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天にひびき 9

 相変わらず漫画を買って読んでから、感想を書くまでの間が長い…遅いです。「天にひびき」9巻、ようやく書きます。


天にひびき 9
やまむら はじめ/少年画報社・ヤングキングコミックス/2014

 文化祭で演奏するひびき指揮秋央コンマスのBオケの本番が近づいてきた。秋央から連絡を受け、美月と父・直昭も帰国、演奏を聴きに来る。直昭は、9年前、まだ小学生だったひびきが突然指揮をし、演奏をした時オケのコンマスを務めていた。それ以来のひびきの指揮。美月もひびきと秋央のリハを聴きに来る。そのリハの後、ひびきは美月に初めて演奏を聴いた感想を求める。そこで、ひびきは…。その言葉に美月も…。
 そんな中、ドイツからやってきているアウエルバッハがひびきを呼び出す。アウエルバッハがマネージャーを務めるバイエルン・フィルの指揮者・ローレンツが急病で来日できなくなった、ローレンツはその代役にひびきを指名している、と。バイエルン・フィルの練習場にひびきを連れてきたアウエルバッハ。そこでひびきは…


 物語がまた大きく動き出しました。秋央をめぐる人間関係も。秋央君、どこでそんなにもてるかねぇ…w波多野さんの反応も可愛いのですが、美月のいわゆる”ツンデレ”(でもまだデレてないか)な反応も可愛いのですw

 Bオケで、ひびきの指揮のもと、コンマスとして一生懸命やってきた秋央。ひびきの音楽を理解したい、ひびきの音楽を形にしたい、伝えたい!と頑張ってきました。しかし、ひびきには何かが「足りない」模様。
 コンサートマスターは、指揮者の意図をオーケストラのメンバー全員に伝え、音楽を形にするまとめ役。指揮者とオケの橋渡し役…と今まで考えてきたけれども、そうでもない?ひびきが感じている物足りなさ…ひびきの音楽、ひびきの意図をしっかりわかって伝えてくれているのに、何かが足りない。この9巻の山場で出てくるのですが、コンマスは指揮者の手兵じゃない、指揮者に従っていればいいってものでもない…?このあたり、オーケストラにとって、また指揮者にとってコンサートマスターという存在がどういう存在であるかがよくわからないので、わからない…。コンサートマスターも、ひとりの音楽家。個性を持った音楽家。オーケストラも、一人ひとり個性を持った音楽家の集団。2、3人だけの管楽器ならまだしも、10人はいる弦楽器では、個は個でも同じメロディーを揃えて演奏しなければならない。個と集団。その先頭にいるコンマス。コンマスの存在って何なのだろう…。

 8巻の如月先生と、かつてカルテットを組んでいた桂木さんの話。格段に巧い桂木さんに当たっているスポットライトを、如月先生はカルテットのメンバーとして一緒に浴びていただけと気がついた。一方でひびきと秋央も、ひびきに当たっているスポットライトを秋央も一緒に浴びたかったのではなく、秋央はひびきとオケ全体にスポットライトが当たるように、と感想で書いた。ひびきの音楽をオケが形にしていることをアピールするコンマスを目指してきた。須賀川先生とひびきが最初のコンマスについて話している場面からも、指揮者の意図を形にする、それだけでは足りない、のか…?足りない、のかもなぁ。

 そしてひびきに大きな転機が。バイエルン・フィルを1公演だけだが振るチャンスが。8巻冒頭で来日したドイツ人・アウエルバッハさんの来日の意図がわかりました。とは言え、代振りは想定外ですが(多分…まさかローレンツさん、最初からそのつもり…なわけないよねぇ…)。その公演と、Bオケの公演の日が被ってしまった…勿論、バイエルン・フィルを選んだひびき。その後の秋央…目標を完全に見失ってしまいました。そこへ美月が…!!美月かっこいい。
 一方、波多野さんも波多野さんなりに、秋央を励まし、文化祭では演奏で想いを表現。オケだけではなく…”音羽良の黒姫”ソロリサイタル。演奏曲は、勿論大好きなショスタコーヴィチ。波多野さんが演奏するショスタコーヴィチ、どんな音なんだろう。鋭利だけど情熱的、キレがあるけどつやつやした感じなんだろうか。あるけど実際には演奏を聴いたことがない人や、架空のこの人が演奏したらどうなる?というのを想像しながら、CDで聴くのも面白いですね。

 ひびきの大抜擢のショックは、秋央だけじゃない。Aオケで初指揮の梶原も、また引き離された…と。でも、Aオケでがんばるしかない。落ち込む秋央が南条君と話している時の会話が凄くよかった。8巻、桂木さんの演奏を聴いて、一生かかっても追いつけない…追いつけなくても続ける意味って何だろう、と尋ねる秋央にこの答え。
一生追いつけないってことは 一生努力できるって事でどう?
一生追いつけない事くらいでやめちゃえる程 チャチな目標を選んだ訳じゃないだろって事
 (秋央)それが自分の器じゃないとしても?
それは他人が決めればいい事だよ
(92~93ページ)

 さすがは南条君。南条君、本当にいい子だ。というわけで、秋央もめげてないでがんばれ!Aオケでは梶原、Bオケは須賀川先生の代振りで公演は盛況。秋央も、秋央なりの答えを見つけた模様。秋央が目指すものを見つけたか。ひびきとは異なるアプローチで。Bオケと同じ頃、ひびきも道を拓いた…本当にこの子はどこまで行ってしまうんだろう…梶原じゃないけど、そう思ってしまう。

 そしてそれぞれの道へ進み、秋央たちは4年に。それぞれ進路も決まり…秋央はまだ、という…。そこへ…。4年、もうすぐ卒業ということで、そろそろクライマックス?どうなるか、楽しみになってきました。

 恒例の吉松隆先生のクラシック音楽コラムは、クラシックがどう生き残るか。日本人が西洋音楽を演奏する・聴くことも含め、クラシック音楽と現代社会、人間の関わりについて。クラシック…古くて格式がある、敷居が高い…それがプラスになることもあるしマイナスに働くこともある。でも、CMや映画などで使われることもある。「クラシック」と特別扱いしてしまっているのかな、と思いました。分類すると便利、ですが…。

 そういえば、先日、こんな言葉を読んだので引用します。
調布音楽祭監修の鈴木雅明さんの言葉。「私も、クラシックは大の苦手です。なにしろ、『クラシック』という言葉は『もう聞き飽きて聞きたくもない話』のことだからです…バッハはもちろん、シューマンやドヴォルザークの名曲を、決して『クラシック』にしないために、この音楽祭は存在しています」
Twitter:NUKATANI, Sorahiko (@umui):2014年7月7日

 鈴木雅明さん、バッハ・コレギウム・ジャパンでおなじみ、古楽のエキスパートですね。だからこそ、「クラシック」=昔の音楽、ではなく、今も演奏され”生き続けている”音楽にしたい…と思ってらっしゃるのかもしれません。

 最後は漫画本編から脱線しましたw

・8巻感想:天にひびき 8
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by halca-kaukana057 | 2014-07-14 23:02 | 本・読書

[コミック版]天地明察 6

 いつも楽しみに読んでいるのに、感想が遅くなる…。小説「天地明察」のコミック版。6巻です。


天地明察 6
冲方丁:原作/槇えびし:漫画/講談社・アフタヌーンKC/2014

 渋川春海(安井算哲)たちの会津での改暦事業が始まった。最初は慣れず忙しく指揮を執っていたが、安斎や安藤たちの支えで平常心を取り戻し、天測に打ち込む。ひと月ほど後、会津肥後守・保科正之から「改暦による世の影響を考察せよ」との指標が立てられた。良い影響、悪い影響を話し合う春海たち。改暦の影響がいかに大きいかを思い知る春海だが、ある考えを思いつく。
 一方、お城での安井家と本因坊家の争碁も始まっていた。江戸に戻った春海は、知哲と道策による争碁に同席する。その後、久々に再会した春海と道策。久しぶりに勝負をする2人。春海は無意識に、あの「初手天元」を打ってしまう。


 原作を読んだ時も、今使っている暦(カレンダー)が変わったらどんなことになるだろうと考えたのですが、漫画でも考えてしまいました。ましてや、この時代は月日と曜日を知るためだけのものではない。しかもこの改暦は幕命によるもの。帝が執り行う儀礼を、幕府のものにしてしまうことになる。暦には縁起のいい方角についても書いてあり、人々の生活への影響も大きい。さらに幕府が定めた暦に従うことになるという、政治統制。幕府への反発、それによって起こりうる戦…。32ページからの、春海がひとり月を見上げて考え込むシーンに、グッと引き込まれました。天文が好きで、天文への憧れ、天文の理だけを純粋に追い求めてきた春海。それなのに、その天文・暦が、人の命や国の行く末をも巻き込むことになるかもしれない…。そんなことは望んでいないのに…思い悩む春海の強い願いをかみ締めつつ読みました。そんな中で、考えぬいたひとつの案。春海、本当に強くなった。それなのに、その結果が…。それでも、諦めない春海たち。いつかきっと改暦の日が来ると信じて。

 江戸に戻ってからの春海も、改暦に向けて一歩一歩歩んでいる。81ページ、膨大な資料を前に、妻・ことに「楽しいから!」と言い切る春海がとても好きです。改暦そのものも、改暦による影響も、とてつもなく大変なことは分かっている。でも、やっぱり天文は楽しい。天文が好きで、天の理を知りたくて、まだまだ進む道がある。そして、改暦も天文も、春海ひとりだけのものではない。北極出地の旅をともにした亡き建部様、伊藤様に「頼まれた」こと。ひとつ、実現しました。建部様のことを思うと…胸が熱くなります。

 天文の一方で、碁打ちでも大きな動きが。安井家と本因坊家の争碁が始まった。相変わらず天文・暦ばかりの春海に怒る道策。春海にとって天文・暦は春海ひとりだけのものではなく、様々な人の想いも託されている。その人々の想いを叶えたい。だからここまで来れた。…ならば、碁では、道策の想いも。道策は身なりも、碁も、立派に強くなりました。これまで私は春海の視点からこの漫画を読んでいたので、碁だけをやらない、天文・算術・暦なんて!と憤る道策の気持ちが、一途で一生懸命だがどこか滑稽なものに見えていました。しかし、今回の春海と道策の勝負を見て、道策の強さに魅了されました。碁のことはよくわかりません。ルールも何もわかりません。でも、2人の真剣勝負、道策の予想外の手にドキドキしました。

 春海の改暦・天文への真剣勝負も、これからが山場です。第28幕で、陰陽師の土御門泰福(つちみかど・やすとみ)も登場しました。今後の登場が楽しみです。

 原作にはないシーンがたくさん。物語がもっと深く、面白くなっている。えびし先生の絵も好きだ。いい漫画化だなぁ。物語はまだまだこれから。ずっと読みますよ。

・前巻:[コミック版]天地明察 5
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by halca-kaukana057 | 2014-06-01 22:07 | 本・読書

宇宙兄弟 23

 若田さんも無事帰還したので、そろそろ「宇宙兄弟」23巻の感想書きます。いつ出たんだっけ…この23巻…。表紙はせりかさん&絵名ちゃん!…なのに、ぶち壊しのムッタ…w

宇宙兄弟 23
小山宙哉/講談社・モーニングKC/2014

 民間宇宙開発企業「スイングバイ」による、民間宇宙飛行士選抜試験。その試験会場には、奈々美と古谷がいた。面接では、面接官に福田も。
 一方六太はキャプコムとして、ビンスたちCES-62クルーの帰還に携わっていた。そして、せりかと絵名もISSへ向かおうとしていた。2人の家族も打ち上げを観るためにアメリカへ。せりかの母、絵名の妹、そして日本では子ども時代のせりかと交友のあった者も、それぞれの想いを抱きながら打ち上げを見守る。

 23巻は盛りだくさんです。まず、民間宇宙飛行士。ムッタとゲイツさんの奮闘と笑川さんとの合意で、新たに開かれた宇宙への道。22巻の最後のほうで出てきましたが、あの古谷やっさんが再登場です。ばななちゃんこと奈々美ちゃんも一緒に、これは今後目が離せない展開になってきました。ばななちゃんが可愛いです。

 23巻のメインは、ISSへ向かうせりかさんと絵名ちゃん。病に倒れた父と、同じ病と闘っているシャロンのためにも、ISSで治療薬の研究がしたい。その夢を叶える時が来ました。時を越えた父からのお祝いメッセージには、私もうるっと来てしまいました。日本では、せりかさんが子どもの頃に親しかったコロッケ屋のおじさんも打ち上げを見守る。誰かが持つ夢は、他の人の心も照らすのかもしれない。そう感じます。
 一方、絵名ちゃんも、家族に見守られて宇宙へ飛び立ちます。弟や妹たちの面倒を見てきたしっかり者の絵名ちゃん。その姿を一番よく見ていた妹のケイちゃん。以前も、ケイちゃんは登場しましたが、ケイちゃん視点の絵名ちゃんのかっこよさにしびれる。

 そんな2人の打ち上げの前、少し不穏な出来事が。以前からせりかさんを付回していた製薬会社の社員たち。自社の薬を宇宙へ持っていってもらおうと直談判。勿論、JAXAとNASAの審査を通らなければ実験に組み込むことも、持ち込むことも出来ません。何とかその場を離れたせりかさん達ですが…製薬会社の男の一言が気になる。これから何も無ければよいのだが…。せりかさん、絵名ちゃんのミッションが無事に、何事も無く完遂しますように…。

 さて、ムッタたち「ジョーカーズ」CES-66の打ち上げも近づいてきましたが…ここでアクシデント発生。これは一体…。何かを知っているようなエディ。ムッタたち「ジョーカーズ」は無事に月へ行くことが出来るのか。ムッタなら、きっと今度もやってくれると思うけど…。24巻を待ちます。

・22巻:宇宙兄弟 22
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by halca-kaukana057 | 2014-05-16 21:31 | 本・読書

運命と呼ばないで ベートーヴェン4コマ劇場

 クラシック音楽界で今話題沸騰中(多分…いや、きっと!!)の漫画です。


運命と呼ばないで ベートーヴェン4コマ劇場
NAXOS JAPAN:作/ IKE:画/学研パブリッシング/2014

 1801年、ウィーン。音楽家を志す少年・フェルディナント・リース、16歳。ドイツのボンの宮廷音楽家(ヴァイオリニスト)だった父がかつて弟子にしていた男の弟子になるために、ウィーンにやってきた。その男は、その父もリースの父と同じくボンの宮廷音楽家で、ヴァイオリンは苦手だったがピアノは得意。13歳にして、父に代わり宮廷音楽家となった。そして、今はウィーンでピアニストとして、作曲家として活躍していた…ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。この時30歳。紆余曲折を経て、ベートーヴェンの弟子となったリース。父からベートーヴェンがどんな音楽家か聞いてはきたのだが、実際は…

 クラシック音楽レーベル・NAXOS JAPANが公式ウェブサイトで連載していたのが、この漫画「運命と呼ばないで」(略して「運よば」)。ベートーヴェンの4コマ漫画?よくわからないまま読んでみたら、面白い。ギャグコメディで、破天荒なベートーヴェンを、彼に振り回される弟子のリース君の視点で描いている。笑えるのだが、ベートーヴェンの伝記になっているし、読み進めていくうちに「そうだったんだ」という発見もあり。連載が終わった後に、「webで読めるけど、せっかくなら書籍化しないかな~」と思いました。ツイートもしました。そしたら本当に書籍化してしまいました!!喜んで買ったのは言うまでもありません。

NAXOS JAPAN:ベートーヴェン4コマ劇場「運命と呼ばないで」
 全話読めます!まずはここで読んでみてください。公式サントラもあります。
Twitter:NAXOS JAPAN ナクソスジャパン(@naxosjapan)
 ↑「運よば」全面推しの公式ツイッター。

 この作品の元になっているのが、この弟子のフェルディナント・リースとベートーヴェンの親友であるフランツ・ヴェーゲラーによる「ベートーヴェンに関する覚書」という著作。ベートーヴェンに関する思い出を書き残した本なのだが、ベートーヴェンの天才…破天荒な一面から、恋愛関係まで記されているという。「運よば」を読むまで、リースのことも、この「ベートーヴェンに関する覚書」のことも、この漫画に出てくる登場人物の多くのことも、そしてベートーヴェン自身のこともよく知らなかった。ベートーヴェンと言えば、9つの交響曲や多くのピアノソナタや室内楽を作曲し、怖そうな顔の肖像画が学校の音楽室に張ってあって、病気で耳が聞こえなくなり苦悩の人生を歩んだ孤高の作曲家…というイメージしかなかった。ベートーヴェンの作品は、色々と聴いてきたのに、ベートーヴェン自身や、ベートーヴェンの周りの人々について、ベートーヴェンが生きていた時代のヨーロッパ情勢については何も知らなかった…とこの本を読んでまず思った。ギャグマンガなのに。そう、ギャグマンガなのに…コメディなのに…いや、コメディでもあったのだ。

 この「運よば」で描かれるベートーヴェンは、実に人間味あふれる男。ピアニストとしても大活躍、ピアノバトルでは即興の超絶技巧を披露し勝利。何か頭に来るとギロチンチョップ(!?)をくらわせる。下の弟は薬局で大もうけしているのに、ベートーヴェンは貧乏金欠…。でも、恋人(弟子でもある)とはラブラブ。弟子のリースは、そんなベートーヴェンに振り回されてばかり…。リース君がんばれ!と何度思ったことか…。ベートーヴェンも破天荒ではあるけれども憎めない。友人で専属音楽家となったヴァイオリニストのシュパンツィヒや、年下の弟子チェルニー(あのピアノ練習曲のチェルニー。イメージが変わりました)、パトロンのリヒノフスキー侯爵(存在感半端ないw)など、個性的で愉快な仲間たち(?)も楽しい。ベートーヴェンは孤独、孤高の作曲家だったなんてイメージはどこからやってきたのだろう…?勿論、ギャグ4コマなので誇張表現はありますが、書籍化で追加された「楽屋裏トーク」や「リヒノフスキー侯爵の勝手に萌えレクチャー」コラムで史実や解説も。さらに、マニアックな作品もCD化しているNAXOSの強みを生かした曲解説・関連CD紹介も。読むだけじゃない、読んでいるとベートーヴェン作品は勿論、リースやチェルニーたちの作品も聴きたくなってきます。

 しかし、コメディだけではない。当時のヨーロッパはフランス革命の後、戦争の最中にあり、宮廷音楽家はリストラ。ベートーヴェンとリースの故郷であるボンは戦場となってしまった。音楽は貴族のもの、という時代は終わり、趣味でピアノ演奏する、ピアノを習う人々も増えていった。音楽に対しての考え方や、音楽家の立場が変わりつつあった時代。ああ、現代と変わらないのだな、同じなのだな…と思ってしまう。音楽とは何だろう。この「運よば」で描かれているベートーヴェンの時代も、音楽が貴族のものから一般市民へのものへ変わりつつあった。現代、ベートーヴェンの音楽というと「”崇高な”クラシック音楽」というイメージだが、当時にしてみればベートーヴェンの音楽も流行の音楽だったわけだ…。だから、この漫画が投げかけている「音楽」「音楽家」は、クラシックに限らず、全てのジャンルで言えることだと思う。

 そして、耳の病気を自覚していたベートーヴェン。ピアノはもう弾けなくなるかもしれない。作曲しても、その音・音楽は聴こえない…。ここでますます「音楽」「音楽家」とは何なのか、と思ってしまう。

 それらを経てのop.15、リースがピアノのソリストとして、「ピアノ協奏曲第3番」を演奏する、演奏会デビューする回。ピアノ協奏曲第3番は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で一番好きな作品。その3番に、こんなエピソードがあっただなんて…。

 「音楽家」と言っても、作曲家、指揮者、演奏者、指導者と分かれる。全部やっている人もいるし、演奏一筋、作曲一筋という人もいる。そして、師匠と弟子の関係もある。その中で、どう「音楽」をつくっていくか。どう演奏し、どう人々に届けるのか。どんな「音楽」を届けたい、表現したいのか。そんな葛藤を乗り越えてのリースの演奏は楽譜も残っていないけれど、頭の中でピアノ協奏曲第3番第1楽章を再生しながら、想いをめぐらせていました。このシーン、セリフもなく、絵もシンプル。しかも4コマなので、普通の漫画の表現とも異なる。シンプルな表現で、絵だけで音・音楽を、そして人々の心の動きを伝えようとしている。想像の余地もあり、シンプルだからこそ絵から音楽が伝わってくるようで…この回を読んだ後ツイッターにも書いたのですが、大好きなピアノ協奏曲第3番が、ますます好きになった。

 IKEさんの絵も、コミカルで可愛らしく、時にリアルで、うまいなと思いながら読んでました。「創作ノート」で、「運よば」が出来るまでが解説されています。漫画の描き方の部分に注目してしまいました。
 ちなみに、物語を考え、ネームを書いているNAXOSの担当さんは、元々ベートーヴェンの研究をされている方なのだそう。創作・誇張・ギャグと、史実をうまく織り交ぜられた理由は、ここにあったのか。この漫画、学校の図書室の、ベートーヴェンの伝記の横に置いても問題ないと思う。
Excite Bit コネタ:エキサイトニュース:ベートーヴェンの意外な素顔をマンガで楽しむ『運命と呼ばないで』
 ↑NAXOS担当さんへのインタビューや裏話などが読めます。

 いきいきとしたベートーヴェンやリースたちの音楽家として…いや、人間としての物語。オススメします。最後に、私のお気に入りキャラクタはシュパンツィヒさんですwチェルニーも、あのピアノ練習曲(「100番練習曲」を途中で挫折した)のイメージしかなかったのがイメージ変わりました。チェルニーがいたからこそ、ピアノも一般市民にここまで普及したのかな…。
 まずは、ベートーヴェン作品を聴きまくりたい…。リースの作品、特にピアノ協奏曲を聴きたい…。
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by halca-kaukana057 | 2014-05-08 22:49 | 本・読書

ヴィンランド・サガ 14

 相変わらず漫画(読んだ本全般)の感想を書くのが遅いです…。ようやく書きます、「ヴィンサガ」14巻です。


ヴィンランド・サガ 14
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2014

 クヌート王率いる部隊とケティル農場側の戦は、クヌート側の圧倒的な力によりケティル農場側は壊滅。クヌートはケティル農場側に降伏勧告を出す。停戦の条件は、ケティル一族全員の投降、平和喪失(事実上の国外退去命令)。もう戦える兵力も僅かだが、トールギルはまだ戦うつもりでいる。だが、農場の主のケティルが意識不明の中、ケティルが跡継ぎと決めたオルマルに決定権が。オルマルは降伏を受け入れることに。
 一方、レイフ・エリクソンと再会し、「ヴィンランド」を目指すことにしたトルフィンは、エイナルとともに農場をあとにしようとしていた。しかし、ケティルたち一族のことが気になるトルフィンは、クヌートに会って和平交渉しようと部隊の者に名乗り出るが…。

 奴隷編のフィナーレです。いよいよトルフィンが「ヴィンランド」へ向かう時が来た…の前に、ケティル農場での戦の始末が。このままでは、ケティル農場はクヌート率いるデンマーク軍に搾取されてしまう。奴隷として働き、その暮らしは楽ではなかったとは言え、トルフィンは大旦那スヴェルケルや農場の主ケティル、エイナルや”蛇”をはじめとする客人たちがいたからこそ、「ヴィンランド」に向かおう、「ヴィンランド」に新しい国をつくろうという気になれた。アルネイズやガルザルの悲劇とともに。そんなケティル農場を見捨ててはおけない。トルフィンとクヌートはこのまま再会せずに終わってしまうのかと思っていたのですが、再会へ向かいます。

 しかし、クヌートはイングランドを支配するデンマークの王。かつて従者であったとは言え、今は奴隷から解放されたばかりのトルフィン。簡単に会えるわけがない。クヌートの部隊の者に暴力をふるわれても、応戦しないトルフィン。アシェラッドに騙され、戦うことになってしまった時の父・トールズを思い出します。トルフィンは、トールズ、そしてアシェラッドの真意を確実に受け継いだのだな…殴られ続けるトルフィンの姿は痛々しいばかりですが、トルフィンの本当の強さを実感しました。

 そして、ついに再会したトルフィンとクヌート。エイナルも、ヴァイキングに家族を殺され支配され、奴隷になったこれまでの思いの丈をぶつけます。エイナルも強くなった。
 クヌートも、トルフィンと同じように楽土をつくる、と言っている。王となり、その途中である。そのクヌートの国づくりの根幹には、ヴァイキングとキリスト教の思想があった。キリスト教を信じつつも、ヴァイキングはそれに反する。ならば、ヴァイキングを救う国をつくろう、と。クヌートも、ノルドの王、ヴァイキングの王として、何が出来るか、何をすべきか、考えていたのです。ヴァイキングたちと、支配下のイングランドの人々と、父・スヴェンの亡霊の声の間で。あの美少年だったクヌートが、すっかり風貌も変わって王となって再登場した時は一体どうしたことかと思いましたが、王としての道は茨の道だった、この今の姿はその道を歩いてきた証拠なんだな…とクヌートの姿を見て思います。

 新しい国をつくる…トルフィンもクヌートも同じことを言っている。しかし、目指すもの、思想は異なる。トルフィンが選んだ思想、行動には納得しました。前巻13巻で、苦しいばかりなのに何故生きなければならないのかという言葉を残して死んだアルネイズを思い出します。ノルド人・ヴァイキングの思想・力・強さからはみ出してしまった、落ちぶれてしまった者はどうしたらいいのか。行く場所、生きる場所が無い…今ここには無くても、別の場所にならあるかもしれない、いや、つくろう。それぞれの国をつくるトルフィンとクヌート。トルフィンの考えを聞いた後のクヌートの笑顔がとても印象的だった。これまで、父・スヴェンの亡霊にうなされてきたのがふっきれたように。クヌートとトルフィンが再会できて、本当によかった。

 そしてもうひとつの再会…トルフィンがアイスランドに里帰りします。父・トールズを殺したアシェラッドに復讐をすると誓って、アイスランドを飛び出したトルフィン。十何年ぶりです。ヘルガ母さんとの再会には涙腺が…。そして、お待ちかねユルヴァ姉さんも再登場!!待ってました!!再会は…読んでのお楽しみとだけ言っておきます…ユルヴァちゃんはやっぱり最強です…。

 15巻からはいよいよ「ヴィンランド」を目指すことになるはず。盛り上がってまいりました!!

・前巻13巻:ヴィンランド・サガ 13
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by halca-kaukana057 | 2014-04-29 22:05 | 本・読書

星の案内人 1

 新たなる天文宇宙系漫画が登場したとのことで、読みました。読まないわけには行かない!表紙もきれいです。


星の案内人 1
上村 五十鈴/芳文社・芳文社コミックス/2013

 都会から離れた山の中、「小宇宙」という不思議な建物がある。中は私設のプラネタリウム。解説をするのは”おじいさん”と、そこに居ついている少年・トキオ。「小宇宙」に訪れる様々な人々。旅先で道に迷い、人生にも迷ってしまった美容師・糸子。かつては賞もとったが今はやさぐれてしまっている小説家・志村。故郷であるこの山の中を出て東京で働いているが、母校の小学校が廃校になると聞いて気になってやってきた青年・瀬尾。夜中に原付を走らせ、偶然たどり着いた女子高生・明日香。「小宇宙」のドームの中で、プラネタリウムは彼らに様々な星・宇宙の姿を映し出す。


 田舎の小さな施設プラネタリウムが舞台。小さな私設プラネとは言え、投影機は手作りなのに非常に本格的。スペックの部分にまじでか!?と唸ってしまいました。そのプラネの主・”おじいさん”。陽気で人懐こくとても親切。「小宇宙」に行っておじいさんに会えば、何か食べ物飲み物が出てくる。そしてプラネに居つく少年・トキオ。謎めいた少年ですが、5~7話でどんな状況に置かれているのか、少し明らかになります。おじいさんのプラネ、「小宇宙」が好きで、おじいさんのように投影生解説や星空案内をしようとしている姿がけなげ。

 そのプラネ「小宇宙」には、ふとしたことがきっかけで様々な人が訪れる。皆、心の中に迷いや悩み、不安、生きづらさを抱えている。そんな彼らに、おじいさんとトキオは様々な天体・星を映し出し、見せる。宇宙の姿や魅力を熱く語る。時には実際の星空も見せる。そして、科学的・天文学的な方向から、歴史・文化・民俗学の方向から、おじいさんは宇宙に、星空にその人の心をも映し出す。

 星空はそこにあるだけ。頭の上に広がっているだけなのに、人間は天体や宇宙のことをもっと知りたくて観測・研究し、また世界各地でそれぞれの星座をつくり、神話や物語を星空に当てはめた。それぞれの生活や1年間のサイクルなどにもとづいて、星に名前を付け、季節がめぐり生活も変わるのを星を観てわかるようにした。私たち人間にとって、星空・宇宙は大昔から身近な存在だった。暗い澄んだ星空を観られる場所が少なくなった日本で、この「小宇宙」には、そんな人間にとって身近である宇宙・天体・星がある。投影機も、おじいさんの解説も、人の有様、心を宇宙に投影している。星を観て、自分の心も観る・向き合えるプラネタリウム…なんて素敵だろう。私が普段、ひとりで星空を眺めていて、思うことや考えることはたくさんある。でも、こんなおじいさんやトキオに解説してもらって、「小宇宙」に集う人々と一緒に語りながら観ることができたら、もっと星見が楽しく、好きになれると思った。

 日本はプラネタリウム大国。全国各地の科学館や天文台では、最新の投影機や巨大なドームで、星空を堪能できる。全天周映画で、臨場感溢れる宇宙の旅に出かけることも出来る。一方で、客足も少なく、老朽化し、新しくすることも出来ず閉館するプラネタリウムも少なくない。最新機器でもない、ドームも大きくないけれど、解説員さんが巧みで面白い生解説をしてくれるところもあるのに、残念でならない。
 この「小宇宙」のようなプラネタリウムがそばにあればいいなぁ。読んでいて、純粋に思えました。

 まだ物語は始まったばかり。この作者さんも初めての単行本だそうで、これからが楽しみです。絵も、あたたかな絵で好きです。キャラクタも個性的な面々で楽しい。志村は一見ひねくれ者ですが、なかなかいい奴です。明日香ちゃんも可愛い。そしてふみさんとトキオがこれからどうなるのかも気になります。

 2巻を楽しみに待ちます。
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by halca-kaukana057 | 2014-01-22 21:24 | 本・読書

ぼのぼの名言集(上・下)

 先日本屋で偶然見つけて、これは読みたいと思って手にとってました。

ぼのぼの名言集(上) 「今日は風となかよくしてみよう」

いがらし みきお / 竹書房・竹書房新書/2012


ぼのぼの名言集(下) 「理由はないけど すごくさびしくなる時がある」

いがらし みきお /竹書房・竹書房新書/2012



 いがらしみきおの漫画「ぼのぼの」。大好きな漫画です。学生時代はずっと読んでいました。可愛らしいぼのぼのやシマリスくん、ちょっと乱暴だけど憎めないアライグマくん、哲学者のようなスナドリネコさんに、スナドリネコさんのライバルヒグマの大将、面白いことを考えているフェネギーくん…のんびりしていて、腹の底から爆笑できて、シュールで、時に哲学的なお話が大好きです。しばらく単行本も読んでおらず(連載はまだ続いています!)、今はどんなお話になっているのかわからないのですが、「ぼのぼの」好きだなと思いながら読んでいました。

 「ぼのぼの」の作品中の「名言(迷言)」を集めたこの本。ことばと、その言葉が登場する「ぼのぼの」の各シーンの漫画と、シーンの簡単な解説が書いてあります。その言葉を深く掘り下げようとか、意味を持たせようという解説はありません。各シーンの漫画を読んで、その流れからこの言葉が生まれたのだなぁという感じで読めます。それなのに、どの言葉も響いてくる。自分や自分の周囲のことに置き換えることもできるし、自分に足りなかった・求めていた言葉にも出会える。あまりにもシンプルな、ストレートでその通りな言葉もあって、こんがらがった頭の中にさーっと清らかな水が流れるような気持ちにもなる。そして、笑える。どんな”名言”を言っても、アライグマくんやアライグマくんのお父さんがぶち壊すこともあるし、シマリスくんの家族がひっくり返すことも多い。ぼのぼのやぼのぼののおとうさんが自滅(?)する時もあり、クズリ親子はマイペースだし…。哲学的な内容と、笑いがちょうどいい塩梅で共存している。「ぼのぼの」の森は本当に楽しそうでいいなぁ。

 ぼのぼのたちの視点も、この漫画の好きなところ。海や森の中で、仲間の動物たちと、自然に触れ、自然と遊び、自然を見つめ、自然に学び、自然の中で生きて暮らしている。ぼのぼのたちの住む海・森では、時に奇妙なことも起こる。不思議なものもある。その自然をどう捉えるか、その言葉の数々が忘れていたことを思い出させてくれる。自然をありのまま、仲間をありのまま受け入れる。素直に感動する。その視点・様子に頷いてしまう。シンプルなのがいい。

 以前単行本を読んでいたとは言え、読んでいない巻も多かったので、単行本が気になって仕方ありませんでした。そして、下巻はまだ読んでいない巻のネタバレにもなる…いや、気になってますます読みたくなります。下巻の30巻以降の展開が特に気になります。随分変わってきたのかな。これは、読むしかあるまい…?

 上巻では、いがらしみきお先生と東野幸治さんの対談。下巻は哲学者・内山節(たかし)さんが哲学的に「ぼのぼの」を読み込みます。この「ぼのぼの」を哲学的に読解すると、こうなるのか…面白かったです。「ぼのぼの」の世界の時間の流れ・時間の捉え方になるほどと思いました。

 「ぼのぼの」の魅力がつまった2冊です。

 この本を読んでいるタイミングで、こんなニュースが…。
ねとらぼ:ぎゃあああああ! 「ぼのぼの」みんなのトラウマ「しまっちゃうおじさん」が15年以上ぶりに再登場
 しまっちゃうおじさん!wアニメでは原作以上に強烈なインパクトで描かれた「しまっちゃうおじさん」。何と再登場だそうです…。アニメのしまっちゃうおじさんは、MADも沢山作られ、私も爆笑して観ていました。アニメ「ぼのぼの」もまた観たいなぁ。漫画を読んでいた時にはテレビアニメは観てませんでした(放送局がなかった)。アニメも観たいなぁ。アニメはテーマソング「近道したい」「Love Two Love」(須賀響子)もいい歌だったなぁ。

 ちなみに、「ぼのぼの」には絵本もあります。

クリスマスのこと (ぼのぼのえほん)

いがらし みきお / 竹書房


 世の中に数多あるクリスマス絵本の中でも、この絵本は特に好きです。
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by halca-kaukana057 | 2014-01-21 22:54 | 本・読書

天にひびき 8

 今年読んだ漫画の感想を今年中に書く…まだあります。こちらは割と最近の「天にひびき」8巻。


天にひびき 8
やまむら はじめ/少年画報社・ヤングキングコミックス/2013

 成田空港。ひびき、梶原と同期の指揮科・大場がウィーンに留学するのを見送っていたひびき、秋央たち。ちょうど同じ時、成田に降り立った2人…ドイツから来た女と男。ひびきたちが帰ろうとするところで、その女と如月はぶつかってしまう。それを見ていた男に、如月は見覚えがあった…いや、よく知る男だった。翌日、大学で練習している秋央と南条の話に割って入ってきたその男・桂木和弥。音大生だった頃、如月とカルテットを組み、そのリーダーだった。ヴァイオリンの腕前はかなりのもので、卒業後はカルテットを引きつれヨーロッパへ。しかし、如月はその直前に腕を故障、渡欧せず演奏活動から離れていた。如月にも、秋央や南条にも厳しい言葉を投げつける桂木。如月も南条も憤るが、演奏家としては一流。数日後、3人は桂木のコンサートへ向かう。そこで3人が聴いた桂木の演奏は…。


 7巻から打って変わって、新キャラ登場です。そしてこれまで少しずつ話に出てきた如月先生の過去も語られます。桂木さん…全く遠慮も気遣いもしない、キツイ、口が悪い、オレ様人間です。でも、ヴァイオリニストとしては一流。秋央もそれをちゃんと理解してて、
できる人ってのは大抵みんな強気だったり押しが強かったり
まァ あれだけ口の悪い人も滅多にいないと思うけど
でもああいう人達ほど 人一倍努力してるし
自分に厳しいってのもわかってきたから
(25~26ページ)
と言っている。そして、リサイタルの演奏で、圧倒される3人。特に南条君。如月先生のことが気になっていて、その如月先生と過去に何かあったと思わせるような雰囲気。前の7巻、コンクールで自分の課題も自覚し、如月先生のもとでうまくなろう、うまくなろうと努力している…。それなのに、世の中にはとてつもなく巧く才能のある人がいて、海外でも活躍している。桂木の演奏を聴きながら涙し、その後また大学にやってきた桂木に演奏の際のコツを(半強制的に)教わった南条君。如月先生とのこと、性格の悪さで認めたくは無いけれど、その腕前も、演奏の際のコツも巧みなことに触れて成長しようとしている。7巻に続けて、南条君を応援したくなります。がんばれ南条君!

 そして、如月先生も、桂木と組んでいたカルテット、腕の故障、ヨーロッパへ行けなかったこと…そんな過去のしこりを乗り越えました。桂木は成功したが、渡欧したあとの3人のその後は知れないまま。そんな厳しい世界。そこへひとつの提案をした桂木…これが如月先生も、特に南条君も揺るがすわけですが、如月先生が桂木とカルテットを組んでいた時のことを冷静に見つめ、出した答えがとてもよかった。清々しい。桂木に当たっているスポットライトを、カルテットのメンバーとして一緒に浴びていただけ。その夢は、桂木のものであって、自分の世界のものじゃない。それよりも、自分は今ここで大切にしているやるべきことを、やりたいことをやる。如月先生の手紙の部分を、何度も何度も読みました。桂木だってただ巧いだけじゃなく、ちゃんと努力もしている。だから、南条君に的確なアドバイスもできた。桂木は桂木で、如月先生は如月先生で、それぞれの音楽の世界で生きてゆく。如月先生、素敵です。

 後半は、文化祭の2つの学内オーケストラを、ひびきと梶原がそれぞれ指揮をすることに。ひびきにとっても、梶原にとっても、オケを指揮するチャンスがめぐってきました。梶原が指揮するAオケ、ひびきが指揮するBオケ、指揮科の2人の対決…と梶原は意識している模様。今までオケを指揮できる機会が無かったからねぇ…。がんばれ梶原!普段はチャラいですが、3巻で苦学生であることも判明し、それを周囲にわからないように努力を続けてきた。梶原もがんばって欲しいです。

 一方のひびき。これまでの21cオケなどでの指揮の反省から、指示も明確に的確に、わかりやすくオケと曲をまとめあげてゆく。ひびきも成長したか…と思えたのですが、一緒に演奏している秋央から見ると「ドキドキしない」。何が出てくるかわからない、ひびきもコンサートマスター(21cオケの時の友田さん)もオケも必死でドキドキしてて…それがない。そしてついに秋央が、驚くべき行動に。何とコンマスに!?最初の頃の秋央くんを思うと、本当に思い切った、大それたことを…。秋央の目標、夢に向かっての第1歩と思ったが…そうは簡単にいかない。

 如月先生と桂木さんが組んでいたカルテットの話で、桂木に当てられたスポットライトを浴びていただけ、という話をしましたが、秋央くんもそうなりそうだったのかもしれない。指揮者としてまだまだ未熟なところがあるひびき。それでも、小学生の時にプロオケ相手に天才的な指揮をして、セミプロオケの公演も成功させた。才能はじゅうぶんにある。その音楽をずっと追いかけてきた、そしていつかコンマスとして一緒に演奏したいと思ってきた。そしてそのチャンスがめぐってきたけれども、秋央はひびきへ当てられたスポットライトを一緒に浴びたかっただけな感じになってしまった。

 普段、オーケストラを聴いていて、コンサートマスターの役割というのは、実際にコンサートに行くかテレビなどの演奏の映像を観ないとわからない。CDではわからない(わかる人はいるんだろうなぁ)。有名であればあるほど、指揮者に目が耳がいってしまうが、オーケストラのまとめ役はコンサートマスター・コンマス。指揮者の指示を、やろうとしていることを、オケ全体に伝える。言葉ではなく、その動き、演奏で。思い悩んだ秋央が友田さんからコンマスについて聞くシーン、勉強になります。そうか、オーケストラ内では楽器や奏者の位置によって届く音の速度が異なる…確かに。舞台の範囲じゃそんなに影響ないだろうと思っていたが、相手は秒単位で刻々と変化する音楽。しかも、その速度が違っても音を、演奏を合わせることが基本中の基本。オーケストラも物理だなぁ。
 その友田さんと秋央が話しているシーンで、ひびきについて友田さんが語る部分が気になりました。何かのフラグですかこれは?いや、これは1巻から出てきていることではあるけれども…。

 ひびきへ当てられているスポットライトを一緒に浴びる、のではなく、ひびきに、そしてオケ全体にスポットライトが当たるように…秋央の挑戦、奮闘は続きます。がんばれ!8巻は応援してばかりだなw

 ちなみに、冒頭に出てきたドイツ人女性…ひびきと少し話をし、そしてひびきの父とも会い、何かを決めていた…。一体何が始まるのでしょう…?ひびきに何が起こる?気になる。

 8巻の吉松隆先生のコラムは、才能について。音楽の話ですが、音楽に関わらず、才能や努力について悩んでいる人に読んで欲しい内容です。私も、読んでいて納得しました。

・7巻:天にひびき 7
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by halca-kaukana057 | 2013-12-30 20:25 | 本・読書

ムジカ 2 [完結]

 今年読んだ漫画の感想です。秋ごろに出ていたこの漫画。えっ、これが最終巻?


ムジカ 2
かかし 朝浩/幻冬舎・バーズコミックス/2013

 ヴィーク家で、相変わらず厳しいピアノのレッスンと家事に追われているロベルト・シューマン。クララはますますピアノの腕をあげていた。シューマンの親友となったメンデルスゾーンも、作曲に演奏活動に邁進している。シューマンはそんな中で、自分がどんな音楽家になりたいのかを考えていた。
 家事を追え、メンデルスゾーンとクララの演奏会に走る途中、シューマンは風変わりなフランス人に会う。当時のフランスは革命直後、音楽どころではないのでドイツに来た…と話すその男。ベルリオーズ。「幻想交響曲」を発表したが、パリでも意見が真っ二つ。ドイツ公演を望み、メンデルスゾーンのもとにやってきたが、断られてしまう。ベルリオーズがドイツで音楽活動を出来るため、何故かシューマンも巻き込まれ、道を探す2人だが…。


 2巻、強烈な音楽家が2人登場します。まず前半はベルリオーズ。ロックンローラーのようなキャラクターデザイン。台詞も音楽観も強烈です。「幻想交響曲」そのものが強烈ですからね…。そしてもうひとり、後半では18歳のワーグナーも登場します。まだ楽劇を書きはじめる前のワーグナー。こっちも強烈です。もう自分の世界に完全に入ってしまっています。

 こんな強烈な音楽家2人と出会い、シューマンもクララも影響を受けないわけがありません。音楽が好きで、音楽は楽しい、そう思っているシューマン。しかし、ベルリオーズも若きワーグナーも、それぞれの音楽観を持って、孤高でいる。そんな2人に、シューマンは様々な手で近づこうとする。まだ、作曲家としてのシューマンは描かれていない(描かれずに終わった…)のですが、このロマン派の音楽界を俯瞰するように評論活動もしていたシューマンらしい一面がうかがえます。クララも、そんなシューマンとともに、ピアニストとして成長してゆく様が一途でみずみずしい。時に一途過ぎるところもあるけれど、素直で情熱家なシューマンとちょうどいい。

 さて、シューマンとクララの物語はこれから…と思っていたら、ここで完結です。えっ、作曲家となり、苦難の末にクララと結婚。ショパンは?ブラームスは?ダヴィド同盟、評論活動は…?シューマンの人生はこれからが面白い、どう描くのか気になっていたのですが…残念です。
 ただ、ベルリオーズと若きワーグナー。特に楽劇を書き始める前のワーグナーの話は興味深かった。こんな方向から見るシューマンの人生も、面白いかもしれない。勿論フィクションはかなり入ってます。史実も入ってます。
・1巻:ムジカ 1
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by halca-kaukana057 | 2013-12-27 21:20 | 本・読書

アステロイド・マイナーズ 2

 今年中に今年読んだ漫画の感想書ききれるかな、の記事です。今日は夏に出た漫画です…。もう年末ですよ…。


アステロイド・マイナーズ 2
あさり よしとお/徳間書店・リュウコミックス/2013

 小惑星に移住し、小惑星で生まれ育ったタカシ。小惑星内部の氷を掘って水にし、ないものは地球から運んでくるしかない。食料も土地もものも、空も自然もない…地球へ行きたいと思うタカシたちを描いた「小惑星(やま)の日」。「宇宙戦闘機」をとある国の独裁者から発注されてしまい、更にその独裁者相手に「模擬戦」を担当することになった女性社員、ルナ。世界一の「戦闘機」で派遣を握りたい独裁者と、宇宙を知らない独裁者に一泡ふかせてやろうと思うルナの「独裁者の幻想」。月の北極の地下にある氷の試掘をする男2人が、宇宙の理想・夢と現実の狭間で落胆しつつも働く「月は地獄だ」。小惑星で資源採掘を行うために派遣されてきた男が、とんでもない目に遭ってしまう「ドワーフの村」。この4作品が収められています。

 1巻の発売から随分経ちました。2巻の発売を待っていました!
 1巻の3話が、2巻の「小惑星(やま)の日」の続きに当たります。成長したタカシたちが実習生として働きながら、進路志望を出す時期になりました。1巻の2話の続きが「独裁者の幻想」。文月の勤務する会社で、とんでもない宇宙船の発注を受けることに。

 「月は地獄だ」でも、「ドワーフの村」でも、月や小惑星での限られた生活が描かれている。今、月や火星、小惑星の探査をしているけれども、後に有人探査になり、開拓することになれば…こんな生活が待っているはずだ。地球では当たり前にあったものが、他の天体ではない。食料も、地球のような豊かなものではない。でも、私たちは宇宙を、宇宙で暮らすことを夢見ている。国際宇宙ステーション(ISS)が今はその場になっている。ISSに滞在している宇宙飛行士たちは、過酷な訓練を経て、ISSで行われている実験を専門外でもこなし、日々暮らし、地上の私たち一般向けに様々な広報活動を行っている。その様を観ていると、宇宙に行って見たい、無重量(微小重力)を体験してみたい、青い地球を見てみたい…と思うけれども、様々な苦悩や暮らしで困ることはあるだろう。ISSはまだ地上400km,宇宙の波打ち際に過ぎない。もっと遠く…月や火星、小惑星では、ISSとは異なるところがたくさんあるだろう。まだまだ人類は宇宙を知らない。そんな部分を、ユーモアも交えて、リアルに表現しています。描き方によっては、宇宙なんてとんでもないところ、何故こんなところに行きたがるのか…とも思えてしまうことを、巧い塩梅で描いている。1巻よりも更に深いところまでリアリティを表現しています。

 「独裁者の幻想」は、笑えます。これを読むと、一部宇宙SFアニメ・漫画にいちいちツッコミを入れたくなるかもしれませんw宇宙での重力の法則を知らない独裁者が滑稽。でも、最後はちょっとしんみりしてしまいます。

 「ドワーフの村」はそっちの方向なのか!?wと思いつつも、最後でとても重要なことを語っています。宇宙には、地球に普通にあるものがない。地球では難なく生きられる条件が、宇宙にはない。それなのに、人類は宇宙に行こう、住もうとしている。そんなところで、重視されるのは何か…。そう思うと、地球での普通の生活が、生きることが、ちょっと違うものに見えてきます。

 3巻はいつになるかなぁ。楽しみです。
・1巻:アステロイド・マイナーズ 1
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by halca-kaukana057 | 2013-12-23 21:45 | 本・読書


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