秘密の花園 /『秘密の花園』ノート

 プロムス開催中(読み終えたのは開幕前ですが)だからというわけではないのですが、イギリス文学が読みたくなります。


秘密の花園 (新訳)
フランシス。ホジソン・バーネット:著/畔柳和代:訳/新潮社、新潮文庫/2016

 インドで生まれ育ったメアリ・レノックスは、痩せていて不機嫌そうな10歳になる少女。両親はメアリのことは乳母(アーヤ)やインド人の召使いに任せっきり。メアリもアーヤに何でもやってもらっていた。そんな中、屋敷でコレラが流行し、両親も、アーヤも、数多くの召使いたちも死んでしまった。メアリは部屋に閉じこもっていたところを発見される。メアリは叔父のアーチボルト・クレイヴンに引き取られる。本国イギリスに渡ったメアリは、クレイヴンの家政婦のミセス・メドロックに連れられ、ムアにあるクレイヴンの屋敷・ミセルスウェイト邸にやって来る。メアリには女中のマーサがつくことになった。ヨークシャ訛りで、インドのアーヤや召使いたちとは全く性格も態度も異なるマーサに悪態をつくが、次第に心を開いていく。メアリは天気のいい日は屋敷の庭で遊ぶようになる。庭には老庭師のベン・ウェザースタッフがいて、口数は少ないが、メアリに植物のことを教えてくれた。さらに、マーサの弟・ディコンは動植物が大好きな少年で、メアリの友達になった。メアリは、屋敷に10年も閉ざされた庭があることを知る。更に、屋敷の中を歩いていると、どこからか子どもの泣き声がする。メアリは閉ざされた庭の鍵と入り口を見つけ、その泣いていた少年、クレイヴンの息子、メアリの従兄弟のコリンと仲良くなる。コリンは身体が弱く、ミセス・メドロックやマーサもその存在を隠していた。メアリはディコンと閉ざされた庭の手入れをこっそり始め、コリンもメアリと話すようになってから精神的に落ち着いてくる…


 訳は沢山ありますが、今回は新訳の新潮文庫版で。岩波少年文庫版も持っています。

 昔、NHKで「秘密の花園」がアニメ化されたことがありました(あの「ふしぎの海のナディア」の後番組)。その頃は原作を読んだことはありませんでしたが、アニメの内容をおぼろげに覚えています。メアリはおてんばな娘というイメージがあったのですが、原作を読んでみると記憶違いかも?と思いました。

 メアリは「偏屈者」と呼ばれるほど、すぐに機嫌が悪くなる。ミセルスウェイト邸に来るまでのメアリは、正直に言って本当に可愛くない。でも、メアリは両親に育児放棄され、アーヤに身の回りのことは何でもやってもらい、召使いたちは恭順で何でも従う。愛情を注がれることもなく、友達もいない。メアリはとても孤独だ。人との心地よいコミュニケーションを学ぶ場は全くない。更に、その両親もアーヤも召使いたちもコレラで死んでしまう。ますます孤独になってしまった。

 そんなメアリにも救いはある。クレイヴンに引き取られ、イギリスにやって来る。ミセルスウェイト邸は大きなお屋敷で、クレイヴン氏は普段は屋敷にいない。またもメアリは孤独か…と思いきや、マーサやディコンがいる。庭にはベンがいて、メアリはその庭で遊び始め、鍵のかかった忘れられた庭を見つける。その庭を再生させる作業をディコンとするうちに、メアリはどんどん元気になっていく。よく食べるようになる。偏屈者と言われていたが、その不機嫌も徐々に収まっていく。

 一方、屋敷にはメアリと同じように身体が弱く、事あるごとに癇癪を起こし、泣きわめき、屋敷の者たちからは存在を隠されていた少年、コリンがいた。コリンを見つけ出したメアリは、インドの話などをして、コリンと仲良くなる。コリンも、メアリと会い、メアリから外の話を聞く度に、元気になっていく。

 この2人の回復していく様が、とても心に響く。この本を読んだ時、私も元気が無かった。私もこんな風に元気になれたらなと思いながら読んでいた。その2人の回復の糧になったのが、「秘密の花園」、10年鍵をかけられ、誰にも手をつけられなかった庭。メアリはディコンとこっそり庭の手入れを始め、そのことをコリンに話す。コリンもその庭に行ってみたいと、屋敷の外に出ることを目標とする。この庭の由来、何故鍵をかけられることになったのか…重く、かなしい10年だった。寂しく、暗く、心細い。孤独や病弱の辛さを知っているからこそ、再生や回復の過程の喜びは輝かしいものになる。喜びという感情が芽生えていくメアリやコリンは、本当にいきいきしている。2人は自立もしていく。途中、メアリとコリンが衝突する箇所があるのだが、そこもまた回復や再生の過程で通らなければならないものに思える。2人のやり取りが、実に2人らしい。この衝突で、2人は偏屈者の自分と別れることができたのだと思う。
 回復していったのはメアリとコリンだけではない。庭も、ミセルスウェイト邸そのものも、屋敷の人々も、ベンも、クレイヴン氏も、それぞれの「回復」「再生」をしていく。庭や屋敷は人ではないが、人と同じように元の有様を取り戻し、新鮮な空気が入ってきて、暗かった部分に光が当たる。子どもの再生や回復よりも、大人のほうは面倒臭い。なかなか変われず、現実を悲観し、感情に蓋をしてしまう。クレイヴン氏の場合、マーサの母が橋渡し役になって、クレイヴン氏の再生、回復に繋げていくのもとてもよかった。大人も再生、回復していくことができる希望。この辺りは大人の視点で読めます。
 徐々にマーサやミセルスウェイト邸の自然を好きになっていくメアリではありませんが、本当に好きな物語です。



 この「秘密の花園」の読解本があります。著者は梨木香歩さん。

『秘密の花園』ノート (岩波ブックレット)

梨木 香歩/岩波書店、岩波ブックレット773


 物語の隠された背景や、伏線に「そうだったのか!」と物語を読み直しながら読めます。インドというキーワード、屋敷の中と外の生き物、人物像…。イギリス文学が専門で、イギリスにも住んでいた梨木さんだからこその豆知識も。最後の箇所は、読書だけでなく、他のことでも当てはまると思う。「秘密の花園」を更に面白く読めます。


 記事の冒頭で、イギリス文学が読みたいと書いた。イギリス文学の特徴、個性を掴んでいるわけではないけれど、これまでも多く読んできた。庭を手入れしていくように、開拓していきたい。「ドリトル先生」シリーズもイギリス文学ですし、最近読んでいるカズオ・イシグロ作品もイギリス文学ですよね?「シャーロック・ホームズ」シリーズもそうですよね?文学だけでなく、音楽も開拓したい。
 イギリスだけでなく、北欧も…。こっちは音楽は開拓していっているけど、文学はなかなか進まない…(以上独り言)
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# by halca-kaukana057 | 2018-07-16 22:57 | 本・読書

夏の宇宙ゼリー ローソンのリュウグウイメージ水ゼリーを食べてみた

 先日、目的地の小惑星「リュウグウ」に到着した、小惑星探査機「はやぶさ2」。
はじめまして、リュウグウ
 この記事でも書いたのですが、ローソンから、「はやぶさ2」のリュウグウ到着を記念した、リュウグウをイメージしたというデザートが発売されました。

ローソン:ローソン研究所:小惑星「リュウグウ」をイメージしたぷるるん水ゼリーがいよいよ登場!
ローソン:バタフライピーティーのぷるるん水ゼリー(レモン)

 というわけで、私もローソンに行って買ってきました。
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 こんな丸いパッケージに入ってます。お値段180円。
 パッケージには、「はやぶさ2」とも、「リュウグウ」とも、「JAXA」とも書いていません。JAXAの了解は得ているのだろうけど、JAXAとコラボというわけではない模様。事前にネットで情報を得ないと、リュウグウをイメージしたデザートとわからない。ただの宇宙っぽいゼリーになってしまう。ローソンさん、宣伝を大々的にお願いします。

 蓋を開けると、ふわりと甘いいい香りが漂ってきました。
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 下手な画像ですみません。もっときれいに見えます。ただ均一に黒いわけじゃない。グラデーションがあって、金粉もきらきらしている。銀河だ。星雲だ。
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パッケージの黒いトレーを外して、白いお皿に乗せると、一気に雰囲気が変わります。薄紫のきれいなゼリーです。バタフライピー(チョウマメ)のお茶は元々は青い色。それに酸(この場合はレモン)を加えると、こんな薄紫に色が変わるんだそうです。

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 スプーンで掬おうとすると、弾力が強くてなかなかスプーンがはいらない。堅い。でも、ぷるぷるしています。スプーンを入れる際、「はやぶさ2」がリュウグウにインパクターを打ってクレーターを作るのをイメージしましたw
 金粉が入っているのが分かりやすくなりました。豪華な雰囲気。
 味は、レモンの爽やかさ(でもすっぱさはない)とさっぱりした甘さで美味しい。バタフライピーティーは飲んだことは無いのですが、こんな味なのかなぁ?これは美味しい。暑い日にキンキンに冷やして食べたい。

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 トレイはこんな宇宙柄です。

 「はやぶさ2」はリュウグウ上空で、本格的な探査に向けて準備中。順調だそうです。これを食べて応援します。いつぐらいまで販売しているんだろうなぁ。タッチダウンの秋にはもう終わってるかなぁ。売ってる間食べます。

【こちらもどうぞ】
Gigazine:金粉が輝く水ゼリーで「はやぶさ2」の目的地を表現したローソンの「バタフライピーティーのぷるるん水ゼリー(レモン)」を食べてみた
sorae:”そこ”に銀河が広がっていた。リュウグウをイメージした水ゼリー

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# by halca-kaukana057 | 2018-07-11 22:09 | 宇宙・天文

BBC Proms (プロムス) 2018 私選リスト その1 [7月] [随時追記中]

※この記事は、新しい情報が入り次第随時追記中です。

 7月になりました。7月、今年も待ってました、ロンドンで2ヶ月にわたって開催される世界最大級の音楽祭「BBC Proms」(プロムス)がはじまります!今年は、7月13日~9月8日(グリニッジ標準時)まで。ロイヤル・アルバート・ホールを中心に、毎日コンサート。クラシックが中心ですが、フォークミュージックあり、テクノミュージックあり、現代作品も新曲が次々登場します。小さなお子さんや心身に障碍を持つ方も楽しめる演奏会も。今年も楽しみです!!
BBC Proms 公式サイト

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 公式ガイドブック、今年も早めに入手できました。今年は明るいピンク色です。公式サイトで日程表、プログラムは見られますが、このガイドブックを見ながらどれを聴こうか考えるのも楽しいです。

 今年も、私が選んだ、私が聴きたい公演(Prom)、気になる公演、注目公演を選んでまとめます。お祭りの始まりです!!
 公演は、全てBBC radio3で放送します。放送後30日間はオンデマンド配信もあるので、公演時間に合わせて夜中に起きて聴けなくても大丈夫。
 スマートフォンからは、「BBC iPlayer Radio」のアプリを使うととても便利です。ブラウザからも聴けますが、その場合は「BBC Media Player」のアプリが必要です。アプリストアからダウンロードしてご利用ください。これで、いつでもどこでもプロムスが聴けます。

 昨年、公式サイトがリニューアルしたのですが、今年は月ごとに分かれて、少しは見やすくなりました。去年で慣れた?しかし、今年もProms公式サイトからの、BBC radio3へのリンクがありません。BBC radio3の一覧ページをリンクしておきます。
BBC radio3 : BBC Proms : Available now

【追記】
 昨年から本格的に導入された、Binaural Sound 立体音響録音ですが、今年も公開しています。昨年は一部のプロムを丸ごと、曲ごとに公開でしたが、今年は曲ごとのようです。是非、お手持ちのヘッドホン、イヤホンで聴いてみてください。特別なものでなくても構いません。音が違いますよ。
 去年はあったどのプロムのどの曲が公開されるかの告知はない模様。各公演(プロム)のページの「Clips」のコーナーに、Binaural Soundの表示、マークの録音があるのでそれが公開されているものです。配信期間はわかりません。念のため、各公演の配信期間、放送から30日のうちに聴いておきましょう。Binaural Soundのものは、普通のオンデマンド配信がスタートしてから、遅れて公開されていますので、チェックをお忘れなく。
 今年のBinaural Soundでの録音をまとめて公開しているページを見つけました。ようやく見つけた。今年もあった。
BBC radio3 : BBC Proms : Experience the Proms as if you are really in the audience
 新しいものがどんどん上に表示されていきます。まとめて次々聴きたい方はこちらで。

 まだ聴けるものがあるので、一応、昨年の分のBinaural Sound録音の、現在も公開されているページを貼っておきます。
BBC : BBC Proms in Binaural Sound

 本放送の他に、現地時間14時(日本時間22時)からの「Afternoon Concert」で再放送もあります。再放送もオンデマンド配信、30日間あります。もし、オンデマンド配信も聴き逃してしまっても、ここにあるかもしれません。再放送されないプロムもあるので注意(主にロイヤル・アルバート・ホール以外での公演)。22時からなら日本でもリアルタイムで聴けるという方はこちらもチェックを。
◇放送一覧:BBC radio3 : Afternoon Concert



 では、各公演(Prom プロム)を見ていきましょう。


◇7/13 Prom 1: First Night of the Proms
 ・オリヴァー・ナッセン(Oliver Knussen): Flourish with Fireworks op.22
 ・ヴォーン=ウィリアムズ:未知の世界へ
 ・ホルスト:組曲「惑星」
 ・アンナ・メレディス(Anna Meredith)、59 Productions:Five Telegrams (世界初演)
  /イギリス・ナショナル・ユース合唱団(女声合唱)、BBCシンフォニーコーラス、BBC Proms Youth Ensemble、サカリ・オラモ:指揮、BBC交響楽団
 ファーストナイトです。オール・イギリス・プログラム。コンチェルトがありません。今年は、BBC交響楽団 首席指揮者のサカリ・オラモさんが指揮です。3月の来日公演、楽しかったな。
 →来日公演レポ記事
 BBC響にとっては、大忙しのプロムスの始まりです。全12公演。
 今年のプロムスのテーマのひとつが、第一次世界大戦終戦100年。ホルストの「惑星」が初演されたのも100年前、1918年のことでした。毎年、「惑星」はどこかしらのオーケストラが演奏するのですが、今年はファーストナイトに。第1曲が「火星 戦争をもたらす神」、第2曲が「金星 平和をもたらす神」とあるのは、戦争とその終結を意識せずにはいられません。ヴォーン=ウィリアムズの合唱曲「未知の世界へ」。誰も知らない世界を目指す内容の、ウォルト・ホイットマンの詩が歌詞です。
 後半のイギリス人女性作曲家・アンナ・メレディスの新曲「Five Teregrams」。世界大戦からインスピレーションを受けた作品だそうです。
【追記】
 先日亡くなられた作曲家で指揮者のオリヴァー・ナッセンさん。BBC響、プロムスとも強いつながりのある方でした。1曲目にナッセンさんの作品「Flourish with Fireworks」を追加しました。本当に急で残念です。ナッセンさんは、つい先日、オールドバラ音楽祭でBBC響と共演したばかり。これが最後の共演となってしまいました。その演奏会の模様がまだ聴けます。21日ごろまで。コープランドが中心です。
BBC radio3 : Radio 3 in Concert : The BBC Symphony Orchestra and Oliver Knussen at the Aldeburgh Festival.
 その前には、元首席指揮者のゲンナジー・ロジェストヴェンスキーさんも亡くなってしまいましたね。寂しいです。

 メレディスさんの「Five Telegrams」は、演奏に合わせてプロジェクション・マッピングの演出が。とてもきれいです。日本からはフルは観られませんが(観たい)、YouTubeのBBC Music公式に抜粋版がありました。
Anna Meredith: Five Telegrams (excerpt)

 ↑こちらも公開停止になりました。何故…。

 ファーストナイト前日には、ロイヤル・アルバート・ホールをスクリーンにして、「Five Telegrams」の演奏に合わせてプロジェクション・マッピングのイベントが。前夜祭みたいなもの?
BBC Proms : The light fantastic! Meet the people getting the Proms off to a spectacular start
 ↑ここから動画も観られます。YouTubeにもあります。
 こちらもきれい!2016年のファーストナイトの告知で、ソル・ガベッタさんの演奏するチェロをスクリーンにプロジェクション・マッピングの演出をする動画がありましたが、今年は実際の本番で生演奏に合わせての演出。プロムスのお祭りの始まりを感じさせます。
 イギリスではテレビ放送されるファーストナイト。日本からは観ることができません。後日テレビ放送されるのはラストナイトだけ(運が悪いとラストナイトの放送もない…)が、YouTubeのBBC Music公式が、1曲目のナッセン、2曲目のヴォーン=ウィリアムズ、3曲目のホルストもフルで動画をアップしてくれています。ありがとうございます!!ファーストナイトも映像で楽しめる。
Oliver Knussen: Flourish with Fireworks (First Night of the Proms)
Ralph Vaughan Williams: Toward the Unknown Region (Prom 1)
Gustav Holst: The Planets (Prom 1)
↑【追記】※現在は公開されておりません。なんと…(涙)ゆっくり何度も観たかったのに…残念。

◇7/14 Prom 2: Mozart, Ravel and Fauré
 ・フォーレ:パヴァーヌ(合唱つき) op.50
 ・モーツァルト:ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
 ・ラヴェル:ダフニスとクロエ
  /フランチェスコ・ピエモンテージ(ピアノ)、BBCシンフォニーコーラス、ロンドン合唱団、アラン・アルティノグリュ(Alain Altinoglu):指揮、ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ
 2日目、ロイヤル・フィルの登場です。パヴァーヌは舞曲。「ダフニスとクロエ」はバレエ音楽。フランスの踊りの曲を組み込んだプロムです。

◇7/16 Proms at … Cadogan Hall 1: Calidore String Quartet & Javier Perianes
 ・キャロライン・ショー(Caroline Shaw):Second Essay: Echo、Third Essay: Ruby
 ・シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op44
  /ハヴィエル・ペリアネス(ピアノ)、カリドール弦楽四重奏団
 会場はロイヤル・アルバート・ホールだけでなく、室内楽や器楽、声楽は小さなホールで開催します。前半のキャロライン・ショーさんは、アメリカの女性作曲家、ヴァイオリニスト。後半はシューマンのピアノ五重奏曲。大好きです。ピアノはペリアネスさん。

◇7/16 Prom 4: Shostakovich’s ‘Leningrad’ Symphony
 ・マグヌス・リンドベルイ(Magnus Lindberg):クラリネット協奏曲
 ・ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 「レニングラード」
  /マーク・シンプソン(クラリネット)、ファンホ・メナ:指揮、BBCフィルハーモニック
 1曲目はフィンランドの作曲家、リンドベルイ(リンドベリ)のクラリネット協奏曲。現代な響きの作品ですが、すっごくカッコイイんです。メインはショスタコーヴィチ7番。こちらは第二次世界大戦がテーマの作品。重々しい響きが楽しみです。

◇7/17 Prom 5: Debussy Pelléas et Mélisande
 ・ドビュッシー:歌劇「ペレアスとメリザンド」
  /クリスティーナ・ガンシュ(メリザンド)、ジョン・チェスト(ペレアス)、クリストファー・パーブス、ブラインドリー・シャラット、カレン・カーギル、クロエ・ブリオ
  グラインドボーン・フェスティバル・オペラ、ロビン・ティッチアーティ:指揮、ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
 今年はドビュッシー没後100年。ドビュッシーや同時代のフランスの音楽家の作品が多く演奏されます。まずは、オペラ「ペレアスとメリザンド」を。フォーレとシベリウスは劇音楽、シェーンベルクは交響詩、ドビュッシーはオペラにしました。ドビュッシーの「ペレアス~」はあまり聴いたことがなかったので聴きたいです。昨年のプロムスは、オペラを全然聴けなかった。今年は聴きたい。

◇7/18 Prom 6: An American in Paris & Turangalîla
 ・ガーシュウィン:パリのアメリカ人
 ・メシアン:トゥーランガリラ交響曲
  / アンジェラ・ヒューイット(ピアノ)、シンシア・ミラー(オンド・マルトノ)、サカリ・オラモ:指揮、BBC交響楽団
 Prom6でBBC響2公演目です。「トゥーランガリラ交響曲」は、1949年、レナード・バーンスタインによって初演されました。今年はバーンスタイン生誕100年。バーンスタイン作品も多いです。これもバーンスタイン繋がりなのかな?「トゥーランガリラ」はとっつきにくいイメージで、なかなか聴こうと思わないのですが聴いてみようと思います。こういうところがプロムスのいいところ。

◇7/20 Prom 8: Youthful Beginnings
 ・リリ・ブーランジェ:春の朝に(D'un matin de printemps)、かなしみの夜に(D’un soir triste)
 ・メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲 第1番ト短調 op.25
 ・モーフィド・リウィン=オーウェン (Morfydd Llwyn-Owen) :ノクターン
 ・シューマン:交響曲第4番 ニ短調 op.120(1841年初稿)
  /ベルトラン・シャマユ(Bertrand Chamayou)、トーマス・セナゴー:指揮、BBCウェールズ交響楽団
 ブーランジェは20世紀初頭に活躍したフランスの女性作曲家。ちょっと聴いてみましたが、いい感じですね。リウィン=オーウェンもイギリスの女性作曲家。今年はイギリスでの女性参政権100周年ということで、女性作曲家の作品も多いです。
 間には、メンデルスゾーンとシューマン。シューマンの4番は初稿です。前年、クララと結婚したシューマンはクララの誕生日にこの作品をプレゼントします。初演は芳しく無く、その後1853年改訂稿を発表、初演されます。これが現在一般的に演奏されている交響曲第4番。しかし、シューマンの死後、指揮者のフランツ・ヴュルナーが更に改訂し、1891年ヴュルナー版というのも存在するとか…。シューマンは好きなのに、そこまで知らなかった。まずは初稿を聴きます(聴いた記憶が無きにしも非ず?)。

◇7/21 Prom 9: War & Peace
 ・エリクス・エセンヴァルズ(Eriks Esenvalds):Shadow
 ・ブリテン:シンフォニア・ダ・レクイエム(鎮魂交響曲)op.20
 ・ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125
  /エリン・ウォール(ソプラノ)、ユディット・クタージ(Judit Kutasi)(メゾソプラノ)、ラッセル・トーマス(テノール)、フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ(バリトン)、BBC Proms ユース合唱団、サイモン・ホールジー、ドナルド・ラニクルズ:指揮、World Orchestra for Peace
 毎年「第九」も演奏されますが、今年は第一次世界大戦終結100年という記念の年。平和を歌います。
 前半には、ブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」。第二次世界大戦中にアメリカで作曲した作品。日本政府の依嘱により、皇紀2600年奉祝曲として作曲されたと言われている。ブリテン自身は、両親の思い出に捧げるつもりだった。来日する予定も立てていたが、日本から「演奏拒否」との知らせが。日本では演奏するかどうか論争が起き、更に太平洋戦争が勃発したので演奏機会はなくなり…。日本で初演されたのは、1956年、ブリテン自身の指揮でN響が演奏しました。
 オーケストラの名前が、まさに世界平和ですね。

◇7/22 Prom 10: Fauré, Franck & Widor’s Toccata
 ・シャルル=マリー・ヴィドール:オルガン交響曲 ヘ短調 op.42
 ・フランク:オルガンのための3つの小品 第3曲 英雄的小品 ロ短調 M37
 ・フォーレ(アプカルナ:編曲):パヴァーヌ(オルガン版)
 ・J.S.バッハ:ファンタジア ト長調 BWV 572
 ・ゲオルク・タルベン=バル(George Thalben-Ball):パガニーニの主題による変奏曲
 ・ティエリー・エスケシュ(Thierry Escaich):エヴォケーション II
  /イヴェタ・アプカルナ(オルガン)
 ロイヤル・アルバート・ホールのあの大きなオルガンでの演奏会です。Prom2で演奏したフォーレの「パヴァーヌ」も、今度はオルガン版。オルガンの響きを堪能しましょう。

◇7/22 Prom 11: Mahler Symphony of a Thousand
 ・マーラー:交響曲第8番 「千人の交響曲」
  /タマラ・ウィルソン、カミッラ・ニールンド(Camilla Nylund)、ジョエル・ハーヴェイ(ソプラノ)、クリスティーン・ライス(メゾソプラノ)、クラウディア・ハックル(コントラルト)、サイモン・オニール(テノール)、クイン・ケルシー(バリトン)、モリス・ロビンソン(バス)、サウスエンド少年合唱団、サウスエンド少女合唱団、BBCウェールズ合唱団、BBCシンフォニーコーラス、ロンドンシンフォニーコーラス、トーマス・セナゴー:指揮、BBCウェールズ交響楽団
 大曲が来ました。マーラー8番。少年少女合唱団に加え、合唱団が3つ…。「千人の交響曲」と言いますが、今回のプロムスでの演奏は一体何人いるんでしょう?マーラー作品は少しずつ親しんでいますが、8番はまだお近づきになれていない。マーラーの声楽付き作品はどれも好きなので、8番もきっと好きになる…かな?

◇7/23 Prom 12: Beethoven, Shostakovich & Rachmaninov
 ・ベートーヴェン:コリオラン序曲 op.62
 ・ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 op.107
 ・アンドリュー・ノーマン:Spiral(イギリス初演)
 ・ラフマニノフ:交響的舞曲 op.45
  /アリサ・ワイラースタイン(チェロ)、カリーナ・カネラキス:指揮、BBC交響楽団
 昨年プロムスデビューしたカネラキスさんが今年も登場です。ラフマニノフが楽しみです。

◇7/24 Prom 14: Sibelius, Schubert & Zimmermann
 ・ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
 ・シューベルト:若い尼僧 Die junge Nonne D828
         糸を紡ぐグレートヒェン Gretchen am Spinnrade D118
         ミニョンの歌 Lied der Mignon D877
         魔王 Erlkönig D328
 ・ベルント・アロイス・ツィンマーマン:1楽章の交響曲
 ・シューベルト(リスト編曲):さすらい人幻想曲 D760
 ・シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 op.105
  /エリザベス・ワッツ(ソプラノ)、ルイ・ロルティ(ピアノ)、ヨーン・ストルゴーズ:指揮、BBCフィルハーモニック
 てんこ盛りなプロムです。ワーグナーに始まり、シューベルトの歌曲をオーケストラ伴奏で。しかもソプラノの「魔王」もあります。「糸を紡ぐグレートヒェン」は、声楽の発表会で、別の人が歌っていてすごくいいなと思ったので是非聴きたい(私はまだまだ歌えません。ドイツリートそのものをやっていない)。後半には「さすらい人幻想曲」のピアノとオーケストラ版もあります。最後はシベリウス7番。7番は、初演の際、「交響的幻想曲」というタイトルでした。タイトルは幻想曲つながり?
 ストルゴーズさんのプロムは、毎年私の好みの選曲が多く、楽しみです。

◇7/26 Prom 16: Stravinsky, Debussy & Wagner
 ・ワーグナー:「タンホイザー」序曲
 ・ドビュッシー:選ばれた乙女
 ・ストラヴィンスキー:ナイチンゲールの歌(うぐいすの歌)
            組曲「火の鳥」1945年版
  / サビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ)、アンナ・ステファニー(メゾソプラノ)、ハレ合唱団(女声合唱)、ハレ・ユース合唱団(女声合唱)、マーク・エルダー:指揮、ハレ管弦楽団
 ここでもワーグナーが1曲目。ドビュッシーの「選ばれた乙女」はカンタータ。聴いたことがないので聴いてみたい。ストラヴィンスキーの「ナイチンゲールの歌」も。ストラヴィンスキーのバレエ音楽は、聴けばわかるのですが、まだ親しめていない。そろそろお近づきになりたい。

◇7/27 Prom 17: Parry, Vaughan Williams & Holst
 ・パリー:交響曲第5番 ロ短調
 ・ヴォーン=ウィリアムズ:揚げひばり
 ・パリー:わが言葉を聞きたまえ Hear my words, ye people
 ・ホルスト:死への頌歌 op.38
 ・ヴォーン=ウィリアムズ:交響曲第3番 田園交響曲
  /タイ・マレイ(ヴァイオリン)、ランチェスカ・チェジーナ(ソプラノ)、アシュリー・リッチズ(バスバリトン)、BBCウェールズ合唱団、マーティン・ブラビンズ:指揮、BBCウェールズ交響楽団
 オール・イギリス・プログラム!ラストナイトの「エルサレム」の作曲者としてお馴染みの、パリーの作品が2つも。パリーも、今年没後100年なんです。交響曲第5番は「交響的幻想曲1912年」という副題もあります。ホルストも「惑星」だけじゃないよ!ヴォーン=ウィリアムズは有名どころを。いいですねこういうプロム。プロムス、ロンドンという感じがします。

◇7/28 Prom 18: Currentzis conducts Beethoven
 ・ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 op.36
          交響曲第5番 ハ短調 op.67
  /テオドール・クルレンツィス:指揮、ムジカエテルナ
 世界中で話題になっているコンビ、クルレンツィスとムジカエテルナがプロムスに登場です。ベートーヴェンを2作。しかも後半は5番。どんな演奏になるのか楽しみです。
 そういえば、ベートーヴェン5番も、毎年どこかしらのオーケストラがやってる気がする。

◇7/30 Proms at … Cadogan Hall 3: Ancient Rituals and New Tales
 ・Joseph Tawadros、Jessica Wells
  /ジョセフ・タワドロス(ウード)
 曲名は省略します。タワドロスさんはエジプト出身のウード奏者。ウードは、アラビアのリュートの仲間の弦楽器。珍しいので聴いてみたい。

◇7/31 Prom 22: A London Symphony
 ・ハイドン:交響曲第104番 ニ長調 Hob. I:104 「ロンドン」
 ・ヴォーン=ウィリアムズ:交響曲第2番 「ロンドン」
  /アンドリュー・マンゼ:指揮、BBCスコティッシュ交響楽団
 私のイチオシプロムです。ロンドンで、2つの「ロンドン」交響曲。ありそうでなかった?プログラム。これは聴きたい。ヴォーン=ウィリアムズはこの交響曲を、第一次世界大戦で戦死したバターワースに献呈しています。というのは、初稿のスコアを指揮者に郵送した際、失われてしまいました。パート譜は残っていたのでそれを手がかりに、復元、再構成を手伝ってくれたのがバターワースでした。
 先日、NHKFM「N響レジェンド」でも、似た構成の回がありました。ハイドンとヴォーン=ウィリアムズの「ロンドン」交響曲に、エルガーの「コケイン序曲 ロンドンの下町から」を加えて放送。気象情報が途中に何度も入って、番組がブツ切れになってしまったのが残念でした…。このプロムにも、エルガーも入れたら完璧ですね。


 以上、7月の私の選んだ公演でした。新しい情報が入り次第、追記、修正していきます。今年もプロムスを楽しみましょう!!

 こちらも参考にどうぞ。


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# by halca-kaukana057 | 2018-07-10 21:41 | 音楽

ウドウロク

 本屋で平積みにされているのを見かけて、この人の本が出ていたんだ!と思わず手にとってしまった本です。


ウドウロク
有働由美子/新潮社、新潮文庫/2018(単行本は2014)

 元(と書くのがちょっと寂しい)NHKアナウンサーの有働由美子さん。アナウンサーの中でも特に好きなアナウンサーです。「おはよう日本」でのニューヨークからの中継、リポートも楽しみでしたし、なんといっても「あさイチ」。番組が始まった頃は慣れずに、NHKがこんな番組を?と思ったものですが、有働さんの人生経験たっぷりの、率直なコメントや井ノ原快彦さん(いのっち)との掛け合いはだんだん好きになりました。番組の途中でニュースが入った時は、落ち着いた声と口調で対応する様はさすがNHKのトップアナウンサーと思ったものです。ちなみに、「あさイチ」は、「無線おじさん」柳澤秀夫さん(やなぎー)の愛する無線のお話(冷たくあしらわれているのが寂しい…もっと聞きたかった)、オヤジギャグの一方で、中東での特派員経験や解説委員としての現代に切り込んだ、かつ思いやりのあるコメントも好きでした。
 その有働さんがエッセイを出版していました。今なら話せることと、NHKを退職されたのが執筆、出版のきっかけかなと思いきや、元々の単行本は2014年に出ている。「おわりに」で書いてある通り、公共放送のアナウンサーがここまで書いたものを出版するのを許してくれたNHKすごい…と思ってしまいました。

 「あさイチ」での飾らないイメージが強いので、有働さんは肝の据わったお姐さんというイメージを持っている。NHKのトップアナウンサーのキャリアウーマン。かっこいいなと思う。そう思いきや、実際は小心者で自信もなくて、でも強く見られたい…そんなところもある。仕事に行きたくない…と思うこともある。「あさイチ」で取り上げられた、有働さんの弱み(と書いていいんだろうか?)と思われているところ…「わき汗」事件、未婚、恋愛下手、お酒好きゆえの失敗、ストレート過ぎて逆効果になってしまう発言などについても、決して下品になりすぎずに読みやすく経緯などが書かれている。夕方のスーパーで買い物する時のレジかごの悩みは、そうだったのか、と思った(有働さんのレジかごを見た親子の会話がかなしい、ひどい)。ニューヨーク勤務の時も、語学堪能で、摩天楼を満喫するように行ったのかと思いきや…。しかも、そのニューヨーク勤務中に心身ボロボロになってしまっていたのはとても辛い。

 誰かとの会話、誰かに助けられた話、お世話になった方のお話も多い。厳しかったお父様の話にはハラハラしたし、優しかったお母様の話にはホロリときてしまう。スタッフや友人、取材相手、共演者にも恵まれていて、それはこの本でうかがえる有働さんのお人柄が引き寄せたものなんだろうなと思った。有働さんがスタッフや後輩、友人相手に率直なことを言っても、受け入れられるのは、その人のことを思っているから。反対に、有働さんが率直なことを言われることもある。「私の個性、私が思う個性」で、「個性」と「素」をどう考えているかの話や、後輩へのアドバイスがいいなと思った。「個性」と「素」の違いは、私もごちゃ混ぜにしていた。これを読んで、自分の言動を振り返ると恥ずかしくなるものもあった。「個性」を売りに出さないとならないアナウンサーという職業だからこそ、生まれた考え方なんだろう。

 有働さんにだって下積みの時代があった。なかなか思うような、やりたい取材をさせてもらえなかったり、ニュースを読む時にデスクや先輩に叱られたり。「報道のアナウンサーには向いていない」と言われたこともある。取材をして、取材相手にとっては当たり前だけど意外な受け答えに、どう答えたらいいか分からなかったこともある。「一般的な」社会の常識だけで報道はできない。そんな苦労が、有働さんの深みを作ったのだと思う。

 有働さんの低くて落ち着いた声が好きです。でも、有働さんご本人は、もっと高くて可愛らしい声だったら良かったのに、と思っているそうだ。そうだったのか。私はいわゆる「女子アナ」の高くてきゃぴきゃぴした女子全開な声が苦手だ。ニュースは論外、バラエティーでもチャンネルを変えたいと思ってしまう。ニュースでも、「あさイチ」のようなざっくばらんな情報番組でも、その落ち着いた声だから品を保てるのだと思う。

 先日感想を書いた「獣の奏者 外伝 刹那」(上橋菜穂子)と合わせて、女性の生き方には様々あると思った本です。単行本にはなかった、NHK退職についても書いてあります。有働さんのこれからを応援したいです。
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# by halca-kaukana057 | 2018-07-06 23:07 | 本・読書

獣の奏者 外伝 刹那

 この本も何年も積読にしていました…。


獣の奏者 外伝 刹那
上橋菜穂子 / 講談社、講談社文庫 / 2013 (単行本は2010)

 エリンと結婚したイアル。エリンとイアルはカザルムにおり、エリンは出産の真っ只中。陣痛が弱く、なかなか生まれようとしない。イアルは子どもが生まれるのを待ちながら、エリンとのなれそめを思い出す…「刹那」

 貴族のコルマ家の長女のエサル。貴族の女性らしい暮らしに馴染めず、貴族の女性の結婚も嫌がり、名門タムユアンの薬草学科で学んでいた。一緒にいたのは、代々上級貴族を診る医術師の家に生まれた医術科のユアン、タムユアンの教導師長を数多く輩出している家の出身のジョウンだった。真王ハルミヤの息女、リノミヤ誕生の祝宴に行くことになった3人。エサルはそこで、初めて王獣を見る。それ以来王獣のことが気になって仕方ないエサルは、著名な獣ノ医術師のホクリ師のことを聞く。エサルはホクリ師のもとへ、ユアンと一緒に行き、後に師事する…「秘め事」

 「獣の奏者」シリーズの外伝、4つの短編集です。短編といっても、「刹那」と「秘め事」はそれなりの分量はあります。4つの短編、全てのテーマは女性の性と生。女性として、母親としての面から、エリンとエサルを描いています。

 王獣と闘蛇と、それに関わる国の政治、軍事、秘められた歴史を描いた「獣の奏者」シリーズ。壮大な物語の途中で、もしくはそこに至るまでにあった、2人(+1人)の女性として、母親としての日常。「日常」であってほしかった。しかし、エリンは「霧の民」の血を引き、既に王獣リランと心を通わせ、国を左右する存在となってしまっている。イアルもかつては「堅き盾」で、王家に仕える者だった。過去形であるけれども、過去は消せない。そんな特殊な立場にいる2人が結婚し、子どもをもうけるのは国の今後にもかかわること。なので、出産にも国の使者が控えている。エリンは無事なのか、生まれた子ども(ジェシ)は無事なのかを伝えなければならない。イアルがお互いの気持ちに気づき、エリンと一緒に住み始めたが、自分たちの子どもに生まれた瞬間からのしかかる重圧を思って思い悩む気持ちは痛い程伝わってくる。エリンも同じだが、「国を左右する獣ノ医術師」である自分だけではない、女性として恋をして、想いを伝えて、好きな人と一緒になり、子をさずかる…普通の女性の面もある自分を選んだ。気持ちに素直に従った。王獣は生殖を人工的に制限されていたが、エリンはリランをその制限から解き放った。生命の営みに従った。エリンも、自分を国の制限から解放した。

 エリンとイアルの馴れ初めとなる箇所では、2人のささやかな幸せを垣間見ることができた。エリンは普段の仕事では着ることのない色の衣を着て、お祭りに行き、美味しいものを食べる。イアルは指物師として、黙々と仕事をする。穏やかな日々は2人にはちゃんとある。
 イアルの過去も明らかになります。「堅き盾」ってそういう仕組みなんだ…。このあたりは切ないです。


 一方のエサルの「秘め事」。エサルは結婚はせず、本編では厳しく強くもあたたかな心を持つカザルムの教導師長。これはエサルの青春時代の物語です。エサルがどんな立場にいるのか、王獣との出会い、どんなことを学んでいたのか…こんな過去を持つエサルだからこそ、エリンを受け入れられたのだなと思う(エリンはエサルの学友であるジョウンに生き物のことを学んでいるので、自然とエサルに近くはなりますが)。実際に生き物を観察して研究する姿は、エリンそっくりだと思う。

 そんな学問に没頭するエサルは、「貴族の女性」という枠組みから逃げてきた。馴染めなかった。だが、エサルの家との関係は途切れたわけでは無く、何かあればエサルの実家・コルマ家に影響が及ぶ。そして、エサルは「女性」という枠組みからも逃げ切れたわけではなかった。その時、エサルは家のことも思う。エサルも、エリンほどではないけれど、制限の中にある。「貴族の女性」として生きていれば、「女性」としても生きることができただろう。だが、エサルはそれを選ばなかった。でも、エサルも「女性」だった。エサルが一大決断をした時の箇所は切ないという言葉では足りない。痛いほど苦しい。

 エリンとエサルは正反対のように見える。正反対の選択をした。でも、制限の中で生きているのは同じ。「女性」「母親」だって制限、枠組みだと感じる。もっと風呂敷を広げれば、ジェンダーのことにも繋がってくる(「獣の奏者」の世界にはジェンダーに関わる話は出てこないのでここまで)。その枠組みの中で、自分は何を選ぶか。「獣の奏者」では生命の強さ、多様さも語られるが、エリンも、エサルも、多様な生命なのだなと思う。

 後の2作「綿毛」はソヨンのお話。ソヨンの選択の重さと、「綿毛」というタイトルの言葉の持つ軽やかさ。この対比がいい。「初めての……」では、母親になったエリンの奮闘記。エリンも子育てで悩みます。

 「獣の奏者」シリーズ全巻と一緒にどうぞ。
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# by halca-kaukana057 | 2018-07-03 22:05 | 本・読書

無伴奏ソナタ [新訳版]

 あらすじを読んで気になって、しばらく前に買って、積読にしておいた本です。そろそろ読もうかなと。


無伴奏ソナタ 新訳版
オースン・スコット・カード:著、金子浩、金子司、山田和子:訳/早川書房、ハヤカワ文庫SF/2014


 異星人に攻撃されている地球。11歳のエンダー・ウィッギンズはバトル・スクールの指揮官。竜(ドラゴン)隊を率いている。指揮官たちの中では最年少だが、戦闘では連戦連勝、成績はずば抜けて優秀だった。そんなエンダーを、大人の大尉や中尉たちは…「エンダーのゲーム(短編版)」。
 生後6ヶ月でリズムと音程への才能を認められ、2歳で音楽性、創造性の天才と評されたクリスチャン・ハロルドセン。両親と離れ、森の中にある一軒家で、自然の音や鳥のさえずりだけを聴いて過ごし、「創り手(メイカー)」として特殊な「楽器」を使って作曲するようになった。何十年も経ったある日、クリスチャンの前にある男が現れ…「無伴奏ソナタ」他11編。


 オースン・スコット・カードは著名なSF作家だそうですが、私は何も知らずに読みました。あらすじを読んで気になっていたのが、表題作の「無伴奏ソナタ」。音楽が題材の作品であることはあらすじからわかったのですが、読んで、まさかこんな作品だとは思いませんでした…いい意味です。私たちは生まれてから、様々な音に囲まれて暮らしているし、沢山の音楽も聴こうとしなくても耳に入って来る。それを、シャットダウンできたら…? これまでの歴史で、作曲家が他の作曲家に師事していたり、尊敬していたり、影響を受けたりするというのはいくらでもある。そういうのが一切なかったら?そして、音楽を創るな、演奏するな、歌うな、と禁止されたら?優れた音楽の才能がなくても、音楽がないのは退屈だ。演奏したり歌ったりできないのもつまらない。体調不良で一時そんな状態だったのですが、少しでもよくなってくると音楽を聴きたくなる。歌いたくなる。私のような凡人でさえもそうなのだから、優れた音楽の才能のあるクリスチャンにとっては、もっと自然なことだろう。クリスチャンが出会う街の人々もそうだ。ちょっと音程が外れていても、音楽を奏でずにはいられない。最後のギターで歌う少年たちのシーンがグッと来る。クリスチャンの音楽は、何があってもクリスチャンの音楽なのだと。

 11の短編集ですが、どれも面白かった。「エンダーのゲーム」はワクワクして、エンダーやビーンの成長が面白くてたまらない。のに、最後、そういう展開になるとは…!「王の食肉」「磁器のサラマンダー」は、最初、これもSF?と思ったが、見事にSFでした。不条理で、グロテスクな作品も少なくないので、そういう作品に慣れていない私には辛い表現もありましたが、面白い。「深呼吸」「四階共有トイレの悪夢」「解放の時」はホラーっぽくもある。「四階~」は完全にホラーですこれ。「死すべき神々」も面白かった。こういう異星人とのコンタクトがあっても面白い。

 どの物語も、面白いけれども、根底にかなしげな雰囲気が漂っている。「無伴奏ソナタ」の「シュガーの歌」のように。地球は、宇宙は、歴史は人間の力ではどうしようもできない。できないけれども、その時の人々が「よりよく」生きようと毎日を過ごしている。科学技術を駆使したり、宇宙へ出て行ったり、最悪な状況を避けようと逃げたり。人間はなんてちっぽけで、どんな優れた才能や能力を持っていて何かを成し遂げても、不条理なことが待っていたりする。それがわからなくても、わかっていても、毎日を生きる。人間は不思議な生き物だとも思う。

 こんな多彩な作品を創造するオースン・スコット・カードがSFの名手というのも納得できました。いいSFを読みました。
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# by halca-kaukana057 | 2018-06-30 21:49 | 本・読書

はじめまして、リュウグウ 「はやぶさ2」リュウグウ到着

 数日前のニュースですが、遅れても書いておくことだ、これは。

 小惑星「リュウグウ」を目指し、飛行を続けていた小惑星探査機「はやぶさ2」。27日、「はやぶさ2」がリュウグウに到着したことが確認されました。
JAXA:小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星Ryugu到着について
 おめでとうございます!!現在、「はやぶさ2」はリュウグウ上空20kmの「ホームポジション」というところにいます。ここが基準点になります。到着のポイントは、この20kmの位置だけでなく、
「はやぶさ2」の化学推進系スラスタの噴射が予定通り行われたこと
「はやぶさ2」が小惑星リュウグウとの距離を維持できていること
「はやぶさ2」の状態が正常であること
 これらも到着したかの判断の基準になるそうです。
 「はやぶさ2」の機体の状態は良好。イオンエンジンも、スラスタも、リアクションホイールも問題なしです。とても順調な往路でした。よかった…。

アストロアーツ:【レポート】小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ到着に関する会見
 津田雄一プロジェクトマネージャーを中心にした、記者会見の模様について読めます。
 リュウグウは、上記のJAXAのプレスリリースにある20kmからの画像を見ると明るい感じですが、実際のリュウグウは、炭素を多く含み暗いのだそうです。カラー画像で撮影したリュウグウの写真はほぼ真っ黒。
 リュウグウの詳しい姿が見えるまでは、リュウグウは丸い天体だと思われていました。しかし、近づいてみると、コマのような四角い形。大きなクレーターがあって、表面は思った以上に岩石でゴツゴツしている。どこにタッチダウンするか悩ましい。これから詳細な探査をして、タッチダウンできるところが見つかればいいなぁ。
 本当に、実際に行ってみないとわからないことはたくさんあるものです。これぞ深宇宙探査の醍醐味。
 タッチダウンは、9月~10月に行われます。8月に、予定地点を最終決定します。


 リュウグウ到着にあわせて、こんな企画も。
ローソン:ローソン研究所:小惑星「リュウグウ」をイメージしたぷるるん水ゼリーがいよいよ登場!
 コンビニのローソンは、「ローソン宇宙プロジェクト」を展開中。漫画「宇宙兄弟」とコラボしたからあげクン(ブラックホール味)や、ISS滞在中の金井宇宙飛行士との交信イベントなどをやってきました。
 今度は、リュウグウをイメージしたスイーツのアイディアを募集していました。その結果、生まれたのが、「バタフライピーティーのぷるるん水ゼリー(レモン)」。ハーブティ「バタフライピーティー」にレモンを入れ、星をイメージした金粉をいれた水ゼリー。薄紫色ですが、黒い器に乗せると金粉が星のよう。
 水ゼリーはこれからの季節にぴったりの涼しげなデザートですね。どんな味がするんだろう。発売は7月10日。楽しみにして待ちます。

 「はやぶさ2」の冒険はこれから。引き続き、ご安全に!!
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# by halca-kaukana057 | 2018-06-29 22:14 | 宇宙・天文

これがフィンランドの香り? 「消臭力」フィンランドベリーの香り

 夏至も過ぎ、明日までフィンランドでは夏至祭(Juhannus ユハンヌス)です。短い夏を謳歌すべく、サウナで一汗かいたら湖に飛び込んで、湖のほとりではかがり火を燃やしたり、ソーセージ(Makkara マッカラ)でバーベキューをして、夜遅くまで楽しんでいるんだろうなぁ。

 そんな、フィンランドの気分になれるモノがある…?と、1ヶ月前ほど前から、探しているものがあります。

エステー:初夏の季節限定企画 Visit Finland (フィンランド政府観光局)監修の「北欧」デザインと香り! 「消臭力」4アイテムを新発売

 「北欧」、「フィンランド」を謳う製品は多いです。北欧の森の香り、とか、フィンランドの白夜、とか、いろんなモノにそんなキャッチフレーズがついています。そういうのを見ると、やっぱり釣られますw ですが、これはちょっと違う。フィンランド政府観光局が監修している、フィンランド政府観光局お墨付きの、フィンランドの香りの芳香剤。釣られます。これは手に入れなければ。そう思っています。

 が、ドラックストアやスーパーなどを探しても全然見つからない。普通の消臭力はあるけど、「フィンランド」消臭力はどこに行ってもない。やはり田舎…。

 探して、探して、ようやく見つけました。
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 トイレの消臭力、フィンランドベリーの香り。これしかありませんでした。フィンランドリーフも欲しかった!
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 ちゃんと、「フィンランド政府観光局 監修」とあります。パッケージのデザインも北欧風。

 あけると、ふわっと甘酸っぱい香り。やさしい、爽やかな甘さです。甘過ぎないです。ベリーのいい香りです。

 フィンランドリーフの香りも欲しいなぁ…。お取り寄せしようかなぁ…。
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# by halca-kaukana057 | 2018-06-23 21:07 | フィンランド・Suomi/北欧


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