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[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その7 ベルグルンド&ヘルシンキフィル盤

 昨年からゆっくりと進めてきた、シベリウス「クレルヴォ交響曲」op.7 聴き比べ企画。今回で一旦最終回です。このシリーズの最初に、「クレルヴォ」の世界初の録音となったパーヴォ・ベルグルンド:指揮 ボーンマス交響楽団で始めたのですが、最後もベルグルンドで締めたいと思います。今度は地元フィンランドのヘルシンキフィルとの演奏です。

パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
エーヴァ=リーサ・サーリネン(メゾソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)
ソヴィエト・ロシア国立アカデミー・エストニア男声合唱団
ヘルシンキ大学男声合唱団


 ボーンマス響との録音が1970年。このヘルシンキ・フィルとは1985年の録音です。以前取り上げたネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響と同じ年です。第3楽章、クレルヴォの妹役のサーリネンさんはメゾソプラノ。バリトンのヒュンニネンさんは他の録音でも大活躍。フィンランドの名バリトンであり、名クレルヴォ・バリトンです。

 初録音から15年。速度はそんなに変わりありません。しかし、1楽章は引きしまった感じがしますし、強音から弱音までの幅が広くなった。冒頭はゆっくりめに始まるのはボーンマス響もヘルシンキ・フィルも変わりないのですが、弦が澄んでいる。静寂を大事にするところは長く取って次の音をより印象的に。特に第2楽章後半で弱音からじわじわと強音へ上げてくるところは息をのみます。
 第4楽章はこれまでヒロイックな金管に注目していましたが、管楽器の高音も弦楽器のうねりも印象に残ります。それから、4分40秒あたり、金管の2音の連打からの、うまく言葉に出来ないのですが…この部分がロックな音をしているなと感じました。ウンタモを滅ぼそうと出征し、怒りで感情が制御できないような。
 男声合唱はヘルシンキ大学男声合唱団と、当時はまだソヴィエトだったエストニアの男声合唱団と2つの合唱団が参加。力強い合唱。クレルヴォとクレルヴォの妹の歌も悲痛。クレルヴォの妹は今回メゾソプラノですが、ソプラノのような澄んだ高音も出せていて、悲痛だけど美しいと感じました。クレルヴォの嘆きは重々しく。この重々しさから第4楽章、そして第5楽章へ進むのに、物語を感じます。スケールの大きな演奏です。

 このCD(国内版)、2枚組で、第1~3楽章が1枚目、第4・5楽章が2枚目と分かれています。わざわざCDを入れかえる必要があるのが面倒です…。でも、2枚目にはカンタータ「故郷(祖国)」op.92、「火の起源」op.32と男声合唱とオーケストラのための作品が入っています。どちらも大好きな作品。これが入っているのが嬉しいです。「火の起源」は「クレルヴォ」と同じく「カレワラ」に基づく作品。「故郷(祖国)」は、その名の通り、フィンランドの美しい自然や「カレワラ」を讃える歌。美しいです。

 ということで、今回で「クレルヴォ」聴き比べは一旦終わり。新しい演奏を聴いたら、また書くと思います。

 なかなか演奏機会も少ない「クレルヴォ」ですが、来年、日本で演奏されます。生で聴けるチャンスです!
東京都交響楽団:2017年ラインナップ発表
東京都交響楽団:第842回 定期演奏会Aシリーズ
2017年11月8日(水) 19:00開演

指揮:ハンヌ・リントゥ
ソプラノ:ニーナ・ケイテル
バリトン:トゥオマス・プルシオ
男声合唱:フィンランド ・ポリテク男声合唱団

シベリウス:クレルヴォ交響曲 op.7

 昨年フィンランド放送交響楽団と来日したリントゥが、都響で「クレルヴォ」をやります!!シベリウス没後60年&フィンランド独立100年の2017年、ぴったりのプログラムです。
 日本のプロオケが「クレルヴォ」を演奏するのは何年ぶり、何十年ぶりなんだろう…?(昨年新田ユリ:指揮で演奏したアイノラ交響楽団はアマオケ)。男声合唱はプロムスでも歌ったポリテク合唱団。まだまだ先ですが、いいなぁこれ。
 ちなみに、リントゥはフィンランド放送響では「クレルヴォ」を指揮してない…おそらく、2017年秋から始まる2017-18年シーズンの始めでフィンランド放送響で演奏して、それを都響に持ってくるかと思います。まだ予定が出てないので予想です。シベリウス生誕150年の昨年も多かったですが、来年はまた「クレルヴォ」の演奏が増えるんだろうなぁ。嬉しいです。
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by halca-kaukana057 | 2016-10-18 22:13 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その6 パヌラ盤

 今日はシベリウスの命日。59回目です。来年は没後60年(&フィンランド独立100年).この頃、プロムスの溜まっているオンデマンドばかり聴いて、シベリウスをあまり聴いていませんでした。今年のプロムス、シベリウスは1公演1曲しかなかった…(去年たくさんやったでしょうが)。来年は没後60年だからまた増えるといいな。

 まだ続いている「クレルヴォ」交響曲を聴こうシリーズ。まだあるんです。店頭で見つけて、指揮者の名前にこれは聴いてみたい!と思い買ったCDです。

ヨルマ・パヌラ:指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
ヨハンナ・ルサネン(ソプラノ)、エサ・ルーットゥネン(バリトン)
ラウル・イスタヴァ男声合唱団


 指揮は、今世界各地で活躍しているフィンランド指揮者たちを育てた、元シベリウス音楽院指揮科教授のヨルマ・パヌラ。パヌラ先生が指揮をしている録音をあまり聴いたことがなかったので、これは聴きたいと思いました。男声合唱は前回のネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響と同じくラウル・イスタヴァ男声合唱団。1996年の録音です。

 シベリウスの番号つきの交響曲と、「クレルヴォ交響曲」の違いは、はっきりとした基づくものがあるかどうか。番号つきの交響曲は、それぞれの作曲の際のエピソードやシベリウス自身の言葉も残されていて、聴く手がかりにはなりますが、自由に想像します。
 一方の「クレルヴォ交響曲」は、「カレワラ」の「クレルヴォ」の章に基づいている。悲劇の英雄クレルヴォを描いている。第3・5楽章では「カレワラ」から引用した声楽独唱と男声合唱が入る。明確に、クレルヴォのこの章とわかる。
 でも、これまで様々な「クレルヴォ交響曲」を聴いてきて、悲劇の英雄クレルヴォも一様ではないなと感じた。きっと幼い頃から「カレワラ」に親しんできたフィンランドの人たちの抱くクレルヴォと、日本語訳の「カレワラ」を読んで私が抱くクレルヴォのイメージは異なる。また、「カレワラ」は叙事詩。語り口調や表現は普通の物語とは違う。1,2,4楽章は副題から、クレルヴォの章のこの部分とわかるけど、その章全部を描いているのか、ある一部分だけど描いているのか(すみません勉強不足なだけです)、わかりにくいところもある。それぞれの演奏を聴いて、それぞれのクレルヴォ像に触れられるのが興味深い。

 パヌラ先生の「クレルヴォ」は、繊細なところもはっきりと聴こえる。強いけれども、憎しみや苦しみで心に暗い影のひだを沢山を持っているようなクレルヴォ。第1楽章はゆっくりめに始まるけれども、第3楽章の始めのほうでは速めで、独唱部分になるとゆっくりになり、よく語り歌う。ソプラノのルサネンさんの透明な声がきれい。ルーットゥネンさんのバリトンは、オケとのバランスがあまりよくなくて残念ですが、悲痛な叫び。第3・5楽章の男声合唱も、北欧らしい澄んだ、やわらかい、繊細さを持っている。先ほども書いたように、豪快で「爆演」なネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響のと同じ合唱団。録音された年は10年ほど違いますが、これ同じ合唱団?と思ってしまう。第5楽章、最後は、オーケストラはジャン!ジャーン!と強い音で劇的に終わるのですが、パヌラ盤はソフト。あれ?と思ってしまう。消え入るようなクレルヴォの死。これはこれで印象深い。

 「クレルヴォ交響曲」がますます興味深くなる演奏です。
 ちなみに、演奏のトゥルク・フィルの現在の首席指揮者はレイフ・セーゲルスタム。シベリウスの管弦楽曲を次々と録音していて、こちらも興味深いです。

 「クレルヴォ」シリーズ、あと1回で区切りをつけようと思います。


【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ:指揮、ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
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by halca-kaukana057 | 2016-09-20 22:13 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その5 N.ヤルヴィ盤

 忘れてませんよこのシリーズ。シベリウス「クレルヴォ交響曲」聴き比べシリーズ。ゆっくりゆっくりですが進めます。来月、シベリウスの命日の9月20日には一区切りできればいいなぁ(その後は2017年になれば今度は没後60年)

 先月、Eテレ「クラシック音楽館」で、ネーメ・ヤルヴィ指揮N響の演奏会が放送されていました。以前このシリーズで、ご長男のパーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤を取り上げましたが、ネーメパパも「クレルヴォ交響曲」を録音しています。今回はネーメパパ(ムーミンパパみたいな…w)の演奏です。

 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ交響楽団
 カリタ・マッティラ(ソプラノ)、ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン)
 ラウル・イスタヴァ男声合唱団


 1985年の録音。古めの分類に入ってきました。
 まず、この演奏のいいところは、シベリウス:交響曲全集の中に入っていること。ネーメさんは、エーテボリ響と2回シベリウス交響曲全集を出していますが、これは1回目のBISからのもの。交響曲全集の中に「クレルヴォ」も入ってるのは嬉しいなと。最近のシベ全は、純粋に交響曲だけで、「フィンランディア」も「タピオラ」も「悲しきワルツ」も「トゥオネラの白鳥」も入ってないのが多い…別に管弦楽曲集を出していればいいのだが、交響曲だけでちょっと寂しいなと思います。せめて「フィンランディア」と、最後の大き目の規模の管弦楽曲(第8交響曲と呼ばれることもある)「タピオラ」は入れてほしいです。ちなみにこの全集には、「クレルヴォ」の他に管弦楽曲は入ってません。後にグラモフォンから管弦楽曲集を出しています。

 演奏は、一言で言うと「爆演」です。この演奏を聴いてから、他の演奏を聴くと大人しく聴こえてしまいます。テンポも速い、1・2楽章は特に速いです。全体で67分。前回取り上げたヴァンスカ&ラハティ響の演奏は遅めでしたが、対照的。

 荒っぽいところはあります。でも、その荒っぽさが、クレルヴォの荒々しい面…第1楽章の序章:クレルヴォの悲劇の始まり、第2楽章「クレルヴォの青春」恵まれず苦渋を味わい続けた少年~青年時代の乱暴な面や胸に秘めた敵討ちが表現されているように聴こえます。第4楽章「クレルヴォの出征」も速め、荒々しさが出ています。
 第3楽章、冒頭の男声合唱は速めで、ピッチも高めです。あれ?と思います。でも、クレルヴォの妹のソロ、続くクレルヴォのソロはたっぷり重々しく。第5楽章も、ゆっくりめでところどころ弱音に落としたり、死に向かうクレルヴォの悲痛さを歌う男声合唱を、じわじわと聴かせてくれます。ただ「爆演」「豪快」なだけでなく、テンポを落すところは落として、迫力は維持したままじっくり聴かせるネーメさん、うまいなぁと思います。オケも気迫があっていいなと思います。


 ちなみに、現在のエーテボリ響ですが、首席指揮者が不在でした。が、2017-18年シーズンからの新首席指揮者が決まりました。フィンランドの若手・サンットゥ=マティアス・ロウヴァリ(Santtu-Matias Rouvali)さん。今年で31歳。トゥルク・フィルハーモニーの首席指揮者でもあります(来年5月、来日決定してます)。以前、YLEでトゥルクフィルとのシベリウス4番を聴いたが、とてもよかった。エーテボリ響というと、このシベリウス全集だけでなく、他にもネーメさんとの録音がとても多いです。ロウヴァリさんとのこれからも楽しみです。落ち着いたら「クレルヴォ」演奏、録音してほしいなぁ。
 ネーメパパもどこかでまた「クレルヴォ」演奏しないかなぁ。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド:指揮、ボーンマス響盤
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[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤
 オスモ・ヴァンスカ:指揮、ラハティ交響楽団

シベリウス誕生日記念、管弦楽曲特集
 ネーメ・ヤルヴィ:指揮、エーテボリ響のシベリウス管弦楽曲集(グラモフォン)
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by halca-kaukana057 | 2016-08-03 22:26 | 音楽

シューマンとリュッケルト

 今日は6月8日、ロベルト・シューマンの誕生日。生誕206年です。初夏、(当地では)入梅前の爽やかな季節、シューマンはとても合うと思うのです。雨の日もまた合うと思う。

 今年はこのCDから。
HMV:BBC Music Magazine 2016年5月号
f0079085_2241654.jpg BBCが出版している音楽誌。前から気になっていたのですが、この5月号の付録CDがシューマンとクララの歌曲と聴いて購入。洋書です。全部英語です。

 シューマンは様々な詩人の詩に曲をつけました。ゲーテ、ハイネ、ケルナー…そしてフリードリヒ・リュッケルト。シューマンの歌曲の代表的作品、「ミルテの花」op.25の第1曲「君に捧ぐ(献呈)/Widmung」もリュッケルトの詩。「ミルテの花」では第11曲:花嫁の歌Ⅰ、第12曲:花嫁の歌Ⅱ、第25曲:東方のバラより、第26曲:終わりに、が取り上げられています。

 op.37は全曲リュッケルトの詩の作品です。詩集「愛の春」から12曲。この歌曲集の中の3曲はクララの作曲です。歌も、ソロだけではなく、ソプラノとテノールの重唱もあります。ロベルトとクララの結婚に合わせて作曲、出版は結婚の翌年になってしまいますが、2人の愛の歌と言っていい歌曲集です。

 これまで、あまり作詞者、作詞者の個性については注目してこなかったのですが、「献呈」からもわかるように、リュッケルトの詩はロマンティックです。シューマンにぴったり。特に好きなのが、第5曲「私は自分の中に吸い込んだのだ/Ich hab in mich gesogen」.春と愛の喜びを、美しいメロディーに載せています。前奏がとても印象的。歌とピアノ伴奏が追いかけっこをしているような音楽で、穏やかな雰囲気です。第9曲「バラ、海 そして太陽/Rose,Meer und Sonne」も広い広い海原を思わせるおおらかなメロディーが美しいです。重唱の第7曲「美しいのは春の祭/Schön ist das Fest des Lenzes」、第12曲「確かに太陽は輝く/So wahr die Sonne scheinet」ソプラノとテノールのハーモニーがきれい。特に第12曲は教会で聴く賛美歌のような美しさ。詩も愛を静かに、優しく、ストレートに歌っています。小さな合唱曲です。

 シューマンの歌曲は、詩の魅力を曲が引き出し、美しく響かせているところにあるのかな、と感じました。このCD、歌もきれいでいいCDです。これが雑誌の付録とは。
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by halca-kaukana057 | 2016-06-08 22:05 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その4 ヴァンスカ盤

 前回の投稿からかなり間が開いてしまいました。体調がよくなく、集中して長い曲を聴く気力体力がありませんでした。回復してきたので再開します、シベリウス:クレルヴォ交響曲聴き比べシリーズ。生誕150年記念…過ぎてしまったじゃないか…いいえ。シベリウスの150年の誕生日の間、2016年12月7日までは生誕150年だと考えています!(何度も書きますw)シベリウスが12月生まれでよかったですw

 前回は150年記念の特別演奏会での演奏でしたが、今回からは一般に発売されているCDの録音にに戻ります。
 今回取り上げるのはこちら。
オスモ・ヴァンスカ指揮、ラハティ交響楽団
リッリ・パーシキヴィ(メゾソプラノ)、ライモ・ラウッカ(バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(男声合唱)


 シベリウスと言えば、ヴァンスカ&ラハティ響のコンビは外せません。勿論「クレルヴォ交響曲」も録音しています。2003年の来日公演でも演奏されました。日本で「クレルヴォ交響曲」を聴ける機会はなかなかないですね…。

 この演奏、まず、長い。平均的な演奏時間は73分程度。ベートーヴェン第九と同じぐらい、と前に書きました。しかし、ヴァンスカ&ラハティ響盤は80分あります。特に第2楽章「クレルヴォの青春」はゆっくりと。一般的な演奏は14~15分のところを、19分かけて演奏しています。溜めるところをじっくり溜め、休符もたっぷりと休符をとる。全体的にやわらかい音色。ヴァンスカ&ラハティ響お得意の「スーパーピアニッシモ」が随所でいかされていて、その緊張感にはっとします。緊張感と言っても、鋭い突き刺さるような緊張感というよりも、「静寂がものを言う」「音が鳴っているけど静寂を感じる」シベリウスの音楽を表現するような弱音、緊張感です。

 この演奏の特徴的なところがもうひとつ。第3楽章「クレルヴォとその妹」で出てくるクレルヴォの妹役がメゾソプラノであること。普通はソプラノです。まれにメゾソプラノが歌う録音が存在します。歌うのはフィンランドの名メゾソプラノ・リッリ・パーシキヴィさん。ソプラノに負けない澄んだ高音と、メゾソプラノだからこその低音が映えます。クレルヴォも過酷な運命に立ち向かうことになりますが、妹もやはり過酷な運命を背負っている。クレルヴォに出会った時に投げつける乱暴な言葉や、自身の過去、そして嘆きの歌は深いメゾソプラノの方が合うかもしれない、とも思いました。
 クレルヴォの嘆きの部分も、ハリのある深いバリトン。この歌に入る前に、長く休符をとっています。

 ヘルシンキ大学男声合唱団の合唱も、ソフトな感じです。他の録音ならもっと鋭利な歌い方をするところを、儚いようなやわらかい歌い方をしています。でも、第5楽章「クレルヴォの死」の最後は劇的に。ヘルシンキ大学男声合唱団は、このシリーズ1回目のベルグルンド指揮ボーンマス響の演奏でも歌っています。同じ(とはいえ時代もメンバーも変わった)合唱団でも、解釈により歌い方を変えているのが興味深いです。カレワラのクレルヴォの章をどう読み込んでいるかでも違いが出ているのでしょうか。面白いです。

 音、各パートの構築も緻密で、他の録音ではあまり聴こえてこなかった楽器も聴こえてきて、そうだったのかと思うところもありました。さすがは優秀録音のBISです。

 ヴァンスカさんは現在音楽監督を務めるミネソタ管でも、以前クレルヴォ交響曲を演奏していました。ミネソタ管は色々ありましたが、持ち直してきて、途中で止まっていたシベリウス交響曲全集も再開するそうです。本当によかった…一時はどうなるかと…。クレルヴォ交響曲も入るとのこと。楽しみです。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 ベルグルンド指揮ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?
 サラステ指揮フィンランド国立歌劇場管弦楽団、バレエ付き。(動画はもう観られなくなりました)
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by halca-kaukana057 | 2016-05-29 22:33 | 音楽

悪い時は悪いなりに

 数週間ぶりの更新です。余程のことがない限り、こんなに更新しなかったことはなかったと思います。

・熊本・大分地方での大地震、被災された皆様へお見舞い申し上げます。ライフラインが安定しない、余震で不安な日々が続く…5年前を思い出します。どうぞ、お身体を第一にしてください。心より、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

・現在、体調不良が続いていて、更新をお休みしています。音楽は聴いても聴いてるだけ。本は読んでものろのろと遅く、なかなか読み終わらない。そして、ブログ記事を書くだけの気力体力がない。PCに長時間向かっていられない…そんな状態です。

・ツイッターもあまりツイートしていません。ツイート、タイムラインの流れに乗れません。ツイートって何書けばいいんだっけ?と思うこともあります。好きなことを書く…流れに乗れず、好きなことを出せないことも多いです。正直言うと、居心地悪いです。ツイッターやめてもいいかな、なんて思うこともあります。私の体調が悪く、精神的な方にも影響しているので、私の捉え方だと思います…。
 これも、5年前を思い出します。5年前、震災後のタイムラインは見ていて辛かったです。

・あまりツイートしない日が続くと思いますが、それでもよろしければお相手してくださいませ。

・ちなみに、渾身のツイートをしても何も反応が無く、失望・がっかりすることもありました(本当、渾身だったんですけどね…)。

・そんな調子が悪い状態が続き、声楽のレッスンはどうしよう…と先生に相談しました。すると、体調が悪い時なりの歌い方がある、と仰ってレッスンをしてくだりました。プロの声楽家でも体調が悪い時がある。体調を良い状態に保つことも大事だけど、悪い時はどうしたらいいか。私のような趣味のアマチュアなら、悪いなりにリハビリのような歌い方で歌うことが出来ることもある。自分の調子と向き合いながら、丁寧に発声、音を取っていってみると、元気な時は気付けなかったことに気付くこともあります。丁寧に音を取っていくので、寧ろ今の方がよく歌えていることもあります(汗 普段の練習・レッスンへの向き合い方はどうなんだ…)。

・悪い時でも、悪い時なりにできることがあるんだ、と思う今日この頃です。
 ブログも悪いなりにできることがあればいいのですが、それよりも早寝することにします。

 よくなるまで、まだ少しかかりそうです。また気が向けばこんなつれづれの記事を書こうと思います。
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by halca-kaukana057 | 2016-04-21 21:31 | 日常/考えたこと

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その3 バレエのクレルヴォ?

 年が明けてしまいましたが、「シベリウス生誕150年記念」シリーズで続けます。シベリウス「クレルヴォ交響曲」op.7の様々な演奏を聴こう不定期連載。前のものから間が空いてしまいました。その間に、ユニークな「クレルヴォ」を見つけました。

ARTE Concert:Tero Saarinen inszeniert Jean Sibelius' "Kullervo" in Helsinki
(言語はドイツ語かフランス語。右上にどちらかを選択するボタンがあります。ページに飛ぶと動画が再生されるので注意してください。また、重めなので、再生が始まったら一度一時停止して数分待ってから再生するとスムーズに再生されます)
※3月1日まで公開です※

フィンランド国立歌劇場:シベリウス「クレルヴォ」
ヨハンナ・ルサネン=カルタノ(ソプラノ)、ヴィレ・ルサネン(バリトン)
フィンランド国立歌劇場合唱団
ユッカ=ペッカ・サラステ:指揮、フィンランド国立歌劇場管弦楽団

テロ・サーリネン:振付
ダンサー:
Terhi Räsänen(テルヒ・ラサネン):クレルヴォの妹、Samuli Poutanen(サムリ・ポウタネン):クレルヴォ、David Scarantino(デイヴィッド・スカランチノ):キンモ
フィンランド国立バレエ、テロ・サーリネン・カンパニー


 2015年、フィンランド国立歌劇場で上演された、シベリウスの「クレルヴォ」バレエ付きです。「クレルヴォ」を聴いていると、踊りたくなるような箇所がある。バレエとは面白いかもしれない。と思って観てみました。

 一言で言うと、不思議です。そして、謎です。
 謎に思った点について先に書くことにします。シベリウスは各楽章にこう副題をつけています。
第1楽章:序章(導入部)
第2楽章:クレルヴォの青春
第3楽章:クレルヴォとその妹
第4楽章:クレルヴォの出征(戦場に赴くクレルヴォ)
第5楽章:クレルヴォの死

 リョンロットが編纂した新「カレワラ」のクレルヴォの章に基づき、その詩・物語通りの展開です。しかし、このバレエ版では、副題が異なる楽章があります。第1楽章から、「クレルヴォと彼の同志キンモ(Kullervo und sein kamerad KImmo/Kullervo et son compagnon Kimmo)」(動画のサイトがドイツ語とフランス語だけなので、両方表記しておきます。英語、フィンランド語がないのが困る)。キンモって誰?岩波文庫の「カレワラ」小泉保訳版の、下巻巻末の用語集には、「牛の名、kimmoは跳ねることの意」「恐ろしい悪霊で石の主の名」とある。クレルヴォの章には出てきません。第4楽章の前に「クレルヴォの出征(Kullervo zieht in den krieg)」とダンスだけの箇所があり、第4楽章は「キンモの狂気(Kimmos wahnsinn)」。第5楽章の前でも女性ダンサーが曲なしで踊る「das schweigen der frauen:女性の言及」というシーンが。でもフランス語だと「le silence des femmes:沈黙の女性」(ドイツ語、フランス語共にわからないので機械翻訳です、すみません)言及なのか沈黙なのか、どっちなの?
 キンモという存在と、副題も変えられている。シベリウスの交響曲「クレルヴォ」は演奏、独唱・合唱はそのままですが、副題や演出は変えている模様。
 調べてみたら、以前ちょっと紹介したサッリネンのオペラ「クレルヴォ」にクレルヴォの子ども時代の友達としてキンモが出てきます。「カレワラ」のクレルヴォの章とは、あちこち物語を変えています。もしかして、サッリネンのオペラでの物語、演出を混ぜているのだろうか…?
 これが謎の部分です。

 バレエ・ダンスは抽象的です。クレルヴォを象徴する振り付け…腕からひじへ、もう片方の手でなぞる振り付けがよく出てきます。クレルヴォの力を表現しているのでしょうか。衣装は現代的。クレルヴォ役のダンサー・ポウタネンさんの肉体美には見惚れます。クレルヴォの妹役・ラサネンさんも美しい。でも、どこか不思議です。

 第3楽章、男声合唱とソプラノ・バリトン独唱が入ってくる演出はかっこよかった!声楽陣は衣装が違います。声楽陣の衣装の方が好みです。ソプラノのルサネン=カルタノさん、バリトンのルサネンさん…実際にごきょうだいです。ソプラノのルサネン=カルタノさんは2015年Proms、フィンランド・ラハティ・シベリウス音楽祭でもソプラノソロを務めた方。クレルヴォの妹が今までのことを告白する箇所の痛切な歌い方が印象的です。その後の、バリトンソロのクレルヴォの嘆きもずしりと来る。合唱はオペラ、歌劇場の合唱団。簡単な動きや演技をしながらの「クレルヴォ」の合唱はなかなかない、これだけだと思います。第5楽章も合わせて「クレルヴォ」の男声合唱はとても好きです。

 オーケストラ演奏は、バレエに合わせているのか、バレエが演奏に合わせているのか、どちらなのだろう?ただ、踊りやすいテンポにはしてあるように感じました。第3楽章で、金管がアクセントをつけるようにフォルテになるところがあるのですが、クレルヴォと妹の危険を予感させるような音でした。バレエをしっかりと支えるような演奏です。

 バレエがなくても、「クレルヴォ」は物語がドラマティックで情景が浮かぶのですが、フィンランドを代表する振付師が振り付け、演出するとこうなるのか…。また別の「クレルヴォ」で、謎もありましたが楽しみました。

 次回からはCDでリリースされている演奏に戻ります。あと、「カレワラ」やクレルヴォの章、リョンロットが「カレワラ」をどう編纂したのか、ちゃんと勉強しないとわからないことも多いと感じました。持っている資料をもう一度読み返して、またCDも聴いていきます。

【これまでの記事】
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 ベルグルンド指揮ボーンマス響盤
[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィル盤
もうひとつの「クレルヴォ」
 番外編:レーヴィ・マデトヤの交響詩、アウリス・サッリネンのオペラ
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by halca-kaukana057 | 2016-02-21 23:13 | 音楽

クリスマスと年越しの祈りの歌 シャルパンティエ:テ・デウム、真夜中のミサ

 クリスマスもシベリウス…クリスマスの歌曲もありますが、「クレルヴォ交響曲」の続きを聴こうかと思いましたが、さすがにクリスマスにあの悲劇はないよなぁ…と思ったので、クリスマスだからこその音楽を。

 17世紀、バロック時代に活躍したフランスの作曲家、マルカントワーヌ・シャルパンティエ(Marc-Antoine Charpentier/マルク=アントワーヌと表記することも)。以前声楽・オペラ特集で少し取り上げた作曲家です。オペラ(音楽劇)も「オルフェウスの冥府下り」(こと座の星座物語の元となったギリシア神話、オルフェウスの物語)、「アクテオン」(こいぬ座の星座物語の元、猟師アクタイオンが女神アルテミスの水浴びを見てしまい、アクタイオンは鹿に変えられてしまい…というお話)など、悲劇から喜劇まで幅広いです。
 一方、宗教曲も多く書いており、その中で有名なのが、「テ・デウム」ニ長調H.146、「真夜中のミサの曲」H.9。

 「テ・デウム」の前奏曲は、元日恒例、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの生中継のオープニングの曲として使われています。去年、M-A・シャルパンティエの「テ・デウム」の前奏曲だと知りました。金管楽器の軽快で華やかな音色が、まさに新年の特別なコンサートにピッタリ。選んだ人、さすがです。

 以降、8人の独唱と合唱の歌が入ります。歌詞はローマ・カトリック教会の賛美歌のひとつ。「テ・デウム」とは、「Te deum, laudamus(神よ、私たちはあなたをたたえます)」という歌い出しからつけられているのだそう。仏教徒だが、キリストへの祈りの歌詞を読んでいると、祈るという行為、感情の崇高さを思う。それが音楽になると、とても美しく、さらに崇高なものになる。M-A・シャルパンティエのニ長調の「テ・デウム」(他にもあるらしい)は明るく華やかで、やわらかくやさしい。祈りの歌ではあるけれども、身近に感じられるような音楽。伸びやかなソプラノやテノールの独唱・重唱とオルガンと木管の穏やかな、心落ち着く歌もあり、バロックの金管やティンパニの溌剌とした音楽にハリのあるバリトン・バス独唱・重唱もあり。合唱も美しい。色とりどり。J.S.バッハよりも前の時代(J.S.バッハは18世紀)。宗教音楽入門にいいかもしれないと思いました。

 「真夜中のミサの曲」は「リコーダーと弦楽器のためのクリスマスのミサ曲」と副題が付いている。リコーダーが大活躍します。やわらかくあたたかいリコーダーの音色と、「テ・デウム」よりは荘厳な雰囲気な曲調の弦楽器、オルガン、声楽独唱と合唱。クリスマスの夜、ろうそくの明かりの中で奏でられ歌われているであろう光景をイメージすると、クリスマスの夜に教会で聴いてみたいなと思いつつ…でも実際に演奏されているのだろうか?いや、どこかでは演奏されているんだろうなぁ。

 年末、1年を振り返り、思うことは沢山あります。また、平和な世界になってほしい…とも思います。様々な祈りが、この2曲の音楽には込められ、奏で歌われるのだと思います。ミサ曲など宗教音楽が数多くの作曲家によって書かれ、演奏され歌われ続けてきた理由がわかる気がしました。

 ちなみに聴いたのは、マルク・ミンコフスキ指揮、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの演奏。

・過去関連記事:オペラ事始 その3 序曲・前奏曲は楽しい水先案内人
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by halca-kaukana057 | 2015-12-25 22:34 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その2 P.ヤルヴィ盤

 今年の年末はベートーヴェンの交響曲第9番(第九)でもなく、ヘンデル「メサイア」でもなく、シベリウス「クレルヴォ交響曲」で過ごすことになりそうです…。先日のふたご座流星群観測の際も、観測時間の目安になると聴いてたし…。「クレルヴォ」で年越しって、かなり暗い…いや、フィンランドの日照時間の短く暗い寒い冬を思い浮かべる…フィンランドは今の季節はクリスマス(Joulu)シーズンですよ…やっぱり合わない…。
 でも聴きます。シベリウス生誕150年記念「クレルヴォ交響曲」を聴こうシリーズ第2弾。今回の演奏はこちら。

 パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
 ランディ・シュテーネ(ソプラノ)、ペーター・マッティ(バリトン)、エストニア国立男声合唱団


 前回、第1回でパーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響の演奏を取り上げましたが、そのフィンランドの名指揮者ベルグルンドにちなんで名前を貰ったというパーヴォ・ヤルヴィ。N響の首席指揮者に就任して、日本でも演奏機会が更に増えますね。そして、ちょっと過ぎてしまいましたが、12月10日のノーベル賞受賞式、その前のノーベル賞コンサートで演奏するロイヤル・ストックホルム・フィル(なので、時々「ノーベル賞オーケストラ」と呼ばれる…)。前の記事、今の季節に関連させた演奏を選んでみました。合唱はパーヴォさん(ヤルヴィだとお父様のネーメさん、弟さんのクリスティアンさんと紛らわしいので、ファーストネームで呼んでいます)の故郷エストニアの男声合唱団。エストニアは合唱大国だもんなぁ(北欧・バルト諸国の合唱は本当凄い)。

 この演奏、録音が1997年。20年近く前のものです。パーヴォさんはまだ30代。そんな前のものなのに、新鮮に感じます。30代のパーヴォさんの若さか。テンポ強弱もも全楽章ちょうどいい感じで、クレルヴォの物語を鮮明にイメージできます。低音の響きもどっしりと迫力があって、物語の重さが伝わってくる。そういえば、先日のEテレ「クラシック音楽館」でパーヴォさんが日本人若手アーティストとの対談で、音楽には物語がある、と仰っていたのですが、まさに「クレルヴォ」もそうだなぁ(ただ、当時30代のパーヴォさんがどう思っていたかはわかりませんが…)。

 第2楽章「クレルヴォの青春」、入り方が静かにそっと、テンポ遅めで入るのが凄くいいなと思いました。第1楽章「序章」はクレルヴォの物語の始まり、第2楽章からクレルヴォの悲劇が「カレワラ」クレルヴォの章で次々と語られていく。「青春」というと明るく爽やかなものを想像してしまいますが、クレルヴォの少年時代はそんなものは一切ない。ウンタモへの復讐と、奴隷として働いていたイルマリネンの家での恵まれない生活。木管はのどかなようで緊張感がある。金管も華やかなようで重く悲劇的。2楽章もいいなと思えるのが、この演奏です。第3楽章の合唱が病みつきになるのに、この演奏だと第2楽章も病みつきになります。

 第4楽章「クレルヴォの出征」の引き締まった弦も印象的です。その弦で、戦いをイメージさせる金管が映える。最後のほう、クレルヴォの勝利の部分だけは明るく。力強さが満ち溢れています。

 やはりエストニアの合唱はうまい。第3楽章、第5楽章の合唱の響きが緻密。特に第5楽章。人の声、しかも何十人もの合唱で、こんな緻密な歌い方も出来るんだ。第5楽章、合唱もオケもとても静かに入ってくる。何もかも失い、荒涼とした家があった場所で絶望に暮れているクレルヴォをイメージします。「カレワラ」のクレルヴォの章を読んでいなくてもわかるような。じわじわと破滅の時へ悲しくクレッシェンドしていくのが、心身に突き刺さります。

 現在、50代のパーヴォさんならどんな「クレルヴォ」を描くだろう?シベリウス作品でも規模やフィンランド語による独唱・合唱のため?かなかなか演奏されない「クレルヴォ」。オケや声楽独唱・合唱は変わるでしょうが、現在のパーヴォさんの「クレルヴォ」も聴いてみたいです。


・第1回:[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1
 パーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響
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by halca-kaukana057 | 2015-12-17 22:05 | 音楽

[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1

 もう11月も終わり…。12月…2015年が終わってしまう。今年はシベリウス生誕150年記念年。CDに加え、オンデマンドのライヴ録音も色々と聴いています。シベリウスの誕生日の12月8日も近い。
 来年になっても、シベリウスは聴く気満々なのですが(むしろ12月8日で150年。来年の12月7日まで延長でもいいんじゃないかと前にも書きましたが、本当そう思ってます…w)、何か特集企画をやりたい。

 ということで、「クレルヴォ交響曲」op.7の聴き比べをやります!

 これまで、シベリウス作品の中でもとっつき難いと感じていた「クレルヴォ」。交響曲なのか、どうなのかともよく議論になるみたいですが…。演奏時間は大体70分(ベートーヴェンの第九と同じぐらいと考えればそれほどでもないか)。ソプラノ(またはメゾソプラノ)とバリトンの独唱と男声合唱が入る、声楽つきの規模の大きな曲。シベリウスというと私は4番以降の後期の交響曲を真っ先に思い浮かべるので、初期の、しかも規模の大きな曲はなかなか親しめずにいたのです。シベリウスイヤーなのに、この「クレルヴォ」はあまり演奏されていないし…(フィンランド語の声楽ソロと男声合唱が難しいのかなぁ。フィンランドは声楽・合唱も強いんだけどなぁ)
 それが、今年のPromsとラハティ・シベリウス音楽祭で演奏された「クレルヴォ」を聴いて、この曲いい!もっと聴きたい!と思うようになり、持っていてもあまり聴かずにいたCDを聴き始めました。

 第1回、取り上げるのは、
パーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響
ライリ・コスティア(ソプラノ) 、ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)、ヘルシンキ大学男声合唱団


 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の「クレルヴォ」の章に基づく作品。クレルヴォはカレルヴォの息子。父の兄・ウンタモに一族を滅ぼされ、幼い頃から復讐を誓う。力も精神力も強い。成長したクレルヴォは、鍛冶師のイルマリネンの家で働くことになるが、イルマリネンの妻の悪戯に激怒して殺してしまう。その後、クレルヴォは死んだはずの両親と再会、妹も生きていると聞かせれる。両親と暮らし、ある日、森の中で可愛らしい少女と出会う。その少女はクレルヴォの妹だった。それを知らず…。真実を知ったクレルヴォの妹は自殺。クレルヴォも激しく後悔、自分を責め、ウンタモ一族を滅ぼす旅に出る。ウンタモ一族を滅ぼしたものの、両親も亡くなり、家もなく…クレルヴォはこれまでの人生を振り返り、自殺する。

 この救いようのない物語も、「クレルヴォ」は親しみにくいと感じていた理由だったと思います。悲劇の英雄。英雄扱いになっていますが、実際にフィンランドの人々はクレルヴォをどんな人物と見ているのだろう?第3楽章「クレルヴォとその妹」で男性合唱とソプラノ・バリトン独唱、第5楽章「クレルヴォの死」で男声合唱が入ります。

 シベリウスの出世作になったのに、シベリウスは演奏されることを嫌がり、スコアも出版しない。シベリウスが死去した後に全曲演奏され、1970年、このベルグルンド&ボーンマス響盤が初めての録音になりました。今私が接することのできる最初の「クレルヴォ」がこのCDというわけです。さすがはベルグルンド先生。

 第1楽章「序章」、第2楽章「クレルヴォの青春」と重々しい音楽が続きます。第2楽章の静かな雰囲気は、やわらかさもあるが、やはり緊迫している。そして第3楽章。「カレワラ」をカンテレで歌う「カンテレンタル」と同じように5拍子で、軽快に明るめに始まり、「Kullervo Kalervon poika」と男声合唱が。このヘルシンキ大学男声合唱団の歌が、人の声の呼吸、やわらかな「人間の声」を感じられていい。それでいて、クレルヴォとその妹の悲劇を語る険しさ、迫力や緊張感も十分。フィンランド語の歌詞も聴きやすい。「カレワラ」は元々韻を踏むように書かれているのですが、その韻のリズムが心地いい。いい合唱だなと思いながら聴いています。

 声楽ソロの2人もいい。妹役のソプラノは甘さも持ちつつも、悲しみに。バリトンの「クレルヴォの嘆き」の部分の重さ、迫力もたまりません。

 この合唱が、第5楽章ではただならぬ雰囲気に。冒頭、オケの音は小さくひっそりとしていて、合唱がメインで聴こえる。幼い頃から誓っていた復讐を果たしたのに、何もかも失ってしまったクレルヴォの計り知れない悲しみがストレートに伝わってきます。徐々にクレッシェンドしてゆき、クレルヴォの最期が…。とても重い。重い演奏です。聴いた後、ぐったりとしてしまいます。いい意味で。クレルヴォの悲劇は救いようがないけれども、救いがなくても、過酷な運命を背負っていても、歯を食いしばり生き、そして劇的な最期を迎えるクレルヴォの生涯をちゃんと聴きたいと思う。やはり「クレルヴォ」はオペラのような部分があります。

 第4楽章「クレルヴォの出征」も、颯爽としているけれども突き刺さるような鋭さがある。弦のざわめきがいいです。シベリウスの弦のざわめき(ささやき)はいい。角笛のようなホルンや、ファンファーレのような金管もアクセントになっている。

 あと、打楽器陣も、迫力があり、演奏をビシッと引き締めている。

 「クレルヴォ」という作品を世に広めることになったこの録音に感謝です。この後に続く録音もどんどん聴いていきます。そのうち聴きどころや魅力をどんどん見つけられたらいいな。
 ちなみに、ベルグルンドはヘルシンキフィルとも「クレルヴォ」を録音しています。こちらも聴けたらいいな。

・関連記事:Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
 このPromsとシベリウス音楽祭で演奏された、サカリ・オラモ指揮BBC響の演奏が「クレルヴォ」をもっと聴きたいと思ったきっかけでした。迫力と疾走感満点のいい演奏です。声楽陣もいい。この記事のリンク先(「動画その2」)、まだ聴けます。(BBC Radio3のは11月29日まで。中身は同じです)
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by halca-kaukana057 | 2015-11-28 23:20 | 音楽


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