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[コミック版]天地明察 7

 もう12月。今年読んでまだ感想を書いていない本の感想がたまっているので、今年中に書きたい。まずは漫画から。いつも感想が遅れる…。小説「天地明察」のコミカライズ、7巻です。

天地明察 7
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2014

 改暦に向けて日々邁進する渋川春海(安井算哲)たち。その春海を支え、応援してきた妻・こと。元から身体が弱かったことが、病に倒れ、亡き人に。愛する妻を失い、お城での碁にも集中できない。さらに、北極出地で天測の旅を共にした伊藤重孝が危篤と知らされる。伊藤も帰らぬ人に。ことを救えず、伊藤との約束も間に合わず…無力に涙する春海。それから、春海は打ちひしがれたまま、暦の計算を黙々と続ける。そんな中、お城で道策との勝負碁が。勝負の前も暦のことで頭がいっぱいの春海に、道策は…

 原作ではあまり妻・こととのシーンが少なく、漫画では春海の天文の話をわからないけれども、春海が楽しそうに話しているのを優しい笑顔で一生懸命聞き、春海の改暦が成就するよう願っていた。春海も、身体の弱いことのことを心配し、家のある京都よりも江戸にいることの方が多いことを気にしていた。いい夫婦だったのに…。夫婦の仲むつまじいシーンが多かったからこそ、余計ことの死がショックです。原作を読んでわかってはいたけれども、それまでの描き方でも変わるのだな、と。
 更に、伊藤さんも…。春海にとって、学び続けること、精進し続けることを教えてくれた人のひとり。本当に残念です。

 一気に2人も大切な人を亡くしてしまい、打ちひしがれる春海。これまでは活き活きと、楽しそうに天測も暦の計算もしていたのに、31話では暦の計算をしていても、ただ機械的に計算しているだけ。目が死んだようです…。時間が無い、と。周囲の人々も心配するが、春海が感じているのはただ「後悔」。「間に合わなかった」…無念。

 改暦という世の中をひっくり返す大事業。春海がその主要人物に選ばれた理由のひとつが、若いから。何年、何十年かかるかわからない。長い事業では建部さんや伊藤さんのように途中で亡き人になってしまうことも少なくない。ましてや、現代よりも平均寿命の短い江戸時代。先日BSプレミアムで放送されていた映画「はやぶさ/HAYABUSA」でも、「はやぶさ」の飛行途中で亡くなってしまうプロジェクトのメンバーが(実話です)。その葬儀の席で、長いプロジェクトでは、メンバーが途中で亡くなってしまうことがある、とも語られました。現代も、江戸時代も変わりません。春海は専門家・プロではないが、天文学にも暦にも算術にも詳しく、お城で碁打ち衆として働き、帯刀はしているけれども武士ではない。暦に関係のある幅広い知識や、置かれている立場・そこから生まれる縁も、春海が改暦の中心人物として任命された理由ですが、もうひとつ、若さもある。でも、それは、春海よりも年上の改暦に関わっている人たちが、死ぬのを一番多く見る可能性もあるということ。春海、つらい立場です。

 そんな春海の目を覚ましたのは、やはり道策。道策が打った「天元」…北極星を意味し、不動の星、と以前春海は道策に教えた。春海も、道策も何も変わっていない。道策はいつでも真剣勝負。春海も同じ。碁でも、天測や算術、暦でも。真剣勝負だからこそ、面白い。道策らしいなぁ、と感じました。道策と春海のこの切磋琢磨する関係、いつまでも続いてほしい。

 もうひとつ、かなしい報せがあったものの、悲しみから立ち直った春海たちは、いよいよ宣明暦から授時暦への改暦へ動き出す。宣明暦に"挑戦状"をつきつける。日食と月食の予報が、どちらが当たるか勝負しようというもの。悲しみをバネに、更に大きな一歩を踏み出す春海。春海は先述したとおり、言ってしまえば”中途半端”な社会的立場にいる。だからこそ、社会的立場無しに、渋川春海として、改暦に取り組みたい。6巻で、改暦によって幕府と朝廷が対立するということが無いように。そう決心する32話のシーンが印象的です。

 久々に村瀬の塾を訪ねる春海。そこで再会したえんさん。色っぽくなりました…!嫁いだけれども、夫は死去。同じ悲しみを味わっている。そして、かつてのお互いのことを思い出し、語り合う。ことさんもいい奥さんだったけれども、えんさんも春海のことを理解してくれる存在。えんさんとの約束も増え、宣明暦への"勝負"が進む。授時暦の勝利が続く、が…。

 さて、また春海に試練が訪れる。どうなるのだろう。8巻も楽しみにしています!

・6巻:[コミック版]天地明察 6
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by halca-kaukana057 | 2014-12-06 23:10 | 本・読書

宇宙兄弟 24

 いつも感想が読んでからしばらく経ってからになってしまいます…。今頃になってしまいました、「宇宙兄弟」24巻です。


宇宙兄弟 24
小山宙哉/講談社、モーニングKC/2014

 六太たち「ジョーカーズ」CES-66の打ち上げが近づいてきた。しかし、カルロがいない。カルロがいなくなる前、カルロとエディが話しているのを偶然聞いてしまった六太。そして、カルロがいない間に、バックアップクルーのモッシュと一緒に訓練する「ジョーカーズ」。モッシュとカルロの交代が正式に決まろうとしていた…。
 一方、カルロは生まれ育ったイタリアにいた。父親であるリベリオの死期が迫っていた。リベリオは、マフィアの幹部で、刑務所に収監されている。カルロは16歳で家を出て、それ以来リベリオとも会っていなかった。カルロが宇宙飛行士になったことを知り、喜ぶリベリオ。そして、リベリオはいつもしていた指輪をカルロに手渡す。金庫の鍵にもなっている、というその指輪。金庫の中にあったものを観たカルロは、幼い頃のことを思い出した。

 23巻のラストで、いなくなってしまったカルロ。カルロに何があったのか。24巻で明かされます。そして、カルロの過去も。イケメンで軽い雰囲気だったカルロに、こんな過去があったとは。しかも、その過去も、あくまでカルロの主観によるもの。過去と父を否定し、名前も変えてアメリカに渡り、宇宙飛行士になったけれども…そこにはいくつもの、否定してきたものから繋がってきたルーツがあった。カルロの父の真実。否定してきたものが、本当は今のカルロに繋がるものだった。
「俺はもう何の心配もなく晴々と月へ行けるようになる」(#225)
「それで俺は―晴々と月へ行けるようになる」(#228)

 どちらもカルロの台詞です。真実を知る前と知った後、同じような台詞ですが、込められている意味が全然違う。

 後半はムッタが日本に一時帰国し、シャロンに会う話。シャロンは日本ALS協会のサポートを受け、同じ病気の人たちと仲良くなっていた。ALS協会の人たちに会うムッタ。同じALSでも、その患者によって症状は異なる。普通に話せないけれど、特殊な技術や専用の装置を使えば話せる。呼吸が出来なくなったら、人工呼吸器を使う。宇宙飛行士の交信や船外活動と似ている、というところになるほどと感じました。
 でも…やはり誰でも不安はある。あのシャロンでも。どんどん動けなくなっても、生きている意味はあるのか…。「尊厳死」にも関係する内容ですし、誰でも様々なことで「こんな状況に陥ってしまっても、自分は生きている意味はあるのか…?」と思ってしまうことは少なくないはず。私もあります。そんなシャロンに希望を見せてくれたのは、ALS協会の患者さんの仲間たち。何かの補助やサポートを受ければいいのなら、それを受け入れる。生きてさえいれば、それでいい。ALS協会の患者さんたちの姿勢に、私も励まされます。ここで、かつて子どもだったムッタがシャロンから受け取った言葉…
誰かに― "生きる勇気"を与えるために生きてるのよ
誰かに― 勇気をもらいながら
(#232)

 ネタバレになるかも知れませんが、この言葉を引用せずに話すことはできないと思い、引用しました。これまで、ムッタは様々な人たちから勇気をもらってきた。会社をクビになったが、子どもの頃に夢を見た、そして弟・日々人一緒にと叶えると誓った宇宙へ行くために、宇宙飛行士を再び目指した。宇宙飛行士になってからも、様々な挫折や困難があり、その度に乗り越えてきた。誰かに勇気をもらい、それが知らないうちに誰かに勇気を与えることにもなっていた。
 24巻前半のカルロの話も、そうだと思った。クールに振る舞っているカルロも、父の真実を知ることで、父から勇気をもらった。NASAに戻ってきたカルロの"変化"は、その父に勇気を与えるため、とも言える。
 本当に、この言葉、232話そのものがグッと来ます。私は、どうだろうか…。

 月へ行き、シャロン月面天文台を建設する。ムッタの想いも、もうすぐ叶う…が、カルロはどうなってしまうんだ…?このまま、カルロは「ジョーカーズ」に戻れないままなのか?帯にも書いてあるエディの言葉を信じています。カルロのいない「ジョーカーズ」なんてないよ…!

・23巻:宇宙兄弟 23
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by halca-kaukana057 | 2014-11-03 22:37 | 本・読書

星の案内人 2

 また発売から間が開いてから書く漫画感想…。新たなる天文宇宙系・プラネタリウムが舞台の漫画「星の案内人」2巻が出ました。
・1巻感想:星の案内人1

星の案内人 2
上村五十鈴/芳文社・芳文社コミックス/2014

 ”おじいさん”の手作り私設プラネタリウム「小宇宙」には、今日も様々な人が訪れる。雨宿りにやってきた中学生男子2人。友達同士でキャンプに来ていたが、その2人はなにやら険悪な雰囲気。
 「小宇宙」の常連・トキオは屋外でヴァイオリンの練習中、偶然一人の同い年ぐらいの少年に出会う。人前でヴァイオリンが演奏できないトキオは逃げ帰ってきてしまうが、その少年はトキオのクラスに転入してきた楢島洸太という親分肌の少年だった。人見知りで物静かなトキオとは正反対の洸太。が、ある夜、2人は意外な場所で出会う。
 一方、トキオのおば・フミは、トキオの育て方で悩んでいた。フミはいつしか、「小宇宙」へやってきていた…。


 トキオと転入生の洸太、トキオとおばのフミさんを軸に、物語が進んでいきます。1巻ではまだ謎だったトキオを取り巻く環境、フミさんと暮らしている理由も明かされます。トキオが人見知りで内気な性格の背景、フミさんとの関係…「親子」の関係について考え込みました。11話、88ページで、常連となっているやさぐれ小説家志村さんが「実際世の中には感謝しづらい親もいるしね」と言う通り、難しい親子関係もあります。トキオとトキオの母もそんな関係かもしれない。そんな環境から抜け出したくて、自分を変えたくてフミさんのもとにやってきたトキオ。フミさんは、そんなトキオと、トキオの両親との間で悩む。自分はどう接すべきなのか。どうトキオを育てていったらいいのか。

 そんなフミさんにおじいさんが語ったのが、オリオン大星雲・M42と、おおぐま座・こぐま座の話。オリオン大星雲は星が生まれているところ。その星雲と、生まれた星をこんな形の話にするのはとても斬新でした。そういえば、星雲には様々な力が働いている。その辺の天文物理学についてはあまり詳しくないので書けないのが残念ですが(だったら少しだけでもかじりたい、わかるようになりたい)、見た目はきれいでも、星雲の中ではものすごい力があちらこちらから作用している。生まれたばかりの星はその力の中で更に育ってゆく。それに加えての、おおぐま座・こぐま座の話。この星座物語はプラネで聞いたり天文書で読んだりするたびに、切なくかなしくなります。そこでおじいさんが90~91ページで語った言葉が印象的です。

 NHKラジオ第1で夏休みに放送されていた「夏休み子ども科学電話相談」で、天文・宇宙の質問の回答を担当していた、コスモプラネタリウム渋谷の解説員・永田美絵さんが、「生命は星のかけら」とよく仰っていました。星は核融合反応を起こして様々な元素を生み出し、超新星爆発によってそれらが宇宙に散らばる。そしてそれらを含んだ星間ガスが引力で集まり、星雲となり、新たな星が生まれ、惑星系が出来る。地球には生命が誕生し、今、こうして多種多様な生物や人類が生きている。
 母親から生まれる子ども、その大元は宇宙でもある(オカルトやスピリチュアルなど、決してそっち系の話ではありません、念のため)。おじいさんの言葉を読みながら、永田さんのお話を思い出していました。

 トキオのクラスに転入してきた洸太も、なかなか面白いキャラクタです。トキオと正反対なようで、トキオと同じように外には出せない感情を抱いている。表向きは明るく強くたくましい子だけれども…。トキオにとっても、洸太にとっても、2人は出会ってよかった、いい友達になれそうです。

 13・14話ではこいぬ座の物語が。このアクタイオン(「アクタイオーン」とも表記される。このこいぬ座の星座物語となったギリシア神話は、バロック期のフランスの作曲家・マルカントワーヌ・シャルパンティエが「アクテオン」というタイトルでオペラ化しています)と猟犬メランポスの物語もまた切なくかなしい物語です。
 この13・14話を読んで、これは星座だな、と感じました。無関係だと思っていた人と人が、とある接点で繋がっている。繋がって、新たな関係が生まれる。ここで心をわしづかみにされました。実際、人間関係はどこでどう繋がっているかわからない。その新たな関係が、人に新たな成長への道を示してくれる。ヴァイオリンのことで悩んでいたトキオにとっても、明るい光になったはず。シリウスやプロキオンのような、冬の凍てつく空気の夜空を華やかに彩る、明るいシリウスやプロキオンのような。

 順序が逆になりますが、8・9話ははくちょう座とアルビレオ。はくちょう座の星座物語は、大神ゼウスが白鳥に化けた姿、というのが有名ですが(私もこちらばかり覚えていた)、これではなく、フェイトーン(エリダヌス座の星座物語での主人公)の親友キクヌスの方で用いたのは巧いなと感じました。
 星座物語は色々な説があるから面白い。しかも、ギリシャ神話だけでなく、世界各地独自の星・星座物語・伝承もある。星・星座にまつわる伝承や神話、物語は調べ始めたらキリがないぐらいたくさんあり、奥深い。それぞれの地域の特色も出ていて面白い。これからも、どんな星・星座にまつわる物語が登場するか楽しみです。
 そして、それらは人類の歴史、普遍的な人間の心を投影しているから、また面白いんだよなぁ。3巻も楽しみです。

 しかし、この「小宇宙」のあるところは、星空がきれいに見える。満天の星空の描写がたまりません。肉眼で天の川を堪能したい…。そんなところで8・9話のように天体望遠鏡を貸してもらったら、夜通し天体観測します。いや、自分のがありますが。望遠鏡無しでも、寝転がって満天の星空を眺めるだけでもたまらないなぁ…。


・参考過去記事:オリオン大星雲について詳しく知りたいなら:オリオン星雲 星が生まれるところ +「コズミックフロント」オリオン大星雲へ ハッブルが見た星のゆりかご
 最近天文書を読んでいないなぁ…。
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by halca-kaukana057 | 2014-09-27 22:38 | 本・読書

恋と病熱

 「海とドリトル」1巻と同時期に刊行された、磯谷友紀先生のもうひとつの作品。連載誌を読めなかったので、単行本化が待ち遠しかった。「本屋の森のあかり」「海とドリトル」とは世界観が全く違います。


恋と病熱
磯谷友紀/秋田書店・A.L.C.DXもっと!/2014

 兄弟姉妹が忌み嫌われるようになった世界。もし兄弟ができた場合は、内密のうちに子どもができない家庭に養子にだされることになっていた。学校入学を目前にして、クロエは、コランという兄がいることを母から告げられる。コランも学校に通っており、もしかすると会うかもしれない、でも近づかないように…と。クロエも兄がいることにショックを受ける。そして、入学…クロエは突然声をかけられる。眼鏡をかけた、足が悪い男…コランだった。会ってみたかったと言うコランを気味悪がるクロエ。一方、クロエの周囲では兄弟がいることが発覚した生徒のことが話題になっていた。兄弟という存在を気持ち悪がるクラスメイトたち。クロエも気持ち悪がっていたが、コランのことを思い出す。兄弟は「どうしようもなくお互い惹かれてしまうらしいよ」というクラスメイトの言葉が気になっていた…

 クロエとコランの兄妹の物語他、姉弟、三姉妹、兄弟の物語がおさめられています。兄弟姉妹が忌み嫌われる…兄弟がいるのは当たり前の時代を「前時代」と呼んでいるので、未来の世界の物語と思われます。

 私は一人っ子で、きょうだいはいない。子どもの頃から、きょうだいのいる友達から、「一人っ子はいいね」と言われてきた。部屋や両親、おもちゃやお菓子をひとりで独占できる。きょうだいで比べられることもない。「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」と言われ責任を問われることもない。きょうだいケンカをすることもない。
 確かにその通りだ。一人っ子は自由だ。ひとり部屋を独占できる。お菓子も取り合いなどすることもなく、ひとりでゆっくり食べられる。おかげでマイペースな性格に育ったようだ(自分自身では、結構人に影響されたり、人と比較して落ち込むことが大人になってから多くなってきたと感じている)。でも、反対にきょうだいがいるってどういうことなのか、と考えることはよくあった。ひとりで寂しい時もある。一人っ子だって、「わがままだ」とか、「協調性がない」とか「自分の世界にばかり閉じこもっている」「人付き合いが下手」などと言われ続ける。きょうだいケンカって、どういうものだろうか。他のケンカと違うのだろうか。きょうだいで出かけたり、遊んだり、相談したり…そういうのは楽しそう、羨ましいなと思っている。でも、どうしようも出来ない。私にはきょうだいはいないのだから。

 なので、きょうだいとは何かがわかっていないので、この作品を読むのは少し難しかった。でも、きょうだいを「忌み嫌う」のはまた違う。一人っ子がいい、のではなく、一人っ子で無ければならない。この物語の世界で何故兄弟姉妹が忌み嫌われるようになったのか、説明されている部分もあります。何人も子どもを産むこと、兄弟姉妹がいることは「気味が悪い」。同じ母親のお腹から産まれ、似た遺伝子を持つことが「気持ち悪い」。子孫を残す…ただ残すのではなくより多く残す、という生物の生殖の目的から外れてしまっている。私のように、ひとりしか産まれなかったのだから、ではなく、ひとりだけ産むことが望まれる。現代でも、両親の仕事上の理由や経済的理由などで、意図的にひとりしか産まない(つくらない)ということはある。だが、この物語の世界はそれともまた違う。そんな世界観にまず驚きました。私の想像の及ばない世界。想像力の世界って凄い。

 きょうだいがいることを知って、忌み嫌いつつも気になってしまう。きょうだいを忌み嫌う社会に反し、きょうだいを大切にしようと主張するコミューンも出てくる。きょうだいで、産みの親に会いに行く。死んだ友人の弟にその姿を重ねる。
 きょうだいは「どうしようもなくお互い惹かれてしまうらしいよ」という言葉の通り、意味嫌っていても、無意識のうちに惹かれてしまう。その感情は、恋愛なのか、兄弟愛なのか。きょうだいという関係が成立しない社会、社会が成立させないこの世界では、恋愛にも似ているのかもしれない。…でも、私たちが通常イメージする「恋愛」とも違うような。

 「どうしようもなく惹かれてしまう」…言い換えると、「どうしようもなくお互いを想う」。この物語に出てくる登場人物たちは、それぞれのきょうだいのことを、忌み嫌っていても、どうしようもなく想ってしまう。気になってしまう。一緒にいたいと思う。それが徐々に「惹かれてしまう」のだろう。「どうしようもなく想う」気持ち…それは、恋愛だろうと兄弟愛だろうと同じことなのかなと思う。それが、忌み嫌われるものであっても、想いは止められない。病のように。

 止められない想いはどこへ向かうのか。どの物語も、はっきりとした結末は無く、余韻を持って終わります。想いにはっきりとした結末なんてない(失恋して、意図的に相手を忘れようとする場合や吹っ切れた場合とはまた違う)。誰かを想う気持ちは、空気のように漂いながら、見えなくてもそこにあり続けるのだろう。はっきりすることよりも、そんなはっきりしない、余韻が漂い続けることの方が多いような気がする。

 磯谷先生の作品に「屋根裏の魔女」という作品もあり、これも不思議な雰囲気の作品だったのですが、とても好きな作品です。この「恋と病熱」も。磯谷先生の不思議な世界、もっと読んで、味わってみたいです。
・その感想記事:屋根裏の魔女
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by halca-kaukana057 | 2014-09-03 22:55 | 本・読書

泣きたい日のぼのぼの

 先日、ニコニコ生放送でアニメ「ぼのぼの」全48話を2日に分けて放送していました。アニメ「ぼのぼの」を全話観たことが無かったので観てました。全話は観られませんでしたが、楽しかった。面白かった。とにかく笑ってました。「ぼのぼの」は原作漫画もアニメも面白い。ジャイアンみたいなアライグマくん。時に腹黒くなるシマリスくん。弟のシマリスくんをいじめるアライグマくんとケンカばかりだけど、実は気が合う(?)ショーねえちゃん。ぼのぼのものんびりしているけど、時に鋭い。37話「洞くつの恐怖」…あの”しまっちゃうおじさん”回は、ニコニコ動画のコメントを打ちながら、皆で観るのが楽しいんだなぁと思いながら満喫しました。他の回にもちょこちょことしまっちゃうおじさんは登場していました。

 驚いたのは、「ぼのぼの」の世界には天文学に基づいた暦があるということ!第32話「アライグマくんの誕生日」。何故アライグマくんが自分の誕生日をわかるのか。そう疑問に思っていたら、アライグマくんの説明が。目印の木と赤い星があって、一年に一度その木の上に赤い星が来ると誕生日…星の年周運動を理解していたアライグマくん…!!凄い。…ということは、「ぼのぼの」の世界はこの地球上のどこかにあるということか…?(待てw)
 34話「流れ星さんのお引っ越し」では、流星群は流れ星のお引越しなのだそう。こちらはファンタジー。しかし、満月の夜…満月だと流星群観測には条件悪くないですかとツッコんでたのは私ですw「ぼのぼの」の世界では光害なんてないから、満天の星空を堪能できるんだろうなぁ。いいなぁ、ぼのぼのたちと星見・天体観測したい…そっちじゃないw話が大幅にずれました。

 以前、「ぼのぼの」の名言集が出ていましたが、その続編が出てました。こういうタイトルのものはあまり好きではないのですが、本屋で目にした時、まさにそんな気持ちだったのと、「ぼのぼの」は別、と思って手にとってしまいました。
・以前の記事:ぼのぼの名言集(上・下)

泣きたい日のぼのぼの
いがらし みきお/竹書房・竹書房新書/2014

 「ぼのぼの」はいわゆる「泣ける」作品・漫画ではないと思う。ホロリとさせられる部分はある。しかし、ぼのぼのたちの哲学的な思索(妄想)で、ふんわりと終わる。そして物語が「開かれている」状態で、読後の読者に繋げる、バトンを渡すような。「こう思うこと、あるなぁ」とか、「自分ならこう思うかなぁ」と、続きを読むのを一旦止めて、ふっと考えてみる。そんな速さ、ゆとりで楽しめるのが「ぼのぼの」の面白いところ。

 この本には、6つのお話がおさめられています。上記「名言集」と被るところもあります。好きなのは「ボクの景色」「冬が来る」「ウマちゃん」。「ウマちゃん」はいつもは暴れん坊なアライグマくんが、”ウマちゃん”という虫をペットにする。最後のアライグマくんは、”いい奴”の一言では片付けられないような味わいを出している。「ボクの風景」はぼのぼのの哲学的思索全開。途中、シマリスくんとのギャグを効かせつつも、どこか遠く、一生かかっても手の届かないところを思う…それが生きるってこと、生きる面白さ、なのかなぁ、と。

 「シマリスくんのクノー」は、重い。ぼのぼのやシマリスくんたちは成長している。そして、シマリスくんの両親も齢を取り、シマリスくんが”介護”する。「治してあげたい」234・235ページでグッと来てしまった。
 こういう漫画では、物語の世界のキャラクターたちは齢をとらない、年月は進まないものもある。でも、「ぼのぼの」の世界では、進んでいる。見た目は変わらないように見えるけど、心は成長している。そんな「ぼのぼの」をちゃんと読みたいと思いました。単行本、20巻ぐらいまで読んで、そこで止まっているので…。

 泣きたい日に、泣かせてくれる…かどうかはわからない。が、ぼのぼのたちも私たちと同じように生きて、悩んで、笑って、怒って、遊んで、泣いて…そんな身近さがいいなと思うのです。「ぼのぼの」の森の仲間たちも、泣いて、思い悩んでる…一緒だよ、一緒に生きているんだよ。そんな風に感じます。
 泣きたい時、ギャグで大笑いして吹き飛ばす、という方法もありますね。それが出来るのも「ぼのぼの」です。

 巻末の書き下ろしの詩は、まさに泣きたい時向けだと思います。じんわり来ます。


癒されたい日のぼのぼの (竹書房新書)

いがらし みきお / 竹書房


 癒されたい時バージョンもあります。こっちは読んでない。こっちも読んでみようかな。それよりも本編全巻読んだほうがいいかな。
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by halca-kaukana057 | 2014-08-24 22:47 | 本・読書

スヌーピー切手・特印と「ピーナッツ」の思い出

 今日の切手と特印は、世界中のアイドル・スヌーピーです。
日本郵便:グリーティング切手「スヌーピーとピーナッツのなかまたち」の発行

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 とても愛らしいスヌーピーです。

 高校生の時、英語の授業でチャールズ・M・シュルツ「ピーナッツ」の漫画(谷川俊太郎:訳)が取り上げられたのが、私と「ピーナッツ」の出会いでした。それまでは、スヌーピーは可愛いキャラクターとしか認識していませんでした。「ピーナッツ」の漫画では、チャーリー・ブラウンと飼い犬のスヌーピー、その仲間たちの、日常・様々な出来事と喜怒哀楽や皮肉…生きるメッセージが描かれていました。毎日、ありとあらゆることに迷い悩んでいた高校生の頃の私にとって、「ピーナッツ」の中にあるメッセージは励ましでした。

 今日、久々に「ピーナッツ」について書かれた本を押入れから引っ張り出してきて読んでいます。大人になっても高校生の時から変わらず、迷い悩んでいる自分。数々の言葉に、ユーモラスな漫画にニヤリとしながらも、背中を押してもらえるように感じています。
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by halca-kaukana057 | 2014-08-19 21:59 | 興味を持ったものいろいろ

海とドリトル 1

 「本屋の森のあかり」の磯谷友紀先生の新連載です。思ったよりも早く単行本が出て嬉しい。

海とドリトル 1
磯谷友紀/講談社・KC KISS/2014

 大学2年の亀山七海は、彼氏に振られ、その彼と行くはずだった富士山にひとりで来ていた。寒さに震えながら、七海は好きな海を思っていた。その時、不思議なアンテナを持った2人の男に遭遇する。ひとりの男はクジラ、クジラと言いながら、倒れてしまった。クジラと言っていたことが気になった七海はその2人の男たちの機材を持って、一緒に下山する。倒れてしまったのは准教授の烏丸重行、もう一人は博士課程の佐藤陸男。2人は海洋生物を研究していて、クジラにつけたデータロガーという行動を観察する装置を探すために富士山に登り、アンテナで受信していた。海にやってきた3人は、データロガーを回収、その時、一頭のクジラがやって来る。そのクジラにロガーをつけようとした2人、だがうまくいかない。七海はとっさにロガーをつけた棒を持ち、クジラを狙い…。

 磯谷先生の新作、楽しみにしていました。今度は海洋生物学、海洋生物の行動を研究している研究室が舞台です。海洋生物…クジラだけでなく、アザラシやカメ、海鳥も出てきます。
 海は好きです。これまでの人生のほとんどは海のある町で暮らし、職場も海が近いところで働いたこともありました(仕事内容は海とは関係ない)。もやもやした気持ちになったり、落ち込んだりすると、よく海を見に行きます。青い海を眺め、海風と波の音を聴きながらぼんやりしていると、頭の中が整理されてきます。海洋生物も、あまり詳しくはありませんが好きです。クジラ、イルカ、カメ…水族館にはしばらく行っていませんが、海の生き物には興味があります。少し前に海を見に行った時には、イルカの群れが泳いでいました。遠くからだったので背びれしか見えませんでしたが、野生のイルカに遭遇できて感激していました。

 そんな海洋生物を研究する…どんなことをしているのだろう。烏丸と陸男、そしてクジラに出会った七海は烏丸の研究室に編入する。地道なフィールドワークもあれば、ゼミでの発表もあり、研究資金を出してくれそうな企業に向けてプレゼンもする。各々の研究対象も様々。第1話のクジラもハードですが、第3話の海鳥のフィールドワークもハード。完全にアウトドア。自然が相手の研究は大変だ…と思いながら読んでいたインドア派です。大学3年で編入した七海の視点がありがたい。海洋生物の研究の仕方もだが、大学院…修士→博士→ポスドクと歩む研究者と、研究者を取り巻く厳しい環境・受け入れ態勢が整っていないところにも、なるほどそうだったのかと思いながら読みました。これまで、宇宙天文分野でそんな話を聞いてはきたものの、いまいちピンと来ていなかった。研究職は憧れの存在であるのですが、難しいのだな…。

 それでも、興味がある、興味が尽きない、好きだから…そして覚悟もあるから、研究の道を歩んでいるのだろう。彼氏に振られ、鬱屈した日々を過ごしていた七海。
ここのところ ずっとにごった水たまりのようなところにいて 浮上できない
キラキラした 水面に出たい
(8ページ)

 富士山で七海が思っていたことなのですが、これがまさに今の自分そのもので、ああ、私も浮上したい、水面に出たいと思っている。そしてクジラに出会い、魅せられ、猛勉強の末烏丸研に編入する。編入した時はすぐに辞めるだろうと見ていた烏丸。でも、七海は本気。烏丸研で海鳥を研究しているポスドク・戌飼に出会い、心が揺れる。そんな揺れる想いでモヤモヤしていても、海でクジラに会うと吹っ切れる。「やばい、超たのしい」と(5話より)。落ち込んで、モヤモヤしていても、本気で惹かれているものの前では、そんな迷いも落ち込みも忘れてしまう。それが、浮上した瞬間、水面に出た瞬間なんだろうな。その瞬間に、心の動きに気付いて、バシッと捉えたい。

 タイトルの「ドリトル」…ヒュー・ロフティングの「ドリトル先生」シリーズが元ネタですね。「本屋の森のあかり」でも登場、それをきっかけに私も読み、大好きな作品になりました。その「ドリトル先生」シリーズや、「ニルスのふしぎな旅」が鍵となる第4話。七海と戌飼が話していた内容がとても気に入りました。鳥やクジラの目線でこの世界を見られたら、とても面白いのだろうな。このあたりは、さすが磯谷先生です。

 この烏丸研にはモデルがあり、その先生の本も出ています。読んでみようかな。

サボり上手な動物たち――海の中から新発見! (岩波科学ライブラリー)

佐藤 克文 / 岩波書店


 あとがきで紹介されていたのがこの本です。ほかにも色々出ています。夏の読書にピッタリだ。
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by halca-kaukana057 | 2014-08-11 22:19 | 本・読書

[外伝コミック]宇宙戦艦ヤマト2199 緋眼のエース

 昨年放送されたTVアニメは、現在BS11他で再放送中(でも、途中で変わったオープニング・主題歌は「宇宙戦艦ヤマト」のまま!エンディングも劇場上映版!)、10月には総集編、12月には完全新作映画「星巡る方舟」も公開される「宇宙戦艦ヤマト2199」。そのコミック版もあります。むらかわみちおさんによる「2199」そのもののコミカライズも気になるのですが、こちらを読みました。


宇宙戦艦ヤマト2199 緋眼のエース
東まゆみ:漫画/西崎義展:原作/結城信輝:キャラクターデザイン/マックガーデン・BLADE COMICS/2014

 「ヤマト2199」の航空隊紅一点パイロット・山本玲(あきら)を主人公としたコミカライズです。2199で好きなキャラクタは?と聞かれたら、即「玲ちゃん!」と答えますw雪や新見さん、百合亜ちゃんに真琴ちゃん、ガミラス側ではメルダ他、2199では魅力的な女性キャラクタが活躍していますが、その中でも玲に特に惹かれます。戦闘機乗りとしてクールに活躍するカッコイイ一面。戦闘機乗りを目指すきっかけとなった亡き兄への想い、かなしみを心に押し込んでいる一面。古代に密かな憧れを抱いている一面。メルダと出会った時、感情を爆発させる一面。アニメでは終盤、メルダたちと仲良くパフェを食べ、加藤隊長たちをからかうお茶目で可愛らしい一面も。そんな玲が主人公…嬉しい漫画化です。

 物語は基本的にアニメ「2199」と同じですが、アニメでは描かれなかったシーン、アニメとは違う解釈をしているシーンも多いです。アニメを観ていて、玲が始めに配属された主計科や、雪や百合亜が所属する船務科が具体的に何をしているのかがよくわからなかったのですが、この漫画を読んでようやくわかりました。アニメとキャラデザは同じですが、描き方はやはり漫画家さんの個性が出ます。東さんの描くヤマト2199のキャラクタ、絵がすごく好きです。好みです。玲のクールで、時に可愛いところがよく出てる。他のキャラクタでも、古代や平田さん、真田さんや沖田艦長もアニメの雰囲気そのままに。島は少し若いかな?(あまり登場しませんが…古代もアニメよりちょっと若いかも)

 物語も、玲を中心に、玲の視点で進みます。主計科長の平田さんはアニメでもいい味出していましたが、この「緋眼のエース」でもいい味出してます。…玲にとってはおせっかいのようですが…平田さんを睨む玲が可愛いw航空隊に配属されてからは、加藤隊長と篠原さんが玲の成長を見つめ、見守る。特に篠原さんがいい立ち位置にいて、玲を見守り、理解する。アニメでもこの漫画でも、見た目はチャラいけれどもしっかりと考えて行動している。ヤマトの戦闘機乗り、航空隊副隊長としてちゃんとしている。4話で加藤隊長とともに機体のメンテナンスにトレーニングに熱心な玲を見守りながら、加藤隊長と玲のことを考えている篠原さんがとてもカッコイイです。
 第3話、太陽系赤道祭のシーンではアニメにはない漫画オリジナルのシーンが出てきます。このシーンで玲が語ることからも、玲は飛行機乗りとしても、ヤマトのクルーとしても、とても真面目で、いつも真剣で、仲間を理解しよう、信頼したいと思っているんだなぁ…とじんわり来ます。

 メルダとの対決でも、アニメでの緊迫した雰囲気が伝わってきました。メルダと出会って、玲はまた成長した。それをもう少し描いて欲しかった。
 そう、この「緋眼のエース」は、残念な終わり方をしているのです…。色々事情はあったらしいですが、とてもよい漫画化なので、せめて上下巻で描いてくれたらよかったなぁ。メルダとのシーンももっと見たかったなぁ。
 本当にいい漫画化なのに…!!もっと読みたかった!

 さて、むらかわ版「2199」コミカライズも読みたいな…。最初、漫画化されると聞いた時は、「漫画じゃヤマトの大きな魅力のひとつである音楽が聴けないじゃないか!!」と読まずにいたのです…。サントラ聴きながら読めばいいですね。いや、もうどのシーンでどの音楽が流れるか、脳内再生出来るからいいかw

宇宙戦艦ヤマト2199(1) (角川コミックス・エース)

むらかわ みちお / KADOKAWA / 角川書店


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by halca-kaukana057 | 2014-08-08 22:08 | 本・読書

天にひびき 9

 相変わらず漫画を買って読んでから、感想を書くまでの間が長い…遅いです。「天にひびき」9巻、ようやく書きます。


天にひびき 9
やまむら はじめ/少年画報社・ヤングキングコミックス/2014

 文化祭で演奏するひびき指揮秋央コンマスのBオケの本番が近づいてきた。秋央から連絡を受け、美月と父・直昭も帰国、演奏を聴きに来る。直昭は、9年前、まだ小学生だったひびきが突然指揮をし、演奏をした時オケのコンマスを務めていた。それ以来のひびきの指揮。美月もひびきと秋央のリハを聴きに来る。そのリハの後、ひびきは美月に初めて演奏を聴いた感想を求める。そこで、ひびきは…。その言葉に美月も…。
 そんな中、ドイツからやってきているアウエルバッハがひびきを呼び出す。アウエルバッハがマネージャーを務めるバイエルン・フィルの指揮者・ローレンツが急病で来日できなくなった、ローレンツはその代役にひびきを指名している、と。バイエルン・フィルの練習場にひびきを連れてきたアウエルバッハ。そこでひびきは…


 物語がまた大きく動き出しました。秋央をめぐる人間関係も。秋央君、どこでそんなにもてるかねぇ…w波多野さんの反応も可愛いのですが、美月のいわゆる”ツンデレ”(でもまだデレてないか)な反応も可愛いのですw

 Bオケで、ひびきの指揮のもと、コンマスとして一生懸命やってきた秋央。ひびきの音楽を理解したい、ひびきの音楽を形にしたい、伝えたい!と頑張ってきました。しかし、ひびきには何かが「足りない」模様。
 コンサートマスターは、指揮者の意図をオーケストラのメンバー全員に伝え、音楽を形にするまとめ役。指揮者とオケの橋渡し役…と今まで考えてきたけれども、そうでもない?ひびきが感じている物足りなさ…ひびきの音楽、ひびきの意図をしっかりわかって伝えてくれているのに、何かが足りない。この9巻の山場で出てくるのですが、コンマスは指揮者の手兵じゃない、指揮者に従っていればいいってものでもない…?このあたり、オーケストラにとって、また指揮者にとってコンサートマスターという存在がどういう存在であるかがよくわからないので、わからない…。コンサートマスターも、ひとりの音楽家。個性を持った音楽家。オーケストラも、一人ひとり個性を持った音楽家の集団。2、3人だけの管楽器ならまだしも、10人はいる弦楽器では、個は個でも同じメロディーを揃えて演奏しなければならない。個と集団。その先頭にいるコンマス。コンマスの存在って何なのだろう…。

 8巻の如月先生と、かつてカルテットを組んでいた桂木さんの話。格段に巧い桂木さんに当たっているスポットライトを、如月先生はカルテットのメンバーとして一緒に浴びていただけと気がついた。一方でひびきと秋央も、ひびきに当たっているスポットライトを秋央も一緒に浴びたかったのではなく、秋央はひびきとオケ全体にスポットライトが当たるように、と感想で書いた。ひびきの音楽をオケが形にしていることをアピールするコンマスを目指してきた。須賀川先生とひびきが最初のコンマスについて話している場面からも、指揮者の意図を形にする、それだけでは足りない、のか…?足りない、のかもなぁ。

 そしてひびきに大きな転機が。バイエルン・フィルを1公演だけだが振るチャンスが。8巻冒頭で来日したドイツ人・アウエルバッハさんの来日の意図がわかりました。とは言え、代振りは想定外ですが(多分…まさかローレンツさん、最初からそのつもり…なわけないよねぇ…)。その公演と、Bオケの公演の日が被ってしまった…勿論、バイエルン・フィルを選んだひびき。その後の秋央…目標を完全に見失ってしまいました。そこへ美月が…!!美月かっこいい。
 一方、波多野さんも波多野さんなりに、秋央を励まし、文化祭では演奏で想いを表現。オケだけではなく…”音羽良の黒姫”ソロリサイタル。演奏曲は、勿論大好きなショスタコーヴィチ。波多野さんが演奏するショスタコーヴィチ、どんな音なんだろう。鋭利だけど情熱的、キレがあるけどつやつやした感じなんだろうか。あるけど実際には演奏を聴いたことがない人や、架空のこの人が演奏したらどうなる?というのを想像しながら、CDで聴くのも面白いですね。

 ひびきの大抜擢のショックは、秋央だけじゃない。Aオケで初指揮の梶原も、また引き離された…と。でも、Aオケでがんばるしかない。落ち込む秋央が南条君と話している時の会話が凄くよかった。8巻、桂木さんの演奏を聴いて、一生かかっても追いつけない…追いつけなくても続ける意味って何だろう、と尋ねる秋央にこの答え。
一生追いつけないってことは 一生努力できるって事でどう?
一生追いつけない事くらいでやめちゃえる程 チャチな目標を選んだ訳じゃないだろって事
 (秋央)それが自分の器じゃないとしても?
それは他人が決めればいい事だよ
(92~93ページ)

 さすがは南条君。南条君、本当にいい子だ。というわけで、秋央もめげてないでがんばれ!Aオケでは梶原、Bオケは須賀川先生の代振りで公演は盛況。秋央も、秋央なりの答えを見つけた模様。秋央が目指すものを見つけたか。ひびきとは異なるアプローチで。Bオケと同じ頃、ひびきも道を拓いた…本当にこの子はどこまで行ってしまうんだろう…梶原じゃないけど、そう思ってしまう。

 そしてそれぞれの道へ進み、秋央たちは4年に。それぞれ進路も決まり…秋央はまだ、という…。そこへ…。4年、もうすぐ卒業ということで、そろそろクライマックス?どうなるか、楽しみになってきました。

 恒例の吉松隆先生のクラシック音楽コラムは、クラシックがどう生き残るか。日本人が西洋音楽を演奏する・聴くことも含め、クラシック音楽と現代社会、人間の関わりについて。クラシック…古くて格式がある、敷居が高い…それがプラスになることもあるしマイナスに働くこともある。でも、CMや映画などで使われることもある。「クラシック」と特別扱いしてしまっているのかな、と思いました。分類すると便利、ですが…。

 そういえば、先日、こんな言葉を読んだので引用します。
調布音楽祭監修の鈴木雅明さんの言葉。「私も、クラシックは大の苦手です。なにしろ、『クラシック』という言葉は『もう聞き飽きて聞きたくもない話』のことだからです…バッハはもちろん、シューマンやドヴォルザークの名曲を、決して『クラシック』にしないために、この音楽祭は存在しています」
Twitter:NUKATANI, Sorahiko (@umui):2014年7月7日

 鈴木雅明さん、バッハ・コレギウム・ジャパンでおなじみ、古楽のエキスパートですね。だからこそ、「クラシック」=昔の音楽、ではなく、今も演奏され”生き続けている”音楽にしたい…と思ってらっしゃるのかもしれません。

 最後は漫画本編から脱線しましたw

・8巻感想:天にひびき 8
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by halca-kaukana057 | 2014-07-14 23:02 | 本・読書

[コミック版]天地明察 6

 いつも楽しみに読んでいるのに、感想が遅くなる…。小説「天地明察」のコミック版。6巻です。


天地明察 6
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2014

 渋川春海(安井算哲)たちの会津での改暦事業が始まった。最初は慣れず忙しく指揮を執っていたが、安斎や安藤たちの支えで平常心を取り戻し、天測に打ち込む。ひと月ほど後、会津肥後守・保科正之から「改暦による世の影響を考察せよ」との指標が立てられた。良い影響、悪い影響を話し合う春海たち。改暦の影響がいかに大きいかを思い知る春海だが、ある考えを思いつく。
 一方、お城での安井家と本因坊家の争碁も始まっていた。江戸に戻った春海は、知哲と道策による争碁に同席する。その後、久々に再会した春海と道策。久しぶりに勝負をする2人。春海は無意識に、あの「初手天元」を打ってしまう。


 原作を読んだ時も、今使っている暦(カレンダー)が変わったらどんなことになるだろうと考えたのですが、漫画でも考えてしまいました。ましてや、この時代は月日と曜日を知るためだけのものではない。しかもこの改暦は幕命によるもの。帝が執り行う儀礼を、幕府のものにしてしまうことになる。暦には縁起のいい方角についても書いてあり、人々の生活への影響も大きい。さらに幕府が定めた暦に従うことになるという、政治統制。幕府への反発、それによって起こりうる戦…。32ページからの、春海がひとり月を見上げて考え込むシーンに、グッと引き込まれました。天文が好きで、天文への憧れ、天文の理だけを純粋に追い求めてきた春海。それなのに、その天文・暦が、人の命や国の行く末をも巻き込むことになるかもしれない…。そんなことは望んでいないのに…思い悩む春海の強い願いをかみ締めつつ読みました。そんな中で、考えぬいたひとつの案。春海、本当に強くなった。それなのに、その結果が…。それでも、諦めない春海たち。いつかきっと改暦の日が来ると信じて。

 江戸に戻ってからの春海も、改暦に向けて一歩一歩歩んでいる。81ページ、膨大な資料を前に、妻・ことに「楽しいから!」と言い切る春海がとても好きです。改暦そのものも、改暦による影響も、とてつもなく大変なことは分かっている。でも、やっぱり天文は楽しい。天文が好きで、天の理を知りたくて、まだまだ進む道がある。そして、改暦も天文も、春海ひとりだけのものではない。北極出地の旅をともにした亡き建部様、伊藤様に「頼まれた」こと。ひとつ、実現しました。建部様のことを思うと…胸が熱くなります。

 天文の一方で、碁打ちでも大きな動きが。安井家と本因坊家の争碁が始まった。相変わらず天文・暦ばかりの春海に怒る道策。春海にとって天文・暦は春海ひとりだけのものではなく、様々な人の想いも託されている。その人々の想いを叶えたい。だからここまで来れた。…ならば、碁では、道策の想いも。道策は身なりも、碁も、立派に強くなりました。これまで私は春海の視点からこの漫画を読んでいたので、碁だけをやらない、天文・算術・暦なんて!と憤る道策の気持ちが、一途で一生懸命だがどこか滑稽なものに見えていました。しかし、今回の春海と道策の勝負を見て、道策の強さに魅了されました。碁のことはよくわかりません。ルールも何もわかりません。でも、2人の真剣勝負、道策の予想外の手にドキドキしました。

 春海の改暦・天文への真剣勝負も、これからが山場です。第28幕で、陰陽師の土御門泰福(つちみかど・やすとみ)も登場しました。今後の登場が楽しみです。

 原作にはないシーンがたくさん。物語がもっと深く、面白くなっている。えびし先生の絵も好きだ。いい漫画化だなぁ。物語はまだまだこれから。ずっと読みますよ。

・前巻:[コミック版]天地明察 5
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by halca-kaukana057 | 2014-06-01 22:07 | 本・読書


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