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天と地の守り人

 上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズもいよいよクライマックス。シリーズ最後にして長大な3部作「天と地の守り人」です。

天と地の守り人<第1部>
上橋 菜穂子/偕成社/2006

 新ヨゴ皇国は、南の大国タルシュ帝国との戦争に控え、隣国ロタ王国・カンバル王国との国境を閉じていた。バルサはその国境をひそかに越える者たちを助ける仕事をしていたが、その途中、サンガル王国から帰還する途中水死したというチャグムが生きていることを知らされる。そして、チャグムが新ヨゴ・ロタ・カンバルの3国をタルシュ帝国から守るために同盟を結ぶことが出来るよう、バルサはチャグムをロタ王国へ探しに向かう…。



 これまでの「守り人」シリーズの物語が、この「天と地」に全て収束している。ジグソーパズルのように、シリーズひとつひとつが大事なピースで、壮大な物語が姿を現す。カンバル・ロタ・サンガル・タルシュで出会った人々も次々と再登場。またしても一気読みしてしまいました。途中で止められない!

 「精霊の守り人」以降、バルサとチャグムが共に旅をすることはなかったのだが(「夢の守り人」で一度再会はしていた)、「天と地」でついに再会。しかし、チャグムはもう幼い子どもではありません。タルシュ帝国に屈する未来を拒絶し、祖国を守ろうと奔走する17歳の皇太子。刺客に追われ、国家間の重圧に押しつぶされそうなチャグムを、バルサが守り、後押しする。バルサとチャグムの信頼関係は、どんなに長い時間を経ても変わりはしない。絆の深さにじーん。

 新ヨゴ皇国とタルシュ帝国との戦争が迫る一方で、ナユグにも大きな変化が。その変化と戦争で大変なことに。トロガイ・タンダ・シュガも奔走します。しかし、タンダは出兵することになり、シュガもチャグムが死去したとされている宮の中では自由に身動きできない。こんな時こそタンダの出番と思ったら、戦場に向かうことに。それでも、戦場でもタンダはタンダらしく動いている。タンダに戦場は似合わないが、タンダがいたことで救われた人もいる。必要だからこそ、タンダは戦場に向かうことになってしまったのかもしれない。その後の結末も含めて。

 第3部<新ヨゴ皇国編>はほとんどチャグムの物語と言ってもいいぐらい。「精霊」以来折り合いが悪かった帝との関係にも結末がやってきます。「精霊」から読んできて、帝は父としてどうなんだと思い続けてきた。しかし、帝は自信を持って国の長であり崇められる神の子である役を果たしている、それだけなのだと感じた。決して悪い意味ではなく、帝であることに誇りを持ち、威厳ある国の長の姿を見た。チャグムは精霊の卵を抱いてしまったことでバルサに預けられ、皇族としては異例の平民の暮らしを体験したことがその後の生き方に大きく影響している。一方、宮から出ることも無く、帝としての務めを果たした帝の生き方・考え方もひとつの生き方。どちらが正解なんてない。
 前回の「蒼路の旅人」の感想でも書いたが、この物語は色々な国の、様々な立場の人々の人生が重なったり、交わったりして進んでいく。その重なったり交わったりした時々に、その登場人物にとってプラス捉えられるかマイナスに捉えられるか、その違い。絶対的にプラスの人も、マイナスの人もいない。(これは私たち現実世界の人間関係も同じだと思う。)チャグムと帝も、そういう関係だったのだと思うと、2人の別れのシーンがとても寂しく、重く、辛く感じる。

 そして壮大なフィナーレ。圧倒されました。ハッピーエンドというわけでもないが、バッドエンドでもない。物語が行き着くところに行き着いた感じ。何かが終わって、何かが始まる予感をさせる終わりが感慨深い。「精霊」からずっと一緒に旅をしてきたんだなぁという思い。これが児童文学なんだから凄い。大人も存分に楽しめる。ずっと読んできて良かったと心から思った。いい物語に出会えたな、こんないい物語が日本にあってよかったなと感じます。

 アニメ「精霊の守り人」でシリーズに興味を持った方、途中で止まっている方、是非「天と地」まで読むことをオススメします。そう言えば、バルサの幼少時代の短編集「流れゆく者」もあるのだった。こっちも読まねば!
 と言うことで、「守り人」シリーズ、まだ続きます。「獣の奏者」も読みたいが、アニメ化のために図書館では貸し出しっぱなし。アニメが終わる前に読みたいなぁ。
by halca-kaukana057 | 2009-05-27 21:41 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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