2010年 01月 24日
美術館でコンサート
今年初のコンサートに行ってきました。普通、コンサートはコンサートホールなどで開かれるもの。しかし、今回のコンサートはちょっと違います。なんと、美術館の、展示室で。美術作品と一緒に音楽も楽しめてしまう、お得で不思議なコンサートです。
その美術館が、「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」で行った青森県立美術館。その目玉であるシャガールの「アレコ」背景画を展示してある「アレコホール」で、月1回程度のペースで定期演奏会を開いています。昨年度はベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏。今年度は「楽の音・日本の音」というテーマで西洋楽器から和楽器まで、楽器に焦点を当てて様々な作品を取り上げています。前から知ってはいたのだが、なかなか行けずにいたのです。
夜、雪の中の青森県立美術館。夜に行くのは初めてです。真っ白な雪の中、白い建物がライトアップされ、壁のシンボルマークが青く光っている。とても幻想的です。
【プログラム】
・モーツァルト:弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 K.387 『春』
・シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
アウレオ弦楽四重奏団、浅野清(p)
当日前まではモーツァルトを演奏することしかわかっておらず、シューマンが演奏されることは会場でプログラムを見て初めて知りました。やった、シューマンも聴ける!嬉しさのあまり、顔がニヤけていたかもしれませんw
会場のアレコホールの、第1幕背景画「月光のアレコとゼンフィラ」を背景にして、演奏者席と聴衆席が置かれていました。アレコホールは四角い大きな部屋で、演奏者と聴衆は同じ高さで座ることに。なので、後ろに座ると演奏者の様子がよくわかりません。これがちょっと残念な点。演奏を聴きながら、演奏者の表情や手・指の動きを見るのも好きなのに。ただ、演奏者との距離は短く、すぐそばで聴いているという感じはありました。そして「アレコ」背景画の存在感。第1幕は深い青が印象的なのですが、その落ち着いた雰囲気が気持ちをリラックスさせてくれました。
まず、モーツァルト。実は初めて聴く作品です。「春」とも呼ばれるこの作品。全4楽章、全て長調。「春」と呼ばれるのにも納得。外は一面の雪景色。春はおろか、節分もまだ先。この日も雪が降る寒い夜でしたが、その雪の中から春を待ち望む気持ちになれました。
弦楽四重奏の面白いところは、それぞれの楽器の絡みとメロディーのリレー。聴いているだけでも面白いのに、目の前で実際の演奏を見ているとその絡みとリレーがはっきりとわかる。おやと思ったのが、意外と第2ヴァイオリンがメロディー部分を演奏していること。第2ヴァイオリンというと、私はヴィオラよりも陰の印象を持っている。第1ヴァイオリンが華々しくメロディーを歌うのに対して、第2ヴァイオリンは地味に内声を担当する。同じヴァイオリンなのに。もちろん、その内声があるからこそ楽曲に深みが増すのだが。ヴィオラはヴァイオリンと異なる音域と温かな音色という個性があるからいいが、ヴァイオリンはヴァイオリン。同じヴァイオリンだ。同じヴァイオリンなのに、パートが変わると演奏も異なる。第2ヴァイオリンって不利じゃないか?と思ったことがある。ところが、このモーツァルトの14番では、第2ヴァイオリンも活躍。弦楽四重奏での第2ヴァイオリンは、オーケストラでの第2ヴァイオリンとは異なる位置づけなのだろう。ヴィオラもそうだ。私はまだ、弦楽合奏のことをよく知らない。弦楽合奏、弦楽室内楽のコンサートに行ったのはこれが初めて。無理もない。これから学んでみよう。
ピアノが運ばれてきて、お待ちかねのシューマン。この楽曲も、これまであまり聴いたことがない。第1楽章からとても輝かしいメロディー。まさにbrilliante!!面白いのが、チェロとヴィオラの掛け合い。チェロ→ヴィオラ→チェロ…とお互いにメロディーを何度も反復し合う。そしてピアノやヴァイオリンも入る。シューマンはヴィオラの活かし方に長けていたのかもしれない。ヴィオラとピアノの「おとぎの絵本」という作品もある。ヴィオラファンの私にとって、嬉しい限り。第2楽章は葬送行進曲のよう。ゆっくりと重い、静かなメロディーが流れる。第3楽章のスケルツォ。軽快で華々しく、これでフィナーレとも思えたが、さらに華やかな第4楽章。弦楽四重奏にピアノを加えることで、さらに音に厚みと深さが。シンフォニーみたいだ!と思ってしまった。弦楽四重奏にピアノを加えたら、繊細な弦の音が負けてしまうんじゃないかと思ったがそんなことなかった。むしろ活かしている。ピアノのソロの部分もあるけど、ピアノが内声を担当する部分もある。この作品でピアノを受け持つのは、大変だろうなと思う。あまりでしゃばらずに音をコントロールするのが。シューマンのピアノ五重奏曲、とても気に入りました。どんどんCDでも聴いてみよう。
2作品ともに思ったのが、楽曲の構造がなんとなくわかるようになっている自分に気づいたこと。第1主題が提示されて、繰り返して、第2主題が出てきて…と、曲がどんな構成になっているかに気をつけて聴くようになった。これは「ソナチネ」に取り組んでいるおかげか?「ソナチネ」は小さなソナタで、ソナタの練習…だけじゃない。ソナタを演奏するには、曲の形式や構造、流れについても知る必要がある。それで、どう演奏するかが決まってくるから。これまでコンサートに行っても、この点に気をつけて聴くことはなかった。ただ、どんな作品で、どんな演奏か。たとえ初めて聴く作品でも、作品の形式や構造にも気を配って聴けるようになった。これは大きな進歩だ。自分でも驚いた。「ソナチネ」もこんなところで役に立つとは。7番以降も続けていこう。
場所の面白さだけでなく、それぞれの作品の面白さ、弦楽四重奏という形態の面白さにも触れたコンサートでした。
・以前の記事:バロック期ヨーロッパのはかなさと躍動感 「静物画の秘密展」
その美術館が、「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」で行った青森県立美術館。その目玉であるシャガールの「アレコ」背景画を展示してある「アレコホール」で、月1回程度のペースで定期演奏会を開いています。昨年度はベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏。今年度は「楽の音・日本の音」というテーマで西洋楽器から和楽器まで、楽器に焦点を当てて様々な作品を取り上げています。前から知ってはいたのだが、なかなか行けずにいたのです。
夜、雪の中の青森県立美術館。夜に行くのは初めてです。真っ白な雪の中、白い建物がライトアップされ、壁のシンボルマークが青く光っている。とても幻想的です。
【プログラム】
・モーツァルト:弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 K.387 『春』
・シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
アウレオ弦楽四重奏団、浅野清(p)
当日前まではモーツァルトを演奏することしかわかっておらず、シューマンが演奏されることは会場でプログラムを見て初めて知りました。やった、シューマンも聴ける!嬉しさのあまり、顔がニヤけていたかもしれませんw
会場のアレコホールの、第1幕背景画「月光のアレコとゼンフィラ」を背景にして、演奏者席と聴衆席が置かれていました。アレコホールは四角い大きな部屋で、演奏者と聴衆は同じ高さで座ることに。なので、後ろに座ると演奏者の様子がよくわかりません。これがちょっと残念な点。演奏を聴きながら、演奏者の表情や手・指の動きを見るのも好きなのに。ただ、演奏者との距離は短く、すぐそばで聴いているという感じはありました。そして「アレコ」背景画の存在感。第1幕は深い青が印象的なのですが、その落ち着いた雰囲気が気持ちをリラックスさせてくれました。
まず、モーツァルト。実は初めて聴く作品です。「春」とも呼ばれるこの作品。全4楽章、全て長調。「春」と呼ばれるのにも納得。外は一面の雪景色。春はおろか、節分もまだ先。この日も雪が降る寒い夜でしたが、その雪の中から春を待ち望む気持ちになれました。
弦楽四重奏の面白いところは、それぞれの楽器の絡みとメロディーのリレー。聴いているだけでも面白いのに、目の前で実際の演奏を見ているとその絡みとリレーがはっきりとわかる。おやと思ったのが、意外と第2ヴァイオリンがメロディー部分を演奏していること。第2ヴァイオリンというと、私はヴィオラよりも陰の印象を持っている。第1ヴァイオリンが華々しくメロディーを歌うのに対して、第2ヴァイオリンは地味に内声を担当する。同じヴァイオリンなのに。もちろん、その内声があるからこそ楽曲に深みが増すのだが。ヴィオラはヴァイオリンと異なる音域と温かな音色という個性があるからいいが、ヴァイオリンはヴァイオリン。同じヴァイオリンだ。同じヴァイオリンなのに、パートが変わると演奏も異なる。第2ヴァイオリンって不利じゃないか?と思ったことがある。ところが、このモーツァルトの14番では、第2ヴァイオリンも活躍。弦楽四重奏での第2ヴァイオリンは、オーケストラでの第2ヴァイオリンとは異なる位置づけなのだろう。ヴィオラもそうだ。私はまだ、弦楽合奏のことをよく知らない。弦楽合奏、弦楽室内楽のコンサートに行ったのはこれが初めて。無理もない。これから学んでみよう。
ピアノが運ばれてきて、お待ちかねのシューマン。この楽曲も、これまであまり聴いたことがない。第1楽章からとても輝かしいメロディー。まさにbrilliante!!面白いのが、チェロとヴィオラの掛け合い。チェロ→ヴィオラ→チェロ…とお互いにメロディーを何度も反復し合う。そしてピアノやヴァイオリンも入る。シューマンはヴィオラの活かし方に長けていたのかもしれない。ヴィオラとピアノの「おとぎの絵本」という作品もある。ヴィオラファンの私にとって、嬉しい限り。第2楽章は葬送行進曲のよう。ゆっくりと重い、静かなメロディーが流れる。第3楽章のスケルツォ。軽快で華々しく、これでフィナーレとも思えたが、さらに華やかな第4楽章。弦楽四重奏にピアノを加えることで、さらに音に厚みと深さが。シンフォニーみたいだ!と思ってしまった。弦楽四重奏にピアノを加えたら、繊細な弦の音が負けてしまうんじゃないかと思ったがそんなことなかった。むしろ活かしている。ピアノのソロの部分もあるけど、ピアノが内声を担当する部分もある。この作品でピアノを受け持つのは、大変だろうなと思う。あまりでしゃばらずに音をコントロールするのが。シューマンのピアノ五重奏曲、とても気に入りました。どんどんCDでも聴いてみよう。
2作品ともに思ったのが、楽曲の構造がなんとなくわかるようになっている自分に気づいたこと。第1主題が提示されて、繰り返して、第2主題が出てきて…と、曲がどんな構成になっているかに気をつけて聴くようになった。これは「ソナチネ」に取り組んでいるおかげか?「ソナチネ」は小さなソナタで、ソナタの練習…だけじゃない。ソナタを演奏するには、曲の形式や構造、流れについても知る必要がある。それで、どう演奏するかが決まってくるから。これまでコンサートに行っても、この点に気をつけて聴くことはなかった。ただ、どんな作品で、どんな演奏か。たとえ初めて聴く作品でも、作品の形式や構造にも気を配って聴けるようになった。これは大きな進歩だ。自分でも驚いた。「ソナチネ」もこんなところで役に立つとは。7番以降も続けていこう。
場所の面白さだけでなく、それぞれの作品の面白さ、弦楽四重奏という形態の面白さにも触れたコンサートでした。
・以前の記事:バロック期ヨーロッパのはかなさと躍動感 「静物画の秘密展」
by halca-kaukana057
| 2010-01-24 21:42
| 音楽