人気ブログランキング |
 新年から始まったアニメで、観て面白かったので原作を読み、原作でさらに面白いと感じ、ますますアニメにもハマっている作品があります。その1つ目。

恋する小惑星(アステロイド) 1
Quro(くろ)/芳文社、まんがタイムKRコミックス/2018

 木ノ幡みらは高校に入学したら、天文部に入ると決めていた。子どもの頃、キャンプで偶然出会った男の子と、小惑星を探すと約束したのを叶えるため。しかし、天文部は地質研究会と合併し地学部となっていた。落胆しつつも見学に行ったみらと幼なじみでクラスメイトのすず。部室には、元天文部の部長・森野真理、元地質研で副部長の桜井美景、元地質研の猪瀬舞、そしてみらと同じ新入生が一人いた。部活で小惑星を探したいと言うみらに、その新入生・真中あおは反応。実は、あおはみらと小惑星探しを約束した子だったのだ…。


 アニメ化のニュースで、この漫画を知りました。アニメ放送前に原作を読んでおこうと思ったら、行動範囲の本屋には単行本は置いておらず、ネットで注文することもなく、そのままアニメ放送を迎えてしまった…。アニメを観たら面白かったので、やっぱり原作を購入。普通に本屋にありました。アニメ化の力はすごい…。

 「まんがタイム きららキャラット」で連載中のこの漫画。きらら系の漫画を買って読むのは初めてです。可愛い女の子たちがわいわいしているけれども、この子たちは立派な天文マニア、石・地質・地形マニアでした。河原でバーベキューしていても石ころを探し、何の石かすぐわかる。温泉に行っても地質的な話をしている。合宿も濃い。アニメでは、アストロアーツや「星ナビ」、ビクセン、国立天文台が全面協力。JAXAや国土地理院も全面協力。アニメの星空は実際の星空を忠実に再現。なんだこのアニメ…素晴らしい。

 最初は天文と地質に分かれているけれども、活動を重ねていくとお互いのことを知り始める。みらやあおも石に興味を持ったり、桜先輩やイノ先輩も星を見たがる。それまで知らなかった楽しみに出会い、共有できるってなんて楽しいんだろうと思う。みらはまだ天文に関して知らないことが多い。望遠鏡の操作も最初の頃はできない。あおがリードする形。初めての天体観測で、自転で星がすぐに動いてしまい、視野から外れる話はあるあると頷いていました。一般の人に向けた観望会では必ずと言っていいほど口にしています。そこで、赤道儀を…となるがその値段に驚く。これもあるあるw

 地学部のメンバーは、それぞれ自分の夢・目標ややりたいことを持っている。イノ先輩は地図から地学部に入った。その地図の話がとても面白かった。ちなみに、このアニメを観てから「ブラタモリ」を観るとより楽しめます。私の場合、地学分野は高校の地学で履修済みですが、地図方面はあまり詳しくないので勉強になる。モンロー先輩(部長)にはある夢がある。合宿中に、その夢に手を伸ばそうとするシーンがとてもよかった。桜先輩は石・地質が大好き。その地質を調べるために、2巻であることをするのだが、その時の言葉がとても心に響いた。
「よく分かんないけど面白い」か…
私 趣味や部活の話…クラスメイトには分かってもらえないだろうって決めつけてた
でも でも…やってみる前に無理って決めつけちゃうのはホントーもったいないな
(2巻 55ページ)
 高校生の頃の私そのまんまです。今でこそ宇宙は身近に語られるようになったけれども、私が高校生の頃は宇宙や天文はマニアックな近づきがたいものだったし、高校には地学の授業はあったけど天文・地学系の部活はなかった。今もそうかもしれない。好きな宇宙や天文のことを話しても、変に思われるだろうか、分かってもらえないんじゃないか。だから話すのをためらう。でも、話してみたら興味を持って聞いてくれたことはちゃんとある。高校生の頃の私に伝えられるなら伝えたい。大丈夫だよ、と。
 好きなキャラも桜先輩です。クールでツンデレだけど、実はものすごい熱量を持っているところがいい。

 2巻の観望会。みらやあおが観望会で出会ったある女の子。実際、こういう子いるなぁと思いながら読んでいました。でも、知らないことに出会い、スイッチが入る。自分の知っていることが覆される瞬間のショック、胸の高鳴り。観望会でも、その他のことでも、そんな未知と遭遇し、知っていることの外側に飛び出す瞬間が、参加した人にも私自身にもあればいいな、と思っています。

 原作は3巻が2月発売予定。あおは何かを隠している…あおが心配ですが、まずはアニメを楽しみます。


# by halca-kaukana057 | 2020-01-21 23:01 | 本・読書
 現在BSプレミアムで放送中の「主任警部モース(Inspector Morse)」後味の悪い回もありますが、楽しんでいます。
・1話を観た後:「主任警部モース」も面白い

 回を追うごとにルイスとの連携が揃っていって、モースとルイスはいいコンビだなと思う。今の時代ならパワハラとも言われそうなモースの指示にうんざりしつつも引き受け、けなげに真面目に仕事をしている。「森を抜ける道」では、そんなモースに対してルイスがキレてコンビ解消の危機。クライマックスのルイスの大ピンチには本当にヒヤヒヤした。モース急げー!!と心の中で絶叫してました。「カインの娘たち」は、一番後味の悪い回だけれども、女教師ジュリアの策略に完敗。老モースは最後の5分で一気に逆転解決することが多いので最後の5分に期待したのだが、犯人はわかっていても(詳細はわからない)何もできない、解決できないまま終わってしまった…。観た後しばらくモヤモヤしてていました。原作を唯一読んだ「ウッドストック行き最終バス」、かなり変えられてました。あの長編を100分程度のドラマにするとなると仕方ない。学生のアンジーとモースが文学の話で盛り上がるのは、若モースを彷彿とさせてよかったな。あと、「森を抜ける道」から携帯電話やパソコンが出てきて、モースの世界にこんなテクノロジーが合ったのか!と驚きました。

 最初に登場した時は随分とよそよそしく「上司」していたストレンジ。しかしその後、モースに事あるごとに小言を言い、愚痴り、苦労の絶えない警視正に。「刑事モース」の時の間柄とは違うけど、うまくやってるんだなというのは伝わってきますw 監察医のマックス・デブリン医師もモースを支えていた…のに、「森を抜ける道」から監察医が別の人に。デブリン医師どこに行ったの!?お気に入りだったのに…。寂しい。

 今日放送した「死はわが隣人」。観ていたら、「主任警部モース」とその後作られたモースの新米刑事時代のシリーズ「刑事モース(Endeavour)」が繋がった!と感じました。まず、ゲストとして「刑事モース」のサーズデイ警部役、ロジャー・アラムさんが出演している。学寮長選挙に立候補したコーンフォード教授役。サーズデイ(違う)が若い!モースとコーンフォードが会って話すシーンが不思議に見えました。時空が歪んでいる…(違う)コーンフォードの役柄が、ちょっと複雑な立場…。最後はコーンフォード自身も悪かったとは言え、かわいそうな終わり方でした…。アラムさんとしては、その後再びモースシリーズに主要キャストとして関わることになったのは驚きだっただろうなぁ。

 もうひとつ、モースが両親のことを話すシーンが多かった。「刑事モース」では、父親との仲はあまりよくなかったように見えたのですが、齢を取って感じ方も変わったのか…?母親と、母親がクエーカー教徒だったこともあまり前向きには捉えていなかったはず。だからこそ、ファーストネームを人前で言わないようにしていたのだろうか…。Endeavourの名前の由来がわかりました。モースのファーストネームが判明し、同席した事件関係者のセシルやルイスに「笑わないのか」と戸惑う。若モースを先に観てしまっているため、Endeavourというファーストネームにはそんな違和感は覚えない。でも、この言葉を名前にするのは珍しいだろうし、由来はイギリス本国ではあまりいい意味ではなさそうだし…リアルタイムで本国で観ていた人たちにとっては衝撃的だったんだろうな。
 名前が判明し、モースがセシルやルイスの反応を見た後、そしてラストのモースの表情を観て、あれ、若モースに似ている、若モースが齢を取ったらこんな感じなんだろうなと思いました。老モース(オリジナル)と若モースが繋がった!と感じました。「ウッドストック行最終バス」の小説を読んだ後、そして初めて「主任警部モース」を観た後、若モースがこんなおじさんになってしまうのか…とショックを覚えましたが、老モースの魅力がようやくわかってきたような感じがします。実際にこんな上司がいたらあまり関わりたくはないですが…正直なところ…w

 やっぱり原作を読みたいな。図書館から借りて読もうかな。話が複雑なので、貸し出し期間中に1冊だけしか読めなさそう。新版をハヤカワさんが出してくれればいいのにな…古い方は絶版なんです…新版で全巻出してくださいハヤカワさんお願いします…(何度でも書きますw)



# by halca-kaukana057 | 2020-01-18 23:16 | 興味を持ったものいろいろ
 昨年の内に書いておきたかった感想。今年になってしまった…。


ヴィンランド・サガ 23
幸村誠/講談社、アフタヌーンコミックス/2019


 戦いは終わり、シグルドたちはアイスランドに帰ろうとしていた。シグルドの元にやって来たグズリーズ。トルフィンへの想いを口にしたものの、トルフィンの気持ちを確かめずに来たのだった。それを見抜いたシグルドは、トルフィンと話をしろ、気持ちを確かめろとグズリーズをトルフィンの方へ向かわせる。そして、そのまま出港したシグルド一行。グズリーズがどうなったかは聞かないまま…。
 アイスランドに着いたシグルドは、ある決心をしていた…。


 思えば、トルフィンたちはヴィンランドへの資金稼ぎのため、ギリシアへ向かっていたのでした。バルト海でヨーム戦士団のいざこざに巻き込まれて…それで、トルフィンもヨーム戦士団も過去を清算し、向かう方向に向かえたのですが…長かった。18巻辺りで、ヴィンランドどころかギリシアにすらたどり着けるのか不安になった…とこのブログには書いています。うん、今でも不安だ。

 23巻はシグやんがメイン。表紙のシグやんとハーフダン…怖い。まず、グズリーズとの結婚をどうするか。15巻・16巻で、結婚直後、シグルドを刺して逃げたグズリーズ。グズリーズはトルフィンの船に乗り、それをシグルドが追いかけ…てここまで来た。でも、この旅でグズリーズの本当の気持ちを知ってしまった。ハーフダン/シグルド親子の象徴は鎖。鎖で縛り付ける。一方のグズリーズはアジサシ。どこまでも飛んでいく。シグルドは、グズリーズを鎖で繋いでおけない。15巻の感想で、「強がりなワル」と書きましたが、それに加えて優しい。鎖はその優しさを隠すための武器。11世紀のノルドの男は、優しいと生きていけないから。

 アイスランドに帰ってきて、父・ハーフダンに別れの言葉を告げてそのまま去る…つもりだったが、ハーフダンはそう簡単に許しません。捕まってしまったシグルドたち。そのシグルドにとって鍵となるのが、「ハトちゃん」こと、幼なじみで第二夫人のハトルゲルドさん。美人で聡明。ユルヴァとは違う意味で強い。武器の鎖は持っていないけれど、心理的な鎖のようなものは持っています…。でも、素敵な人じゃないですか。

 164話がハイライト。父・ハーフダンとシグルドの親子喧嘩。ハーフダンは何故今までこんなに厳しくしてでも農場を広げようとしてきたか。アイスランドを豊かにするため。アイスランドの土地の限界に屈せず、アイスランドの人たちのためでした。アイスランドを豊かにするためには、もうひとつ、軍団を立ち上げて大陸でヴァイキング、略奪を行う。でも、シグルドはヨーム戦士団の戦いに巻き込まれ、戦い、海外の戦士たちがどんなに強いかを知っている。シグルドが語るアイスランドの"豊かさ"とは。これがよかった。トルフィンの幼少期、トールズがアーレたち村の若者を連れて戦に向かう際、村の若者のことを心配していた。村の若者(トルフィンも含む)は、ノルドの男として戦に憧れる。でも、現実は…。トールズはその現実を知っていたし、シグルドもその現実を知った。だからこそ言えた言葉。シグやんがトールズみたい?

 そして、トルフィンやグズリーズは…。ギリシアへの長旅を全部やるのは難しかったか…。レイフのおっちゃんも齢とったなぁ…。シグルドとハーフダンの時もでしたが、トルフィンに対しても驚きっぱなしのユルヴァの表情がw23巻のユルヴァがちょっと不憫です…w
 再びハーフダン。ハーフダンも変わりました。さあ、これからヴィンランド行きが本格化するのか。楽しみです。

 アニメのことを少し。
・この記事の続きの部分以降:「ヴィンランド・サガ」アニメで原点に立ち返る
面白かった!荒くれたトルフィンを観て、懐かしい…こんな頃もあったなぁと思ったり。トルフィンの俊敏な動き、トルケルの迫力を動くアニメで観られたのは嬉しかった。クヌートの変遷も、アニメだとまた伝わり方が違う。覚醒した後のクヌートはとても堂々としていて、アニメで映えました。そしてアシェラッド。後半は主人公は実質アシェラッドでした。トルフィンが全く出てこない回もありましたし。狡猾ではあるけれども、本当に賢い。アシェラッドの声を最初は軽いなと感じていたのですが、だんだん深い策略家にぴったりな声になってきて、声優さんはすごいなと思って観ていました。ラストはアシェラッドも辛いし、トルフィンも辛い。
 トルフィンはいつもアシェラッドを倒す、父上の敵を討つと言って、決闘も何度もしたけれども、実際にアシェラッドを倒したらどうするか。敵討ちをしたらどう生きたいのか。全く考えてなかったことがアニメではっきりとわかりました。トルフィンにとっては、目の前で父・トールズを殺されて、敵討ちすることだけを考えて生きてきた(その幼いトルフィンがアシェラッド兵団について行って、自分で剣の使い方を覚えていった過程が描かれたのはとてもよかった。)。若さゆえもある。アシェラッドとの性格の違いもある。だが、トルフィンは本当に何も考えてなかったんだなと。だからこそ、ラストのトルフィンの叫びが虚しい。
 2期を思わせるラストでしたが2期はいつになるんだろう。楽しみに待ってます。


 23巻には、読み切り「さようならが近いので」が収録されています。この読み切りをもう一度読みたかったんです。「プラネテス」終了後、幸村先生の次の作品が待ち遠しいなと思っていた頃、この読み切りがイブニングに掲載されました。新撰組を取り上げるとは、「プラネテス」とは大きく方向転換したなぁと思いつつ、沖田の言葉が印象的だと思っていました。
 久々に読み直して、177ページの沖田の言葉が、「ヴィンランド・サガ」に繋がっているなと感じました。
本当のトコさァ ただ殺し合いたいだけじゃないの?
 疑問を持った沖田。はっきりと言い切るトルケルやガルム。それを嫌悪していたアシェラッド。トルフィンは、どの位置だろう?
 ちなみに、絵は「プラネテス」に近い。ロックスミスを思い出します。ロックスミス、今でも大好きなキャラです。

【過去記事】
ヴィンランド・サガ 15 ←なんと、2014年だったよ!
ヴィンランド・サガ 16
ヴィンランド・サガ 17
ヴィンランド・サガ 18

ヴィンランド・サガ 22



# by halca-kaukana057 | 2020-01-17 23:10 | 本・読書

天の川が消える日

 宇宙・天文の本は次々と出ています。比較的新しめの本です。


天の川が消える日
谷口 義明/日本評論社/2018


 天の川を肉眼で観る機会は現代日本では場所、環境、条件も限られる。私もそんなに多く観たことはない。子どもの頃、夏の真夜中に目が覚めてたまたま窓を開けて夜空を見上げたら満天の星空。その中でも細かい星がたくさん見える箇所があった。これが天の川なのかと思った。この天の川を観て、銀河系の姿を考えるのは難しいなと、後に天の川は地球、太陽系も含む、銀河系という星の大集団だと学んだ。今は天の川は銀河系を内側から観たものだとわかっているが、どうやって人類は銀河系だとわかったのだろう。銀河とか何か。そして将来、銀河系がどんな姿になるのか。それを解説した本です。

 「天の川が消える日」というちょっとショッキングなタイトルですが、本の大半は天の川、銀河系、他の銀河の観測と発見の歴史の解説です。高校の地学レベルの内容を解説しています(出てくる数式は高校の地学では扱わないかも)。天の川、銀河系の観測や発見の歴史は、そのまま天文学上の発見と謎の解明の歴史でもあります。観測の方法…可視光から赤外線、X線、電波などへの広がりも。ガリレオ、ハーシェル、アインシュタイン、ハッブル…先駆者たちの研究や発見が、銀河の姿を明らかにする歴史でもある。やがて、ビッグバンやダークマター・ダークエネルギーにもたどり着きます。銀河に関する天文学を一から学ぶ感じです。読みながら、忘れている所もあったので考えながら読めました。

 私たちの銀河系のお隣、アンドロメダ銀河。自分の望遠鏡で、自分で導入して観てみたい天体だ(まだそこまでできない)。銀河が集まっているのは、銀河同士に重力があるから。その重力で、銀河系とアンドロメダ銀河も近づいている。でも、宇宙は膨張しているのだから、2つの天体は遠ざかっているのでは?この疑問の解明が面白かった。パーセクも地学で習ったのに、もう忘れているなぁ…。
 遠い将来、銀河系とアンドロメダ銀河は衝突、合体する。その前に、天の川にアンドロメダ銀河が近づき、夜空にはこの2つが大きく並んで見える。37.5億年も先の話だが、ベテルギウスの超新星爆発と同じように観てみたいなと思う。アンドロメダ銀河が近づけば、アンドロメダ銀河内の惑星系の観測もできるだろうか…その時代にはもう人類は地球にはいないだろうけれども。

 アンドロメダ銀河と合体した後の銀河系がどうなるか、読んでいて寂しくなった。著者のこの言葉が重く感じられる。
 少なくともこれだけは言える。天体を眺めるなら今のうちだ。さあ、双眼鏡や望遠鏡を買いに行こう。
(156ページ)
 望遠鏡はあるのに活用しきれていない私も問題だ…。買ったら使い方を覚えて、どんどん使うべし。

 「宇宙規模で物事を考える」とよく聞く。広い視野と長期的な視点で考えよう、心を広く持とう、細部にとらわれずに広い観点から考えよう、そんな意味ではあるけれども、その「宇宙」も有限である。ひとりの人間の一生に比べたらスケールは桁違いだけど、無限で思考停止していいという意味ではない。宇宙への見方も考え直したくなる本です。



# by halca-kaukana057 | 2020-01-15 22:15 | 本・読書

椿宿の辺りに

 梨木香歩さんの新作が久しぶりに出ました。ようやく読めました。


椿宿の辺りに
梨木香歩/朝日新聞出版/2019


 佐田山幸彦(さた・やまさちひこ 通称:山彦)は化粧品会社に勤めている。まだ30代だが、肩から腕にかけて強い痛みがあり、ペインクリニックにも通っているが全くよくならない。山彦の父の弟夫婦の娘・いとこの名前は海幸比子(うみさちひこ 通称:海子)といい、同じように身体の痛みで悩んでいた。事の始まりは、実家の店子の鮫島氏から手紙が届いたことだった。その家は山彦の曾祖父の代から佐田家の者は住んでいない。鮫島氏も父の死と仕事の都合で引っ越し、賃貸契約を打ち切りたいという手紙だった。その手紙の名前に驚いた山彦は契約書を確認する。その契約していた長男の名前は鮫島宙幸彦(宙彦)だった。山幸彦、海幸比子の名前は祖父が命名した。鮫島家と佐田家には何か繋がりがあるのかもしれない。それを海子に話した後、実家に帰ると、祖母の早百合の先がもう長くないことを知る。そして、死んだ祖父の話を聞くことになる…。


 あらすじを書くのに困る作品です。物語がどんどん深いところまで進んで、読んでいる側はそれに巻き込まれるような形ではまっていく。物語の中で不思議な出来事が起こっても、もうそのまま受け止めるしかない。これぞ梨木作品の魅力です。
 そして、読んでいてあれ?と思う箇所がいくつも出てくる。前に読んだこと、ある…。「f植物園の巣穴」の続編でした。

 「f植物園の巣穴」でも、「痛み」は物語のきっかけであり、重要なもの。「椿宿の辺りに」でも、やはり「痛み」が重要な鍵になってきます。山彦や海子の痛みは何かに繋がっている。それは何なのかを探りに、佐田家が長いこと離れていた実家、椿宿と呼ばれていた場所に向かう。この椿宿に向かうまで、不思議なことが次々と起こる。その中心となるのが、海子が行っていた仮縫鍼灸院と、その鍼灸院の先生の妹の"亀シ"。この2人(プラス何人か)については、最後まで読んで「そうだったのか!!」と驚きました。ちょっと許せない。

 「f植物園の巣穴」の感想で、私は「境界」について書いた。「f植物園の巣穴」では様々な「境界」が出てくる。この「椿宿の辺りに」では、「f植物園~」で作られたある「境界」が大きな鍵となる。
 「境界」は、「責任」とも言い換えられる場合があると思う。ここからは私の責任、ここから先は私の責任ではない。そうはっきり「境界」を設けないと大変なことになってしまう。「f植物園~」で"私"が設けた「境界」。それが「椿宿~」で山彦たちが背負うことになる。それは仕方がないのか、山彦や海子、そして宙彦にとっては「誰にも共有されない不安」だったことを考えると"私"の「責任」は何なのかと問い詰めたくなる。「家」という「社会」には、何かしらの「誰にも共有されない不安」があると思う。私にもあるし、友達からそんな悩みを打ち明けられたことはある。新聞や雑誌などの「人生相談」のコーナーにはそんな「家」の悩みが寄せられる。その道の専門家や人生経験豊かな著名人がその悩みに答えるが、それで本人は解決したと思っているのだろうかと思うものもある。「誰にも共有されない不安」を理解できる人は、山彦と海彦のような関係にある者だけなのかもしれない。寂しくも感じる。確かに寂しい。「誰にも共有されない」のだから。海彦の孤独な闘いのような、その「責任」をどうにかしようという奮闘は、読んでいて辛かった。海彦は強い。だからこそその奮闘と孤独は報われて欲しいと願うばかりだった。

 そしてもうひとつの鍵となる「痛み」。山彦や海子が苦しんでいる身体の痛みだけではない。椿宿の実家の辺りにも「痛み」がある。「痛み」を感じるのは人間だけではないと思う。読んでいて、近年の気候変動による災害を思い浮かべた。強引に鎮めようとした結果、新たな「痛み」が出てくることもある。「痛み」を消すために本当にしなければならないことは何なのか。
 また、「家」が抱える「痛み」もある。「f植物園~」でも触れられていたが、椿宿の家の過去の「痛み」。「f植物園~」ではそれほど深い「痛み」のように感じなかったが、「椿宿~」では激痛に感じた。ただ、「椿宿~」では山彦だけでなく、海彦の家族や珠子さんもいる。椿宿の辺りの土地の「痛み」も含めて、この時を待って、「痛み」を鎮めることができたのかもしれない。

 山彦はこう語っている。
 私は長い間、この痛みに苦しめられている間は、自分は何もできない、この痛みが終わった時点で、自分の本当の人生が始まり、有意義なことができるのだと思っていましたが、実は痛みに耐えている、そのときこそが、人生そのものだったと思うようになりました。痛みとは生きる手ごたえそのもの、人生そのものに、向かい合っていたのだと。(299ページ)
 私も同じ事を思うことがある。今悩んでいることが解決すれば、私の人生はもっとよくなる、生きやすくなる。やりたいことも存分にできる。それまでは、悩んでいることを解決するために、耐えるしかない。我慢するしかない。動けなくても仕方がない。そう思っていた。でも違う。「痛み」、悩みや問題を抱えていたとしても、我慢だけしなくてもいい。「痛み」を感じながら、「痛み」をどうにかしようとしたり、時には息抜きに寄り道をしたり、回り道をしたり。「痛み」があってもやりたいことがあるならやればいい。そう思うようになった。「痛み」がなくなるまで待っているなんて、それは自分の人生に勝手に存在しない「境界」を作っている。私が今できることを、やるべきことを、そしてやりたいことをやっていけばいいだけだ。それも、私の「責任」なのだから。

 山幸彦、海幸彦の神話も興味深く読みました。この神話も、「誰にも共有されない」、佐田の「家」の問題を暗示している。

 できれば、「f植物園の巣穴」から読むことをおすすめしますが、私は「f植物園~」はなかなか読了できなかった。「椿宿~」から読んで、謎解きとして「f植物園~」を読むと話の流れが見えるかも知れない。私も「f植物園~」を再読しています。本当に不思議な物語だよなぁ…。

・過去記事:f植物園の巣穴



# by halca-kaukana057 | 2020-01-10 22:20 | 本・読書
 新年最初の記事が、2019年を振り返る記事です。
昨年、こんな記事を書きました。

今年読む本のテーマを考える

 その年に読む本のカテゴリー(テーマ)を決めて、当てはまる本を読んでいこうという内容。最初から狙ってもいいし、読んでみたら当てはまっていたという場合もある。何となく、こんな本が読みたい、こんなことを学びたい、こんな本に出会えたら楽しい、その程度のものです。
 ということで、結果はどうなったか。

○声楽の本(オペラや歌曲に関する本でもいいし、声楽のレベルアップに関する本でも)
 ・音楽のたのしみ 4 オペラ : これはオペラの歴史や作品についての本。
 あらすじ、物語をよく知らないオペラも多いし、このオペラと言えばこのアリア、というのも詳しくない。オペラに関する本を読むのも大事だけど、聴くのが一番だなと思う。
 声楽の技術に関しては、毎回のレッスンを集中して受けること。充実したレッスンにするために予習復習欠かさないこと。第一に体が資本。風邪引かない、喉に負担かけない、健康第一。
 読書からかけ離れてしまった。次行こう。

○マーラーとブルックナー(今年はもっと聴けるようになりたい)
 ブログに記事は書きませんでした。マーラーに関しては、音楽の友社「作曲家 人と作品」シリーズのマーラーを読みました。ブルックナーは何も読めず。積極的に聴いていこうと思ったが、海外ネットラジオで見つけたものばかり(特にブルックナーは)。ブルックナーは6番が聴きやすいなと感じました。あと7番も好きかも。

○イギリスの児童文学
ドリトル先生 月3部作[新訳]
ドリトル先生航海記 [河合祥一郎:新訳]
ドリトル先生航海記 [福岡伸一:新訳]
 2019年はアポロ11号月面着陸50年ということで、月に行く物語と言えばドリトル先生の月3部作。これを河合祥一郎さんの新訳で。更に大好きな「航海記」も。福岡伸一先生の「航海記」新訳も文庫が出たので読みました。ドリトル先生オンリーです。
 今年もこのテーマは継続かな。読みたいシリーズがあるのだが、なかなか手を出せないでいる。

○北欧の児童文学
 ブログには書いていないのですが、トーベ・ヤンソン「ムーミン」シリーズを一通り。ムーミンバレーパークに行ったので、その予習と復習に。「ムーミン」は深いよ。児童文学に分類されるのだろうが、児童文学でくくるのはもったいないよ。ムーミンバレーパークは原作を忠実に再現していてとても楽しかったです。
 このテーマも継続。北欧児童文学の世界は広い…スウェーデンやデンマークあたり…。ノルウェーもか。

○コーヒーや紅茶が飲みたくなる本
 これは難しいテーマを設定した。読んでみないとわからない系。
ハリネズミの願い
きげんのいいリス
 この2冊かな。他にもあるけど。あたたかいコーヒーや紅茶を飲みながら、ゆっくりと楽しみたい本です。ハリネズミやリスたち動物たちとお茶している気持ちで。

○ミステリー小説
 ・山本周五郎 探偵小説全集2 シャーロック・ホームズ異聞
 山本周五郎が書いたホームズのパスティーシュ。これはミステリーというよりも、冒険ものに近い。
 ・満願
 ・氷菓
 ・愚者のエンドロール
 ・遠回りする雛
 米澤穂信先生の作品を結構読んだ。「古典部」シリーズはあと2作現在出ているので、今年も継続。
 ・ヴァイオリン職人の探求と推理
 「ヴァイオリン職人」シリーズは面白い!!昨年出会った本の中でも一押しです。第2作、3作も出ているので今年も継続して読みます。

○旅の本
モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語
 本を売り歩いた村の人々を追って旅した本。過去への旅も含まれます。
ユルスナールの靴
 旅の本と言えば須賀敦子さん。
宇宙よりも遠い場所 3
 アニメのコミカライズですが。南極という極限の場所で見えてくる人間、自分自身、そして他者。アニメも漫画も泣きます。何度観ても泣きます。

○もっと学びたい天文学、宇宙開発
白河天体観測所
宇宙はなぜ「暗い」のか?
ドリーム(Hidden Figures) NASAを支えた名もなき計算手たち
宇宙に命はあるのか
宇宙と人間 七つのなぞ
ヒトはなぜ宇宙に魅かれるのか 天からの文を読み解く
月 人との豊かなかかわりの歴史
ファースト・マン 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生
星の文人 野尻抱影伝
宇宙はどこまで行けるか ロケットエンジンの実力と未来
 宇宙関係の本は結構読んでました。ブログに書いてないのもあります。

○宇宙にまつわる小説(SFでもファンタジーでも)
銀河ヒッチハイク・ガイド
 ついに読んでしまった、という気分ですwシリーズ制覇できるかな…。
 あと、上述のドリトル先生の「月3部作」も。

○ウェルビーイング、マインドフルネス
ノニーン! フィンランド人はどうして幸せなの?
 ウェルビーイングの考え方はやはり北欧のライフスタイルを反映している。ブログには書いていませんが、雑誌「リンネル」の北欧関係の記事も読みました(付録目当てですがw)
好日日記 季節のように生きる
 前作「日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」と合わせて、この本はマインドフルネスの考え方だなと思います。
「マインドフルネス」で心を休める本2冊
 マインドフルネス実践に関してはこの2冊を。「心を休める」「ひとつのことに集中する」ことに特化した本だと思います。瞑想は少なめ。
 精神的にスランプ状態にある時、マインドフルネスの考え方をきれいさっぱり忘れていることが多いです。あれもやらなきゃ、これもやらなきゃとマルチタスクで混乱している状態。そんな時こそ、ひとつの物事に集中して、心を静める、休める。仕事などに集中する前に、コーヒーを1杯じっくりゆっくり味わって飲んで、集中しやすい状態に自分自身を持っていく、など。本当に忘れがちなので、この本は気が向いた時に何度も読み直したい。

○大人の塗り絵、コロリアージュ(これは読むというより実際に塗る)
 本は買わずに、ネットで無料配布しているものをダウンロードして塗りました。本を1冊買うのは勇気がいる。1枚仕上げるだけでもかなりの集中力、労力、イマジネーションが要るのに、本1冊なんて気が遠くなる…。


 以上です。今年もやる予定。テーマ/ジャンル/カテゴリーは考え中。



# by halca-kaukana057 | 2020-01-04 22:09 | 本・読書
 今日は三日月と金星が近づいて、きれいに見えていました。昼間は晴れていても夜は曇りか雪の日が続いていたので久々に星見です。
三日月と金星 & ベテルギウスが暗い?_f0079085_21463116.jpg


 明日も晴れていれば月齢4の月と金星が西の空に見えます。


 本題はここから。今、巷でオリオン座のベテルギウスが暗くなっていると騒がれている。いよいよ超新星爆発が起こるのか?とも。

Togetter:ベテルギウスが暗くなったという話題
CNN.co.jp:オリオン座のベテルギウスに異変、超新星爆発の前兆か 天文学者

 騒ぎを知ってから、なかなか星見をできる天候ではなかったが、晴れたのでオリオン座も撮影した。撮影時間は30秒間。全体の明るさは加工しています。(部分の加工はしていません)

三日月と金星 & ベテルギウスが暗い?_f0079085_21530024.jpg

見た感じ、暗い気がする。2等星の右側の星・ベラトリックスと同じぐらいじゃないか…?画像の上の方にあるオレンジ色の明るい星は、おうし座のアルデバラン。アルデバランより暗い。
 ちなみに、騒ぎになる前に、今シーズンオリオン座を撮影していました。
・2019年11月2日:オリオンの季節

 では、過去の画像と比べてみましょう。
・2019年2月22日:はやぶさ2を想いながら星見
・2019年1月14日:新年の冬の大三角
・2018年12月30日:今シーズン初のオリオン
・2018年3月21日:春分の宙

 確かに暗くなっている…。右下のリゲルと同じぐらい(リゲルよりは等級は低い)の明るさで、はっきりと見えていたベテルギウスが暗くなっている。
 今回の騒ぎで初めて、ベテルギウスが変光星だったと知りました。ベテルギウスが暗くなったのは今回だけではない。過去にも何度も暗くなり、話題になっています。アストロアーツの過去記事を調べてみました。
◇2003年:アストロアーツ:オリオン座の1等星ベテルギウスが減光している
◇2006年:アストロアーツ:オリオン座のベテルギウスが1等以下まで減光中
◇2007年:アストロアーツ:ベテルギウスの減光

 超新星爆発を起こすとしても、何万年も先という見方もある。私としては、もし可能ならリアルタイムで超新星爆発を観てみたい。観測データから研究が進むのも楽しみだ。ただ、もし超新星爆発を起こしたら、ひとつだけ気になることが。オリオン座の形が変わってしまう。オリオン座は88星座の中でも特に「映える」星座だと思う。1等星が2つもあって、他の星も2等級レベル。形はとてもわかりやすく、冬のシンボルでもある。そんなオリオン座からベテルギウスがなくなったら寂しいな、とも思う。複雑。

 いつまで減光が続くのか。この冬はオリオン座が見えたら、是非ベテルギウスに注目してみてください。


# by halca-kaukana057 | 2019-12-29 22:20 | 宇宙・天文
 昨日は部分日食でした。覚え書き程度の記事です。
アストロアーツ:【特集】2019年12月26日 部分日食

 今回の日食はほとんど期待していませんでした。まず、食分が小さい。私の地域では本当に小さい。それから、日食が始まる時間が午後、しかも日の入りが早い時期なので太陽の高度が低くて見づらい。何より天気が期待できない。ということでまぁ観れたらいいかぐらいの気持ちでいました。でも、日食めがねはちゃんと用意してはいました…。

 日食の時間、時間が空いて外に出られたので確認してみることに。昨日は朝から曇りでしたが、時折雲が少し晴れて青空が見えることも。ちょうど外に出られた時間、雲が薄くなっていて、太陽を確認。日食めがねで見てみると、少し欠けているのがわかりました。少しだけだけど、欠けてる。日食は起こっているんだと実感できました。日食を見られたのはこの時間だけ。

 グアムなどでは晴れて金環日食が見られたそうです。

 次の日食は来年6月21日。夕方に部分日食です。台湾では金環日食です。次回も当地は食分が小さい。晴れたらいいなぐらいの気持ちで待ちます。来月1月11日は半影月食。未明なので起きられるかどうか。半影だからどの程度暗くなるか…。
# by halca-kaukana057 | 2019-12-27 21:15 | 宇宙・天文

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31