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水辺にて on the water/off the water

 私は、梨木香歩さんの文章が好きです。凛としていて、透明感があり、さらさらと心の中を流れてゆくよう。でも、その言葉には深い意味が込められている。透明な、深い湖のようだと言えばいいのだろうか。そんな梨木さんの文章の良さが、このエッセイでも存分に味わえました。


水辺にて―on the water/off the water
梨木 香歩/筑摩書房/2006

 梨木さんはカヤックが趣味だという。そのカヤックを通して訪れた川や湖の自然や、そこで感じたこと、考えたことなどが収められています。梨木さんがカヤックが趣味だとはこの本を読むまで知らなかった。カヤックとカヌーの違いもよくわからない私だが、カヤックはアクティブなアウトドアでのものというイメージがある。激流下りのような。でも、このエッセイを読んで、カヤックでも梨木さんは梨木さんなんだなと感じた。自然へのまなざし、静かな思考と言葉が、心の中にすーっと流れてくる。

 「西の魔女が死んだ」や「家守綺譚」では、沢山の植物が出てくる。そして登場人物たちはその植物に触れ、自然を思う。温かく、尊いものとして扱う。そんな登場人物たちの自然への姿勢は、梨木さんご本人の自然に対する姿勢から生まれたのだと確信した。自然の美しさ、生命のはかなさとたくましさ。文章は静かで透明なのに、しっかりとした強いものを感じるから不思議だ。

 水辺は、不思議な場所だと思う。陸と水中が入り混じる場所。境界線ははっきりしているようで、波打ったり、生えている植物の種類もいろいろであいまいだ。私はカヤックの経験はないが、カヤックで水面を進む時もそんな感じなのだろう。陸上と水の中の境界をゆくカヤック。カヤックの下には水の底がある。水の中には、陸上にはない世界が広がっている。その2つの世界をつなぐ水辺。私は川岸や湖のそば、海辺などが好きで、比較的近くに海があるので時々海辺で波の音を聴きながら海をボーっと眺めていることがある。広い海原を見ていると、心の中にある様々なものがリセットされるように感じる。水辺に惹かれるのは、そんな2つの世界のあいまいな境界に何らかの魅力を感じるからだろう。

 収められているエッセイの中で、「常若の国 3」、「川の匂い 森の音 1~3」に特に惹かれました。「常若の国 3」は、梨木さんの想像力に圧倒されます。後、「アザラシの娘 3」の最後に出てくるこの言葉
with desperate effort
激しく希求する心。そのための、命がけの努力。
(106ページ)

この言葉に強く惹かれました。

 梨木さんの文章を読んでいると、本当に心が落ち着きます。澄んだ静かな水面のよう。梨木さんの趣味がカヤックであることに、納得してしまうエッセイでした。
by halca-kaukana057 | 2009-10-16 21:42 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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