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山羊座の友人

 今回も普段は滅多に読まない少年誌から。ネットの「ジャンプ+」で連載された漫画です。偶然「ジャンプ+」を読んだら、タイトルが気になって(私も山羊座なので)読んだら面白かった。単行本化して嬉しいです。元々は小説が原作の漫画です。


山羊座の友人
原作:乙一/漫画:ミヨカワ将/集英社・ジャンプコミックス/2015

 高校生の松田ユウヤの部屋は強い風がいつも当たってきていて、ベランダには様々なものが飛んでくる。その中に、1ヵ月後の日付の新聞記事の切れ端があった。学校では、ユウヤは平穏に過ごしているが、若槻ナオトという同級生の男子が、金城アキラという不良に目をつけられ、いじめられていた。気にはしていたが、見て見ぬ振り、何もしないでいた。そんなある夜、家に帰る途中のユウヤは声をかけられる。声の主は若槻ナオト。手には血のついたバットを持っていた。金城アキラを殺した、というのだ。これから逃げるという若槻を、ユウヤは引き止める。部屋に匿い、更に一緒に東京に逃げることにした。ベランダに飛んできた1ヵ月後の日付の新聞記事には、高校生が殺害された事件で事情聴取を受けていた高校生が自殺した、と書いてあった。若槻を助けたい。そう思うユウヤだったが…。

 この漫画の感想をいつ書こうか迷っていました。先日、いじめが原因で高校生が自殺したのは本当に痛ましい。この漫画でもいじめのシーンは容赦なく描かれています。読むのが辛い。でも、惹き込まれた。ユウヤの部屋の不思議なベランダ。未来の新聞。ユウヤと若槻の逃避行。ユウヤの姉の夫は刑事で、若槻が語る事件の詳細に疑問を抱いたユウヤは逃げながらも、姉に捜査のことを聞いてみる。ユウヤが導いた結論。若槻の選択。そして…。最後はまさかの展開でした。ユウヤがなかなか賢い。鋭い。

 タイトルの「山羊座」。若槻が山羊座生まれで、ヤギに関する雑学に詳しい。身代わりに人々の罪を背負う山羊。若槻がスケープゴートの話をする…。この物語の鍵です。

 ユウヤから見て、自分と同じ普通の高校生の若槻。その若槻が殺人を犯したとは思えない。そして、ベランダに飛んできた未来の新聞記事が本当なら、若槻が自殺するのを阻止したい。自首しようとする若槻を、その日付までは自首させまいとするユウヤ。それまでは友達でもなかった2人。でも、ユウヤはいじめに対して何も行動できなかったから、今度こそは助けたいと思う。一方の若槻は淡々と、でも心には何かを押し込んでいる。感情をあまり表現しないからこそ、若槻君の感情を想像できる。

 ユウヤの周りの同級生にはもうひとり、本庄ノゾミという女子生徒がいる。ユウヤのベランダのことを知っていて、若槻へのいじめについて先生に相談をしていた。真面目で、なかなか賢そうな眼鏡っ娘。ユウヤのベランダに飛んでくるものに興味を持っている。逃避行中は勿論出てこないのですが…。

 最初は、ただ物語の発端になる新聞記事が飛んでくる、ということのためにこのベランダがあるのかなとおもっていたのですが、それ以上の意味があった…それがわかる最後がとてもかなしかった。とにかく、この漫画は最後まで読まないとわからない。

 感想を詳しく書きたいのですが、この作品はネタバレしたくない。是非最後まで読んで欲しい。ということで詳しく書けない…もどかしい…!

 ちなみに、原作は乙一さんの同名小説。原作小説も読んでみようと検索したのですが、ない。単行本・文庫化されていない。雑誌に掲載されたものらしいのですが、その雑誌も何年も前のもので入手困難。単行本・文庫化しましょうよ…。漫画の単行本が出ると決まった時、もしかしたら小説も一緒に出るのかなと思ったら違った。一緒に出してくれたらよかったのに。漫画は原作そのままなのか変えているのかわかりませんが、原作も読みたいです。
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by halca-kaukana057 | 2015-08-16 21:35 | 本・読書

Im ~イム~ 1

 新しく読む漫画が増えました。いつものペースだと2巻が出てしまうので、その前に感想書きます。


Im ~イム~ 1
森下 真/スクウェア・エニックス・ガンガンコミックス/2015

 高校1年の羽羽方陽乃芽(はわかた・ひのめ)は、家は代々続くオカルト蒐集家、昔から呪われている一族と噂され、人々に避けられていた。特に陽乃芽は8年前口から火を噴いて倒れたと噂され、陽乃芽は8年の間声を出せず、関わると呪われると噂されていた。入学した高校でもひとりぼっちの陽乃芽。そんな陽乃芽の前に突然、不思議な少年が現れる。わけのわからないことを話し、町の人々に追われていたその少年を家に連れ帰った陽乃芽。"イムホテプ"と名乗るその少年…古代エジプトの大神官で後に神とあがめられた存在。イムホテプは瞬時に陽乃芽は偽物の神「マガイ」に憑かれ呪われていると見抜く。イムホテプの力で一時的に声を取り戻した陽乃芽。しかし、陽乃芽に憑いているマガイを倒さねば陽乃芽の呪いは解けない。イムホテプは陽乃芽の部屋で、マガイの元凶となっているあるものを見つける…。


 古代エジプト神話がモチーフになっている漫画と聞いて読んでみました。少年漫画、アクションものはこれまであまり読んだことのないジャンル。でも、すんなりと読めました。主人公のイムホテプですが、カバーを外した表紙にも史実の解説が書かれています。古王国時代、第3王朝のジェセル王(今後出てくる模様)の宰相。古代エジプト最初のピラミッドはこのジェセル王の階段ピラミッドで、設計をしたのはイムホテプ。内科医でもあった。この漫画のイムホテプは、その史実のイムホテプとはちょっと違う感じになっています。
 しかし、古代エジプトでも初期の第3王朝。解説にも書いてあるのですが、ツタンカーメン王(第18王朝)とは1300年ほど離れている。ツタンカーメンの時代を現代だとすると、イムホテプの時代は奈良時代、という例えがわかりやすい。確かに。古代エジプトの歴史は本当に壮大、長い。考えるだけでクラクラしてきます…(でも好きw)

 話を漫画のイムホテプ(通称:イム)に戻して、現代日本に甦りやって来たイム。偶然出会った陽乃芽は、偽物の神マガイに憑かれていた。イムが現代に甦ったのは、マガイを祓うため。独りぼっちの陽乃芽が、心の拠りどころとしたあるもの。独りぼっちの陽乃芽にとって、現実世界は辛い場所でしかない。それよりも自分だけの拠りどころがあればいい。そんな陽乃芽の心を読み取り、「貴様は人と向き合うのが怖いだけだろう?弱虫め」(31ページ)と厳しいけれどもその通りのことを言うイム。見た目は少年だが、大神官だからかなり賢く、人生経験はあるのだろう。

 この漫画には、陽乃芽だけでなく、心の奥底に他者とは分かり合えないと思い込み、自己を追い詰める孤独や弱さ、罪悪感を抱えた人が登場する。陽乃芽に拒絶されつつも友達になりたいと近づいてきたクラスメイトの白花こぶし。何かと恐ろしい噂のある「御空神社」にお参りに来た少年・竜。人の目を気にしすぎてしまうこぶし。とても危険なこと、恐ろしいことが起こるかもしれないが、すがれるもの、希望を託せるものがそれしかない竜。そんな弱さを持つ心の内を理解しようとするのは陽乃芽にしかできないことだな、と。

 特に竜が抱えていたものは重かった。時に人は、それがネガティヴ、負の結果をもたらすものだとわかっていても、それを生きる支えとしてしまうことがある。悪循環で成り立っている人生。それを変えようとするのはとても難しい。でも、負の連鎖を生み抜け出せなくなるものを支えにしているのはやはりよくない。陽乃芽にとっても、竜にとっても。

 そんな人の弱さにつけこむマガイ。イムとマガイのバトルシーンは迫力があります。だが、イムも何かを抱えている…?落ちこぼれの見習いで、一人前の神になるためにイムの元で修行をすることになったアヌビス(アヌビス神が三頭身…可愛い…!)や、最後に登場した男が、イムを「大罪人」と言う。過去に何があったのか。それは2巻で明かされる、か?(単行本派なので最新話は読んでません)これから面白くなってきそうです。最後に出てきた男にイムが話しかけていた言葉は、古王国時代ではなかったよなぁ。このあたりも創作ですね。でも、実際の古代エジプトの神々をモデルにしているマガイや、こんな用語も調べていけば古代エジプトに詳しくなれるかも。漫画はこういう気軽なところから入れて面白い。

 2巻は9月発売予定。来月ですよ。少年漫画のペースは早いですね…。

 最後に。陽乃芽の姓・「羽羽方」の由来はこれ(の著者)ですよね?すぐにわかりました。気が強く、徐々に心を開き始める、ツインテールの陽乃芽ちゃん、可愛いです。こういうキャラ好きですw
 となると、最後に出てきた男には名前の由来はいるのか?ちょっとわからない…。
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by halca-kaukana057 | 2015-08-10 23:35 | 本・読書

星の案内人 3

 今度は買って読んでから時間が経たないうちに感想を書こうと思います。天文・プラネタリウム・星見漫画「星の案内人」第3巻です。


星の案内人 3
上村五十鈴/芳文社・芳文社コミックス/2015

 "おじいさん"の私設プラネタリウム「小宇宙」。「小宇宙」の常連のトキオは、ある日学校で「ヴァイオリンを弾けるって本当?」と噂になる。トキオは人前ではヴァイオリンを弾けなくなっていたので、噂されても困る。トキオがヴァイオリンを弾くことを知っていて、学校で噂になる…言ったのはコータだ。そう思ったトキオがいつものように「小宇宙」に行くと、コータがいた。更に、「小宇宙」にはいつものように常連の人々が集まって盛り上がっている…コータにイライラしていたトキオは、「ここはプラネタリウムで飲み食いするところじゃない!!」と言い、出て行ってしまう。ひとりになったトキオは、初めて「小宇宙」に来た時のことを思い出す…。

 3巻はトキオ君がメインです。1巻、最初の頃は、「小宇宙」にいるのはおじいさんとトキオだけだった。それが、何らかのきっかけで偶然訪れ、おじいさんのプラネタリウムに魅せられ、今のように賑やかな「小宇宙」になった。おじいさんとトキオ、「小宇宙」とトキオがどう出会ったのか、過去のお話がついに語られます。両親と離れ、フミおばさんの家で暮らすようになったトキオ。ヴァイオリンも弾けなくなり、失意の中にいたトキオが、ある日いつもと違う道を歩いて、「小宇宙」にたどり着いた。おじいさんに出会い、プラネタリウムを見せてもらい、宇宙の話を聞く。それから、「小宇宙」に通うようになったが、トキオ以外に誰も来ない。その後、人々が集うようになった。おじいさんとトキオだけの「小宇宙」でも、人々が集うようになった「小宇宙」でも、トキオが願うことは同じ…。

 「小宇宙」に集う人々は、自分のことも考えているけれども、それ以上に他者のことを考えている。心の奥に何かを抱えていて、日々もがき、生きづらさを感じている。それは、人を思う優しさを持っているからじゃないだろうか。あのやさぐれ小説家の志村さんも(志村さんについては後ほどまた)。心に傷を抱えているからこそ、人の痛みも優しさもより強く感じられる。ただ、時々素直になれないだけ。トキオも、コータも。この15・16話で、ちっぽけだったトキオの新たな"宇宙"が生まれ、始まった。「宇宙」という言葉の由来は、空間と時間両方の広がりを意味している(ざっくり過ぎる解説ですみません…話すとかなり長くなります…もっと詳しく知りたい方は、資料はありますので検索してみてください)。そういえば、音楽も、空間と時間に関係しているような。

 あと、2巻も読み返してみて気がつきました。トキオやフミおばさんは「ヴァイオリン」と、おじいさんやコータたちは「バイオリン」と話し、表記されている。音楽や楽器に対しての考え方やとらえ方がこの一言でわかってしまう。凄い…書き分けている…!!感激しました。あと、トキオやコータが通う田舎の学校では、ヴァイオリンなんて珍しい楽器。特別視されるのも無理はない。トキオ君のヴァイオリン演奏はかなりの腕前だったと伺えます。何を弾いていたのだろう?やはりバッハか。ベートーヴェンも弾いてそう。

 17・18話では、瀬尾さんがかつて勤めていた会社の後輩・小野崎さんが登場。これまたかなりのひねくれ者…やっぱり、色々と抱えているのですが…。ひねくれ者と言えば、志村さん。志村さんの指摘が鋭い。一方で、おじいさんも小野崎さんに対して、おじいさんのやり方で迫ります。おじいさん、一癖二癖ある「小宇宙」に集う人々を何だかんだ言って説得させてしまう…一番のツワモノです…。
 太陽系の微妙なバランス。木星の"役割"。ちょうど今、日没後の西の空に木星が見えていますが、木星がもし無かったら、あの木星が違う動きをしていたら…と思うと恐ろしくなります。太陽系であれ、銀河や銀河団、宇宙全体をどんな力がどう作用していて、今のこの宇宙が成り立っているのか。そこまで考えてしまいます。本当に宇宙は壮大です。だからこそ惹かれます。

 19話は、2巻の13・14話で登場した犬のクロと、クロと仲が良かった少女・ナノハちゃん、そして行方不明になっていたクロとナノハちゃんをクロの家まで送っていった瀬尾さんの友人・千田さんのお話。14話ではさらっと取り上げられていた部分に、こんな物語があったとは。
 この19話のタイトルが「スーパームーン」…。これ、天文用語じゃない…。最近ネットで取り上げられるようになった言葉…おじいさんよく知っていたなぁ…。でも読んでみると、「スーパームーン」という言葉だけ借りて、あとは天文から外れてない。問題ない、よかった。同じ満月でも、月の楕円軌道の地球に近い点(近地点)と遠い点(遠地点)での大きさと明るさは異なっている。それを、ナノハちゃんから見た千田さんに当てはめた。地球から見える月のように。ナノハちゃんと千田さんは今後も出てくるはず。ナノハちゃん、がんばれ!

 さて、トキオ君にとって、寄り添ってくれる存在だったけど、今は辛い存在であるヴァイオリン。15・16話でトキオ君の新しい「宇宙」が始まりましたが、20・21話でついに…。新しい「宇宙」が始まっても、星が生まれるまでは時間がかかる。生みの苦しみを味わうトキオ。そんなトキオに志村さんの言葉が突き刺さるけれども的を得ている。
(トキオ)ぼくはどうせ何をやったってだめなんだ。
(志村)今のそのトキオ君は何をやったってダメだね
いっぱいになったコップに水を注ぐにはどうしたらいいと思う
というよりそんなコップ大事にする価値ある?壊しちゃえばいいと思わない?
(144ページ)

 トキオにとってのいっぱい水が入っているコップ…かつての「ヴァイオリンを演奏していたトキオ」に戻ろうとするのではなく、新しい星が生まれたトキオへ。"生まれ変わった"トキオの表情がとても清々しい!一方の「小宇宙」。トキオやコータの担任の先生と、校長先生。校長先生も、若き日の失敗から、新しい「宇宙」が始まり、星が生まれた。いっぱい水が入っているコップを壊し、新しいコップを手に入れた。

 思えば、新しい星が生まれるためには、超新星爆発を起こした星の残骸の塵やガスが再び重力によって集まり、新たな星雲となり星が生まれる。何かが始まるためには、何かが終わる必要がある。トキオも校長先生も、心の中で終わりを告げた星の残骸から、新しい星が生まれ、再び輝きだしているのだろう。この3巻で一番印象に残っている部分。私も、かつての自分、いっぱい水が入っているコップにこだわっている。こだわりながら、新しい何かを探してつかもうとしている。これじゃ何もつかめない、生まれないな。読んでいてようやくわかった気がする。
 
 世界各地の星にまつわる神話や伝承は、星空をよく見ていた古来の人々の観察眼から生まれたものだとわかる。この漫画は、星にまつわる神話や伝承を、ギリシアだけでない世界各地のものから、そして様々な視点から取り上げていて、作者さんはよく勉強されているんだなとわかる。その上で、人間の物語にも当てはめてくる。星空には、人間の生き様が、心が映る。

 21話のラストは涙腺緩みます。新しい一歩を踏み出したトキオ。さぁ、どこへ行こう。これからが楽しみです。

 おまけ漫画も面白い。本編ではほとんど出番が無かったフミおばさんが…。そして、ギリシア神話のゼウスの見方も変わりました。小野崎さんはまた出てくるかな。志村さんとのひねくれ者対決がこれからどう進むのか、気になります。

・2巻感想:星の案内人 2
 最初はオムニバスのような感じだったのに、すっかり「物語」になっているのが感慨深いです。
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by halca-kaukana057 | 2015-07-10 22:37 | 本・読書

星の恋物語 +3年の星占い

 このブログでも今まで何度か取り上げたことがある、占いライターの石井ゆかりさん。HPでの毎年、毎週の星占い、ツイッターでの毎日の星占いはついつい読んでしまいます。一般的な星占いと違って、曖昧なんだけれどもそれが逆にイメージをかきたてる。様々なとらえ方が出来る。人々が占いに求めるであろうラッキーとアンラッキー、幸運と不運、幸せと不幸…そんな二元論で語られない文章が好きです。

 石井さんが出した「3年の星占い 2015-2017」という本のプロローグには、短い小説のような文章が載っています。それを12人の漫画家さんたちがそれぞれイメージを膨らませて、漫画化したのがこの本です(ちなみに、石井さんとは何の打ち合わせなども無く、漫画家さんたちがそれぞれ自由に描いたとのこと)。
WAVE出版公式サイト:石井ゆかり12星座シリーズ:3年の星占い
 ↑特設サイト。各星座のプロローグの解説もあります。


星の恋物語
石井ゆかり:原作/
山田デイジー、谷川史子、日坂水柯、天乃咲哉、海野つなみ、稚野鳥子、種村有菜、糸井のぞ、ウラモトユウコ、志村貴子、藤原薫、天堂 きりん:漫画
/幻冬舎・バーズコミックススペシャル/2015

 「3年の星占い」は、山羊座のため、山羊座のしか読んでいません。なので、まず志村貴子さんの山羊座の物語「秘密」から読みました。「3年の星占い」のプロローグでも、過去と現在と未来、そして「秘密」とは何かということが短い物語になって書かれています。「3年の星占い」の方では、主人公は男性のように私は読めたのですが、漫画では女性になっている。そして、「秘密」の内容も掘り下げている。その主人公が抱える「秘密」にドキリとした。「秘密」にどう向き合うか…。隠し続け、向き合うのが怖くもあり、でも向きあってみた過去。誰にも言えない「秘密」に向き合った最後の部分「あれはわたしのラブレターだったのか 抗議だったのか」(154ページ)その気持ちがわかる、と思った。この漫画で、「3年の星占い」の元の物語もさらに深まったように読めた。

 他の星座は「3年の星占い」の元の物語を読んでいないので、漫画だけ。12人の漫画家さんそれぞれの個性がこの1冊の漫画で一気に味わえる。舞台も現代だったり、どこか遠い国のファンタジーの世界だったり。双子座の「こわいひと」は日坂水柯さん。「数学ガール」コミカライズの方だ!と独特の絵を見てすぐにわかった。漫画も、最初は女性が主人公なのかと思いきや、男性が主人公の視点でも読める。凄い。どの作品でも、石井さんの占いのように「これが幸せ、これが不幸」と決め付けてないのが面白い。この漫画のあとがきに、石井さんはこう書いている。
日々は「いいこと」「わるいこと」という枠組みにはまりきらない、もっとたくさんの色のもので溢れています。(中略)明日という日が「いい日」でも「悪い日」でもない、「かけがえのない大切な日」だということに気づいて頂けるだろうと思いました。
(181ページ)

 舞台や主人公たちの設定が変わっても、この12の漫画では、皆それぞれその日、その時を懸命に生きている。その中で、様々なことがある。学業や仕事で色々あったり、誰かと出会ったり、話したり。皆それぞれの強さ、たくましさ、優しさ、ひたむきさがあっていいなと思った。どんな日でも、「かけがえのない大切な日」と生きていけたら、と思う。

 ちなみに、12の漫画はどれも好きなとこが合って選べないのですが、特に好きな作品を選ぶなら、牡牛座、双子座、蟹座、蠍座、射手座、魚座かな(選んでも多い。山羊座は自分の星座なので別です)。

【過去関連記事】
星をさがす
都会の星
 これまで読んだ石井ゆかりさんの本。

[コミック版]数学ガール 上
[コミック版]数学ガール 下
 双子座の漫画を描いた日坂水柯による漫画「数学ガール」。「数学ガール」シリーズの原作は第3作まで読んだが、その後読めてない…。読むのにかなり時間がかかるので敬遠してしまっています…。
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by halca-kaukana057 | 2015-06-26 22:22 | 本・読書

ReLIFE 3

 ちょっとしたきっかけで読み始めた漫画「ReLIFE」。無料漫画アプリ「COMICO」で絶賛連載中。アプリでも読めますが、単行本から入った私は単行本でも読んでいます。
・1・2巻感想:ReLIFE 1・2

ReLIFE 3
夜宵草(やらいそう)/泰文堂・アーススターコミックス/2015

 学業・成績も敵わず、学級委員になれず、話してみても侮辱されているとしか思えず、とうとう我慢が出来なくなってしまった…玲奈は千鶴が廊下に置いていた千鶴の鞄を奪ってしまう。階段でその玲奈と出くわした新太。新太は玲奈が持っている鞄が千鶴のものだと気付く。「日代さんのものじゃ…」と新太が言いかけると、玲奈は階段を大急ぎで下りて逃げようとする。止めようとする新太。新太の手を振り払おうとする玲奈は、バランスを失って階段から落ちそうになり、新太も一緒に階段から落ちてしまう。落ちて倒れている2人を発見した千鶴。2人は気を失い、保健室に運ばれる。目が覚めた新太は、玲奈の行動から、辞めた会社で働いていた時のことを思い返す。そして玲奈も目を覚まし、新太は再び玲奈に千鶴の鞄のことについて尋ねると…。

 2巻の最後の部分もあらすじに書いておかないと話が繋がらないので、書いておきました…。あと、「ReLIFE」を読んだことが無く、この感想で初めて知る方もいらっしゃると思うので書いておくと、主人公の海崎新太は、実際は27歳。会社をとある理由で3ヶ月で辞め、それ以来無職→コンビニでアルバイトの生活をしていたところへ、「リライフ研究所」の夜明了(よあけ・りょう)と名乗る男から薬を手渡される。夜明は新太の過去を全て知っている。「リライフ研究所」ではニートを社会復帰させる実験を行っており、その研究所で開発した薬を飲むと見た目10歳程若返る。そして高校生として、1年間高校生活を送る実験の被験者になってほしいと頼まれる。新太は実験に協力することを決意。高校生として1年間を送ることになった…といういきさつ。詳しくは1・2巻感想、漫画本編をどうぞ。

 1・2巻では、成績優秀だが人と関わるのが大の苦手で友達もいないクラスメイトの日代千鶴、同じくクラスメイトで学業もバレー部の部活も一生懸命だけれども報われずネガティヴな感情を心の中に押し込めてしまっている狩生玲奈と新太がメインで描かれています。2巻で玲奈の精神面がとても心配だったのですが、ついに限界に来てしまった…。2巻で千鶴と玲奈のすれ違いを察していた新太ですが、千鶴の鞄を持っていたことで、玲奈が何をしようとしているのか、何を考えているのかをすぐに察知…やっぱり新太は周りのことをよく見ていて、人の心の動きに敏感で、優しくて、困っていたら何とかしたいとすぐ行動する、コミュニケーション能力高い。元の27歳の頃も、辞めた会社で働いていた頃も。辞めた会社では様々な人間に出会ったからこそ、更に人の心の動きにも敏感で、玲奈の行動もすぐに見抜けたのかな。大人、27歳の視点。

 その玲奈が、保健室で新太に鞄のことと心の奥底にあることを打ち明ける。逃げるな、と自分の行動と心と向き合わせようとする新太は、17歳の姿ではあるけれども27歳だ。
人を貶そうとする行為は結局は自分を貶す
(20ページ)

 この言葉、そしてここからの新太の言葉がグッと来ました。私も「自分なんて…」と自分自身を卑下して、他者と比べてしまい、僻み妬んで、ネガティヴモードに陥るとその人を貶したくなる。そんなことしても、自分の評価が上がるわけでもないのに。逆に自分を更に下げてしまう。
 一方、この新太の言葉(説教?)を聞いて、「何がわかるのよ!!」「なんであたしだけがうまくいかないの!?」と感情を爆発させてしまう玲奈の気持ちもよくわかる。頑張っても、頑張ってもうまくいかない。報われない。皆うまくやっているのに、自分だけ置いてけぼりで…結局また他者と比べてしまうわけですが…。この玲奈の心からの悲痛な叫びを受け止め、なだめる新太が優しい。結果が出ないからといって意味がないわけじゃない。「人と比べた順位だけが結果じゃない」(27ページ)そう信じたい。

 帰ろうとする新太を待っていた千鶴。2巻で千鶴と玲奈の心がすれ違っていたことを気にかけ、何とかしたいと夜明に相談するも、「石をどけたキレイな道を歩かせてあげることが 果たして本当に本人のためになるのか」と言われてしまった新太。その言葉を思い出し、千鶴と玲奈を対峙させることに。そして、新太の後に学校から出てきた玲奈を待っていた千鶴。一対一で本音を言い合う2人。そして、解けたある誤解。お互いの心がすれ違っていたことも、ようやくお互いに理解。千鶴も、他者と関わるのが苦手で、人の気持ちに鈍感であることを自覚している。そんな自分を変えたい。千鶴が玲奈に差し出した手…本音で、心の奥底からぶつかり合わないと手に入れられないものがある。本音で心の奥底から他者とぶつかり合うことを、大人になってからすることが少なくなったなと読んでいて感じました。私も千鶴ほどではありませんが、人と関わること、友達をつくることが苦手で、まさに高校生の頃、人間関係で悩んでいました。千鶴や玲奈のように本音を言うこともありましたが、相手は受け取らず…。大学になってからは部活で、いい意味で本音でぶつかり合うことが多く、最初は慣れず自分の殻に篭ろうとしていましたが、特に同期とは何度も何度も本音でぶつかり合い、手を差し出し取り合えた。この漫画を読んでいると、新太のように高校生にはなれなくても、その頃のことを思い返して、今大事にするものは何か、と考えます。

 玲奈に説教(?)した新太。しかし、新太も実際は他者と比べて結果にこだわり、頑張ることを諦めてフリーター(夜明からはニート呼ばわり)になった新太…自分自身への言葉でもあります。千鶴と玲奈の件がひと段落した後、現実は甘くないのにキレイ事を言ってしまっただろうか、と自分の発言を振り返る新太に夜明が言った言葉がこれまた印象的です。
確かにキレイ事だったかもしれません
でも嘘じゃない
思ってもいない言葉を上辺で並べるのがキレイ事かなと思います
そうじゃなく本心の願いから出た言葉なんだからいいじゃないですか?
汚い社会を見てきた海崎さんだからこその言葉だなぁと僕は感心しましたけど
確かに社会は甘くないのが現実だと思います
でも人を貶した奴らが上に上がれるようなそんな現実
正しくは無いですよね
(83~84ページ)

 本当にそうであってほしいと思う。

 後半はゴールデンウィーク。学校が休みで、ぐうたら生活をしている新太の部屋に、大神と杏が。追試続きの新太と杏のために、大神が勉強を見てあげるという約束が…。前回の感想で書き忘れたのですが、及第点をとるまで追試…つまり何度でもやり直すことができる。追試にうんざりしていた新太に夜明がそう言うのですが、新太本人が気付くべきだ、言い過ぎた…と後悔してしまう。夜明にとって新太は2人目の担当する被験者。1人目の回想が時々出てくるのですが、夜明も色々と抱えています。

 一方で、楽観的、カラッとした性格で、何を考えているのかよくわからないと思われている杏。新太と同じ編入生。その杏が、意外な行動に…そこに何故かあの人も…。やっぱり、という展開ではありましたが、ますます謎は深まるばかりです。オマケの番外編もうまく繋げています。シリアス展開の部分の感想を中心に書きましたが、コミカルな部分も多いので、楽しく読んでいます。

 COMICOではかなり先に進んでいて、4巻はいつ出るんだろう?本当に玲奈はあらゆる意味で報われてほしい…。
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by halca-kaukana057 | 2015-06-02 23:17 | 本・読書

宇宙兄弟 25

 読んだのに書いてない漫画の感想、書きます。「宇宙兄弟」も読めば面白いのに、感想書くのが遅くなる…。

宇宙兄弟 25
小山宙哉/講談社・モーニングKC/2015

 六太たちCES-66"ジョーカーズ"の月に向けての打ち上げが迫ってきた。日本に帰国していた六太はシャロンに会い、月に行ってシャロンの夢である月面天文台建設を誓う。そして実家に帰宅すると、いつものように両親が迎えてくれた。両親とシャロンのおかげで宇宙飛行士になれたこと、まもなく打ち上げが迫っていることをひしひしと実感する。
 そしてアメリカに戻り、"ジョーカーズ"はミッション説明会を兼ねた記者会見に、月面での船外活動服を着て登場することになっていた。その記者会見当日。"ジョーカーズ"にある事件が起こる。そこで呼び出されたのは…


 いよいよムッタが宇宙に行く日がやってきました!!サインも完成し、練習もバッチリ。ムッタのサイン、可愛い、ムッタらしいサインです。サインを貰った子どもに「宇宙飛行士らしくない」とは言われてますが…そこもムッタらしいw
 25巻で推したい登場人物は、ムッタの父。これまで以上にムッタのことを信じ、いいところでいいことを言っています。お父さん頼もしい!そんなムッタ父は、ムッタの部屋を自分の部屋にして、陶芸をやっていました。その陶芸の部屋"南波工房"と作った作品、作ったお皿やコップで食事する父を見て、「この部屋は父ちゃんの夢だったのかな…」と思うムッタがとてもいい。思えば、先に日々人を宇宙に送り出しているご両親。2人の息子の夢、やりたいことを尊重してくれた。そんな父の夢が陶芸だった…。いいなぁ。ムッタがフロリダに到着し、打ち上げを観に来た両親とあった時、ムッタ父が言った言葉も短いですがグッと来ます。

 "ジョーカーズ"の控えにまわってしまったカルロ。カルロがいないまま"ジョーカーズ"は宇宙に、月に行くことになってしまうのか…と24巻から心配でしたが、25巻の展開が…。「宇宙兄弟」らしいといえばらしいのですが、カルロの控えだったモッシュが都合のいいような扱われ方になってしまったのが残念です。カルロが戻ってくるためには、こういう形しかないとは思うのですが…ここは読んでいてモヤモヤしました。でもカルロが戻ってきてくれて嬉しいことには変わりは無い。カルロがいないと、カルロじゃないと"ジョーカーズ"じゃない。過去と向き合って戻ってきたカルロは、きっと更に"ジョーカーズ"を強くしてくれる存在だと思う。

 打ち上げ前の恒例の行事が目白押しで、読んでいてワクワクしました。思えば、スペースシャトルが引退し、NASAには今有人宇宙船が無い。ロシア・ソユーズ宇宙船での恒例行事には馴染みましたが、NASAでの宇宙飛行士たちの恒例行事は見なくなってしまった。そうそう、こうだった。打ち上げ1日前には隔離施設で、クルーで映画のDVDを観て、自分の写真のポストカードにサインして…。ありましたありました。映画のタイトルで吹きましたwエディのサインがかっこいいです。そして、T-38の飛行がたまらなくかっこいいです!!

 そしていよいよ打ち上げ!ISSにいるせりかさん、絵名ちゃんからも、ケンジに新田からはメールで連絡が届く。やっさんと福田さんは打ち上げを観に来てくれた。ビンスさんはキャプコムに!でも、弟・日々人からは連絡も何も無い。NASAを離れ、ロシアで極秘訓練しているという日々人。日々人…ムッタの打ち上げのことだけは知っていていてほしい。

 さぁ、26巻はムッタ、月に立つ、ですね。楽しみにしてます!

・24巻:宇宙兄弟 24
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by halca-kaukana057 | 2015-05-25 22:19 | 本・読書

[NHKスペシャルコミック版]まんが 生命40億年はるかな旅 +21年後に思うこと

 先週第1集が放送されたNスペ「生命大躍進」。この大元となったであろう番組が、21年前のNスペ大型シリーズ「生命 40億年はるかな旅」。この番組を観てアノマロカリスやオパビニア他カンブリア紀・バージェス動物群を知りましたし、番組で作ってしまったアノマロカリスロボットが衝撃的だった。他の回も夢中で観て、当時中学生だった私はすっかり古生物好きになってしまったのです…。(しかし、番組の録画を持っていないという…)
 このシリーズは一般向けの書籍もありましたが、学習漫画もありました。その存在は知っていて、図書館で読んでいたのですが、久しぶりに読んでみようと借りてきました。

・という話をこの記事の最後に書いてました:「コダモン」続報:古生代クリア! だが…?

まんが 生命 40億年はるかな旅
本庄敬/小学館/1994・1995(全5巻)

 内容は本編と同じですが、舞台はNHKの番組制作舞台裏。プロデューサーやディレクターたちが番組を制作する過程で、地球環境の変化と生命進化、そして生命とは何か、人類はこの未来どう進んでゆくべきか…と考える。収録するスタジオNは、360度フルスクリーンでCGや映像をバーチャルリアリティのように投影できる。第2集・バージェス動物群回「進化の不思議な大爆発」で、キャスターの毛利衛さんが(この頃既に宇宙には興味がありましたが、毛利さんがキャスターを務めていたこの番組のおかげで加速したw)オパビニア(のCG)を手に乗せて「手乗りオパビニア」をしていたのを「いいな…手乗りオパビニア…私もやってみたい…」なんて思っていたのですが(中学生でこの有様でしたw)、漫画ではプロデューサーの日向さんがやっている。スタジオNを自由に泳ぐ(飛ぶ?)バージェス動物群たちのシーンは、今読んでも「いいな…スタジオN行きたい…」と思いますwでも、恐竜回は私も逃げ出すと思いますwスタジオNの実質的権力者はCG制作の坂井さんだと思うw

 登場人物は実際に番組を制作したプロデューサー、ディレクターらスタッフ達が実名で登場しています。毛利さんも勿論。基本皆真面目なのですが、漫画なのでコミカルなシーンも。特にチーフ・プロデューサーの須磨さん。人当たりのよい親分肌で、なかなか哲学的なことも考えるのですが、基本ギャグ担当。ここぞというところでボケてくる。スタジオNに現れたバージェス動物群たちを追い払うところでは、こんな可愛いのに追い払わなくても…と。3巻・鳥回「大空への挑戦者」では、海外ロケに同行して大暴走wスタジオNに戻ってくると、CGの始祖鳥に最初は追いかけられていた(「かわいくない」と言ったため)が、最終的には懐かれているあたりが可愛い。後輩のプロデューサー・日向さんに怒られたり、海外ロケ先の専門家に対して失言したり…須磨さんがんばれと何度思ったことかw最後は真面目に締めてくれるんですが…。

 日向さんはサイエンス担当なので、基本真面目。でも、2巻魚類・両生類回の冒頭、意外やヘビースモーカーだったり、せっかくの休みに釣りをしようと思ったのに台風で、嵐の中釣りをしようとするところはいいなぁ、と。そして、ロケを待ちきれず知りたいと駄々をこねる(?)須磨さんに生命進化や化石に関する本をどっさり持ってきて怒鳴ったり…なかなか気が強いところもありますwお寿司の差し入れまでして、谷田部さんの残業に付き合うと言ってくれたのに、その後が残念なシーンも。

 巻を追うごとに、ディレクター・スタッフたちの個性も出てきてスタジオNはますます賑やかに。お気に入りは2巻恐竜回のディレクター田中さん。趣味がピアノで、落ち込むと小さなおもちゃのピアノをトイレに持ち込んで演奏する癖がある。しかも演奏曲はショパン「別れの曲」(エチュードop.10-3)この曲をおもちゃのピアノで…無理じゃないか?(多分簡単アレンジなんだよ!と納得させる)ちゃんとピアノで演奏するシーンも一応あるが、呆れるスタッフたち…ひどいw魚類・両生類回の谷田部さんも。色々とスタジオの面々にひどい扱いをされてしまう…かわいそうな面が多いです。本当、良い人なのに…。

 こんなコミカルなシーンが多いですが、テレビ局員の憂鬱にも触れられる。CGの坂井さんと特撮の岡田さん。2人がそれぞれの仕事に誇りを持ち、持てる技術を全力投球するも、対立してしまう。番組制作に行き詰まると悩み、頭を抱える。5巻「ヒトは何処へいくのか」では理想の映像を求めて海外へも飛び、じっと耐える…。テレビ局員は体力勝負であり、頭脳勝負でもある…本当に大変なんだなと。

 そんなテレビ局員たちとはちょっと違う立ち位置にいる毛利さん。本編と同じように語るシーンが多いですが、まさかのギャグ?キャラ崩壊?シーンも。毛利さんの苦手な昆虫と言えばピンと来る方もいると思いますが…CG坂井さん…。坂井さんはやはりスタジオNの実質的権力者だと思うw

 ちなみに、ウィキペディアには何故かこの漫画のことも詳しく書かれており、現在の主要登場人物についても書かれています。日向さん、N響の理事長さんなんだ…何だか嬉しい。
ウィキペディア:生命40億年はるかな旅

 漫画の合間にはコラムも。2巻にはあのアノマロカリスロボットの製作に関する話もあります。ちなみに、漫画でもアノマロカリスロボットが登場するのですが…またしても須磨さんが…。

 21年前の作品で、やはり古いなとは感じます。21年で世界は大きく変わった。生命の進化の歴史に比べると、人類の社会の変化の速度は速いなと実感します。特に5巻人類の未来をも考える「ヒトは何処へいくのか」は今では頓挫してしまった計画も多い。火星テラフォーミングなんてまだまだ夢物語。火星有人探査ですら具体的な見通しは立っていない。21年も経てば宇宙開発はもっと進んでいる…と21年前は思っていたのだな…。大きく進んだものもあれば、停滞しているもの、見通しが立たないものも多い。この番組のテーマ「ヒトが過去に学ぶことはもっとある」…生命が辿って来た過去に学んでいるのだろうか?生命進化の歴史はここで止まってしまうのだろうか。全5巻を読み終わったところで考え込んでしまった。いや、まだ短過ぎる。もっと長い時間がかかるのだろう。でも、それまで、人類は、地球はどうなっているのだろうか…。

 ちなみに、この「生命」のサントラCDは3枚出ているのですが、3枚全部持ってます。大島ミチルさんの音楽もこの番組は好きで…もしかしたら、私のクラシック好きはこのあたりから始まったのかも。それまでも、ピアノを習っていたことや、音楽の時間に聴くクラシック音楽やテレビ番組のサントラのオーケストラや器楽曲が好きだったのですが…色々なものの源流になってるなこの番組。


*****

 と、語ってみたのですが、こんなまとめが。
Togetter:【NHKスペシャル】ここがヘンだよ生命大躍進 第1集「そして"目"が生まれた」
 先日の「生命大躍進」で、問題点をツイートしたのをまとめたもの。確かに、イクチオステガが海のような波のるところから上陸していたことや、節足動物の複眼が見え辛いというのには「あれ?」とは思いましたが…イクチオステガのCGが21年前よりも大進化していたところにばかり目が行ってしまってあまり気にしていませんでした。イクチオステガに関しては、6月放送の第2集で詳しく出てくるのでそれを待ちます。
 このまとめの冒頭、こんなことが。
Nスペ「生命大躍進」は、生命の進化にターゲットを絞った内容で、その内容は21年前に放送されたNスペ「生命」に類似するのですが、実はこの「生命」も、当時の知識人に叩かれまくった問題作だったりします。
まさか、今回も? ‥と思ったら、やっぱりやらかしました。

 「生命」の第4集「花に追われた恐竜」は、植物と恐竜の繁栄と衰退の時期が合ってないなどと指摘・批判されたのはわかっています。この漫画は番組制作の過程を再現しているわけではないので、当時、どういういきさつでこの説を取り上げたのかな…と漫画を読んだ後で思いました。
 しかし、他の回も叩かれまくってたとは…。
 ショックです。複雑です。私にとっては、これが古生物だけじゃない、他の面においても興味や好きの源流となり、加速もした番組だったから。

 「生命大躍進」に関しては、自分で調べ直す必要があるのかな。葉緑素の光を感じる遺伝子が、光を感じる網膜・目に繋がる遺伝子になったというのに、頭の中がこんがらがりつつも観て、そうだったのか~と思っていたのですが…。それ以上にアノマロカリスもCG大進化していて、感激だったのに…。いや、第2集も楽しみにして観ますよ。
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by halca-kaukana057 | 2015-05-18 23:49 | 本・読書

海とドリトル 2

 漫画の感想を数ヵ月後に書くのはもう定例になってしまったのか…?磯谷友紀先生の新連載「海とドリトル」2巻です。
・1巻:海とドリトル 1


海とドリトル 2
磯谷友紀/講談社・KC KISS/2015

 小笠原での烏丸研の合宿中、クジラにロガーをつけようとした七海は、ロガーはつけられたものの船から海に転落してしまう。海の中で観た大きなクジラの姿、瞳。無事助けられた七海だが、翌日、海に向かうも足が震えて船に乗れない。海に落ちた恐怖で、海に出られなくなってしまった。烏丸や陸男、戌飼は、船に乗らずにもできる研究や作業を七海にさせ、七海も気遣ってくれていると感謝する。数日後、七海が海に落ちた時につけたロガーが回収され、初めてとった自分のデータに感激する。その映像を観た七海は…。


 あわや、海に落ちてしまった七海。その海の中で七海が観たクジラがとても大きく、印象的に描かれていて、私も海はきれいだけど怖い、そう思ってしまった。じっと見つめ返すクジラの大きな瞳。その瞳で観たであろう海の映像を、後に観る七海。怖い。でもきれいで、惹かれる。思えば、七海がこの烏丸研に入ったのも、失恋し鬱屈した日々を送っていたところで、烏丸先生たちと出会い、クジラに魅せられ、烏丸研に編入した。1巻で「ここのところ ずっとにごった水たまりのようなところにいて 浮上できない。キラキラした 水面に出たい」(1巻8ページ)と思い悩んでいた七海。クジラと出会って、「水面に出られた」。七海を変えたきっかけになったクジラと、そう簡単に離れられない、離れたくない、やっぱり惹かれる。

 そこに辿り着くまでの、海に出られなくなってしまった七海がまた辛い。でも、烏丸研の人々は気遣って、海洋生物の研究はクジラだけじゃない、海に出るだけじゃない、と教えてくれる。ウミガメのところは、私も興味深く読みました。七海の烏丸研での、海洋生物の研究は始まったばかり。そんな七海に、ウミガメの調査を一通りやらせた後、海洋生物研究の奥深さとこれからの研究生活の長さを語る烏丸先生がいい。

 海に落ちた恐怖を何とかしようと、元心理学専攻の七海はトラウマを客観視する心理療法を試してみる。これには、その時その場にいなかった相手が必要。七海は、密かに想いを寄せている戌飼に頼む。七海が海に落ちたのはこれが初めてではなかった。1度目のこともあったから、尚更…。戌飼さん、優しい。

 そして、海に戻ることが出来た七海。よかった…。そんな七海を見て、複雑な思いの万里子。研究は一筋縄ではいかない。ポスドクの戌飼も、これからどうしようか悩んでいる。烏丸研にこのままいるか、それとも…。そんな悩む戌飼に、烏丸がこんな言葉を。
未来にとらわれて現実を失ったら
そこからつながる未来がなくなるぞ
(149ページ)

「研究者は研究が第一だが、100%それだけだと行き詰まる」とこの直後も戌飼の言葉も、その通りだな…と。研究者だけでなく、一般の人間でも、何かに100%だと行き詰まる。かつて、私もそんなことがあった。これをやらなきゃいけないから、他のことなんてやるのは(自分としては)許されない、と。最初は勢いもあるし、熱心に取り組んでどんどん成果を出せるが、のちに、悩みも出てきて苦しみ、自分ではどうしようも出来ないことも起こり、行き詰ってしまった。未来をみるのは大事だけど、そこには今ここにある現実が繋がっている。生物の進化や繁栄から考えると、環境の変化などに適応するために可能性をたくさんつくっている(結果として)。戌飼さんが出した答え…「今を動かす」。七海も思い切ったことをしたが、戌飼さんも粋なことを…。

 この2巻では、烏丸先生の過去もまた少し語られています。離婚したこと。その奥さんも研究者だったこと。普段は飄々としている烏丸先生ですが、何か変化がある、かな?

 3巻の展開が楽しみですが、新キャラが登場?この人、烏丸研にとってどんな人になるのか…。
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by halca-kaukana057 | 2015-05-12 22:22 | 本・読書

ReLIFE 1・2

 本屋さんで何気なく見つけて、1巻を読めるようになっていたので読んでみたら面白かったので、2巻まで読んだ。その1巻を開いて驚いた…全編オールカラー…!?無料漫画アプリ「comico」で連載中の漫画で、アプリでも毎回オールカラー。今の時代、そういうことも出来るのか…。漫画誌で好きな漫画がカラー表紙になると喜んでいたのはもう昔の話というのか…!?


ReLIFE 1

夜宵草(やよいそう)/泰文堂・アース・スター コミックス/2014





ReLIFE 2

夜宵草/泰文堂・アース・スター コミックス/2014





 海崎新太(かいざき・あらた)は27歳。2浪で大学に入り、就活から逃げるために大学院に進み、卒業後就職したがとある理由で3ヶ月で退職。その後、再就職を目指すも落ち続け、コンビニでバイトをしている。更に、田舎の実家から、田舎に帰ってこないなら仕送りを凍結するとの連絡が入る。キャリアを積んでゆく友人たちにはフリーターになってしまったことは言えず、会うといつも嘘をついている。そんな帰り道で、新太は夜明了(よあけ・りょう)という男から声をかけられる。初対面なのに何故か新太のことを全て知っている夜明。夜明は「リライフ研究所」の社員で、新太が「リライフ」被験者に選ばれた、と告げる。「リライフ」とはニートを社会復帰させるための実験で、新太にその実験に協力して欲しいという。1年間、高校生になって高校生活を送る、と。研究所が開発した薬を飲めば、見た目は高校生ぐらいまで若返られる…。怪しい話だと思いつつも、新太の心の中を全て見抜いている夜明の言葉に動揺し…。翌朝、起きて鏡を見た新太は、高校生ぐらいの年齢に若返ってしまった自分の顔に驚く。酔った勢いで薬を飲んでしまっていた。そして、再びやって来た夜明に、「リライフ」実験に協力することを決意する。4月、見た目17歳・3年生の新太は編入生として高校に入り、高校生活が始まった、が…。


 「もし、人生をやり直せたら」。たまに思うことがあります。でも、いつからやり直すか。中学や高校だと勉強も大変だし、思春期の友人関係も複雑でやり直したくないなぁと思ってしまいます。大学も結構ハードだった。でも、それは、自分の時間を遡るという意味での「やり直し」。この作品では、見た目は若返って、現在の高校でやり直す、というもの。今の高校では学ぶ内容も異なり、友人関係も携帯は必須でSNSも使いこなして…ついて行けるのか、と正直思ってしまう。学生時代いじめも経験しましたが、いじめも変化している。ネットで陰湿化していることも。やっぱりもう一度高校生になるなんて嫌だなぁ、と思ってしまった。

 でも、新太のように、実際に今の高校生と、自分も高校生の姿で接したらどうなるんだろう?読みながら思っていました。時代は変わっても、高校生の子たちが思っていること、悩むことはそんなに変わらないのかもしれない。

 見た目17歳(あくまで見た目だけ。中身は27歳のまま。体育は辛いし、怪我の治りも普通の17歳に比べると遅い!)の新太は、登校初日から様々なクラスメイトに出会う。成績優秀だが所謂「コミュ障」で人付き合いが苦手、友達をつくりたいと思っている日代千鶴(ひしろ・ちづる)。新太の隣の席で、バレー部員で勉強も部活も頑張る努力家だが、どちらも一番にはなれないことにコンプレックスを抱いている狩生玲奈(かりう・れな)。新太の前の席で、イケメンで見た目は軽いノリだが成績優秀、でも鈍感な大神和臣(おおが・かずおみ)。新太の斜め前の席で、同じく編入生の小野屋杏(おのや・あん)。そして、夜明も新太の担当として新太の行動を記録・報告と研修のために、同じく薬を飲んで高校生になっていた。

 登校初日から、何かと騒動を起こしてしまう新太。学業も散々で、追試続き。物語はシリアスな部分もありますが、大体はコメディタッチで描かれているので笑いながら読めます。そんなコメディの部分が続いているところへ、新太の過去や登場人物たちが抱えているものが出てくると、余計にシリアスに感じてしまう。仕事を3ヶ月で辞めてしまい、「大人」「社会人」になりきれない、前に進みたくても進めない辛さを抱えている新太。一方、新太が出会ったクラスメイトたちも様々なものを抱えている。友達をつくりたいのにできない千鶴。努力しているのに、勉強も運動・部活も叶わない相手がいて、近づきたい人にも想いが届かない…それを心の中に溜め込んでいる玲奈。1年の頃からこの高校に通っているはずなのに友達がおらず(仕事上他者と深く関わらないようにしている)、何かを隠しているような夜明。人それぞれ、様々な抱えているものがあって、毎日もがいているのだな、と…。それぞれのキャラクタの抱えているものが、自分も経験があるので共感し、過去の苦しかったことを思い出して読んでいました。

 本来は存在しない17歳の新太。「リライフ」実験後、新太に関わった人々からは新太の記憶が消されてしまう。もし新太が本当は17歳ではないことがバレてしまった場合は、「リライフ」実験もそこで中止。「リライフ」実験の間の新太の記憶も消されてしまう。どうせ記憶に残らないのだから、無難に、目立たなく…と思っていた新太だが、いつの間にかクラスメイトたちや夜明のことを気にかけるようになる。自身の心の変化に葛藤する新太。大人の視点でクラスメイトたちを見て、他人事と思えなくなっている。

 そして、彼らが「抱えているもの」を敏感に察し、配慮しようとする新太。本当は10歳もの年齢差があるのに、すぐに高校生たちに溶け込んだ。本当に羨ましいぐらいにコミュニケーション能力は高いのに、何故新太は社会からドロップアウトしてしまったのだろうかと思う。いや、コミュニケーション能力が高い、周りのことをよく見ていて、人の心の動きに敏感で、優しくて、困っていたら何とかしたいとすぐ行動するからこそ、「大人」社会に馴染めなかったのか…。配慮をして「何とかしよう」とする新太に対して、夜明がこう話すシーンが印象的です。
石をどけたキレイな道を歩かせてあげることが 果たして本当に本人のためになるのかどうか
転んでも許してもらえる若いうちに その痛みや起き上がり方を学んでおくのも大切かな…
って思いますがね(2巻、139ページより)

あがいて下さい 精一杯
小さな物事にも大きな反応をして
思春期の学生たちと一緒に 頭じゃなくて心をいっぱい動かして
(2巻、142ページより)


 それにしても、努力しても報われない玲奈の心の奥底が…。どんどんネガティヴなものを心の中に溜め込んでいる。自分もよくあるので、わかる…と思いながら読んでいました。そんな玲奈の溜め込んでいたものがついに…。3巻はこの3月末に発売。と言っても、アプリ「comico」で最新話まで読んでしまいましたがw

 無料の携帯アプリで連載中の漫画を実際の書籍に、単行本として発売する。携帯でも読めますが、じっくり読むならやはり本だなと思ってしまうアナログ人間です。オールカラーなのは嬉しいのですが、背景の色で台詞がつぶれたり、台詞が細々していて読みにくいところがあるのは残念なところ。台詞も元々多い。言葉での心理描写が多いのはいいのですが、「絵で語る」漫画のよさを活かしたらもっと面白くなると思います(もしかすると小説向きなのだろうか?)。元々アプリでは縦スクロールで読むようになっているので、本にするとコマ割の印象も変わります。いい方向に変わっているところもあり、コマ割りもやはり細々しているところもあり…。この漫画も"実験"しているようで、新太たちと共に"成長"してゆくのを見守りたいです。

 ちなみに、来年、アニメ化も決まっているそうです。凄い勢いです。元々オールカラーなのでアニメになっても違和感は少ないだろうなぁ。
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by halca-kaukana057 | 2015-03-09 23:05 | 本・読書

天にひびき 10[最終巻]

 昨年読んだ本は昨年のうちに…ができませんでした。年またぎましたが書きます。「天にひびき」いよいよクライマックス。完結です。



天にひびき 10
やまむらはじめ/少年画報社・ヤングキング・コミックス/2014

 大学4年、卒業も近づいた秋央。ヨーロッパで活躍しているひびきが帰って来た。秋央の部屋を懐かしそうに見るひびき。そんなひびきが、日本に「忘れ物」をしていることを思い出した、と。秋央に「コンサートやらない?」ともちかける。秋央も即答。いきなりアマオケを立ち上げてのコンサート。かつての21Cオケのコンマス・友田は呆れながらも、相談にのってくれることに。そして、音羽良の仲間たちとも再会。そこで、ひびきがやりたいと言ったのは、マーラーの「大地の歌」。声楽付きの交響曲。オケは何とか集められそうだが、テノールとアルトのソロはどうする?ひびきはその場にいた梶原をテノールに、波多野をアルトに指名。無理と言いつつも、2人はひびきからのオファーを受けてしまう。それを聞いた友田は、素人に声楽をやらせるなんて、とマネージャーだけ紹介して、話から降りてしまう。友田に対して、ひびきは本気だと強く断言するが…。

 最終巻です。9巻のラストでひびきが秋央の部屋の前に立っていたのを見て、続きが気になっていました。文化祭でのひびき指揮秋央コンマスの演奏会は、ひびきが来日中の名門オーケスストラ・バイエルン・フィルを代役として指揮し、ひびきは大成功。一方、秋央は念願だったひびきの指揮のコンマスの夢が破れてしまった。それから、ひびきはヨーロッパへ。秋央は進路も決まらず、結婚式場でのヴァイオリン演奏のバイトをしながら、卒業を目前に控えていた。

 そこへ帰って来たひびき。しかも、コンサートをやる、と。即答した秋央。以前なら、秋央が友田さんのようにオケの人はどうする、会場は、演目は、と現実的問題をひびきに投げかけるはずなのですが…。友田さんの現実的な質問に、あっけらかんと「なんとかなるでしょ」「(コンサートをやる意味は)ある!」「(その理由は)それは私にもわからない!」と答えるのは、実にひびきらしい…wさらに、「大地の歌」の声楽ソリストに、直感で梶原と波多野さんを選ぶあたりも。でも、声楽の先生の初レッスンで、2人の意外な声楽の素質が判明。波多野さんの暗めのアルト…ショスタコーヴィチをはじめとした近代ロシアもののヴァイオリンも聴きたいですが、波多野さんの暗めのアルトも聴きたいです。あと、クラシック音楽漫画では、何故か声楽は敬遠されているように思える。私がそんなに読んでいないから知らないだけかもしれないけど、声楽はほんの少ししか出て来ない。ピアノやヴァイオリンなどの弦楽器、管弦楽とは別に吹奏楽、あと指揮。54話で、梶原と波多野さんが声楽のレッスンを受けるのですが、まさに声楽の第一歩!基礎基本が取り上げられてて、声楽をやっている身としてとても嬉しかった。その後の体力づくり、発声練習、発声の際どの筋肉を意識するか、体調コントロール…。声楽は身体が資本。梶原がはちみつ一気飲みしているシーンでは笑いましたw
 漫画家の先生方、声楽をメインにしたクラシック音楽漫画、是非描いてください!!合唱でもいいですが、ソロの声楽は特に。オペラを演奏家の視点で取り上げるのが難しいのかなぁ。もっと声楽は注目されてもいいと思うんだ。色々と誤解されている分野でもあると思うんだ。

 ひびきのオーケストラには、これまで出てきた登場人物が総出演!元21Cオケの皆さん、ヴァイオリンには如月先生に榊先生も。如月先生も出る、と聞いて俄然がんばる南条君…本当にけなげな子です。チェロには7巻で登場した清水さんも。普段は作曲の外山さんも、マンドリンで参加。ピアノの萩原さんも、チェレスタで参加。マーラーは編成が大きい、楽器も種類が多いので普段オーケストラに参加できない楽器の人も参加できる。オールスター集結状態で嬉しい。第一、普段は指揮の梶原も、テノールソロでひびきと共演…滅多にない。

 そんなひびきが、マーラーの「大地の歌」。秋央も梶原も、「らしくない」と言う。歌詞も暗い。何故、ひびきは「大地の歌」を選んだのか。しかも、声楽ソロに梶原と波多野さんを指名したのか。それは演奏会で明らかになるのですが…それまでの声楽ソロ2人の奮闘、本当に大変だよなぁ…しかも「大地の歌」、大編成のオーケストラに対して声楽のソロ、コンサートホールで。フィクションですが、ひびき、おそろしい子…!!

 ヨーロッパで数々の公演を経てのひびきの指揮者としての成長も見どころです。音羽良にいた時の延長線上なのですが、オーケストラを、演奏者ひとりひとりをちゃんと見ている。元21Cオケのトランペット・入谷さんから見たひびきの指揮のよさを読んでいると、本当にひびきの指揮で「大地の歌」を聴きたくなってくる。練習、リハーサルの段階から。声楽の2人を入れてのリハがボロボロだったにも関わらず、ひびきは動じず指揮を続ける。今度こそコンマスの秋央も、その指揮を信頼してオケをまとめようと音を出す。秋央も成長したなぁ!!そのリハの後、ぐったりと疲れている梶原と波多野さん。その2人に明るく、威勢よく声をかけるひびき。そのひびきがやって来た後の梶原の言葉が、ひびきの力を表している。
なんとなく判った様な気がする 曽成の力
あの真っ直ぐな目が問うてくるのだ
"あなたはどの位 本気?"
応えるしかないだろ?自尊心があるならば
(113ページより)

 演奏者の適性をつかみ、その気にさせる。声楽の2人も、完全にひびきが指揮しています。モチベーションを上げるのも、指揮者の役目。

 マーラーの交響曲はまだ全曲聴けていませんが、「大地の歌」は好きな曲のひとつです。梶原が「暗い」と言っていた歌詞も好きです(波多野さんと同じくw)

 そんなひびきのオーケストラを、外から冷静に見つめるのは美月。秋央から全てを聞いて、ひびきにとって秋央の存在とは何なのか、ストレートに聞きます。ついにこの時が!秋央について語るひびきは、いつもの明るく楽天家なひびきとは随分違います。4巻で、高校生の頃、有志のブラスバンドを指揮していたひびきについてひびきの父から語られますが、その時も、その前も、ひびきはずっと"ひとり"だったのかもしれない。ひびきは表向きは明るく楽天家で、サッパリとした性格で、誰とでもすぐ仲良くなり、場に馴染み、皆を盛り上げたり励ましたり…常に人の中にいるような子に見える。でも、"ひとりでいること"抱えていたんじゃないか。小学生のひびきが、美月の父がコンマスを務めるオーケストラの練習で代理と勝手に指揮しはじめ、見事な演奏になった。それを目撃、聴いた秋央。音大に入り、ひびきと再会。仲良くなって、ひびきは自分の部屋の風呂は静かじゃないので音楽について考えるのに集中できないからと、秋央の部屋の風呂を借りるようになる。そのぶっ飛んだ要求も渋々受け入れ、それがひびきの深い音楽の世界に秋央が触れる機会にもなる。これは秋央からの視点。ひびきが美月に語った、秋央の存在。ひびきの音楽に、そしてひびきに追いつこうと、触れようとしてきた…。

 そんなひびきの内面を知ってからの、演奏会本番。梶原と波多野さんの歌う歌詞も記されています。暗いけれども、やはり惹かれます。ひびきが、「大地の歌」を選び、込めた意味。1巻冒頭の吉松隆先生の交響曲第2番の一節を思い出さずにはいられませんでした。

 この漫画を読んで、「音楽はその時その場限りのもの」とより強く思うようになりました。どんなにいい機材で録音しても、最高画質で録画しても再現できないものがある。生の演奏の微細な部分、空気を伝わってくる迫力、会場の雰囲気や熱気、演奏後の拍手…。音楽はライヴ、生き物なのだということ。同じ曲を何百回演奏しても、全く同じ演奏は存在しない。再現できない。音楽は空気を伝わって、耳に、五感に届くけれども、音楽そのものが空気のようなものなんだ…。この10巻を読み終わって、あらためて感じます。

 でも、「その時その場限りのもの」だけれども、心には残る。いい演奏を聴いた演奏会の帰り道の高揚感。その時の演奏が消えてしまうのが嫌で、CDなどで他の演奏を聴きたく無くなる。逆に、もっと聴いてみたいとCDで聴いて、新たな聴きどころを発見する。もしくは、自分もあの曲を演奏してみたい!と楽譜を探し始める。その演奏会の演奏家に憧れることもある(これは生に限らずCDやテレビ放送などでも)。あんな演奏をしてみたい。あんな音を出したい。自分ももっとこの曲を深いところから演奏したい、と。

 秋央も、ずっとひびきの音楽に惹き付けられ、憧れ、ひびきの指揮でヴァイオリンを演奏したい、コンマスを務めたいと思うようになる。コンマスは指揮者の音楽をオーケストラ全体に伝える。それは指揮者のコピーのようで、そうじゃない。翻訳、が近いだろうか。翻訳も、ひとつとは限らない、その訳者の個性が出るから。そのことに10巻でようやく辿り着けた秋央。後日譚の秋央と梶原の会話が、実に爽やかです。
 その後日譚で、梶原が聞きつけた秋央の噂が気になります…!一体誰!?ラストのラストは、また1巻に戻ったような。音楽は、永遠に続いてゆく。音楽に終わりはない。

 吉松隆先生のクラシック音楽コラムも最後。「音楽って何?」前にも書きましたが、クラシック音楽と特別扱いしないで、どんなジャンルだろうと音楽は音楽。楽しめばいいじゃないか。吉松先生のメッセージも心強いです。私も音楽を趣味でやってる端くれとして、色々楽しもうと思います。毎回面白く、興味深いコラムをありがとうございました!

 そして、音楽の楽しさも難しさも、若い演奏家たちの奮闘も表現してくれたやまむら先生、お疲れ様でした。素敵な作品をありがとうございます!

 ただ、最後に秋央、梶原、友田さん以外のキャラクタたちがどうなったのか、ひとコマだけでも観たかったなぁ…。

天にひびき 9
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by halca-kaukana057 | 2015-01-08 23:10 | 本・読書


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