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音楽に向き合う旅路

 最近行ったコンサートのことを。ピアニスト・舘野泉さんのコンサートに行ってきました。舘野さんのコンサートにはこれまで何度か行く機会があり(自分でも信じられない)、その度にその音楽・演奏に魅了されてきました。今回は数年ぶり。コンサートと言っても、息子さんでヴァイオリニストのヤンネ・舘野さんのコンサートのアンコールにサプライズ出演されるという形もあったので、舘野さんのソロをたっぷりと聞けるのは久しぶりでした。
 コンサートには、弟さんでチェリストの舘野英司さんも共演。これも楽しみでした。

【プログラム】
・J.S.バッハ(ブラームス編曲):シャコンヌ
・間宮芳生:風のしるし より第2番・山にいて夜鳴く鳥の声
       5つのフィンランド民謡(ピアノとチェロ) より第3曲・家なきこじき
       風のしるし より第5番・フィンランド民謡によるミニ・シャコンヌ
       5つのフィンランド民謡(ピアノとチェロ) より第4曲・ミッキン・ペッコ(ミキの仔馬)
・吉松隆 :「平清盛」より
       遊びをせんとや
       海鳴
・モンサルヴァジェ:3つの肖像 モンポウ/オスカル・エスプラ/ルービンシュタイン
・coba:東京キャバレー(ピアノとチェロ)

【アンコール】
・スクリャービン:左手のためのノクターン op.9-2
・吉松隆編曲:カッチーニのアヴェ・マリア


 間宮芳生先生の作品は、左手のためのピアノ曲「風のしるし」と、かつて作曲したピアノとチェロのための「5つのフィンランド民謡」から2曲ずつを交互に演奏するというユニークな形。同じ作曲家の作品でも、作曲された年代の違い、編成の違いで雰囲気が少し変わるのだなぁと、面白く聴きました。

 個人的に楽しみにしていたのが、吉松隆先生が音楽担当の大河ドラマ「平清盛」より2曲。ドラマで聴いていた曲を生で聴けるとは嬉しい。「遊びをせんとや~」の最初の響きに「これだ!!」と一気にテンションが上がってしまいました。「海鳴」は、作曲したけどドラマでも未使用、サントラCD(通常盤2枚、コンプリートBOX、舘野さんのピアノ曲だけのアルバム)にも入っていないレア曲。なんとなんと…!!OPテーマ曲を、ピアノソロで演奏してしまったような曲です。「遊びをせんとや~」のメロディーから、OPの”清盛のモチーフ”を変奏しつつ繰り替えす。打ち寄せる波のように、弱くなったり強く激しくなったり。とても難しい曲です。でも舘野さん曰く「とても魅力的な左手のピアノ曲」と。今後もコンサートで演奏されるといいなぁと思う曲でした。

 cobaさんの「東京キャバレー」ですが、本来は5月のコンサートで世界初演されるはずの曲。それが、まさかの演奏…今回のコンサートは嬉しすぎます。世界初演のために、どんな曲かは伏せておきます。CDが出たらまたじっくり聴きたい曲です。

 アンコールは「待ってました!」と心の中で叫んでしまった2曲。スクリャービンのキラキラした高音…何度聴いてもたまりません。ただ、美しい。その言葉に限ります。「カッチーニのアヴェ・マリア」も、聴いていると「平清盛」ドラマでこの曲が使われたシーン(しかも毎回のクライマックスの部分)が頭の中で流れてきて大変なことになりました。アンコールでは目頭を押さえている人も散見。私もでした…。


 今回のコンサートで思ったことは、大きく分けると2つ。まず、左手のピアノ曲は作曲家の個性や作風がストレートに出やすいと感じました。ブラームス編曲のバッハ「シャコンヌ」はまさにピアノのための曲で、ピアノの音色を生かしている。間宮先生の「風のしるし」や、モンサルヴァジェ「3つの肖像」も。一方、吉松先生の曲はピアノソロでもオーケストラを意識していると感じました。というのは、「平清盛」で、オケ版をいつも聴いていたから。ピアノソロでも、あのオケの音・響き・迫力を表現しようとしている。
 左手だけの演奏だと、作曲技法にも工夫が要る。その工夫が、作曲家の作風や個性をストレートに表現しているのかなと感じました。

 思ったことのもうひとつ。
 コンサートとは、音楽家が日々向き合い演奏・練習して歩み続けている音楽の旅路に、ちょっとの間だけ同行させてもらっているようなものかな、と。

 舘野さんは普段はテレビでも観るとおりの温和な方なのですが、ピアノの前では、不屈に、ストイックに、そして真摯に音楽に向き合っている。真剣な表情、そのパワーと情熱、あくなき向上心・探求心。迫力のある低音もずしりと響き、かすかな弱音も、繊細な高音も、美しい響きも突き刺さるような鋭さを持っている。そんな舘野さんの姿、演奏に、叱咤激励、ばしん!と背中と心を叩かれた(いい意味で)ような気持ちになりました。

 これは、しばらくの間ずっと弱気・弱音を吐いてばかりで、言い訳ばかりで、受け身で、縮こまっていて、グダグダな状態の自分にとって、大きな衝撃でした。
 こんなところで倒れている場合じゃないだろう?弱々しいままで終わるのは本望ではないだろう?
 舘野さんの演奏は「左手のピアノ」を超越している…左手だろうが両手だろうが「音楽」であることには変わりは無い。ひとりのピアニストが、渾身の演奏をしている。音楽に真摯に向き合い続け、音楽を求め続けている。今もその旅を続けているんだ。その音楽の旅を、音楽で表現しているように感じました。

 音楽の面でもですが、それだけでなく、日々暮らすこと、仕事すること…生きることそのものに対して弱々しく、後ろ向きな状態の私にとって、いい刺激になりました。

【過去関連記事】
ピアノの可能性 舘野泉コンサートに行ってきた
ヴァイオリンの発見 ヤンネ・舘野コンサートに行ってきた
音楽で語る・振り返る「平清盛」
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by halca-kaukana057 | 2013-05-02 23:12 | 音楽

音楽で語る・振り返る「平清盛」

 そういえば、かなり前に書くと言っていたはずなんだが…最終回終わってしまったよ。

 今年、初めてNHK大河ドラマを1年通して観ました。「坂の上の雲」もかなり熱心に観てましたが、あれは大河ドラマじゃない…。今年の大河「平清盛」。これまでちらりと観るか、ほとんど観ていなかった大河ドラマを1年、50話全部観るきっかけになったのが、音楽でした。

NHK大河ドラマ《平清盛》サウンドトラック

吉松隆 / 日本コロムビア


NHK大河ドラマ《平清盛》オリジナル・サウンドトラック 其の二

吉松隆 / 日本コロムビア



 音楽は、作曲家の吉松隆先生。そう聞いて、それは凄い、ここで観ようという気になりました。しかし、1年間も続く、50話もある物語。しかも日本史。日本史はあまり得意では無い。普通のテレビドラマもここ数年はろくに観ていない。そんな私が1年続けて観られるのだろうか…。
 でも、テーマ曲・劇判に”左手のピアニスト”としても著名な舘野泉さんも参加されると聞いて、これはやはり観たい。そして1話…テーマ曲・劇判に聞き入りました。ドラマも、最初は「時代劇らしくないなぁ…?」と思いつつも、青臭い清盛(高平太)が徐々に成長してゆく様や、父・忠盛や白河院、盛国や家貞をはじめとする平氏一門、ライバルで親友の義朝、義清(のちの西行)、最初はちょっと頼りなさげな学問大好き青年だったのが徐々に権力者へとなってゆく信西、義朝の父為義、朝廷の人々…挙げるときりがない個性的で活き活きしている脇役の方々の物語を観ているうちに、ドラマそのものにもハマってしまい、毎週観るのが楽しみになってしまっていました。あれ、そういえばこのドラマを観るきっかけってなんだったっけ…と本来の目的を忘れてしまうほどw

 テーマ曲は、清盛の生涯を2分30秒にまとめた、と吉松先生がブログに書いていた通り、劇的なテーマ曲。舘野さんの静かな、美しいピアノで始まり、オーケストラが唸る、吠える。最初の頃は、エネルギーをもてあましている高平太・若き日の清盛のように力強くたくましく、荒々しさの中にも平氏一門へのやさしさも感じていました。しかし、清盛が太政大臣となり、どんどん国の頂へ上り、栄華の裏で頼朝たち源氏が動き出すあたりでは、最初のピアノもはかなく寂しげで、荒々しさもむなしさを伴うように聴こえた。同じ曲、同じ演奏なのに違って聴こえる。不思議だなぁと思いつつ、頼朝挙兵後、清盛が武士の心を取り戻した終盤ではまた力強く、荒々しく。不思議です。

 BGMも、サントラを聴いていると様々なシーンを思い出す。頼朝のナレーションや、各登場人物の台詞や表情が浮かぶ。勇ましい曲も、きれいな曲も。
 ちなみに、テーマ曲の中に主題・モチーフがいくつか入っていて、その変奏曲のような形で劇判も作曲されています。
◇詳しくは吉松先生の記事で:月刊クラシック音楽探偵事務所:大河ドラマ「平清盛」音楽制作メモ
◇音楽制作の裏話も:月刊クラシック音楽探偵事務所:大河ドラマ「平清盛」音楽全仕事
 これを読んでいると、大河ドラマの音楽をつくるって、本当に大変なんだなぁ…。

 「遊びをせんとや生まれけむ」のメロディー、歌も印象的。劇中では後白河院が歌っていたのが印象的です(後白河院は「遊びをせんとや~」を含む今様の数々を「梁塵秘抄」にまとめました)。しかし、このデモを「初音ミク」で作ったという…wさすがですwサントラ2には、そのミクのデモバージョンも収録。NHKのサブカル番組「MAG・ネット」でも紹介されたほど(ミクのフィギュアを持って笑顔の吉松先生wPCの壁紙も「はちゅねミク」…凄いw)。

 そして、吉松先生が既に作曲・編曲していた作品も登場。まずはなんと言っても「タルカス」。エマーソン・レイク&パーマー(ELP)のプログレの名曲。この「清盛」を観るまで曲のことも知らなかったし、吉松先生がオーケストラ編曲していたことも知らなかった。
◇2010年のことでした:月刊クラシック音楽探偵事務所:夏休み総力特集「ロックmeetsクラシック」
 番組で聴いて、「これは!」と思った。現代のプログレが、平安時代に合う?合ってる。…凄い。平安時代も、一般的な雅な部分と、武士や民衆の「生きること」がむき出しの部分の2つの面がある。その面を知ったのもこのドラマだったし、「タルカス」はそこにぴったりだった。オーケストラ編曲版と原曲を聴いて、どちらも好きになったし、オープニングで今日は「タルカス」が出てくるのかチェックするのが楽しみだった。最初は「噴火」の部分だけだったのが、「マンティコア」、そして「アクアタルカス」。「アクアタルカス」って、ちょっと…!と思ったが、最終回を観て、これまで考えていた意味とは違う意味で聴こえた。「アクアタルカス」は、最後に再び「噴火」のモチーフに戻る。滅亡が終わりではない、と。

 もう1曲、「5月の夢の歌」(「4つの小さな夢の歌」より第1曲)。元々はギターとハーモニカのための作品で、その後ピアノソロ、更に舘野泉さんも演奏できるように3手連弾版も。以前、館野さんのCDで聴いてすぐに気に入り、コンサートで生で聴いて、ますます大好きになった。それが、ドラマの感動的なシーンで流れる。ここぞというところで。第1話、幼い清盛(平太)と忠盛、鱸丸(後の盛国)が小船に乗って会話しているシーン。その穏やかな雰囲気と、忠盛が話した台詞にこの曲…ノックアウトされたシーンでした。その後も、サントラ2の「絆」とタイトルがついたアンサンブル版も登場。これも良かった。最終回、遺言のシーンで最後の登場…涙を誘いました…。

 この他にも、「アイノラ抒情曲集」や左手のための「カッチーニのアヴェ・マリア」、「サイバーバード協奏曲」など、吉松作品が次々と。たまりませんでした。

 このドラマを1年観て…日本史が面白くなった。歴史が躍動的に見えてきた。歴史もののドラマや映画はこんなところがいいな。あと、古典文学を読みたくなった。これが一番大きい。「平家物語」も、「梁塵秘抄」も。「保元物語」「平治物語」もあるし、「新古今和歌集」や西行の歌の数々も。清盛の妻・時子が愛読していた「源氏物語」も、いきなり全部は厳しいので入門編から少しずつ。高校の古典の教科書・参考書を引っ張り出してきてしまっていました。

 最終回を観て、1年観てきて面白かったな、と思っています。音楽もドラマも、登場人物たちも。最終回の再放送と総集編がまだ残っている。もう一度1話から観直したい。

 サントラですが、コンプリートBOXも出ましたよ…

平清盛×吉松隆:音楽全仕事 NHK大河ドラマ《平清盛》オリジナル・サウンドトラック

吉松隆 / 日本コロムビア


 サントラ2には収め切れなかったドラマ終盤の音楽や、デモ版などが全て収められているとのこと。「タルカス」もサントラには入らなかった「マンティコア」「アクアタルカス」も入ってる。「5月の夢の歌」も、館野さんのアルバムの演奏はテンポ速めなのですが、番組で使われたのはゆっくりめ。このゆっくりめなのもいいんだよなぁ…欲しい。
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by halca-kaukana057 | 2012-12-24 23:55 | 音楽

ピアノの可能性 舘野泉コンサートに行ってきた

 このブログで何度も取り上げているピアニスト・舘野泉さんのコンサートに行くことができました。悲願達成です。

プログラムは以下
・J.S.バッハ(ブラームス編曲):シャコンヌニ短調 BWV1004より
・スクリャービン:「左手のための2つの小品 op.9」より 前奏曲/夜想曲
・間宮芳生:風のしるし~オッフェルトリウム
・吉松隆:四つの小さな夢の歌~三手のための(共演:平原あゆみ)
      タピオラ幻景 op.92

 ピアノの鍵盤を正面から見ることが出来る位置に座ったのだが、手の動きに驚いた。鍵盤の低音の端っこから、高音の端っこまで動く動く。しかも左手だけで。テレビで観た時もすごいと思ったのだが、目の前で見るとまた違う。私はこれまで、ピアノ曲を聴く時は音だけに注目しようとしてきた。CDで聴くことが多いのでどうしてもそうなってしまうのだが、音の響きや表現に注目して、それ以外の情報はあまり注目しようとしなかった。でも今回、舘野さんの演奏をこの眼で観て、手・指の動きにも注目してみた。ピアノの真正面ではあったが離れていたので、まじまじと見ることは出来なかったが、出したい音・響き、表現のためには手・指・身体の動きにも注意を払う必要がある。ピアノを演奏することは、スポーツに似ているのかもしれない(だとしたら、運動音痴の私はどうしたら…orz)。ピアノだけのコンサートに行ったのは初めてだったので、まずそういう点に注目。

 もうひとつ驚いた点。ピアノってこんなに音が出る楽器だったんだ…と思い知らされた。CDで聴くのとは違う。優しい弱音から、渾身のフォルテシモまで。音色も、響きも、表現も多彩。「ピアノは小さなオーケストラ」と呼ばれる意味がようやくわかった。これまで、確かにピアノは多彩な音・表現が出来る楽器だと思ってはいても、実際のオーケストラに比べたら全然違うだろうと思ってきた。だから、自分でピアノは演奏するけど、ピアノよりもオーケストラの演奏を聴いている方が好きだったし、交響曲・管弦楽曲の方が好きだ。でも、それは私がピアノの可能性を知らなかったから、そう思ったのだろう。舘野さんの演奏は、ピアノの可能性を最大限に引き出していると感じた。スクリャービンの「夜想曲」のキラキラした高音。高音がキラキラするって、こういうことを言うんだ…これも今回思い知ったことのひとつ。一方、吉松隆の作品は低音が印象的に響く。ピアノっていい楽器だなと、心から思う。


 アンコールは3曲。
・カッチーニ(吉松隆編曲):アヴェ・マリア
・カスキ:激流 op.48-1(演奏:平原あゆみ)
・吉松隆:子守歌~三手のための(共演:平原あゆみ)

 「アイノラ抒情曲集」で三手連弾を共演された、お弟子さんの平原あゆみさんもアンコールをソロで演奏してくださいました。と言うよりは、舘野さんに半強制的に「何か弾きなさいよ」と(笑)。演奏したのが、フィンランドの作曲家、ヘイノ・カスキの「激流(Pankakoski)」。この曲を選曲し、生で聴けるとは思わなかった。かなり前に「夏至の夜にメリカント」(2006.6.21)の記事で紹介した舘野さんのCDで聴いて、気に入った曲。生で聴いてますます気に入った。しばらくフィンランドの作曲家の作品から離れていたので、聴きなおそうと思っている。



 CDで聴いていいなと思っていた曲・演奏の響きが目の前で、今ここの空気を伝わって響き届いてくることに感動した。自分の音楽・ピアノに対する無知、経験のなさ、未熟さも思い知りましたが、それだけいい勉強になった。舘野さんのコンサートにはいつか行きたいと以前から思っていたので、その願いを達成できたことと、舘野さんのコンサートでこんな勉強もこんな勉強も出来てよかったと思う。そして、憧れていた音色に生で触れることが出来たのも。行って本当に良かった。
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by halca-kaukana057 | 2008-04-28 22:40 | 音楽

舘野泉:アイノラ抒情曲集

 以前「タピオラ幻景」で聴いた舘野泉さんが弾く、吉松隆氏の左手のためのピアノ曲集。「タピオラ~」が結構気に入ったので、先日出た新曲も聴いてみました。


アイノラ抒情曲集
舘野泉 with平原あゆみ/吉松隆/エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ

 「アイノラ」はシベリウスが住んだ家のこと。シベリウス・フィンランドつながりの2人なので、またもやこんなタイトルになってしまいました。「タピオラ~」と同じく、不思議な響きのする7曲。吉松氏の音楽って、響きが印象的で、どこか寂しげ。静けさはアイノラの風景そのもの。

 今回のCDの作品は、全て吉松氏による作編曲。舘野さんのお弟子さん・平原あゆみさんとの三手連弾も何曲か。その中の、「4つの小さな夢の歌」第1曲「春:5月の夢の歌」は一番のお気に入り。今の季節にぴったりな優しい、朗らかでのびやかな曲。時間を止めて聞き入っていたい、そんな曲。

 「ゴーシュ舞曲集」はこれまでの雰囲気がガラリと変わる、ノリノリな曲ばかり。以前このCDに関しての情報を知った時(「秋のフィンランド本まつり「音遊人」2006年10月号」)、「ゴーシュ」とは宮澤賢治の「セロ弾きのゴーシュ」だと思っていたが違うのだそうだ。元々、左手のことをフランス語で「ゴーシュ(Gauche)」と言うのだそうだ。そう言えば、その宮澤賢治は「ヘタクソな」という意味で「ゴーシュ」と名づけたんだっけか。(……曲の話は何処に行った)

 「3つの聖歌」は、シューベルト、カッチーニの「アヴェ・マリア」と、シベリウスの「フィンランディア賛歌」を左手のために編曲したもの。左手でフィンランディア賛歌。実はこれが一番聴きたかった。シンプルな、あの有名なメロディーから始まって、どんどん音が重なり、響きが深く重くなってゆく。2つの「アヴェ・マリア」と共に祈りをささげたい気分になってくる。

 前回と同じく、左手で弾いているかどうかなんてどうでもいい、こういう曲があって、ひとりの人間が演奏している。それだけでいい。再びそんなことを思ってしまった一枚。

 ちなみに「左手のための」と言っても、所々右手も使って録音したのだそうです。それから、先日の「ピアノ好きのねえさんに100の質問」の、55問目「ジャケットが気に入っているCD」でこのCDを選びました。表ではなく、内側。アイノラの写真がたまらんです。
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by halca-kaukana057 | 2007-05-19 21:24 | 音楽

舘野泉:タピオラ幻景

 この前夏至の日に舘野泉さん演奏のメリカントのピアノ曲を紹介したが、今や舘野さんと言えば「左手のピアニスト」。今までその左手の演奏を聴いた事がなかったので、このCDを聴いてみた。



タピオラ幻景 -左手のためのピアノ作品集2
舘野泉 吉松隆 タカーチュ / エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ

 CDタイトルとなっている「タピオラ幻景」。綺麗…というのが第一印象。「タピオラ」つまりフィンランドの「カレワラ」に出てくる森の神・タピオの領地=森。そのタピオの森をイメージした5つの曲の美しさと不思議な寂しさ。そして、とても左手だけで弾いているとは思えない。いや、左手か両手かそんなことはどうでも良くなってしまった。こういう音楽があって、一人の人間が弾いている。それだけでいい。

 この「タピオラ幻景」を作曲した吉松隆という作曲家、かなり変わっている。シベリウスの第6交響曲を聴いて「こんな曲を作りたい」と作曲家を志した。でも、音大に進んだわけじゃなくほぼ独学で作曲を学び、オーケストラ曲「朱鷺に寄せる哀歌」でデビュー。作曲はパソコンソフトを使っているというあたりも変わっている。著書も多く、イラストは吉松氏本人が描いている(そのヘボ可愛いイラストが好きだったりする)。シベリウス・フィンランドつながりで舘野さんと親交が深く、北欧を思わせる左手のピアノ曲を作曲して欲しいと頼まれたのだそうだ。

 2曲目の「森のジーク」が特に気に入った。3曲目「水のパヴァーヌ」だけはNHK教育「福祉ネットワーク」に舘野さんが出演された時に弾いていた曲。鍵盤の全域を使うので、左手があっちこっちに動く。時々聞こえる低音がいい。

 それにしても全曲を通して不思議な暗さが漂っている。しばらく聴き倒します。

trackback for:「一年365枚:吉松隆 タピオラ幻景/舘野泉(p)」
トラックバックをいただきました。本当に詳しいです。
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by halca-kaukana057 | 2006-08-13 21:54 | 音楽


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