです。

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 仙台の街を一望できます。仙台は街中も、緑が多い。まさに「杜の街」です。

 こんなところにも行きました。
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 東北大学理学部自然史標本館。化石・鉱物がたくさんあると聞いて。この入り口の横に注目。
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 デボン紀の海の化石がドンと置いてあります。オウムガイの仲間の直角石と、古生代型のアンモナイトのゴニアタイトの化石がたくさん。じっと見入ってしまいました。中にも、ステゴサウルスやクジラの化石、あのバージェス動物群のアノマロカリスの化石の一部もありました!!カンブリア紀のコーナーの前で、しばらく見惚れてしまいました…w鉱物も、地学の教科書で見たものばかり。
 また、「東北が支える宇宙惑星科学」というコーナーもあって、月周回衛星「かぐや」や、小惑星探査機「はやぶさ」と小惑星イトカワのサンプルの分析の解説パネルもありました。「かぐや」と「はやぶさ」の模型も。魅入ってしまったのは言うまでもありませんw
 科学好き、地学が特に好きな方は是非どうぞ!!穴場だと思います。

 午後だけの観光だったので、回ったのはこのぐらい。午前中からだと、もっと色々なところに行けると思います。夕方になると、るーぷるバスは混んでました。カーブの多いところだと、立っているのが大変。

 仙台は他にも魅力的なところがあります。また行きたいな。七夕祭りにも行ってみたい。
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by halca-kaukana057 | 2012-09-24 22:41 | 旅・お出かけ


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)

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