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海とドリトル 2

 漫画の感想を数ヵ月後に書くのはもう定例になってしまったのか…?磯谷友紀先生の新連載「海とドリトル」2巻です。
・1巻:海とドリトル 1


海とドリトル 2
磯谷友紀/講談社・KC KISS/2015

 小笠原での烏丸研の合宿中、クジラにロガーをつけようとした七海は、ロガーはつけられたものの船から海に転落してしまう。海の中で観た大きなクジラの姿、瞳。無事助けられた七海だが、翌日、海に向かうも足が震えて船に乗れない。海に落ちた恐怖で、海に出られなくなってしまった。烏丸や陸男、戌飼は、船に乗らずにもできる研究や作業を七海にさせ、七海も気遣ってくれていると感謝する。数日後、七海が海に落ちた時につけたロガーが回収され、初めてとった自分のデータに感激する。その映像を観た七海は…。


 あわや、海に落ちてしまった七海。その海の中で七海が観たクジラがとても大きく、印象的に描かれていて、私も海はきれいだけど怖い、そう思ってしまった。じっと見つめ返すクジラの大きな瞳。その瞳で観たであろう海の映像を、後に観る七海。怖い。でもきれいで、惹かれる。思えば、七海がこの烏丸研に入ったのも、失恋し鬱屈した日々を送っていたところで、烏丸先生たちと出会い、クジラに魅せられ、烏丸研に編入した。1巻で「ここのところ ずっとにごった水たまりのようなところにいて 浮上できない。キラキラした 水面に出たい」(1巻8ページ)と思い悩んでいた七海。クジラと出会って、「水面に出られた」。七海を変えたきっかけになったクジラと、そう簡単に離れられない、離れたくない、やっぱり惹かれる。

 そこに辿り着くまでの、海に出られなくなってしまった七海がまた辛い。でも、烏丸研の人々は気遣って、海洋生物の研究はクジラだけじゃない、海に出るだけじゃない、と教えてくれる。ウミガメのところは、私も興味深く読みました。七海の烏丸研での、海洋生物の研究は始まったばかり。そんな七海に、ウミガメの調査を一通りやらせた後、海洋生物研究の奥深さとこれからの研究生活の長さを語る烏丸先生がいい。

 海に落ちた恐怖を何とかしようと、元心理学専攻の七海はトラウマを客観視する心理療法を試してみる。これには、その時その場にいなかった相手が必要。七海は、密かに想いを寄せている戌飼に頼む。七海が海に落ちたのはこれが初めてではなかった。1度目のこともあったから、尚更…。戌飼さん、優しい。

 そして、海に戻ることが出来た七海。よかった…。そんな七海を見て、複雑な思いの万里子。研究は一筋縄ではいかない。ポスドクの戌飼も、これからどうしようか悩んでいる。烏丸研にこのままいるか、それとも…。そんな悩む戌飼に、烏丸がこんな言葉を。
未来にとらわれて現実を失ったら
そこからつながる未来がなくなるぞ
(149ページ)

「研究者は研究が第一だが、100%それだけだと行き詰まる」とこの直後も戌飼の言葉も、その通りだな…と。研究者だけでなく、一般の人間でも、何かに100%だと行き詰まる。かつて、私もそんなことがあった。これをやらなきゃいけないから、他のことなんてやるのは(自分としては)許されない、と。最初は勢いもあるし、熱心に取り組んでどんどん成果を出せるが、のちに、悩みも出てきて苦しみ、自分ではどうしようも出来ないことも起こり、行き詰ってしまった。未来をみるのは大事だけど、そこには今ここにある現実が繋がっている。生物の進化や繁栄から考えると、環境の変化などに適応するために可能性をたくさんつくっている(結果として)。戌飼さんが出した答え…「今を動かす」。七海も思い切ったことをしたが、戌飼さんも粋なことを…。

 この2巻では、烏丸先生の過去もまた少し語られています。離婚したこと。その奥さんも研究者だったこと。普段は飄々としている烏丸先生ですが、何か変化がある、かな?

 3巻の展開が楽しみですが、新キャラが登場?この人、烏丸研にとってどんな人になるのか…。
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by halca-kaukana057 | 2015-05-12 22:22 | 本・読書

ReLIFE 1・2

 本屋さんで何気なく見つけて、1巻を読めるようになっていたので読んでみたら面白かったので、2巻まで読んだ。その1巻を開いて驚いた…全編オールカラー…!?無料漫画アプリ「comico」で連載中の漫画で、アプリでも毎回オールカラー。今の時代、そういうことも出来るのか…。漫画誌で好きな漫画がカラー表紙になると喜んでいたのはもう昔の話というのか…!?


ReLIFE 1

夜宵草(やよいそう)/泰文堂・アース・スター コミックス/2014





ReLIFE 2

夜宵草/泰文堂・アース・スター コミックス/2014





 海崎新太(かいざき・あらた)は27歳。2浪で大学に入り、就活から逃げるために大学院に進み、卒業後就職したがとある理由で3ヶ月で退職。その後、再就職を目指すも落ち続け、コンビニでバイトをしている。更に、田舎の実家から、田舎に帰ってこないなら仕送りを凍結するとの連絡が入る。キャリアを積んでゆく友人たちにはフリーターになってしまったことは言えず、会うといつも嘘をついている。そんな帰り道で、新太は夜明了(よあけ・りょう)という男から声をかけられる。初対面なのに何故か新太のことを全て知っている夜明。夜明は「リライフ研究所」の社員で、新太が「リライフ」被験者に選ばれた、と告げる。「リライフ」とはニートを社会復帰させるための実験で、新太にその実験に協力して欲しいという。1年間、高校生になって高校生活を送る、と。研究所が開発した薬を飲めば、見た目は高校生ぐらいまで若返られる…。怪しい話だと思いつつも、新太の心の中を全て見抜いている夜明の言葉に動揺し…。翌朝、起きて鏡を見た新太は、高校生ぐらいの年齢に若返ってしまった自分の顔に驚く。酔った勢いで薬を飲んでしまっていた。そして、再びやって来た夜明に、「リライフ」実験に協力することを決意する。4月、見た目17歳・3年生の新太は編入生として高校に入り、高校生活が始まった、が…。


 「もし、人生をやり直せたら」。たまに思うことがあります。でも、いつからやり直すか。中学や高校だと勉強も大変だし、思春期の友人関係も複雑でやり直したくないなぁと思ってしまいます。大学も結構ハードだった。でも、それは、自分の時間を遡るという意味での「やり直し」。この作品では、見た目は若返って、現在の高校でやり直す、というもの。今の高校では学ぶ内容も異なり、友人関係も携帯は必須でSNSも使いこなして…ついて行けるのか、と正直思ってしまう。学生時代いじめも経験しましたが、いじめも変化している。ネットで陰湿化していることも。やっぱりもう一度高校生になるなんて嫌だなぁ、と思ってしまった。

 でも、新太のように、実際に今の高校生と、自分も高校生の姿で接したらどうなるんだろう?読みながら思っていました。時代は変わっても、高校生の子たちが思っていること、悩むことはそんなに変わらないのかもしれない。

 見た目17歳(あくまで見た目だけ。中身は27歳のまま。体育は辛いし、怪我の治りも普通の17歳に比べると遅い!)の新太は、登校初日から様々なクラスメイトに出会う。成績優秀だが所謂「コミュ障」で人付き合いが苦手、友達をつくりたいと思っている日代千鶴(ひしろ・ちづる)。新太の隣の席で、バレー部員で勉強も部活も頑張る努力家だが、どちらも一番にはなれないことにコンプレックスを抱いている狩生玲奈(かりう・れな)。新太の前の席で、イケメンで見た目は軽いノリだが成績優秀、でも鈍感な大神和臣(おおが・かずおみ)。新太の斜め前の席で、同じく編入生の小野屋杏(おのや・あん)。そして、夜明も新太の担当として新太の行動を記録・報告と研修のために、同じく薬を飲んで高校生になっていた。

 登校初日から、何かと騒動を起こしてしまう新太。学業も散々で、追試続き。物語はシリアスな部分もありますが、大体はコメディタッチで描かれているので笑いながら読めます。そんなコメディの部分が続いているところへ、新太の過去や登場人物たちが抱えているものが出てくると、余計にシリアスに感じてしまう。仕事を3ヶ月で辞めてしまい、「大人」「社会人」になりきれない、前に進みたくても進めない辛さを抱えている新太。一方、新太が出会ったクラスメイトたちも様々なものを抱えている。友達をつくりたいのにできない千鶴。努力しているのに、勉強も運動・部活も叶わない相手がいて、近づきたい人にも想いが届かない…それを心の中に溜め込んでいる玲奈。1年の頃からこの高校に通っているはずなのに友達がおらず(仕事上他者と深く関わらないようにしている)、何かを隠しているような夜明。人それぞれ、様々な抱えているものがあって、毎日もがいているのだな、と…。それぞれのキャラクタの抱えているものが、自分も経験があるので共感し、過去の苦しかったことを思い出して読んでいました。

 本来は存在しない17歳の新太。「リライフ」実験後、新太に関わった人々からは新太の記憶が消されてしまう。もし新太が本当は17歳ではないことがバレてしまった場合は、「リライフ」実験もそこで中止。「リライフ」実験の間の新太の記憶も消されてしまう。どうせ記憶に残らないのだから、無難に、目立たなく…と思っていた新太だが、いつの間にかクラスメイトたちや夜明のことを気にかけるようになる。自身の心の変化に葛藤する新太。大人の視点でクラスメイトたちを見て、他人事と思えなくなっている。

 そして、彼らが「抱えているもの」を敏感に察し、配慮しようとする新太。本当は10歳もの年齢差があるのに、すぐに高校生たちに溶け込んだ。本当に羨ましいぐらいにコミュニケーション能力は高いのに、何故新太は社会からドロップアウトしてしまったのだろうかと思う。いや、コミュニケーション能力が高い、周りのことをよく見ていて、人の心の動きに敏感で、優しくて、困っていたら何とかしたいとすぐ行動するからこそ、「大人」社会に馴染めなかったのか…。配慮をして「何とかしよう」とする新太に対して、夜明がこう話すシーンが印象的です。
石をどけたキレイな道を歩かせてあげることが 果たして本当に本人のためになるのかどうか
転んでも許してもらえる若いうちに その痛みや起き上がり方を学んでおくのも大切かな…
って思いますがね(2巻、139ページより)

あがいて下さい 精一杯
小さな物事にも大きな反応をして
思春期の学生たちと一緒に 頭じゃなくて心をいっぱい動かして
(2巻、142ページより)


 それにしても、努力しても報われない玲奈の心の奥底が…。どんどんネガティヴなものを心の中に溜め込んでいる。自分もよくあるので、わかる…と思いながら読んでいました。そんな玲奈の溜め込んでいたものがついに…。3巻はこの3月末に発売。と言っても、アプリ「comico」で最新話まで読んでしまいましたがw

 無料の携帯アプリで連載中の漫画を実際の書籍に、単行本として発売する。携帯でも読めますが、じっくり読むならやはり本だなと思ってしまうアナログ人間です。オールカラーなのは嬉しいのですが、背景の色で台詞がつぶれたり、台詞が細々していて読みにくいところがあるのは残念なところ。台詞も元々多い。言葉での心理描写が多いのはいいのですが、「絵で語る」漫画のよさを活かしたらもっと面白くなると思います(もしかすると小説向きなのだろうか?)。元々アプリでは縦スクロールで読むようになっているので、本にするとコマ割の印象も変わります。いい方向に変わっているところもあり、コマ割りもやはり細々しているところもあり…。この漫画も"実験"しているようで、新太たちと共に"成長"してゆくのを見守りたいです。

 ちなみに、来年、アニメ化も決まっているそうです。凄い勢いです。元々オールカラーなのでアニメになっても違和感は少ないだろうなぁ。
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by halca-kaukana057 | 2015-03-09 23:05 | 本・読書

天にひびき 10[最終巻]

 昨年読んだ本は昨年のうちに…ができませんでした。年またぎましたが書きます。「天にひびき」いよいよクライマックス。完結です。



天にひびき 10
やまむらはじめ/少年画報社・ヤングキング・コミックス/2014

 大学4年、卒業も近づいた秋央。ヨーロッパで活躍しているひびきが帰って来た。秋央の部屋を懐かしそうに見るひびき。そんなひびきが、日本に「忘れ物」をしていることを思い出した、と。秋央に「コンサートやらない?」ともちかける。秋央も即答。いきなりアマオケを立ち上げてのコンサート。かつての21Cオケのコンマス・友田は呆れながらも、相談にのってくれることに。そして、音羽良の仲間たちとも再会。そこで、ひびきがやりたいと言ったのは、マーラーの「大地の歌」。声楽付きの交響曲。オケは何とか集められそうだが、テノールとアルトのソロはどうする?ひびきはその場にいた梶原をテノールに、波多野をアルトに指名。無理と言いつつも、2人はひびきからのオファーを受けてしまう。それを聞いた友田は、素人に声楽をやらせるなんて、とマネージャーだけ紹介して、話から降りてしまう。友田に対して、ひびきは本気だと強く断言するが…。

 最終巻です。9巻のラストでひびきが秋央の部屋の前に立っていたのを見て、続きが気になっていました。文化祭でのひびき指揮秋央コンマスの演奏会は、ひびきが来日中の名門オーケスストラ・バイエルン・フィルを代役として指揮し、ひびきは大成功。一方、秋央は念願だったひびきの指揮のコンマスの夢が破れてしまった。それから、ひびきはヨーロッパへ。秋央は進路も決まらず、結婚式場でのヴァイオリン演奏のバイトをしながら、卒業を目前に控えていた。

 そこへ帰って来たひびき。しかも、コンサートをやる、と。即答した秋央。以前なら、秋央が友田さんのようにオケの人はどうする、会場は、演目は、と現実的問題をひびきに投げかけるはずなのですが…。友田さんの現実的な質問に、あっけらかんと「なんとかなるでしょ」「(コンサートをやる意味は)ある!」「(その理由は)それは私にもわからない!」と答えるのは、実にひびきらしい…wさらに、「大地の歌」の声楽ソリストに、直感で梶原と波多野さんを選ぶあたりも。でも、声楽の先生の初レッスンで、2人の意外な声楽の素質が判明。波多野さんの暗めのアルト…ショスタコーヴィチをはじめとした近代ロシアもののヴァイオリンも聴きたいですが、波多野さんの暗めのアルトも聴きたいです。あと、クラシック音楽漫画では、何故か声楽は敬遠されているように思える。私がそんなに読んでいないから知らないだけかもしれないけど、声楽はほんの少ししか出て来ない。ピアノやヴァイオリンなどの弦楽器、管弦楽とは別に吹奏楽、あと指揮。54話で、梶原と波多野さんが声楽のレッスンを受けるのですが、まさに声楽の第一歩!基礎基本が取り上げられてて、声楽をやっている身としてとても嬉しかった。その後の体力づくり、発声練習、発声の際どの筋肉を意識するか、体調コントロール…。声楽は身体が資本。梶原がはちみつ一気飲みしているシーンでは笑いましたw
 漫画家の先生方、声楽をメインにしたクラシック音楽漫画、是非描いてください!!合唱でもいいですが、ソロの声楽は特に。オペラを演奏家の視点で取り上げるのが難しいのかなぁ。もっと声楽は注目されてもいいと思うんだ。色々と誤解されている分野でもあると思うんだ。

 ひびきのオーケストラには、これまで出てきた登場人物が総出演!元21Cオケの皆さん、ヴァイオリンには如月先生に榊先生も。如月先生も出る、と聞いて俄然がんばる南条君…本当にけなげな子です。チェロには7巻で登場した清水さんも。普段は作曲の外山さんも、マンドリンで参加。ピアノの萩原さんも、チェレスタで参加。マーラーは編成が大きい、楽器も種類が多いので普段オーケストラに参加できない楽器の人も参加できる。オールスター集結状態で嬉しい。第一、普段は指揮の梶原も、テノールソロでひびきと共演…滅多にない。

 そんなひびきが、マーラーの「大地の歌」。秋央も梶原も、「らしくない」と言う。歌詞も暗い。何故、ひびきは「大地の歌」を選んだのか。しかも、声楽ソロに梶原と波多野さんを指名したのか。それは演奏会で明らかになるのですが…それまでの声楽ソロ2人の奮闘、本当に大変だよなぁ…しかも「大地の歌」、大編成のオーケストラに対して声楽のソロ、コンサートホールで。フィクションですが、ひびき、おそろしい子…!!

 ヨーロッパで数々の公演を経てのひびきの指揮者としての成長も見どころです。音羽良にいた時の延長線上なのですが、オーケストラを、演奏者ひとりひとりをちゃんと見ている。元21Cオケのトランペット・入谷さんから見たひびきの指揮のよさを読んでいると、本当にひびきの指揮で「大地の歌」を聴きたくなってくる。練習、リハーサルの段階から。声楽の2人を入れてのリハがボロボロだったにも関わらず、ひびきは動じず指揮を続ける。今度こそコンマスの秋央も、その指揮を信頼してオケをまとめようと音を出す。秋央も成長したなぁ!!そのリハの後、ぐったりと疲れている梶原と波多野さん。その2人に明るく、威勢よく声をかけるひびき。そのひびきがやって来た後の梶原の言葉が、ひびきの力を表している。
なんとなく判った様な気がする 曽成の力
あの真っ直ぐな目が問うてくるのだ
"あなたはどの位 本気?"
応えるしかないだろ?自尊心があるならば
(113ページより)

 演奏者の適性をつかみ、その気にさせる。声楽の2人も、完全にひびきが指揮しています。モチベーションを上げるのも、指揮者の役目。

 マーラーの交響曲はまだ全曲聴けていませんが、「大地の歌」は好きな曲のひとつです。梶原が「暗い」と言っていた歌詞も好きです(波多野さんと同じくw)

 そんなひびきのオーケストラを、外から冷静に見つめるのは美月。秋央から全てを聞いて、ひびきにとって秋央の存在とは何なのか、ストレートに聞きます。ついにこの時が!秋央について語るひびきは、いつもの明るく楽天家なひびきとは随分違います。4巻で、高校生の頃、有志のブラスバンドを指揮していたひびきについてひびきの父から語られますが、その時も、その前も、ひびきはずっと"ひとり"だったのかもしれない。ひびきは表向きは明るく楽天家で、サッパリとした性格で、誰とでもすぐ仲良くなり、場に馴染み、皆を盛り上げたり励ましたり…常に人の中にいるような子に見える。でも、"ひとりでいること"抱えていたんじゃないか。小学生のひびきが、美月の父がコンマスを務めるオーケストラの練習で代理と勝手に指揮しはじめ、見事な演奏になった。それを目撃、聴いた秋央。音大に入り、ひびきと再会。仲良くなって、ひびきは自分の部屋の風呂は静かじゃないので音楽について考えるのに集中できないからと、秋央の部屋の風呂を借りるようになる。そのぶっ飛んだ要求も渋々受け入れ、それがひびきの深い音楽の世界に秋央が触れる機会にもなる。これは秋央からの視点。ひびきが美月に語った、秋央の存在。ひびきの音楽に、そしてひびきに追いつこうと、触れようとしてきた…。

 そんなひびきの内面を知ってからの、演奏会本番。梶原と波多野さんの歌う歌詞も記されています。暗いけれども、やはり惹かれます。ひびきが、「大地の歌」を選び、込めた意味。1巻冒頭の吉松隆先生の交響曲第2番の一節を思い出さずにはいられませんでした。

 この漫画を読んで、「音楽はその時その場限りのもの」とより強く思うようになりました。どんなにいい機材で録音しても、最高画質で録画しても再現できないものがある。生の演奏の微細な部分、空気を伝わってくる迫力、会場の雰囲気や熱気、演奏後の拍手…。音楽はライヴ、生き物なのだということ。同じ曲を何百回演奏しても、全く同じ演奏は存在しない。再現できない。音楽は空気を伝わって、耳に、五感に届くけれども、音楽そのものが空気のようなものなんだ…。この10巻を読み終わって、あらためて感じます。

 でも、「その時その場限りのもの」だけれども、心には残る。いい演奏を聴いた演奏会の帰り道の高揚感。その時の演奏が消えてしまうのが嫌で、CDなどで他の演奏を聴きたく無くなる。逆に、もっと聴いてみたいとCDで聴いて、新たな聴きどころを発見する。もしくは、自分もあの曲を演奏してみたい!と楽譜を探し始める。その演奏会の演奏家に憧れることもある(これは生に限らずCDやテレビ放送などでも)。あんな演奏をしてみたい。あんな音を出したい。自分ももっとこの曲を深いところから演奏したい、と。

 秋央も、ずっとひびきの音楽に惹き付けられ、憧れ、ひびきの指揮でヴァイオリンを演奏したい、コンマスを務めたいと思うようになる。コンマスは指揮者の音楽をオーケストラ全体に伝える。それは指揮者のコピーのようで、そうじゃない。翻訳、が近いだろうか。翻訳も、ひとつとは限らない、その訳者の個性が出るから。そのことに10巻でようやく辿り着けた秋央。後日譚の秋央と梶原の会話が、実に爽やかです。
 その後日譚で、梶原が聞きつけた秋央の噂が気になります…!一体誰!?ラストのラストは、また1巻に戻ったような。音楽は、永遠に続いてゆく。音楽に終わりはない。

 吉松隆先生のクラシック音楽コラムも最後。「音楽って何?」前にも書きましたが、クラシック音楽と特別扱いしないで、どんなジャンルだろうと音楽は音楽。楽しめばいいじゃないか。吉松先生のメッセージも心強いです。私も音楽を趣味でやってる端くれとして、色々楽しもうと思います。毎回面白く、興味深いコラムをありがとうございました!

 そして、音楽の楽しさも難しさも、若い演奏家たちの奮闘も表現してくれたやまむら先生、お疲れ様でした。素敵な作品をありがとうございます!

 ただ、最後に秋央、梶原、友田さん以外のキャラクタたちがどうなったのか、ひとコマだけでも観たかったなぁ…。

天にひびき 9
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by halca-kaukana057 | 2015-01-08 23:10 | 本・読書

思い出の"発掘" 山岸凉子「ツタンカーメン」再読

 先日、NHKで放送されたこの番組。
NHK番組表(12月14日):「ダウントン・アビー」の舞台 ハイクレア城の秘密

 20世紀初頭のイギリスの伯爵家を舞台にしたドラマ「ダウントン・アビー」。気になってはいましたが観ておらず。この番組の放送の後の放送回を観てみました。

 今回の記事はドラマの話ではなく(紛らわしくてすみません)…その舞台となった「ハイクレア城」にまつわる話。この番組の予告を観て、「ハイクレア城」という名前に記憶がありました。どこかで聞いたことある。あれ、あれ…あ、もしかして…?そして、そのハイクレア城に住んでいる8代目カナーヴォン伯爵、ということろで、はっきりと思い出しました。
 カーナヴォン卿、ツタンカーメン王墓を発掘したひとりで、イギリス人考古学者・ハワード・カーターのパトロンの5代目ジョージ・ハーバート伯爵のことだ!!(番組内では「カナーヴォン」でしたが、一般的には「カーナヴォン」表記で普及していると思う、ああややこしい)とんでもないところでつながり、自分でも驚いていました。勿論番組はしっかりと観て、今もカナーヴォン伯爵家が続いていること、5代目伯爵のことを「曽祖父」と語る現8代目カナーヴォン伯爵とハイクレア城に残るツタンカーメンや古代エジプトの記録に興奮していました。すごいなぁ。ここにカーナヴォン卿が住んでいたのか…。

 と、何故こんな詳しいのか、思い入れがあるのか。この漫画が始まりでした。

ツタンカーメン (1) (潮漫画文庫)

山岸 凉子/潮出版社


 漫画界の巨匠・山岸凉子先生の作品「ツタンカーメン」。ちなみに、私も間違えていたのですが、山岸先生のお名前の「凉」は「にすい」。「さんずい」の「涼」ではないのですね。あと、「モーニング」で新連載が始まりましたね!読みました!この「ツタンカーメン」も歴史ものですが、新連載も歴史もの、読みます!

 話がずれましたwこの「ツタンカーメン」が、ハワード・カーターが主人公のツタンカーメン王墓発掘物語の漫画なのです。連載開始当時から読んでいました。ただ、その頃はタイトルは「封印」というタイトルで連載され、第1部が終わった後、待てども待てども第2部が始まらず…。数年後、本屋で単行本を見つけた時、掲載誌とタイトルが変わっていたことをようやく知りました。

 時は20世紀初頭。エジプト。考古局査察官で、発掘の現場監督もしているカーター。生真面目で正義感が強く、社交下手。絵が得意でその腕を買われ、17歳の時壁画を写し描きするためにエジプトに渡った。考古学も学び、発掘にも携わるようになる。そのカーターの前に事あるごとに現れる不思議な少年。紆余曲折ありながらも、カーターが巻き込まれるように、導かれるように、その瞬間に向かって時も人々も、カーターも動き出す。遺跡発掘にはお金も必要。そこへ、古代エジプトに魅せられ出資者となるカーナヴォン卿との出会い。アメリカ人で考古局の職員を現場監督に雇い(かつてカーターも一緒に発掘をしていた)「王家の谷」の発掘権を長年握っていたセオドア・デイビスがその発掘権を放棄。カーターとカーナヴォン卿の王家の谷発掘が始まる。
 その頃、王名表にも名前が無く、でもたまに王名のついたものが出土する"ツタンカーメン"という謎の王が考古学者たちを悩ませていた。まだ墓は見つかっていない。本当に存在したのか?何故王名表にも無い?もしかしたら、その"ツタンカーメン"の王墓はまだ見つかっていない…?しかも、"ツタンカーメン"は未盗掘の王墓かもしれない。当時、王墓を発掘しても既に盗掘され、金目のものは泥棒たちに奪われてしまっていた。カーターはその存在を信じ、粘り強く発掘を続ける。カーナヴォン卿が資金も尽きてきたので発掘をやめる、王家の谷発掘権を手放す、と言っても捨て身で説得し、あと1シーズンだけ、と続行を認めてくれた。
 その、発掘をやめると言われたカーターがカーナヴォン卿を説得しに向かったのが、邸宅のハイクレア城(作中では「ハイクリア城」と表記)。その他の場面でも出てきて、それで覚えていたのです。

 当時、連載を読んでいた10代の私は、この漫画で古代エジプトをはじめとする考古学に惹かれていきました。今思えば、史実は元にしているけれども、半分ぐらいフィクション入っている。第一カーターのキャラデザは史実と随分変えてある(後でツタンカーメン王墓発掘に関する本を読んだ時、史実のカーターの写真を見て全然違う!!と驚きました…w)、年齢も変えてある。それでも19世紀末から20世紀初頭のエジプト考古学の重鎮の学者たちも次々と出てくる。そして、作中でカーターが語る古代エジプト史、発掘と盗掘の歴史が活き活きと描かれ、魅了される。古代から既に始まっていた盗掘との闘いにはショックも受けました。歴史の勉強にもなる漫画です。
 また、カーターの周囲の人々も、皆いい味を出している。カーターにとって、カーナヴォン卿のほかに鍵となる人物が2人。カーナヴォン卿の愛娘のイーヴリンと、謎の少年に眼が似ているエジプト人の少年・カー。番組を観て、懐かしくなり再読したのですが、この2人とのエピソードがたまらなくグッと来ます。惹き込まれます。切ないです。イーヴリンとのエピソードは、前にも増して、切なく、やるせなく感じてしまったのは年齢のせいだろうか…。

 見事発掘しても、その後の方が大変というのもこの漫画で知りました。発掘したものの取り扱いと保存は最も重要。そのための資金も重要。しかも、発掘当時はエジプトの政治も変化していった時代(今もですね)。次々と困難が立ちはだかるも、精神的に強くなってゆくカーターの姿を応援したくなります。困難の中で、ひとつひとつ細かく記録し慎重に作業を進め、出てきたものから当時のことを紐解いてゆく。発掘の場面でも、ただ掘るのではなく、わずかな手がかりや観察して得られた考察を元に発掘してゆく。探偵の推理のよう(ちょうど「ホームズ」シリーズにハマっているので。どちらもイギリス人が活躍する話だ)。遺跡発掘の現実が興味深い。

 ハイクレア城が鍵となって、漫画を再読して、魅了された当時のことを思い出しました。私の思い出が発掘された気分です。と、同時に、大人になった今だから読み取れたことも沢山あるな、と感じました。私にとって、とても思い出深い作品です。

 この漫画を読んだからには、この本を読まねばなるまい。

ツタンカーメン発掘記〈上〉 (ちくま学芸文庫)

ハワード・カーター:著/酒井伝六、熊田亨:訳/筑摩書房


 カーター自身による記録。図書館で少しは読んだのですが、難しくて全部読んでいなかった。文庫化されていることを最近知り、もうこれは読むしかない。パラパラと読んでみたら、そんなにドラマティックな書き方はしていないのに、ワクワクしました。今ならきっと読めると思う。

【追記】読みました:ツタンカーメン発掘記
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by halca-kaukana057 | 2014-12-30 23:13 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 15

 今年読んだ本は今年のうちに感想を書く…漫画2冊目。「ヴィンランド・サガ」15巻です。


ヴィンランド・サガ 15
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2014

 アイスランドに16年ぶりに帰って来たトルフィン。父・トールズの死から、その間のことを、母・ヘルガや姉・ユルヴァたち家族に語る。そして、戦争や奴隷制から逃げてきた人々が暮らせる国を、レイフがかつて語ってくれた"ヴィンランド"に築く、という志も。しかし、問題はトルフィンやエイナルたちは一文無しであること。国をつくるのには金が要る。どうするか…。トルフィンの生家の村から少し離れたところの農場主・ハーフダンなら貸してくれるかもしれない…が、トルフィンは幼い頃ハーフダンと会っていた。亡き父トールズとも面識がある。悪党として有名なハーフダンだが、トルフィンは会いに行くことにする。
 そのハーフダンの息子・シグルドは、結婚を控えていた。花嫁はグリーンランドの、レイフの親戚でもあるグズリーズ。しかし、グズリーズはこの結婚に気が向かなかった…。


 表紙のおさげの女の子…この子がグズリーズです。15巻はこのグズリーズが実質的なヒロインです。勿論トルフィンのヴィンランド行きの話も進みます。

 16年ぶりのアイスランド。登場人物たちは皆成長し、老い、時間の流れを感じさせる。ユルヴァの本格的な再登場が嬉しい。前巻14巻のユルヴァの登場はとてもインパクトがありました。お母さんになっても変わってないwユルヴァちゃん最強wと思ってしまいましたが、15巻では大人の女性として、家族を持つ母親としてのユルヴァの一面が。トルフィンを散髪するシーンの姉弟の会話は、お互い成長してはいますが、"姉弟(きょうだい)"なんだな、と感じます。そして、16年間、アイスランドを離れている間に起こったことを語り、"ヴィンランド"を目指すと告げる。16年も経っていたのか…。その間に起こったこと、トルフィンが経験したこと。本編では詳しく語ると紙面が足りなくなるので割愛されますが、これまでトルフィンが経験したことを回想しながら読むと、その話を聞いている家族たちの気持ちになれます。

 "ヴィンランド"を目指し、国をつくると決めたものの、現実問題が…資金。お金はいつの時代も大きな問題ですね。その資金を借りるために、目星をつけたのが、あのハーフダン。1巻で、奴隷を酷使し、逃げた奴隷を探してトールズ、トルフィンの家にやってきた、あの男です。金と暴力で全て解決しようとした、あの悪党。トールズはひるみませんでしたが。1巻を引っ張り出して読み返しました。絵柄も1巻と15巻では随分と変わったなぁ。何かと因縁をつけてくる。そのハーフダンも、16年後、年齢を重ねていました。相変わらず大農場を経営していますが、以前の奴隷の扱いと、今(15巻)での金を貸して返せなくなった農民への扱いは、ちょっと違います。ハーフダンにも変化が。そして、息子・ジグルドが結婚を控えている。ジグルドはかつての若い頃のハーフダン…というよりは、以前トルフィンとエイナルが奴隷として働いていたデンマークのケティル農場の次男坊・ノルマルを思い出します。強がりなワル。そのジグルドを言い諭す父・ハーフダン。ハーフダン、変わりました…。でも、"ヴィンランド"行きの資金を借りるのは、一筋縄ではいきません。

 1巻を読み返していて、ハーフダンの農場から逃げてきた奴隷を埋葬するシーンで、トルフィンがトールズに「ここからも逃げたい人は…どこに行くの?」(1巻、193ページ)と尋ねていた。トルフィンは、小さな頃から「逃げ場所」を意識してきたのか。

 15巻のヒロイン・グズリーズ。小さい頃からレイフの話を聞いて、船乗りになりたいと思ってきた。でも、女は船乗りになれない。結婚し、子どもを産み育て、家庭を守る。そんなこの時代の(いや、今でも変わっていない)典型的な女性の生き方に馴染めない。性格も男勝りで、思い切りがいい。親戚関係であるレイフには女は船乗りになれない!と反対されても言い返す。子どもの頃のグズリーズが、レイフからグリーンランドの外の世界について話を聞くシーンが印象的です。「世界」は広いのに…、"狭い"家庭におさまらなければならないこれからの自分。
あーあ
「世界は広い」なんて知らなきゃよかった
(158ページ)

 ふてくされるグズリーズのこの言葉、気持ち、わかります。世界は広いのに、可能性は無限に広がっているはずなのに、自分は狭いところから抜け出せない。できることだって少ない。何やっているんだろう…よく思います。「繋がれたアジサシ」がこの15巻の副題ですが、まさに「繋がれた」状態。

 ちなみに、ユルヴァもトールズ譲りの男勝りで力の強い女性ですが、今はその強さは家庭を守ることに使っている。母・ヘルガさん譲りですね。

 そのグズリーズと、ジグルドが結婚する意味。ハーフダンとレイフが親戚関係になるようにして、ハーフダンは何を考えているのか。ジグルドとグズリーズの結婚式の後、2人だけになった時に語られます。船乗りになることを諦め、「それぞれに与えられた役割を果たす」ことをやろう、と決心しますが…ラストシーン、言葉を失いました。何が起こったかわからなかった。グズリーズ…一体…!?

 一方、トルフィンたちは新たな冒険へ。"ヴィンランド"へ行くための資金稼ぎの大冒険です。命懸けではありますが、レイフのおじさん、冒険家の血が騒いでますねwトルフィンもエイナルもやる気十分。"ヴィンランド"へは大きな回り道に見えますが、どうなるのだろう。この大冒険、私も楽しみです。レイフさんは若くないので、どうかご無事で!

・14巻:ヴィンランド・サガ 14
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by halca-kaukana057 | 2014-12-12 22:33 | 本・読書

[コミック版]天地明察 7

 もう12月。今年読んでまだ感想を書いていない本の感想がたまっているので、今年中に書きたい。まずは漫画から。いつも感想が遅れる…。小説「天地明察」のコミカライズ、7巻です。

天地明察 7
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2014

 改暦に向けて日々邁進する渋川春海(安井算哲)たち。その春海を支え、応援してきた妻・こと。元から身体が弱かったことが、病に倒れ、亡き人に。愛する妻を失い、お城での碁にも集中できない。さらに、北極出地で天測の旅を共にした伊藤重孝が危篤と知らされる。伊藤も帰らぬ人に。ことを救えず、伊藤との約束も間に合わず…無力に涙する春海。それから、春海は打ちひしがれたまま、暦の計算を黙々と続ける。そんな中、お城で道策との勝負碁が。勝負の前も暦のことで頭がいっぱいの春海に、道策は…

 原作ではあまり妻・こととのシーンが少なく、漫画では春海の天文の話をわからないけれども、春海が楽しそうに話しているのを優しい笑顔で一生懸命聞き、春海の改暦が成就するよう願っていた。春海も、身体の弱いことのことを心配し、家のある京都よりも江戸にいることの方が多いことを気にしていた。いい夫婦だったのに…。夫婦の仲むつまじいシーンが多かったからこそ、余計ことの死がショックです。原作を読んでわかってはいたけれども、それまでの描き方でも変わるのだな、と。
 更に、伊藤さんも…。春海にとって、学び続けること、精進し続けることを教えてくれた人のひとり。本当に残念です。

 一気に2人も大切な人を亡くしてしまい、打ちひしがれる春海。これまでは活き活きと、楽しそうに天測も暦の計算もしていたのに、31話では暦の計算をしていても、ただ機械的に計算しているだけ。目が死んだようです…。時間が無い、と。周囲の人々も心配するが、春海が感じているのはただ「後悔」。「間に合わなかった」…無念。

 改暦という世の中をひっくり返す大事業。春海がその主要人物に選ばれた理由のひとつが、若いから。何年、何十年かかるかわからない。長い事業では建部さんや伊藤さんのように途中で亡き人になってしまうことも少なくない。ましてや、現代よりも平均寿命の短い江戸時代。先日BSプレミアムで放送されていた映画「はやぶさ/HAYABUSA」でも、「はやぶさ」の飛行途中で亡くなってしまうプロジェクトのメンバーが(実話です)。その葬儀の席で、長いプロジェクトでは、メンバーが途中で亡くなってしまうことがある、とも語られました。現代も、江戸時代も変わりません。春海は専門家・プロではないが、天文学にも暦にも算術にも詳しく、お城で碁打ち衆として働き、帯刀はしているけれども武士ではない。暦に関係のある幅広い知識や、置かれている立場・そこから生まれる縁も、春海が改暦の中心人物として任命された理由ですが、もうひとつ、若さもある。でも、それは、春海よりも年上の改暦に関わっている人たちが、死ぬのを一番多く見る可能性もあるということ。春海、つらい立場です。

 そんな春海の目を覚ましたのは、やはり道策。道策が打った「天元」…北極星を意味し、不動の星、と以前春海は道策に教えた。春海も、道策も何も変わっていない。道策はいつでも真剣勝負。春海も同じ。碁でも、天測や算術、暦でも。真剣勝負だからこそ、面白い。道策らしいなぁ、と感じました。道策と春海のこの切磋琢磨する関係、いつまでも続いてほしい。

 もうひとつ、かなしい報せがあったものの、悲しみから立ち直った春海たちは、いよいよ宣明暦から授時暦への改暦へ動き出す。宣明暦に"挑戦状"をつきつける。日食と月食の予報が、どちらが当たるか勝負しようというもの。悲しみをバネに、更に大きな一歩を踏み出す春海。春海は先述したとおり、言ってしまえば”中途半端”な社会的立場にいる。だからこそ、社会的立場無しに、渋川春海として、改暦に取り組みたい。6巻で、改暦によって幕府と朝廷が対立するということが無いように。そう決心する32話のシーンが印象的です。

 久々に村瀬の塾を訪ねる春海。そこで再会したえんさん。色っぽくなりました…!嫁いだけれども、夫は死去。同じ悲しみを味わっている。そして、かつてのお互いのことを思い出し、語り合う。ことさんもいい奥さんだったけれども、えんさんも春海のことを理解してくれる存在。えんさんとの約束も増え、宣明暦への"勝負"が進む。授時暦の勝利が続く、が…。

 さて、また春海に試練が訪れる。どうなるのだろう。8巻も楽しみにしています!

・6巻:[コミック版]天地明察 6
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by halca-kaukana057 | 2014-12-06 23:10 | 本・読書

宇宙兄弟 24

 いつも感想が読んでからしばらく経ってからになってしまいます…。今頃になってしまいました、「宇宙兄弟」24巻です。


宇宙兄弟 24
小山宙哉/講談社、モーニングKC/2014

 六太たち「ジョーカーズ」CES-66の打ち上げが近づいてきた。しかし、カルロがいない。カルロがいなくなる前、カルロとエディが話しているのを偶然聞いてしまった六太。そして、カルロがいない間に、バックアップクルーのモッシュと一緒に訓練する「ジョーカーズ」。モッシュとカルロの交代が正式に決まろうとしていた…。
 一方、カルロは生まれ育ったイタリアにいた。父親であるリベリオの死期が迫っていた。リベリオは、マフィアの幹部で、刑務所に収監されている。カルロは16歳で家を出て、それ以来リベリオとも会っていなかった。カルロが宇宙飛行士になったことを知り、喜ぶリベリオ。そして、リベリオはいつもしていた指輪をカルロに手渡す。金庫の鍵にもなっている、というその指輪。金庫の中にあったものを観たカルロは、幼い頃のことを思い出した。

 23巻のラストで、いなくなってしまったカルロ。カルロに何があったのか。24巻で明かされます。そして、カルロの過去も。イケメンで軽い雰囲気だったカルロに、こんな過去があったとは。しかも、その過去も、あくまでカルロの主観によるもの。過去と父を否定し、名前も変えてアメリカに渡り、宇宙飛行士になったけれども…そこにはいくつもの、否定してきたものから繋がってきたルーツがあった。カルロの父の真実。否定してきたものが、本当は今のカルロに繋がるものだった。
「俺はもう何の心配もなく晴々と月へ行けるようになる」(#225)
「それで俺は―晴々と月へ行けるようになる」(#228)

 どちらもカルロの台詞です。真実を知る前と知った後、同じような台詞ですが、込められている意味が全然違う。

 後半はムッタが日本に一時帰国し、シャロンに会う話。シャロンは日本ALS協会のサポートを受け、同じ病気の人たちと仲良くなっていた。ALS協会の人たちに会うムッタ。同じALSでも、その患者によって症状は異なる。普通に話せないけれど、特殊な技術や専用の装置を使えば話せる。呼吸が出来なくなったら、人工呼吸器を使う。宇宙飛行士の交信や船外活動と似ている、というところになるほどと感じました。
 でも…やはり誰でも不安はある。あのシャロンでも。どんどん動けなくなっても、生きている意味はあるのか…。「尊厳死」にも関係する内容ですし、誰でも様々なことで「こんな状況に陥ってしまっても、自分は生きている意味はあるのか…?」と思ってしまうことは少なくないはず。私もあります。そんなシャロンに希望を見せてくれたのは、ALS協会の患者さんの仲間たち。何かの補助やサポートを受ければいいのなら、それを受け入れる。生きてさえいれば、それでいい。ALS協会の患者さんたちの姿勢に、私も励まされます。ここで、かつて子どもだったムッタがシャロンから受け取った言葉…
誰かに― "生きる勇気"を与えるために生きてるのよ
誰かに― 勇気をもらいながら
(#232)

 ネタバレになるかも知れませんが、この言葉を引用せずに話すことはできないと思い、引用しました。これまで、ムッタは様々な人たちから勇気をもらってきた。会社をクビになったが、子どもの頃に夢を見た、そして弟・日々人一緒にと叶えると誓った宇宙へ行くために、宇宙飛行士を再び目指した。宇宙飛行士になってからも、様々な挫折や困難があり、その度に乗り越えてきた。誰かに勇気をもらい、それが知らないうちに誰かに勇気を与えることにもなっていた。
 24巻前半のカルロの話も、そうだと思った。クールに振る舞っているカルロも、父の真実を知ることで、父から勇気をもらった。NASAに戻ってきたカルロの"変化"は、その父に勇気を与えるため、とも言える。
 本当に、この言葉、232話そのものがグッと来ます。私は、どうだろうか…。

 月へ行き、シャロン月面天文台を建設する。ムッタの想いも、もうすぐ叶う…が、カルロはどうなってしまうんだ…?このまま、カルロは「ジョーカーズ」に戻れないままなのか?帯にも書いてあるエディの言葉を信じています。カルロのいない「ジョーカーズ」なんてないよ…!

・23巻:宇宙兄弟 23
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by halca-kaukana057 | 2014-11-03 22:37 | 本・読書

星の案内人 2

 また発売から間が開いてから書く漫画感想…。新たなる天文宇宙系・プラネタリウムが舞台の漫画「星の案内人」2巻が出ました。
・1巻感想:星の案内人1

星の案内人 2
上村五十鈴/芳文社・芳文社コミックス/2014

 ”おじいさん”の手作り私設プラネタリウム「小宇宙」には、今日も様々な人が訪れる。雨宿りにやってきた中学生男子2人。友達同士でキャンプに来ていたが、その2人はなにやら険悪な雰囲気。
 「小宇宙」の常連・トキオは屋外でヴァイオリンの練習中、偶然一人の同い年ぐらいの少年に出会う。人前でヴァイオリンが演奏できないトキオは逃げ帰ってきてしまうが、その少年はトキオのクラスに転入してきた楢島洸太という親分肌の少年だった。人見知りで物静かなトキオとは正反対の洸太。が、ある夜、2人は意外な場所で出会う。
 一方、トキオのおば・フミは、トキオの育て方で悩んでいた。フミはいつしか、「小宇宙」へやってきていた…。


 トキオと転入生の洸太、トキオとおばのフミさんを軸に、物語が進んでいきます。1巻ではまだ謎だったトキオを取り巻く環境、フミさんと暮らしている理由も明かされます。トキオが人見知りで内気な性格の背景、フミさんとの関係…「親子」の関係について考え込みました。11話、88ページで、常連となっているやさぐれ小説家志村さんが「実際世の中には感謝しづらい親もいるしね」と言う通り、難しい親子関係もあります。トキオとトキオの母もそんな関係かもしれない。そんな環境から抜け出したくて、自分を変えたくてフミさんのもとにやってきたトキオ。フミさんは、そんなトキオと、トキオの両親との間で悩む。自分はどう接すべきなのか。どうトキオを育てていったらいいのか。

 そんなフミさんにおじいさんが語ったのが、オリオン大星雲・M42と、おおぐま座・こぐま座の話。オリオン大星雲は星が生まれているところ。その星雲と、生まれた星をこんな形の話にするのはとても斬新でした。そういえば、星雲には様々な力が働いている。その辺の天文物理学についてはあまり詳しくないので書けないのが残念ですが(だったら少しだけでもかじりたい、わかるようになりたい)、見た目はきれいでも、星雲の中ではものすごい力があちらこちらから作用している。生まれたばかりの星はその力の中で更に育ってゆく。それに加えての、おおぐま座・こぐま座の話。この星座物語はプラネで聞いたり天文書で読んだりするたびに、切なくかなしくなります。そこでおじいさんが90~91ページで語った言葉が印象的です。

 NHKラジオ第1で夏休みに放送されていた「夏休み子ども科学電話相談」で、天文・宇宙の質問の回答を担当していた、コスモプラネタリウム渋谷の解説員・永田美絵さんが、「生命は星のかけら」とよく仰っていました。星は核融合反応を起こして様々な元素を生み出し、超新星爆発によってそれらが宇宙に散らばる。そしてそれらを含んだ星間ガスが引力で集まり、星雲となり、新たな星が生まれ、惑星系が出来る。地球には生命が誕生し、今、こうして多種多様な生物や人類が生きている。
 母親から生まれる子ども、その大元は宇宙でもある(オカルトやスピリチュアルなど、決してそっち系の話ではありません、念のため)。おじいさんの言葉を読みながら、永田さんのお話を思い出していました。

 トキオのクラスに転入してきた洸太も、なかなか面白いキャラクタです。トキオと正反対なようで、トキオと同じように外には出せない感情を抱いている。表向きは明るく強くたくましい子だけれども…。トキオにとっても、洸太にとっても、2人は出会ってよかった、いい友達になれそうです。

 13・14話ではこいぬ座の物語が。このアクタイオン(「アクタイオーン」とも表記される。このこいぬ座の星座物語となったギリシア神話は、バロック期のフランスの作曲家・マルカントワーヌ・シャルパンティエが「アクテオン」というタイトルでオペラ化しています)と猟犬メランポスの物語もまた切なくかなしい物語です。
 この13・14話を読んで、これは星座だな、と感じました。無関係だと思っていた人と人が、とある接点で繋がっている。繋がって、新たな関係が生まれる。ここで心をわしづかみにされました。実際、人間関係はどこでどう繋がっているかわからない。その新たな関係が、人に新たな成長への道を示してくれる。ヴァイオリンのことで悩んでいたトキオにとっても、明るい光になったはず。シリウスやプロキオンのような、冬の凍てつく空気の夜空を華やかに彩る、明るいシリウスやプロキオンのような。

 順序が逆になりますが、8・9話ははくちょう座とアルビレオ。はくちょう座の星座物語は、大神ゼウスが白鳥に化けた姿、というのが有名ですが(私もこちらばかり覚えていた)、これではなく、フェイトーン(エリダヌス座の星座物語での主人公)の親友キクヌスの方で用いたのは巧いなと感じました。
 星座物語は色々な説があるから面白い。しかも、ギリシャ神話だけでなく、世界各地独自の星・星座物語・伝承もある。星・星座にまつわる伝承や神話、物語は調べ始めたらキリがないぐらいたくさんあり、奥深い。それぞれの地域の特色も出ていて面白い。これからも、どんな星・星座にまつわる物語が登場するか楽しみです。
 そして、それらは人類の歴史、普遍的な人間の心を投影しているから、また面白いんだよなぁ。3巻も楽しみです。

 しかし、この「小宇宙」のあるところは、星空がきれいに見える。満天の星空の描写がたまりません。肉眼で天の川を堪能したい…。そんなところで8・9話のように天体望遠鏡を貸してもらったら、夜通し天体観測します。いや、自分のがありますが。望遠鏡無しでも、寝転がって満天の星空を眺めるだけでもたまらないなぁ…。


・参考過去記事:オリオン大星雲について詳しく知りたいなら:オリオン星雲 星が生まれるところ +「コズミックフロント」オリオン大星雲へ ハッブルが見た星のゆりかご
 最近天文書を読んでいないなぁ…。
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by halca-kaukana057 | 2014-09-27 22:38 | 本・読書

恋と病熱

 「海とドリトル」1巻と同時期に刊行された、磯谷友紀先生のもうひとつの作品。連載誌を読めなかったので、単行本化が待ち遠しかった。「本屋の森のあかり」「海とドリトル」とは世界観が全く違います。


恋と病熱
磯谷友紀/秋田書店・A.L.C.DXもっと!/2014

 兄弟姉妹が忌み嫌われるようになった世界。もし兄弟ができた場合は、内密のうちに子どもができない家庭に養子にだされることになっていた。学校入学を目前にして、クロエは、コランという兄がいることを母から告げられる。コランも学校に通っており、もしかすると会うかもしれない、でも近づかないように…と。クロエも兄がいることにショックを受ける。そして、入学…クロエは突然声をかけられる。眼鏡をかけた、足が悪い男…コランだった。会ってみたかったと言うコランを気味悪がるクロエ。一方、クロエの周囲では兄弟がいることが発覚した生徒のことが話題になっていた。兄弟という存在を気持ち悪がるクラスメイトたち。クロエも気持ち悪がっていたが、コランのことを思い出す。兄弟は「どうしようもなくお互い惹かれてしまうらしいよ」というクラスメイトの言葉が気になっていた…

 クロエとコランの兄妹の物語他、姉弟、三姉妹、兄弟の物語がおさめられています。兄弟姉妹が忌み嫌われる…兄弟がいるのは当たり前の時代を「前時代」と呼んでいるので、未来の世界の物語と思われます。

 私は一人っ子で、きょうだいはいない。子どもの頃から、きょうだいのいる友達から、「一人っ子はいいね」と言われてきた。部屋や両親、おもちゃやお菓子をひとりで独占できる。きょうだいで比べられることもない。「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」と言われ責任を問われることもない。きょうだいケンカをすることもない。
 確かにその通りだ。一人っ子は自由だ。ひとり部屋を独占できる。お菓子も取り合いなどすることもなく、ひとりでゆっくり食べられる。おかげでマイペースな性格に育ったようだ(自分自身では、結構人に影響されたり、人と比較して落ち込むことが大人になってから多くなってきたと感じている)。でも、反対にきょうだいがいるってどういうことなのか、と考えることはよくあった。ひとりで寂しい時もある。一人っ子だって、「わがままだ」とか、「協調性がない」とか「自分の世界にばかり閉じこもっている」「人付き合いが下手」などと言われ続ける。きょうだいケンカって、どういうものだろうか。他のケンカと違うのだろうか。きょうだいで出かけたり、遊んだり、相談したり…そういうのは楽しそう、羨ましいなと思っている。でも、どうしようも出来ない。私にはきょうだいはいないのだから。

 なので、きょうだいとは何かがわかっていないので、この作品を読むのは少し難しかった。でも、きょうだいを「忌み嫌う」のはまた違う。一人っ子がいい、のではなく、一人っ子で無ければならない。この物語の世界で何故兄弟姉妹が忌み嫌われるようになったのか、説明されている部分もあります。何人も子どもを産むこと、兄弟姉妹がいることは「気味が悪い」。同じ母親のお腹から産まれ、似た遺伝子を持つことが「気持ち悪い」。子孫を残す…ただ残すのではなくより多く残す、という生物の生殖の目的から外れてしまっている。私のように、ひとりしか産まれなかったのだから、ではなく、ひとりだけ産むことが望まれる。現代でも、両親の仕事上の理由や経済的理由などで、意図的にひとりしか産まない(つくらない)ということはある。だが、この物語の世界はそれともまた違う。そんな世界観にまず驚きました。私の想像の及ばない世界。想像力の世界って凄い。

 きょうだいがいることを知って、忌み嫌いつつも気になってしまう。きょうだいを忌み嫌う社会に反し、きょうだいを大切にしようと主張するコミューンも出てくる。きょうだいで、産みの親に会いに行く。死んだ友人の弟にその姿を重ねる。
 きょうだいは「どうしようもなくお互い惹かれてしまうらしいよ」という言葉の通り、意味嫌っていても、無意識のうちに惹かれてしまう。その感情は、恋愛なのか、兄弟愛なのか。きょうだいという関係が成立しない社会、社会が成立させないこの世界では、恋愛にも似ているのかもしれない。…でも、私たちが通常イメージする「恋愛」とも違うような。

 「どうしようもなく惹かれてしまう」…言い換えると、「どうしようもなくお互いを想う」。この物語に出てくる登場人物たちは、それぞれのきょうだいのことを、忌み嫌っていても、どうしようもなく想ってしまう。気になってしまう。一緒にいたいと思う。それが徐々に「惹かれてしまう」のだろう。「どうしようもなく想う」気持ち…それは、恋愛だろうと兄弟愛だろうと同じことなのかなと思う。それが、忌み嫌われるものであっても、想いは止められない。病のように。

 止められない想いはどこへ向かうのか。どの物語も、はっきりとした結末は無く、余韻を持って終わります。想いにはっきりとした結末なんてない(失恋して、意図的に相手を忘れようとする場合や吹っ切れた場合とはまた違う)。誰かを想う気持ちは、空気のように漂いながら、見えなくてもそこにあり続けるのだろう。はっきりすることよりも、そんなはっきりしない、余韻が漂い続けることの方が多いような気がする。

 磯谷先生の作品に「屋根裏の魔女」という作品もあり、これも不思議な雰囲気の作品だったのですが、とても好きな作品です。この「恋と病熱」も。磯谷先生の不思議な世界、もっと読んで、味わってみたいです。
・その感想記事:屋根裏の魔女
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by halca-kaukana057 | 2014-09-03 22:55 | 本・読書

泣きたい日のぼのぼの

 先日、ニコニコ生放送でアニメ「ぼのぼの」全48話を2日に分けて放送していました。アニメ「ぼのぼの」を全話観たことが無かったので観てました。全話は観られませんでしたが、楽しかった。面白かった。とにかく笑ってました。「ぼのぼの」は原作漫画もアニメも面白い。ジャイアンみたいなアライグマくん。時に腹黒くなるシマリスくん。弟のシマリスくんをいじめるアライグマくんとケンカばかりだけど、実は気が合う(?)ショーねえちゃん。ぼのぼのものんびりしているけど、時に鋭い。37話「洞くつの恐怖」…あの”しまっちゃうおじさん”回は、ニコニコ動画のコメントを打ちながら、皆で観るのが楽しいんだなぁと思いながら満喫しました。他の回にもちょこちょことしまっちゃうおじさんは登場していました。

 驚いたのは、「ぼのぼの」の世界には天文学に基づいた暦があるということ!第32話「アライグマくんの誕生日」。何故アライグマくんが自分の誕生日をわかるのか。そう疑問に思っていたら、アライグマくんの説明が。目印の木と赤い星があって、一年に一度その木の上に赤い星が来ると誕生日…星の年周運動を理解していたアライグマくん…!!凄い。…ということは、「ぼのぼの」の世界はこの地球上のどこかにあるということか…?(待てw)
 34話「流れ星さんのお引っ越し」では、流星群は流れ星のお引越しなのだそう。こちらはファンタジー。しかし、満月の夜…満月だと流星群観測には条件悪くないですかとツッコんでたのは私ですw「ぼのぼの」の世界では光害なんてないから、満天の星空を堪能できるんだろうなぁ。いいなぁ、ぼのぼのたちと星見・天体観測したい…そっちじゃないw話が大幅にずれました。

 以前、「ぼのぼの」の名言集が出ていましたが、その続編が出てました。こういうタイトルのものはあまり好きではないのですが、本屋で目にした時、まさにそんな気持ちだったのと、「ぼのぼの」は別、と思って手にとってしまいました。
・以前の記事:ぼのぼの名言集(上・下)

泣きたい日のぼのぼの
いがらし みきお/竹書房・竹書房新書/2014

 「ぼのぼの」はいわゆる「泣ける」作品・漫画ではないと思う。ホロリとさせられる部分はある。しかし、ぼのぼのたちの哲学的な思索(妄想)で、ふんわりと終わる。そして物語が「開かれている」状態で、読後の読者に繋げる、バトンを渡すような。「こう思うこと、あるなぁ」とか、「自分ならこう思うかなぁ」と、続きを読むのを一旦止めて、ふっと考えてみる。そんな速さ、ゆとりで楽しめるのが「ぼのぼの」の面白いところ。

 この本には、6つのお話がおさめられています。上記「名言集」と被るところもあります。好きなのは「ボクの景色」「冬が来る」「ウマちゃん」。「ウマちゃん」はいつもは暴れん坊なアライグマくんが、”ウマちゃん”という虫をペットにする。最後のアライグマくんは、”いい奴”の一言では片付けられないような味わいを出している。「ボクの風景」はぼのぼのの哲学的思索全開。途中、シマリスくんとのギャグを効かせつつも、どこか遠く、一生かかっても手の届かないところを思う…それが生きるってこと、生きる面白さ、なのかなぁ、と。

 「シマリスくんのクノー」は、重い。ぼのぼのやシマリスくんたちは成長している。そして、シマリスくんの両親も齢を取り、シマリスくんが”介護”する。「治してあげたい」234・235ページでグッと来てしまった。
 こういう漫画では、物語の世界のキャラクターたちは齢をとらない、年月は進まないものもある。でも、「ぼのぼの」の世界では、進んでいる。見た目は変わらないように見えるけど、心は成長している。そんな「ぼのぼの」をちゃんと読みたいと思いました。単行本、20巻ぐらいまで読んで、そこで止まっているので…。

 泣きたい日に、泣かせてくれる…かどうかはわからない。が、ぼのぼのたちも私たちと同じように生きて、悩んで、笑って、怒って、遊んで、泣いて…そんな身近さがいいなと思うのです。「ぼのぼの」の森の仲間たちも、泣いて、思い悩んでる…一緒だよ、一緒に生きているんだよ。そんな風に感じます。
 泣きたい時、ギャグで大笑いして吹き飛ばす、という方法もありますね。それが出来るのも「ぼのぼの」です。

 巻末の書き下ろしの詩は、まさに泣きたい時向けだと思います。じんわり来ます。


癒されたい日のぼのぼの (竹書房新書)

いがらし みきお / 竹書房


 癒されたい時バージョンもあります。こっちは読んでない。こっちも読んでみようかな。それよりも本編全巻読んだほうがいいかな。
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by halca-kaukana057 | 2014-08-24 22:47 | 本・読書


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by 遼 (はるか)

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