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本屋の森のあかり 6

 本屋さんが舞台の書店員漫画、もう6巻です。


本屋の森のあかり 6
磯谷友紀/講談社・講談社コミックスkiss/2009

 名古屋に異動になったあかり。あかりは雑誌売り場のチーフを任される。その雑誌売り場には、田才という男性契約社員が。あかりは雑誌売り場をよりよくしようと色々変えようとするが、田才とことごとく衝突してしまう。それでも、売り場や雑誌の配置を工夫しようと提案するあかり。だが田才は、売り上げは十分なのだから変えても意味はないと、バイト達と共に帰ってしまう。ひとり売り場に残されたあかりは…。

 この作品を読んでいると、「これは自分か」と思うことが多い。あかり達登場人物が置かれている状況、心境や考えていることが被って、「これはまさに私だ」と思う。27・28話ではあかりと田才の仕事観が描かれているが、どちらにも共感できる。27話、ひとり売り場に残って仕事をしているあかりがこう考える。
人になにかやってもらうとか すごく下手だ
むしろ 全部一人でやってもいいなら よっぽど楽なんだけどな
(31ページ)

 私もこう思うことがある。人に指示を出すのが苦手で、迷ってしまうことがよくある。自分一人でやれるなら、こんな気を遣わなくてもいいのにと思う。でも、一人でする仕事には限界があって、やはり仕事は一人では出来ないなという結論を出してしまう。
(ちなみに、「協力」「協同」という意味で「一人で仕事はできない」と思うけど、「干渉」というネガティヴな意味でも「一人で仕事はできない」と思う)

 一方の田才。売り上げは十分なのだから、無駄な努力はしたくない。現状維持で十分。余計な仕事を増やさないでほしいとあかりと対立する。しかし、その田才の背景にあるものが描かれ、「これも私か!」と思ってしまった。
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには
夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう

立原道造「萱草に寄す」収録「のちのおもひに」より

 27・28話のテーマとなる、この詩。失恋の詩だそうだが、田才はこれに田才自身の仕事を重ね合わせた。忘れたくても忘れられないことを抱え、むなしさを覚える。私もそんな"忘れられずに抱えているもの"を思い出して、しんみりとしてしまった。28話の読後はとても爽やかなのですが、その抱えているものの重さをずしりと感じ、何とも複雑な気持ちになった。田才は少し前へ進んだ。私はどうするのだろう、と。

 この6巻の帯に「本と出会って、人と出会う。 一冊の本から広がる、まだ見ぬ世界。」とあったが、この"人"は"自分自身"も含むと感じた。29話の寺山、30・31話の潮見。自分自身の無意識の部分、見ないふりをしてきた部分にも「出会う」。本を通して、自分自身の何かに気づく。だから本は面白い。読むのをやめられない。

 29話は宮澤賢治「銀河鉄道の夜」。大好きです。読後の、陰り、暗さも含めて。あかりの部屋の本棚も公開。「ドリドル先生」シリーズやら、「ぐりとぐら」やら。確かに、誰かに本棚を見られるのって、ちょっと恥ずかしい。自分の趣味が丸出しになるので。
by halca-kaukana057 | 2009-12-16 21:30 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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