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博士の愛した数式

 コミック版「数学ガール」に続き、数学関係本をもう1冊。わりと有名な作品だが、「面白いのかなぁ…」と思って読まずにいた。でも、まずは読んでみる。



博士の愛した数式
小川 洋子/新潮社・新潮文庫/2005(単行本は2003)

 家政婦である"私"は、とある老人の家に派遣されることになった。その老人は数学の博士であったが、事故の後遺症で、事故以後の記憶が80分しかもたなかった。"私"と博士と、"私"の息子である「ルート」は博士と数学の話をしながら交流を深めてゆく…。

 私がこの作品を読まずにいたのは、「泣ける」とか「感動の物語」とかいう広告を見て、警戒していたからだ。あからさまなお涙頂戴ものは、正直言うと苦手だ。「絶対泣ける」と言われても、逆にしらけてしまう。そんな作品だと思っていた。

 でも、読んでみてそうではないと感じた。とても静かで、温かい作品だった。劇的なドラマが待っているわけではない(何度か物語の山はあるが)。博士と"私"の日常を描いた作品だ。ただ、博士は80分しか記憶が持たない。80分を過ぎると、また1からやり直し。"私"とも初対面の関係になってしまう。それでも、博士と"私"、そして"私"の息子の「ルート」は友情を育んでゆく。思い出は残らない。楽しいことも、辛いことも、博士の記憶には残らない。それでも博士は毎日を生きてゆく。思い出となる過去や、未来ではない、「今この瞬間」を生きているのだ。記憶に残らなくても、今この時間を大事に生きることが大事…。そう感じさせてくれた。

 そして、この物語の大きなカギとなるのが数学。博士にとって数学・数字は言葉。"私"に対しても誕生日や電話番号など様々な数を問い、その数が何なのかを語ってくれる。事あるごとに数学の奥深さ、面白さ、そして美しさを教えてくれる。「数学ガール」と合わせて読んで、私にとって数学は無味乾燥な数字の羅列ではなくなった。どの数・数式にも意味があり、物語があり、歴史がある。何気ない数字にも、隠された秘密がある。それを紐解こうとすることの面白さを、私も体験してみたくなった。数学ってすごい学問だ。

 とにかく物語の続きを読みたくて、一気読みしてしまった。数学と一緒に語られる野球の話も面白い。そういえば、映画にもなっていたっけ。映画版も観てみよう。
by halca-kaukana057 | 2009-08-31 20:58 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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