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世界一わかりやすいロケットのはなし

 久しぶりに宇宙開発方面の本を。

世界一わかりやすいロケットのはなし
村沢譲/KADOKAWA/中経出版/2013

 1955年、糸川英夫博士によるペンシルロケットの発射試験から始まった日本のロケット開発・打ち上げの歴史。この本は、そのペンシルロケットから現在のH2A,H2B、イプシロンまで、それぞれのロケットの特徴、搭載した衛星、打ち上げがどうなったか…などの記録になっています。

 冒頭ではイプシロンロケットの森田泰弘先生、「こうのとり」4号機・有人宇宙ミッション本部・宇宙船技術センター長の田中哲夫さんへのインタビューが。イプシロンも「こうのとり」も、今、そしてこれからの日本の宇宙開発を支え、引っ張っている重要な宇宙機。それぞれ、まだまだ進化途中(イプシロンはまだ初号機しか打ち上げられていない!!)。また、過去の様々な宇宙機・技術を引き継いでいる。そんな覚悟とやる気に満ちたお話でした。

 あとは、ひとつひとつの打ち上げを解説。日本のロケットの歴史を私はまだまだ知らない。知らないことがたくさんある(年齢の問題もありますが…)と感じました。ロケット、人工衛星、それぞれの失敗も結構多い。90年代の失敗続きはリアルタイムで見ていて辛いものがあったのですが、その前にも。また、旧宇宙開発事業団(NASDA)と宇宙科学研究所(ISAS)が共同で開発。しかし莫大なコストで1号機で終わってしまった「J-1ロケット」についても。実はJ-1ロケットについて詳しいことは知らなかったので、知れてよかった。ペイロードの「HYFLEX」は覚えていたのになぁ…?

 今、H2A,H2B,イプシロン(2号機打ち上げが待たれる)は順調に打ち上げ、衛星・探査機を宇宙へ送っている。天候不順以外の延期がないオンタイム打ち上げ、飛行も順調。過去にたくさんの失敗があって、今があるのだなと本当に思う。今につながる日本のロケットの歴史を手にとれる本です。

 明後日24日には、H2Aロケット29号機が打ち上げられる予定です。ペイロードはカナダの通信衛星、商業打ち上げです。しかも、「人工衛星にやさしい」ロケットを目指して、かなり難度の高い打ち上げに挑戦します。「はやぶさ2」の打ち上げの時、第2段ロケットと「はやぶさ2」を分離しないで一度エンジンを停止し慣性飛行で地球を一周、その後第2段エンジン再点火して、「はやぶさ2」を分離、という難しい方法がとられました。今度はもっと難しいです。更なる商業打ち上げ受注を目指して、まだまだ日本のロケットは進化します!
JAXA:H-IIAロケット29号機(高度化仕様)による通信放送衛星Telstar 12 VANTAGEの打上げ時刻及び打上げ時間帯について

 ちなみにこの本は「だいち2号」、「GPM/DPR」、「はやぶさ2」打ち上げ前だったので、少し紹介している程度です。
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by halca-kaukana057 | 2015-11-22 22:58 | 本・読書

ツタンカーメン 少年王の謎

 少しずつ古代エジプトに関する本を読んでいます。何度も言いますが、古代エジプトはピラミッドで有名な古王国時代から、ツタンカーメンやトトメス3世などの新王国時代、クレオパトラなどのプトレマイオス朝と本当に時間軸が長く、同じ古代エジプトでもそれぞれの時代で特徴や文化が異なる。ローマの影響を受けたプトレマイオス朝はかなり違う。なので、一言で「古代エジプト」と言っても、どの時代を指すのか、とにかく範囲が広い。どの時代も魅力的だけど、やっぱりツタンカーメン王あたりは王名表からも消され、謎も多く…魅力的です。知りたいことがたくさんあります。


ツタンカーメン 少年王の謎
河合望/集英社・集英社新書/2012

 この本は前半と後半で内容が分かれています。
 前半はハワード・カーターとカーナヴォン卿によるツタンカーメン王墓発掘の物語。「王家の谷」発掘の歴史と、もう発掘し尽くしてしまった、もう何も出てこないと考古学者たちは諦めていた王家の谷に、まだ未知の王墓があると信じて発掘を続けたカーターとカーナヴォン卿。そして王墓への階段を見つける…このあたりは以前読んだカーター自身による「ツタンカーメン発掘記」あたりでも読んだのですが、研究者の第三者の視点から、そして王墓発掘に関しても新しい事実がわかってきたりと興味深い。「もし…」と思うこともあり、色々と考えてしまう。

 後半部分は、ツタンカーメン王がどんな王だったかに関する新しい研究について。アメンホテプ3世に遡って話は始まります。アクエンアテン王(アメンホテプ4世)がそれまでの古代エジプトの多神教から、いきなりアメン神の一信教に変え、都も変えてしまった。そのせいで、ツタンカーメン王やその前後の王は王名表から消されてしまった。だが、碑文などにツタンカーメン王に関する記述があり、そこからツタンカーメン王の生い立ちやその父のアクエンアテン王、王の周囲にいた人々に関して詳しいことがわかってきている。それがまず驚き。ツタンカーメン王は決して消されたファラオじゃなかった。

 さらに、現代技術が王の家系に迫る。ミイラのDNA鑑定で、父親、母親について調べている。このあたりはテレビでも取り上げられそれも観ました。ツタンカーメン王は18歳ぐらいで亡くなった。その死因に関しても。王の苦労、人間模様が活き活きと浮かび上がってくる。ツタンカーメン王墓からはたくさんの遺品が見つかったけれども、それでもツタンカーメン王やアンケセナーメン妃、その周囲の人々に関する記録は足りない(他の副葬品が既に盗掘されてしまっていたファラオよりは充実しているけれども)。その足りない部分を、他の出土品や碑文などから見つけてきて、ピースをはめる。考古学は面白いなぁと思う。

 ツタンカーメン王は激動の歴史の渦中にいたファラオだった。ほぼ未盗掘の墓や様々な出土品、碑文から、激動の中でファラオがどう生きたのか、その死後どんなことが起こったのか、少しずつ解明されていっている(現在進行形で)。これからの研究にも注目したいです。

 ツタンカーメン王墓といえば、今話題になっていますね。
CNN:古代エジプトの王妃の墓、ついに発見か
ナショナルジオグラフィック日本版:エジプト王妃ネフェルティティの墓に新説
毎日新聞:ツタンカーメン:墓に未発掘ネフェルティティの部屋?
NHK:隠し部屋の出入口か ツタンカーメン墓で発見
 ツタンカーメン王墓の玄室(王の棺が置いてあった部屋)に、2つの隠れた出入り口があり、そこにツタンカーメン王の母親のネフェルティティ妃の墓があるのでは?という論文。これを確かめるため、現在ツタンカーメン王墓で調査が行われています。もし何か見つかれば、ただでさえドラマティックな発見だったツタンカーメン王墓が更に大変なことに。調査の結果を楽しみに待ちます。

 もうひとつ、ツタンカーメン王に関して楽しみなものが。
海外ドラマNAVI:ツタンカーメン王の墓発掘の軌跡を描くITVのミニシリーズ『Tutankhamun』にサム・ニールが出演
 イギリスの民放ITVが、ツタンカーメン王墓発掘の物語をドラマ化します。これまで、BBCもドラマ化(「エジプト 甦るツタンカーメン」)したことがあったのですが、各回50分全2回、観てみたらちょっと時間が足りない、物足りないかな…という内容でした。カーターやカーナヴォン卿を演じる俳優さんたちは好演でした。
 今度のこのITVのドラマは、各回60分全4回。BBCのよりも濃い内容を期待していいですかね?ちなみに、ITVは大ヒットドラマ「ダウントン・アビー」を製作しているテレビ局。傘下にはグラナダテレビ…ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」のテレビ局。これはやっぱり期待していいですかね?そういえば、「ダウントン・アビー」の舞台となっているお屋敷は、カナーヴォン伯爵家のハイクレア城でロケを行っていることを、以前このブログでも取り上げました。はい、カーナヴォン卿が住んでいた、城主のお屋敷です。つまり、『Tutankhamun』でもハイクレア城がロケ地になるのでしょうか…本当のカーナヴォン卿のハイクレア城として。だとしたら楽しみで仕方ありません!日本での放送はいつになるかなぁ?
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by halca-kaukana057 | 2015-10-08 22:46 | 本・読書

完全図解 人工衛星のしくみ事典

 まだまだ「はやぶさ2」関連本を消化中です。

 昨日のニュースで、日本とヨーロッパが共同で打ち上げる水星探査計画「ベピ・コロンボ」の日本が担当する探査機「MMO」の機体公開がありました。
NHK:水星観測へ 日本の探査機「MMO」公開
sorae.jp:JAXA、「水星磁気圏探査機(MMO)」を公開 日欧共同計画の一翼担う
 水星は地球以外に磁場がある唯一の地球型惑星。太陽に一番近いため、探査しづらく、わからないことも多い。「MMO」はその磁場がどうやって出来たのかを探ります。
 「MMO」とヨーロッパが担当する「水星表面探査機(MPO)」、MMOとMPOを水星まで送り届けるための「水星遷移モジュール(MTM)」は、2016年度にヨーロッパ宇宙機関(ESA)のフランス・ギアナ領・ギアナ宇宙センターから「アリアンⅤ」ロケットで打ち上げ。イオンエンジンを用いて航行。地球よりも内側の惑星に行くには、減速しなければならない。そして、地球フライバイ1回、金星フライバイ2回、水星フライバイ5回で、2024年に到着予定です。長い旅です。

 その、「MMO」含む「ベピ・コロンボ」についてもこの本に描いてあります。(前置き長い)

完全図解 人工衛星のしくみ事典 「はやぶさ2」「ひまわり」「だいち」etc…の仕事がわかる!(ロケットコレクション vol.2)
大貫剛、秋山文野、大塚実:著/マイナビ/2014

 以前出た「日の丸ロケット進化論」の続編の本です。ロケットの次はペイロードの人工衛星・探査機。気象衛星「ひまわり」シリーズや、「だいち」「だいち2号」「いぶき」などの地球観測衛星、測位衛星「みちびき」やGPS、放送衛星、「きく8号」や「こだま」などの通信衛星などの実用衛星。「はやぶさ2」や「あかつき」などの探査機、「あかり」「すざく」「ひので」などの天文観測衛星といった科学衛星。衛星・探査機は大きくこの2種類に分けられます。

 日本では、科学衛星は糸川英夫博士がペンシルロケットを開発、国産ロケットの研究開発を進め、日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げた宇宙科学研究所(ISAS)が科学衛星を。一方、旧宇宙開発事業団(NASDA)が実用衛星を打ち上げていました。今はJAXAに統合されています。その実用衛星の旧NASDA、科学衛星のISASの歴史も振り返ります。どちらも過酷な道だった。旧NASDAはアメリカから技術を導入し、日本独自のロケットと衛星を開発、打ち上げを目指すも、コスト面などでアメリカのを買わざるを得なかった…。せっかく純国産ロケットH2を開発したのに、価格の面でNTTもNHKはアメリカ製の通信衛星・放送衛星を選んだ…。
 それでも、「きく8号」や「きずな」は活躍している。地球観測衛星も「みどり」「みどり2」の悔しい失敗もありましたが、乗り越えて「だいち」「だいち2号」「いぶき」「しずく」と繋がっていっている。特に「だいち」は災害援助から森林伐採監視まで、幅広く活躍。そして、最後のミッションが東日本大震災の観測…。普通の文章で書かれているのに、故郷の被災状況を観測している途中で運用停止になってしまった話は、読むと目頭が…。

 また、人工衛星ビジネスの話も。どの衛星でも基本・共通の設計となる「衛星バス」の話は、初めてじっくりと読みました。現在、H2Aが海外の人工衛星打ち上げを受注して、商業打ち上げする機会が増えてきていますが、衛星も優れた衛星バスで世界市場に参入していっています。

 一方の科学衛星。冒頭で「はやぶさ2」を徹底解説。カラーの図で、「はやぶさ2」の設計や仕組みがよくわかります。プロジェクトエンジニアの津田雄一さんのインタビューも。初代「はやぶさ」の経験を活かすところ、新しく挑戦する部分のバランスが難しかった、と。2号機、初代「はやぶさ」は技術試験機、「はやぶさ2」は本番の小惑星科学探査機だからこその難しい点ですね。そして今回も、小惑星1999 JU3は行って見てみなければどんな形の小惑星かわからない。到着してからでないと、どう観測して、いつどこにタッチダウンするかも決められない。「はやぶさ2」は小惑星1999 JU3での滞在期間が長めにとってありますが、画像が届くのが楽しみであり、届いたらプロジェクトチームは大忙しなんだろうな…。最後の「はやぶさ2」で注目して欲しいところについて、「ひとつひとつのハードルをクリアしていくところを見守っていただけたら」と。はい、ずっと見守ります!

 それぞれの科学衛星解説も詳しく、すっきりとまとまっています。過去のもの、これから打ち上げ予定のもの、失敗してしまったもの(火星探査機「のぞみ」)、残念ながら計画中止になってしまったもの(LUNAR-A、ASTRO-G)も。「のぞみ」や「LUNAR-A」「ASTRO-G」については読んでいると切なく、悔しくなります。「ASTRO-G」は「はるか」の後継機だったから特に。「ASTRO-G」とアルマ望遠鏡の最強電波観測、観たかったなぁ…(これ何度も言っている気がする…)。この解説で、気になる衛星、お気に入りの衛星を探すもよし。是非、お気に入りを見つけてください。

 最後に人工衛星の仕組みを。打ち上げ、軌道、エンジンとスラスタ、姿勢制御、通信、断熱材などなど。これ一冊で、人工衛星の基礎基本を学べます。

・過去記事:日の丸ロケット進化論と合わせてどうぞ。
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by halca-kaukana057 | 2015-03-16 21:32 | 本・読書

古代エジプトうんちく図鑑

 先日読んだ「ツタンカーメン発掘記」に関連して、古代エジプトのことをもう少し勉強してみようと思い、手に取った本。
・感想:ツタンカーメン発掘記


古代エジプトうんちく図鑑
芝崎めぐみ/バジリコ/2004

 古代エジプト文明・考古学の入門本。開いて驚いた。全て手書き(手描き)。イラストや漫画はもちろんのこと、文章も手書き。厚めの本で、これを全て手書きで書いてしまった…まずそこがすごい。

 ヘタウマ?でゆるいイラスト・漫画で、古代エジプト神話から遺跡の数々、エジプトを世界に紹介した古代から近現代までのエジプトロジストたち、著者の芝崎さんのエジプト旅行記、極めつけはファラオ140人全員集合!入門本と書きましたが、結構マニアックなところまでつっこんでいます。「はじめに」にもある通り、有名どころから読んでいくことも出来ます。参考文献も多いので、この次に読む古代エジプト関係読書ガイドにもなります。入門編からマニアックなところまで網羅しているのがすごい。

 古代エジプト…知っているようで知らないことが多過ぎる!というのが読んでの感想。
 まず、古代エジプト神話も、太陽神ラーやヌト神、トト神、オシリスにイシスにセト、ホルス、アヌビス…と名前とどんな神なのかは知っていても、物語としては知らない部分が多かった。改めて古代エジプト神話を読んでみて…とてもユーモラス。オシリス・イシス・ホルス親子とセトの戦いはキリがない。個性的で、おおらかで、ぶっ飛んでいるところもあり、面白い。矛盾していたりややこしいところもある。「何故そうなる!?」とツッコミたくなるところも多い。そこも魅力的。神々も様々。お気に入りの神様を見つけるのも楽しい。どこか、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」を思い起こさせるところもある。

 ちなみに、本の話からずれますが、宇宙好きとしては、このところ海外の探査機は古代エジプトに関しているものが多いと感じている。昨年、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着、着陸機を彗星の核に着陸させたヨーロッパの探査機「ロゼッタ」と着陸機「フィラエ」は古代エジプトのヒエログリフ解読の鍵となった遺跡にちなんでいるし、「はやぶさ2」のライバルとなるアメリカの小惑星探査機「オシリス・レックス」が向かう小惑星の名前は「ベンヌ」。フェニックスの原型となったと言われる鳥「ベヌウ」のことで、オシリスの心臓から生まれたという説もある。宇宙開発機関では古代エジプトブームなのか?(「ロゼッタ」が打ち上げられたのは10年前のことで…)

 エジプトロジストたちのお話も、笑いながら読めます。トップバッターからしてハワード・カーターだし(カーターを語れば、同時代、関わりのあったエジプトロジストが次々と登場するので便利でもある…?)、イタリア人のベルツォーニは豪快と言うか雑と言うか…でも次々と発掘、発見を続けていくのは一体…。ベルツォーニのパトロンだったイギリス人ヘンリー・ソールトがベルツォーニを妬み、それがますます不幸を呼び寄せてゆく…という話には、人生とは…と考えてしまった。ヒエログリフを解読したシャンポリオンの努力には感服。そのシャンポリオンのところで衝撃の事実。ロゼッタ・ストーンはヒエログリフ解読にあまり役に立っていなかったと…!!?ちゃんと勉強しないとわからないことって多い…。

 歴代ファラオ解説は、有名どころから初めて聞く名前までたくさん。有名なファラオでも、結構知らないことが多い。ここで、遺跡や王墓に関して読む時に、古代エジプト神話は切っても切れないのだなと思う。時代で変化もある。ファラオそのものについても面白いし、つくった神殿、発掘や研究の歴史も興味深く語られている。様々な説があり、謎が謎を呼び、それが古代エジプトの魅力なんだろうなと思う。
 興味を持ったのが、第21王朝のネコ2世。名前が可愛い。スエズ運河よりも2500年も前に、紅海とナイル川を繋ぐ運河の工事に着手し、フェニキア人の船乗りにアフリカ大陸を1周させたそう。
 この歴代ファラオ解説はかなりディープなことも書いていて、でも親しみやすい漫画やイラスト、著者のツッコミが面白くてどんどん読んで、また読み返して…古代エジプトのファラオも深い。

 古代エジプトは、天文学とのつながりも深い。本の最後のほうに天文学に関することも書いてあります。シリウスがナイル川の氾濫する時期、農耕を始める時期を報せる星だったのは有名ですね。天の川を天のナイル川と見ていたことも。ピラミッドがオリオン座と関係があるという説も有名ですが、スフィンクスも関係あるかもしれない、と。古代エジプトの頃は、ネオンも光害もなかった。どんな星空を、古代エジプトのファラオや人々は見ていたのだろう…。

 これを読んでいると、エジプトに行きたくなります。旅行記はトラブル・事件の連続。出会った人々も、商魂たくましい人もいれば、どう反応したらいいのかわからない人も…。エジプトは結構広い。治安の問題もある。それを乗り越えての遺跡の数々には、圧倒されるんだろうなぁ。

 この本、本当に面白いです。読んでいるうちにディープな古代エジプトの魅力にハマれます。本当に全部手書きは凄い。
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by halca-kaukana057 | 2015-02-12 22:56 | 本・読書

サボり上手な動物たち 海の中から新発見!

 先日読んだ漫画「海とドリトル」(磯谷友紀)で参考文献になっていた本を読んでみました。この本の著者の佐藤克文先生が取材協力、モデルになっているのだそうです。
海とドリトル 1

サボり上手な動物たち 海の中から新発見!
佐藤克文・森阪匡道/岩波書店・岩波科学ライブラリー/2013

 イルカやクジラ、ペンギン、アザラシ、ウミガメ、カツオドリやオオミズナギドリなどの海鳥といった海洋生物たちが、海の中で一体どんな行動をとっているか…実はよくわかっていない。水族館に行けば観察は出来るけれども、実際の広い深い海の中で、どう行動し、仲間とコミュニケーションをとり、エサをさがしているのだろうか。実際にその姿を「見る」ことは難しい。そこで、登場したのが「バイオロギング」という方法。動物にカメラなどの機器をつけて、その行動データを記憶させ、そのデータを分析する。その手法で、海洋生物たちのこれまで「見えなった」姿が見えてきた。

 テレビの自然ドキュメンタリー番組では、海中に潜ったカメラが海洋生物たちが悠々と泳ぐ姿がよく放送される。この本からはちょっとずれるけれども、NHKスペシャルで一躍有名となったダイオウイカが泳いでいる姿を撮影するために、潜水艇で深海へ潜る映像も興味深かった。ダイオウイカもだが、見たことも無い深海の生き物に驚いた。
 イルカやクジラなどの海洋生物でも、そんな風に何らかの方法でカメラを海中に潜らせて調べているのかなと思った。でも、人間が潜れる深さや領域には限りがあるし、第一海は広い。広い海をあちらこちらへ泳ぐ生き物を追うのは難しい。撮影できたとしても一部分だけ。テレビ番組ならそれだけでもいいかもしれないけど、実際の研究となるともっとしっかりとしたデータが必要。これでは足りない。

 そこで登場するのが、「バイオロギング」。海洋生物にカメラや音声センサー、更には加速度センサーをつけて、その行動を記憶させ追うという方法。カメラだけじゃないのは、映像では追えないもの・場合もあるため。濁った水の中に棲む生物もいる。そこではカメラは使い物にならない。また、イルカの仲間は「エコーロケーション」といって、「カチカチ」とか「ギー」という「クリックス」という音で距離を測ったり、仲間とコミュニケーションしている。音を使って「見て」いる。人間は視覚から得る情報が圧倒的に多いが、イルカは音から得る情報が多い。そんな音で「見える」世界…どんな世界だろうなと想像すると楽しくなる。しかし、この音を出すことが、逆に自分を身の危険にさらすこともあるそうだ。イルカやクジラの天敵・シャチもエコーロケーションを使う。「盗み聞き」されて、襲われることもあるのだとか…。なんという…。なので、いつも音を出しているわけで無く、適度に「サボって」いる。ほかの仲間のクリックスを「盗み聞き」することもあるのだそうだ。結構ちゃっかりしている。
 この本のタイトルにあるとおり、生き物たちは適度に「サボる」のが上手いらしい。人間は「サボる」とバツが悪く思われがちだが、人間でもボーっとしていたり、回り道していることもある。生き物たちも同じなのだなと感じた。

 また、私たちは動物達の最大能力を調べようとする。時速何kmで走れる/泳げるのか、一番深く潜れるのは何mか、最高何時間潜っていられるのか…など。でも、動物たちはいつもその最大値・全力を出しているわけではない。日々の暮らしは平均値で表現される。生き物たちの暮らしぶりを知りたいなら、平均値に着目しよう、という内容になるほどと思った。研究者も、私たち一般人も、普段の暮らしを知りたい、見たいのだ。

 バイオロギングを使っても、なかなか思い通りにデータ収集できないことも多いのだそうだ。相手は生き物、自然。人間の思った通りにはいかない。地道な、地味なフィールドワークの積み重ね。いつも効率よく動いているわけでもない。人間も含めて、生き物は無駄なこともするし、遊ぶし、サボるし…一筋縄でいかない、だから興味深い、研究したくなるのだなと感じました。

 この本にあることが、今後「海とドリトル」にも出てくるのかなと思うと楽しみです。漫画と一緒に楽しめる。
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by halca-kaukana057 | 2014-09-01 22:46 | 本・読書

日の丸ロケット進化論

 明日は陸域観測技術衛星「だいち2号」の打ち上げ。その前に、この本を。
JAXA:H-IIAロケット24号機による陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の打上げ時刻及び打上げ時間帯について
 打ち上げはお昼12時5分!


「はやぶさ2」打ち上げをもっと楽しむために 日の丸ロケット進化論 ~分解できる「イプシロン」超精密ペーパークラフト付き~ (ロケットコレクション)
大塚実・大貫剛/マイナビ/2014

 タイトルの通り、日本のロケットの歴史や開発・打ち上げられてきたロケットの数々を紹介し、ロケットの魅力に迫る、ロケット・宇宙開発好きにはたまらない本です。糸川英夫博士のペンシルロケットに始まり、宇宙科学研究所(ISAS)の固体ロケット、旧宇宙開発事業団(NASDA)の液体燃料ロケット、そして現在のH2A,H2B,イプシロンに至るまでを詳しく解説しています。

 宇宙で活躍する人工衛星・探査機などを載せ、宇宙へ向かって飛ぶロケット。人工衛星や探査機などはその後長い運用が始まりますが、ロケットはその打ち上げのためだけのもの。M-Vのようにその衛星・探査機ごとにカスタマイズするロケットもあれば、H2Aのように必要な打ち上げ能力に合わせていくつかの型を持っているものもある。が、宇宙へ到達し、衛星・探査機を切り離せば、ロケットの役目はそこで終わる。そんな儚い面も持っているロケット。打ち上げの時は轟音とともに、力強く飛び立つ。その様は、映像で観ていてもワクワク、ドキドキする。これを生で観たら、大変なことになるんだろうなぁ。ああ、種子島、内之浦に行きたい。

 日本のロケット開発の歴史の紆余曲折、それぞれのロケットのスペック、打ち上げた衛星・探査機から、種子島・内之浦ロケット見学ガイド、ロケットの基礎基本・何故ロケットは飛べるのか、ロケットの構造、近未来のロケットと、ロケットに関するあらゆることを網羅してあります。さらに、この本は昨年初号機が打ち上げられたイプシロンロケットに注目。イプシロン打ち上げレポや、プロジェクトマネージャーの森田泰弘先生のインタビュー。イプシロン&衛星「ひさき」のペーパークラフトまで!森田先生のインタビューで、イプシロンにかける想いも読めます。

 イプシロン&「ひさき」のペーパークラフトは、とても細かいです。本格的です。未だに手をつけられていません…。作れる自信がない。

 ロケットファン、ロケット好きの人にも、去年のイプシロンや、H2A・H2Bで何となくロケットに興味は持っているけどよくわからないという初心者にもこの本をオススメします。基礎基本からマニアなネタまで、ロケットの魅力ぎっしりの本です。

 ロケットの打ち上げには見惚れてしまいますが、この段階でロケットはどんな動きをしているのか、というところにも注目するともっと打ち上げを楽しめます。点火前、打ち上げの様子、補助エンジン(SRB)切り離し、第1段、第2段切り離し。あと、ロケットについているカメラの映像や、ロケットがどのあたりを飛行中なのかのCG。そして衛星の切り離し。管制室の様子にも注目。

 明日の「だいち2号」打ち上げ、成功しますように!
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by halca-kaukana057 | 2014-05-23 22:56 | 本・読書

思惟する天文学 宇宙の公案を解く

 アイソン彗星が見られないので、天文関係の本を読む。かなり深い本です。


思惟する天文学 ― 宇宙の公案を解く
佐藤勝彦、池内了、佐治晴夫、渡部潤一、高柳雄一、平林久、寿岳潤、大島泰郎、的川泰宣、海部宣男/新日本出版社/2013

 この豪華執筆陣!天文雑誌「スカイウォッチャー」に1994年から2000年にかけて掲載された「宇宙の公案Ⅰ」と、「スカイウォッチャー」の後継誌である天文雑誌「星ナビ」(アストロアーツ)に2012年に掲載された「宇宙の公案Ⅱ」を書籍化したもの。「星ナビ」で読んで、とても面白いなと思っていたのですが、読み逃がした記事もあり、書籍化されたらいいなぁと思っていました。書籍化して嬉しいです。

 「思惟(しい)」とは、「思考」、哲学では感性や意欲とは区別される。「公案」とは禅宗において修行者が悟りを開くための課題として与えられる問題のこと。禅の祖師達の具体的な行為・言動を例に取り挙げて、禅の精神を究明するための問題。これを、宇宙・天文に置き換えて、宇宙天文の様々な分野で活躍する研究者・専門家の先生たちがそれぞれに問題を提示し、それについて考えを書き綴ったのが「宇宙の公案Ⅰ」。その10数年後、再び同じテーマ・問題について考え書き綴ったのが「宇宙の公案Ⅱ」。
 10数年も経つと、肩書きも研究している大学や機関にも変化があるし、世の中も、宇宙・天文についても変化している。寿岳先生は、2011年に他界されてしまった。そんな変化の中で、天文学者・宇宙科学・工学者たちは、宇宙をどう捉え、何を考えているのか。それを垣間見ることのできる本です。

 宇宙・天文は、とても幅の広い学問だ。天文学から宇宙科学・宇宙工学・宇宙開発まで。天文学も、観測するものから、スーパーコンピューターの計算で星や銀河、宇宙の成り立ちを研究する理論天文学、宇宙がどのようにできたか、何で出来ているのかを探る宇宙論、ニュートリノやヒッグス粒子などのミクロの世界からマクロな宇宙を探る素粒子天文学…細分化しようと思えばどんどん出てくる。地球以外の星に生命はいるのか、異星人はいるのか…これは宇宙生物学の研究対象。観測方法も、可視光から赤外線、X線、電波と専門は細分化されている。宇宙・天文とひとくくりにはできるけど、その中は、まさに広大な宇宙のように広く、深い。全てを包んでいる。

 読んでいて思うのが、宇宙を研究していると、つまるところ、「人間とは何か」「生命、いのち、生きているとは何か」「過去、現在、未来…時間とは何か」「宇宙はどこから始まって、どこへ行くのか」「この宇宙の中で人間とはどういう存在なのか」「科学とは何か」「宇宙を見るとは何か、どういうことか」「自分自身は何者か」…こんな哲学的な問題に行き着いてしまう。人間は宇宙の中では、ちっぽけな存在なのに、宙を見上げて、沢山の星ぼしを見上げては、そんなことを考えてしまう。広い宇宙の片隅で、ちっぽけな存在の人間が、宇宙の謎に近づこうと日々研究を続けている。新しい発見の度に「宇宙の謎の解明に一歩近づいた」という言葉が出てくる(私も使っている)。でも、新しい発見が見つかれば見つけるほど、また新しい謎も見つかっている。どんどん宇宙の深いところへ進んで行っているような気持ちになる。その先に、何があるのかは、わからない。

 宇宙は、私たち人間が住んでいるところ。空間も、過去・現在・未来の時間も、全てこの宇宙の中にある。宇宙の外側がどうなっているのかなんて、観測もできないし捉えることもできない。宇宙の中で、宇宙のことを考えている。宇宙の様々な姿を見ようと、新しい観測機器を開発して、様々な方向から観測も続けている。ただ、この宇宙がどうなっているのかを知りたいだけ。それは、すぐには役に立たない、それで生活は何も変わらないかもしれないけれど、渡部先生が書いている通り「長期的かつ巨視的な視点を与えてくれる」(107ページ)。

 広大な宇宙を前にして、自身の問題に取り組んでいる先生方の思考の言葉の深さ。読んだ後、私の「宇宙の公案」は何だろう?と思う。私は宇宙天文の専門家でもない。アマチュア天文家というレベルではない。星を見るのが好き。星座の成り立ちや、星や天文の文化史…野尻抱影に代表される星の民俗学にも関心がある。広範囲な天文学に興味があり、宇宙開発・宇宙工学にも興味がある。ただ、宇宙のこと、天文のことをもっと知りたい。面白いから。星・天体を観るのは楽しい。彗星や流星群、オーロラや日食・月食を観られるなら観たい。星空の中、探すのも楽しい。ロケットの打ち上げも観たい(あの轟音、空気感を味わいたい)。行けるなら、宇宙に行ってみたい(でも加重力が苦手…不安ではある)。ただ、宇宙天文が好きなだけ。

 そんな私にとっても、「宇宙の公案」はあるような気がしている。実際上記したような、つまるところ哲学的な疑問を、星を見ながら、天文学の本を読みながら考えることはある。例えば、アイソン彗星は、今地球から見える位置までやってきたが、また遠ざかっていってしまったら、もう二度と再会できない(非周期彗星)。アイソン彗星がこれまで飛行し続けてきた時間と距離、そして近日点を通過して、まだ彗星が残っていたら、これからどこへ向かうのか。そこへ向かうまで、どのくらいの時間がかかるのか。また、遠くの天体の光は、今のものではなく過去のもの。100光年先なら、光の速さで100年かかる距離。100年前の光を私たちは今観ているのだけれども、でも私たちにとっては”今”でしかない。過去と今現在が一度に”存在している”。この時間の不思議さ。宇宙を見れば見るほど、様々な謎が見つかる。それは、「自分自身とは何か」という問いに繋がるように思える。

 天文学について高度なことも書いてありますが、哲学的な視点からも楽しめる本です。第一線で活躍されている先生方の日常のひとコマのような写真もあって、親しみやすくも感じます。先生方と一緒に、「宇宙の公案」について考えてみる。その答えは、この本を読んだだけでは出ないと思うけれども、宇宙の深さ・広さの中に自分も生きているんだと思えます。それが答えなのかもしれない。
 この本はどうぞゆっくりと読んでください。
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by halca-kaukana057 | 2013-11-23 23:06 | 本・読書

オリオン星雲 星が生まれるところ +「コズミックフロント」オリオン大星雲へ ハッブルが見た星のゆりかご

 久々に天文書を読みました。


オリオン星雲―星が生まれるところ
C・ロバート・オデール:著/土井ひとみ:訳/土井隆雄:監修/恒星社厚生閣/2011

 今の季節なら22時ごろ、東の空から昇ってくる大きな姿。あと1ヶ月もすれば同じ時間に南東の空に堂々と輝く、冬の星座の”王様”と言ってもいい星座・オリオン座。古くからある星座のひとつ。冬は一等星が多く煌びやかな星座揃いですが、オリオン座にはベテルギウスとリゲルの2つの一等星。オリオンの左肩・ベテルギウスは近年超新星爆発を起こすのではないかと話題になっています。これは私も気になります。いつになるか…それは宇宙のみぞ知ること。ベテルギウスとリゲルだけでなく、星座を形作る主な星ぼしはどれも明るく、都会でも見つけやすい。形もオリオンの腰にあたる”三ツ星”を中心に、鼓の形に並んでいる。こんなに形の整った星座はそんなに多くない。
 私も、冬が近づいて、オリオン座を見つけると見惚れてしまいます。

 そして、”三ツ星”の下にある散光星雲・オリオン大星雲(M42)。地球から1500光年のところにある明るい星雲で、暗い夜空なら肉眼でもぼんやりとした光を確認できます。双眼鏡でも、天体望遠鏡(小口径でも大口径でも可)でも楽しめる、最も観やすくメジャーな星雲。カメラでの撮影も、コンパクトデジカメでも淡く撮影できますし、一眼レフなら本格的に。初心者の天文ファンでも観測しやすい星雲ですが、プロの天文学者にとっても、星が生まれる現場を観測しやすい星雲として注目の的になり続けています。世界中の大望遠鏡も、必ずと言っていいほどオリオン大星雲を観測・撮影します。

 そんなオリオン大星雲に魅せられた天文学者の著者が、星が生まれる現場としてオリオン大星雲を観測し続け、その研究をまとめたのがこの本です。オリオン大星雲の観測の歴史や、観測のための望遠鏡の開発の歴史、撮影のための天体写真の歴史も語られます。また、星雲とはどのような天体か。恒星とは何か、恒星はどのように生まれるのか、という内容も。これらを踏まえて、オリオン大星雲の姿に迫っていきます。

 と、本の内容に入りたいところですが、専門書のため、私には難しい、わかりにくいと思った箇所も多かった。難しいなぁ…と思っていたら、なんとNHKBSプレミアム「コズミックフロント」で、オリオン大星雲とオデール博士の研究について取り上げると。観たらまさにこの本そのものの解説になってました。ありがとうNHKさん、ありがとうコズフロスタッフさん!ということで、「コズミックフロント」の内容も含めて書きます。
NHK宇宙チャンネル:コズミックフロント:オリオン大星雲へ ハッブルが見た星のゆりかご
(2013年10月31日放送、再放送11月4日(月)夜11:45~翌日午前0:45)

 著者のロバート・オデール博士は、ハッブル宇宙望遠鏡の発案者のひとりであり、NASAに入りプロジェクトを推進、望遠鏡の開発にも関わった方。ハワイのマウナケアにあるすばる望遠鏡をはじめとする望遠鏡群など、空気が薄い=大気のゆらぎが出来るだけ少ない高山に天文台が建設され、観測を続けていますが、それでも大気は存在し、天体をより鮮明に観測するのは困難。そこで、ライマン・スピッツァー博士とともに宇宙望遠鏡を発案。当時は宇宙に望遠鏡を打ち上げるよりも、地上にいくつもの天文台をつくったほうがいいのではないか、という意見少なくなかったが、1977年、ハッブル宇宙望遠鏡の開発がスタート。そして1990年、スペースシャトル(STS-31)でハッブル宇宙望遠鏡は打ち上げられたが…。なんと、天体の光を集める主鏡のゆがみを測定する装置が、0.0003mmずれていて、主鏡がゆがんだまま打ち上げられてしまっていた…。観測した画像も、ぼんやりと鮮明にならない。その後、1993年・STS-61で、ゆがみを修正する装置をハッブルに取り付け、見事修復。このハッブルの開発や打ち上げ後、ゆがみが発覚し原因をつきとめるあたりの裏話も語られています。これで観測が出来ると思ったら…今度は、オデール博士に観測の機会が与えられない。発案し、プロジェクトに関わり開発したのに…というのは、オデール博士もハッブルを使う研究者を選ぶメンバーに入っていたため、選考される側には入れなかった。ここで、天文学者たちからオデール博士にあるプレゼントが…。このあたりは、天文学者たちのあたたかさに感激します。

 そして、ハッブルが捉えたオリオン大星雲の姿。星雲の中にある、とりわけ明るい4つの星「トラペジウム」。そのトラペジウムの輝きがオリオン大星雲を明るく照らしだしているのですが、その中に、星が生まれている瞬間も捉えられていた。生まれたばかりの恒星が、まだガスの中にあり、そのガスにはチリも含まれ惑星のもととなる。そんな原始惑星系円盤、博士が名づけた「プロプリッド」の数々と、その姿に違いが出る仕組みがまた面白い。
 番組では、オデール博士が教室にオリオン大星雲とトラペジウムの一番明るい星・C-1とプロプリッド、星雲から伸びている薄いガスの膜・ベールを簡単なセットを使って解説。わかりやすかった。

 このプロプリッドの姿の違いに関係してくるのが、オリオン大星雲の立体地図。天体を撮影した画像は、平坦な2次元。奥行きや、凹凸はわからない。でも、実際には凹凸があり、特に星雲のガスは起伏に富んでいる。地球からは見えないけれど、確かにあるであろうその起伏、3次元を計算などによって再現。オリオン大星雲の立体地図も作ってしまった。トラペジウムとプロプリッド、プロプリッドの中の原始星が放つジェットと衝撃波、トラペジウムの斜め下にある濃いガスのかたまりの中では、もっと沢山の星が生まれていること。ハッブルが出来て、ハッブルでの観測があったからこそ出来たこと。あのぼんやりと見える星雲のなかで、こんなにダイナミックな星の動きがあるとは驚きです。
 番組で再現された、立体地図のCG…思わず魅入ってしまいました。手作り飛行機でアクロバット飛行が得意だった博士が、オリオン大星雲の中を飛べるなら、跳んでみたい、飛んでみたらどう見えるのか…というところから始まった立体地図づくり。こんな煌びやかな星の中を飛べるなら、私も行ってみたいと思わずにはいられませんでした。

 まだまだ、オリオン大星雲では星が生まれている場所があり、研究中。その研究には、元宇宙飛行士・現在は国連宇宙部職員の土井隆雄さんも。この本の監修をされています(訳者のひとみさんは奥様)。宇宙飛行士の訓練の傍らオデール博士のもとで学び、観測し、論文を書いた。その論文の内容がまたすごい。

 トラペジウムの右上の方にある、赤外線の強い2つの天体(領域)…ベックリン・ノイゲバウアー天体とクライマン・ロー天体(合わせて「BN-KL領域」)は長年謎の領域だったが、その星雲の動きを示す地図を初めて作成。また、天体が過去に爆発してそのガスやチリが吹き飛ばされて広がり、新たな星の材料になりつつあることも解明。元々天文ファンで、宇宙飛行士になってからも天体観測を続け、ヒューストン郊外に自家用天文台もつくり、訓練の合間に観測をして超新星を2個発見。そして極め付けがこの博士論文。勿論、1997年のSTS-87では日本人初の船外活動、2008年のSTS-123では「きぼう」日本実験棟の船内保管室をISSに取り付け、と宇宙飛行士としての仕事も素晴らしいのですが、この番組に宇宙飛行士というよりは、オデール博士の教え子の天文家(博士論文も書いてますし天文学者と呼んでも構わないですね)として出演されてたのがまたすごい。
(しかも今は国連で宇宙利用とその平和利用について、途上国を中心にまわり話している。同じ”宇宙”に関わるとはいえ、宇宙開発、有人宇宙飛行、天文学、社会面での宇宙利用について…どれも全然違う。それをどれも深く広く実践、行動し続けているのは本当にすごい。)

 著書の最後では、オリオン大星雲に生まれた惑星系には生命は存在するかについても。オリオン大星雲を研究することで、宇宙にある様々な謎を研究、解明できる。オリオン大星雲の魅力に、私も惹かれました。オリオン座の観やすい季節になったら、オリオン大星雲を双眼鏡や望遠鏡で観てみよう。まずは自分の目で観る。そこには、この本に書かれていた(+「コズミックフロント」で放送された)生まれてきた星たちが輝いているのだなぁと、きっと思います。

 そして、オデール博士が発案・開発に加わったハッブル宇宙望遠鏡も、2009年に最後の修理ミッション(STS-125)を行い、寿命は2014年と考えられている。来年なのか…。
 ちなみに、ハッブルのあとを継ぐ「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」(JWST)は2018年打ち上げ予定。可視光のハッブルとは違い、赤外線で宇宙の初期の状態を観測する望遠鏡。しかし、機器の開発や予算で、難航中。何とか無事に打ち上げられ、運用が始まって欲しいところです。

 本の内容だけだと難しいので、「コズミックフロント」で放送された内容も加えました。この本を読む時は是非、番組も一緒にどうぞ。再放送は、11月4日(月)夜11:45~翌日午前0:45。読む予定の方は是非録画を。本を読む予定は無くても、番組だけ観ても楽しめます。本を読めば、もっと詳しい専門的なこともわかります。オリオン大星雲をはじめ、様々な天体のカラー画像も満載なので、画像を観るだけでも楽しめます。
 ちょうどいいタイミングに読めてよかった…。

f0079085_23132462.jpg

 三ツ星の下の”小三ツ星”のあたりがぼんやりしているのが、オリオン大星雲です。今シーズンは望遠鏡で観よう。

※2013.11.5加筆修正しました。読み返したら誤字脱字ばっかりだった…。
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by halca-kaukana057 | 2013-11-01 23:16 | 本・読書

月の地形ウォッチングガイド

 以前、この記事で少し紹介した本を。
月に惹かれる

月の地形ウオッチングガイド

白尾 元理 / 誠文堂新光社 / 2009



 私たちにとって一番身近な天体、月。月がどのくらい、どのように好きなのかは以前の記事を読んでもらうとして(笑)、月は観れば観るほど面白い、興味深い、もっともっと見たいと思う、見たい天体だと思う。

 肉眼でも、日本ではウサギの形に見えるクレーター・海の部分の陰影を観察できるし、双眼鏡、更に天体望遠鏡があれば更にじっくりと月のでこぼこした様子を観察できる。天体望遠鏡も、口径5cm程度の小口径でも十分。真っ赤な火星や、縞模様と4つのガリレオ衛星の位置変化が面白い木星や、輪がポイントの土星もいいけど、小口径だとやはり小さい。倍率を上げても、その口径に合った倍率というものがあって、しかも倍率を上げると暗くなるし像が荒くなるし…。じっくり見るにはそれなりの規模の口径の望遠鏡が必要。でも、そこまでの望遠鏡にはまだ手が出ないし…と悩む天体観測入門者もいると思う。
(私もでした。こんな時は大きな口径の望遠鏡のある天文台や科学館などの観望会に行く、大きな口径の望遠鏡を使っている有志の観望会に参加する、天文部や天文仲間さんがそんな望遠鏡を持っていたら見せてもらう、など方法はありますよ。)

 口径や、種類(屈折望遠鏡か反射望遠鏡かその他か)など、それぞれの望遠鏡にはそれぞれ得意な(見やすい)天体、不得意(見づらい)天体がありますが、月は大体どの望遠鏡、双眼鏡でも楽しめる。見方に慣れてきたら、ただ見るのではなく、クレーターや海などの部分に注目して観察してみる。スケッチしてみる、カメラを取り付けて撮影してみる。こうなったら月齢1から満月を経て月齢26ぐらいまで毎日観測してみる…などなど、色々な楽しみ方が出来ます。そんな楽しみ方を広げてくれるのが、この本です。

 月齢ごと、有名なクレーターや海、高地などの部分ごとにオールカラーの月面写真を載せ、見どころを詳しく解説しています。月食についても写真と解説があります。本当に詳しい。クレーターなどの大きさや、どのようにして形成されたか、望遠鏡で観測する時のポイント。更には望遠鏡の選び方、月・アポロ計画に関する本など、月に関する話題も色々。写真そのものもきれいなので、見ているだけでも楽しい本です。月の天文学研究に関する内容も多く、読み物としても楽しめます。天体観測・月観測入門者から上級者・星猛者(by「宙のまにまに」この場合は「月猛者」か)まで使えて、楽しめる本です。地味なようで、凄い本です。

 私はまだ月を見て、この辺に○○クレーターがあって、こっちは□□クレーター…というところまでは行っていません。コペルニクスクレーターとティコクレーターぐらい…(これ初級です…)。アポロ11号が着陸した「静かの海」、「晴れの海」や「雨の海」は大きくてわかりやすい。この程度。まだまだです。

 この本が出たのは2009年8月。日本の月周回衛星「かぐや(SELENE)」の運用が終了した(2009年6月11日)直後。今も「かぐや」による観測データの解析、研究は進行中ですし、世界各国の探査機が月を探査しました。そのデータも含めた新版が出たらいいなぁ…。

 ちなみに、この本は天文雑誌「天文ガイド」に連載されたものの書籍化なのだそうです。さすがは「天文ガイド」です。ディープです。

 と、この本を、雪が降ってばかりで月すらなかなか観られない時に読んでいるのでした。月が見たい、星を見たい、星空を拝みたい…(完全なる星分欠乏 ISSも見たい…。
 雪雲の晴れ間から月や星が少しでも見えると、嬉しいです。
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by halca-kaukana057 | 2013-01-18 23:10 | 本・読書

marimekko 60周年記念公式ムック

 昨年春、marimekko(マリメッコ)の公式ムックが出ましたが、今年も出ました。しかも今年は60周年のアニバーサリーイヤー。と言うことで、今年も公式ムックが出ました!


marimekko HAPPY 60th ANNIVERSARY! (e-MOOK)

宝島社


 青い「UNIKKO(ウニッコ)」柄が目印です。

 1951年、アルミ・ラティアにより設立されたテキスタイル・ブランド。それから60年、マリメッコのテキスタイル製品は母国フィンランドのみならず、世界中で愛されてきました。ムックでは、この60年、マリメッコが生み出してきた名デザインの数々、「UNIKKO」他数多くのデザインでマリメッコを支えてきたマイヤ・イソラの作品、娘のクリスティーナさんのインタビュー、マリメッコ製品と共に暮らすフィンランドの人々のお部屋拝見など、観ているだけでも楽しい内容になっています。

 これまでのマリメッコのテキスタイル・デザインの数々を観ていて、どれも大胆でカラフルだと思う。それをうまく使いこなしているフィンランドの人々のセンスに脱帽します。60年で生活に浸透したデザイン。まだ1世紀も経っていない。それだけフィンランドの人々にとって、世界中の人々にとってマリメッコは魅力的だったと実感する。一見大胆だけど、使っているうちに違うよさが見えてくるのかもしれない。60年は、長いのか、短いのか…ちょっと考え込んでしまいました。

 付録は表紙と同じ、青いUNIKKOのトートバッグです。

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 結構大きめなので使いやすいです。この色のUNIKKOは初めて見ました。なので、斬新に感じます。

f0079085_2274059.jpg

 昨年のトートと並べてみた。やっぱりマリメッコといえば、ウニッコだなぁ。と思いつつも…実際自分で持って歩くとなると、ちょっと勇気が要る。この色使い。でも、持ち歩いていると、楽しくなってきます。マリメッコが60年間目指してきた、そしてこれからも目指すであろうデザインは、使って楽しくなるデザインなのだろう、と思いました。

 巻末にはワンピースの型紙も。この型紙を使って、マリメッコの好きなテキスタイル生地でオリジナルワンピースを作れるようになっているのです。問題は…テキスタイル生地を自分で調達しなければならない。日本の地方でも、もっと気軽に手に入れられればいいのにな。

【過去関連記事】
marimekko公式ムック発売
フィンランドのサーモンスープ「Lohikeitto」を作ってみた
 ↑ムック内にはフィンランド料理のコーナーもあり、このサーモンスープも出てきます。レシピは大体同じです。
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by halca-kaukana057 | 2011-05-04 22:16 | フィンランド・Suomi/北欧


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