人気ブログランキング |

ケンプの優しいシューベルト

 そろそろ「ピアノ・マスターワークス」(CD50枚)を聴いた感想を書き始めようかと思う。まずはこのボックスを購入して、真っ先に聴いた45枚目。ヴィルヘルム・ケンプのシューベルトソナタ21番D780。

Piano Masterworks:The World's Favourite Piano Classics
Various Artists/Decca





単品だとこのCDかな?
HMV:シューベルト ピアノ・ソナタ第13、21番、楽興の時、即興曲集D.899、935

 第1楽章の冒頭の音色を聴いて、とてもホッとした。とても優しい音色。以前この曲の感想を書いた時、「感動的な歌」と書いたのだが、その歌が心から滲み出てくるような演奏。

 何と言ったらいいのだろうか、作品の中に伝えたいことや主張が目一杯詰め込まれていないと感じた。行間にゆとりがある、とも言える。聴く側が何かを感じ取る余裕を残してくれているかのよう。
 自分が演奏する時、行間にゆとりのある演奏なんて考えたことが無かった。全体の細かい箇所の表現や、苦手な部分に注意して、油断することなくコントロールして演奏するのがいい演奏だと思っていた。実際、ケンプもそう演奏しているのだろうけど、「演奏している」と言うよりは、「歌っている」と言うのが近いのだろう。自然に音楽が心身から出てくるような。激しく華やかで技巧の見せ所が沢山ある曲なら、こんな表現は出来ないかもしれない。シューベルトのロマンチックで穏やかな曲想と、心の底から歌い上げる演奏が得意なケンプのよさがうまく噛み合っている。まさに円熟の極み。

 シューベルトのソナタは全体的に長くて、ベートーヴェンとはまた違う偉大さを感じるのだけれど、それをリラックスして聴ける。肩に力が入っていなくて、かといってダラダラしていない。平坦でもない。凄いな、このバランス感覚。集中力もすごい。

 カップリングの「楽興の時」も同じくシューベルトとケンプの歌がじんわりと温かい。そっとそばに寄りそってくれているよう。やっぱりケンプのピアノが大好きだ。そう感じた一枚です。


◇前回のシューベルト21番ソナタ記事:満ち足りた最期 シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番
by halca-kaukana057 | 2009-05-28 22:16 | 音楽

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31