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モモ

 児童文学・ファンタジーの名作「モモ」。大人になるまで、読んだことがありませんでした…。気になっていたら、本屋で見つけたので即購入。


モモ
ミヒャエル・エンデ/大島かおり:訳/岩波書店・岩波少年文庫

 この本をもっと早くに読んでいればよかったと思う。子どもの時…ではなく、大人になってから。児童文学ではあるけれども、内容は思いっきり大人向けだ。深いこれまでの自分の生き方への反省と、思考と想像力を求められる。あらすじを読むと教訓めいた話なのかな?と思ったが違う。自分で考えて、それを生活の中で感じる作品だと思う。

 「時間がない」「効率よく時間を使いたい」という言葉をよく聞くし、私自身も何度も口にしてきた。1日48時間とは言わないから、せめて30時間は欲しいとか、限られた時間の中で沢山のことをやるにはどうしたらいいかとか。休みの日、ダラダラと過ごしてしまうと時間を無駄にした、その時間をピアノの練習などに使えたのにと思う。一方で、同じように休日を何もせず過ごしても、のんびりできて、心に余裕を持って過ごせてよかったと思う時もある。同じ時間なのに、感じ方が違う。同じように過ごしていても、時間に意味を、言葉を、感情を持たせるのは人間自身なんだと、この本を読んで思った。

 モモはみなしごで貧しくても、友達と楽しく暮らしていた。人の話を「聴く」のに長けていて、どんな人もモモに話をすると、冷静になり、思考がクリアになり、悩み事やケンカも解決した。その後、モモはその特技で、時間をめぐる大事件に巻き込まれてゆく。私が思うに、モモは人の心の投影なんじゃないかと感じた。モモは真実を見通そうとする。時間を盗む灰色の男たちの正体を暴き、時間を司るマイスター・ホラに出会う。そのマイスター・ホラと「時間」とな何か、考え言葉にする。そして盗まれた時間を取り戻すため、灰色の男たちに立ち向かう。エンデは、読者の心に、モモのような真実を見通す、鋭く冷静に周りの状況や自分自身を分析し見守る「もう一人の自分」のような存在を、心の中に持っていて欲しいと思ったのかもしれない(あくまで想像)。私たちの生きる現実世界に、モモはいない。モモがいてくれたら、色んな話をしてみたいと思うのだが、残念ながらいない。でも、そんなモモのような存在を、心の中に持つことは出来るのではないか。持ちたいなぁと思う。

 「時間とは生きることそのもの」。文中のこの言葉が重く、けれども温かく響いている。読後、何度でも読みたい本だと感じた。読めば読むほど、色々な解釈、読解が出来ると思う。その時の自分自身の感情・状態によっても感じ方は違うだろう。純粋に物語として楽しむのも、勿論楽しい。読めば読むほど発見があって、柔軟な読み方が出来る作品の存在は貴重だと思う。また読んだ時、自分がどう感じるのか楽しみだ。
by halca-kaukana057 | 2009-11-21 22:18 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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