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戸塚教授の「科学入門」 E=mc2は美しい!

 昨年7月亡くなられた物理学者・戸塚洋二先生。「スーパーカミオカンデ」でニュートリノの観測をし、師である小柴昌俊先生についで、ノーベル賞受賞は間近と言われていた。しかし末期のガンのため、受賞前に無念にもこの世を去ってしまった。その戸塚先生が自身のガンの治療についてや、育てている花のこと、そして科学のことについてブログを書かれていた。一度読んだことがあったのだが、戸塚先生が筆者だったとは全くわからなかった。

A Few More Months(その後、「The Fourth Three-Months」と改題)

 このブログの「科学入門」の部分をまとめ、さらに最期のインタビューや、講演記録を収めたのがこの本です。

戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!
戸塚 洋二/講談社/2008
(*「mc2」の2は累乗の2です)

 冒頭に収められた「最後のインタビュー」を読んでいると、戸塚博士の科学への熱い想いと若い世代への期待を強く強く感じる。大学・大学院でのこと、師である小柴先生とのエピソード、ドイツで研究していた時の話、奥様とのこと、環境問題について思うことなどなど。第一線で活躍する科学者であるのに、まだまだ勉強が足りない、もっと勉強したいことがある、と。もっと時間が欲しい、と。ガンを抱えているのに、その尽きない好奇心と、意欲と、情熱に心打たれた。

 「科学入門」の部分も、難しいけれども戸塚先生の温かい語りかける文章に助けられながら読んでいる。アインシュタインの特殊相対性理論が物理学の世界をどう切り拓き、革新していったのか。それに基づいて、太陽がどうやって輝いているのかを解き明かし、またニュートリノの観測という謎と問題が生まれる。光と宇宙の形成について。あらためて宇宙論は難しいけど面白いと実感した。昨年、ノーベル物理学賞を受賞された小林誠・益川敏英両先生のクォークの話も出てきます。

 難しい数式も、結構出てきます。でも、それよりも戸塚先生の語る「科学の面白さ」に引き込まれてしまって、文章だけでも読みたい、理解したいと思い読み進めた。裕子夫人による「出版にあたって」の部分に、こう書かれてある。
夫はここにある文章を投稿する前に、「君にもわかれば誰にでもわかる」と私に読ませました。私が率直に「難しい。数式が出てくると飛ばして読んでるの」というと、「これを読むのは優秀な子供たちだから大丈夫だと思う。それに、もしわからなくても、何かのきっかけになればそれでいい」と申しておりました。
 私も、この「科学入門」が、若い人たちが科学を考えるきっかけになれば幸いだと思います。
(5ページより)


 さらに、この本の中でアメリカの理論物理学者・ジョン・バコールについて語られる部分があります。バコール博士は、ハッブル宇宙望遠鏡の建設を推進した方。ハッブル望遠鏡をシャトルで打ち上げ後、トラブルでピンボケの画像しか撮れない事が判明。バコール博士はすぐに修理をしなければならないとアメリカ下院に赴いた。その時に、彼は「宇宙望遠鏡で何が観測できるか」ではなく、予想外のものを見つけるのが科学だ、と。どういう風に質問していいかわからないような発見でないと、面白くない。想像もしないような対象物を観測することが、発見の醍醐味なんだ、と述べ、予算もつき修理が決まったのだそうです。

 「難しい」「すんなり理解できない」「予想もしなかった」ものこそ面白い。科学には、宇宙にはそれが沢山ある。わからないものだらけだ。ニュートリノもそのひとつで、研究を通して戸塚先生はその面白さを長年にわたって実感してこられたと思う。この「科学入門」で、もっと沢山の人に科学の面白さを伝えたい。きっかけになるだけでもいい。そんなメッセージをこういう形で残してくださって、本当にありがとうございましたと伝えたい。ブログと合わせて読むと、戸塚先生の科学者として、人間としての生き様に触れられる。もっと、戸塚先生の語る科学のお話を読みたかった。早過ぎる死が、本当に惜しまれます。

 最後になりましたが、戸塚先生のご冥福をお祈り申し上げます。
by halca-kaukana057 | 2009-01-30 23:01 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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