昭和のロケット屋さん ロケットまつり@ロフトプラスワン

 新宿のライブハウス「ロフトプラスワン」で、「ロケットまつり」というイベントが時々催されている。著書「恐るべき旅路」他宇宙開発ジャーナリストの松浦晋也氏、著書「宇宙へのパスポート」他SF作家の笹本祐一氏、漫画「なつのロケット」「まんがサイエンス」他漫画家のあさりよしとお氏ら宇宙作家クラブが開いている、ロケット・宇宙開発についてとことん語りつくすトークイベント。私も一度行ってみたいと思っていたのだが、その内容がDVD付きで書籍化された。これは嬉しい。

はてなキーワード:ロケットまつり とは


昭和のロケット屋さん ロケットまつり@ロフトプラスワン
林 紀幸+垣見 恒男:語り/松浦 晋也+笹本 祐一+あさり よしとお:聞き手/エクスナレッジ/2007

 日本のロケット開発は、「日本ロケットの父」糸川英夫博士の「ペンシルロケット」から始まった。そのペンシルロケット開発から糸川先生と仕事をしてきた林さんと垣見さん。林さんは糸川研究室に就職し、「ロケット班長」としてロケットの打ち上げ現場で仕事をし続けた。垣見さんは富士精密(現在は日産自動車→IHIエアロスペース)で、糸川先生のロケットを設計していた。2人の日本のロケットのお話がとにかく面白い。糸川先生の現場でのエピソード・とんでもない話や、ロケット開発のノウハウや裏話。こんな話を書籍化していいのか?と思うような、あらゆる意味で危険なお話まで。日本のロケットの歴史を、順に追っていきます。ロケットの仕組みについても、さらに勉強できました。仕組みはわかっていても、それをどう作るのかについてわかっていなかったり。それについても詳しく、現場の視点で書いて(語って)ある。現場で体験したからこそ話せる話の数々は、技術の伝承の面でも、体験の伝承の面でも貴重だと思う。

 以前、「月をめざした二人の科学者」の記事で、アメリカの宇宙開発は演出を大事にしヒロイック的なイメージ、ロシア(旧ソ連)のイメージは細かいことにはこだわらず、実用的でタフ。では日本は?日本のロケットは、職人技だと思う。日本の技術そのものが職人技だと思うのだが、ロケットも同じく。林さんも、垣見さんもまさに職人。ロケットを知り尽くし、技を極めている。そのような方がこんなフランクに、昔の貴重なお話をしてくださる。お話から、ロケット打ち上げ場や製作所の空気や雰囲気が伝わってくるようだ。やっぱり、私は何であれ現場の空気が大好きだ。現場にいる人の、現場の話が大好きだ。

 この本を読んでいて、こういう場がどんどん増えればいいと思った。ロケット・宇宙開発に限らず技術職全体…いや、どんな仕事でも。日本が「技術立国」として成長していったのには、現場で楽しみながらも仕事に打ち込んだ技術者たちがいたからこそ(「プロジェクトX」みたいだ)。そのような方のお話を聞ける場が、もっと増えればいいと思う。製作のコツも、苦労話も、失敗談も、武勇伝も、今だから話せる驚きエピソードも。そして、若い世代へのメッセージも。それらのお話には、学ぶことが沢山ある。この本でも、技術的なこと、仕事上のこと、心理的なこと、人間関係などで学ぶことが沢山あった。そして、優れた技術を後世へ引き継いでいきたいと、強く思った。技術も人間に宿るのだから。私は技術職ではないけれども、もしそのお手伝いが出来るならと、この記事を書いている。

 印象に残った話が2つある。ひとつは、「人生に消しゴムはいらない」。糸川先生の言葉だそうだ。
とにかく戻ることができないんですよ、人生だけは。皆さん、今おいくつか知りませんけど、人生は現実と、今と、先のことしかないですから、終わったことをくよくよしてもしょうがないですよ。失敗の場所に立ち会えたというのは、ラッキーだったと思うことが一番大切です。
(68ページ、林さん)

 それと、日本は失敗すると「原因の追求」ではなく「責任の追及」をする人が多いという話。失敗のデータを残していかなければいけないのに、「失敗の責任を取れ」と責任者を辞職させて、データを残さず失敗を隠蔽してしまう。そうすると、また同じ失敗が起きる。これは革めなければいけないことだよなぁ。

 今も「ロケットまつり」は続いている。現在は人工衛星をいくつも設計したNECの小野英男さんを招いての「衛星まつり」も。続きの刊行も期待しています。そしていつかは「ロケットまつり」に行きたいな。地方からだと厳しいなぁ…。
[PR]
by halca-kaukana057 | 2009-02-22 22:48 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30