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生命の木の下で

 本屋でなんとなく気になって購入。

生命の木の下で
多田 富雄/新潮社・新潮文庫/2009

 著者の多田さんは免疫学者。その多田さんが海外で見たものや、日常を綴ったエッセイです。読んでいて、とてもエネルギーにあふれた人だなと思った。人類発祥の地であるアフリカの、原始的神話を今に伝えるドゴン族に会いに行こうと砂漠をひたすら走る。タイ北部の山岳地方に住む少数民族の麻薬療養所を訪れ、その現実を目の当たりにする。アフリカであれ、タイであれ、「命の現場」に赴き、その現実を見つめ捉えようとする著者の姿勢に圧倒された。過酷な状況であれ、厳しい現実にさらされていてもそこには人間が生きていて、生命がある。生命に対する著者の探求心に刺激されるものが多かった。

 第2章は日常を綴ったエッセイ。これまでの旅行でのエピソードから、学問のこと、親しい学者仲間たちのこと、社会のこと、家で起きたちょっとした出来事、美味しい食べ物のことなど…鋭い視線で語られ、面白い。ところどころにユーモアも交じり、心が和む。いいエッセイを読んでいると、日常をこんな豊かな視点で見たいと思うと同時に、こんな文章が書きたいなぁと思う。日常の何気ないことをさらりと、でも考えるポイントを逃さず書く。生きるということ、日常生活というものに好奇心を持って、貪欲に楽しんでいるからなのかなと思う。豊かなエッセイには、その人の生き方が表れる。こんな好奇心とものの考え方を持って、ささやかな毎日を生きていきたいなと思う。

 第3章は影響を受けた作家たちの話。小林秀雄、中原中也…。科学者でも文学に詳しいという人は結構いる。代表的なのが寺田寅彦。専門分野である科学だけでなく、他の分野にも引き出しを持っているっていいなぁと思う。興味を持ったのが哲学者の中村雄二郎。読んでみよう。

 多田さんの著書はたくさんあるらしい。また、現在多田さんは脳梗塞で倒れ、リハビリ中なのだそうだ。そのリハビリの様子はNHKでも放送されたそうで、かなり過酷なものであるらしい。リハビリに関する著書もあるらしい。またいい文章家と出会えた。著書をじっくり読んでみよう。
by halca-kaukana057 | 2009-09-06 21:23 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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