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セミたちと温暖化

 かなり前に「春の数えかた」を読んだ、日高敏隆さんのエッセイ。本屋で目に留まったので、久々に読んでみた。


セミたちと温暖化
日高敏隆/新潮社・新潮文庫/2009

 動物行動学者である日高さんが、虫や動物たちを見つめて、その生態や自然とのかかわりについての短いエッセイを集めてあります。普段、身近にいる動物や虫たちの行動にも意味がある。また、種によって異なることがあるのは何故か。自然環境が大きく変化している現代、動物たちにどんな影響があるのか。また、海外に出かけた時に気づいた、日本の自然・社会のこと。内容は重く濃いのに、温かい優しい文章でリラックスして読める不思議。読んでいると、その虫たちや動物たちの世界に引き込まれるかのよう。

 この本を読んで思ったのは、生き物は自然と関わり無しに生きることは無理だということ。虫も鳥類も哺乳類も、その生息する自然環境に合わせて、食も身体も生殖も、危険から身を守る方法も"選択"してきた。この地球上には多種多様な生物が生きている。同じ環境だったとしても、様々な種に分かれている。その環境に対してベストな特徴を持った生物はいない。環境に合わせて、どういう暮らしをするかで、食も変わるしそれに合わせて身体も内臓も歩き方・走り方、身を守る方法、繁殖も子育ても変化する。生き物は不思議だと思わざるを得ない。

 そんな生き物たちを見つめる日高さんの視点が、言葉がとても温かく、生き物が好きなんだなぁと感じます。「チビシデムシ」の項では、日高さんが発見した新種の虫について書かれています。小さな甲虫もじっくりと観察し、名前がわからない場合は専門家に聞いてみる。その結果、その虫が新種で、「ヒダカチビシデムシ」と名づけられた。「「なぜ?」に答える」・「「なぜ?」の「なぜ?」では、子どもたちや大人の生き物に対する疑問を通して、考えることの面白さを語っている。生物学・分類学でもまだまだわからないことがあるのだ…ということも知った。どの学問でも、ここで終わり、というものが無いのだな。生物学にはあまり詳しくないので、普段あまり知らない分野のお話に触れることができるのはありがたい。

 「総合とは何か」「文系・理系」の項も、学問の分類と関係性について考えさせられる。文系だけど理系にも興味がある私としては、日高さんのご意見に大賛成。文系・理系と2つにはっきりと分けられないと私も思う。日高さんが初代所長を務めた総合地球環境学研究所(地球研)で日高さんがどんな仕事をされていたか、もっと知りたくなった。

 日高さんは昨年11月に逝去されました。このような温かいお話を語れる方がいなくなってしまったのは、残念でなりません。日高さんのエッセイをまた読もう。

過去記事:春の数えかた

春の数えかた (新潮文庫)

日高 敏隆 / 新潮社


by halca-kaukana057 | 2010-03-09 23:16 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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