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宇宙に恋する10のレッスン 最新宇宙論物語

 読んだ本記事、まだまだいきます。今度は宇宙論の本。twitter経由で知った本です。


宇宙に恋する10のレッスン 最新宇宙論物語
小坂 淳・片桐 暁:著/佐藤 雅彦:監修/東京書籍/2010

 宇宙論…と聞くと、天文学の中でも最も難しい分野に感じます。しかし、この本にはすごい仕掛けがしてあります。何と、ラブストーリーに天文学・宇宙論の話を組み合わせてしまった。ラブストーリーを読み進めるうちに、宇宙論についても学べてしまうという…。読む前は、どんな感じなんだろうと思っていました。数学と青春小説をうまく組み合わせた「数学ガール」のような感じか?と思ったのですが、ちょっと違いました。まず、物語が語られ、各章の終わりにその章で取り上げた天文学の解説があります。物語の部分でも、天文学者を志す大学院生(いわゆる「ポスドク」)のキョウコが、ひょんな出来事で出会った文系の大学生・コウイチに天文学・宇宙論の話をします。そのキョウコさんのお話だけでも、宇宙はどうなっているのかについて学べます。

 ひょんな出来事で、コウイチとキョウコは出会い、キョウコが天文学の研究をしていることを知ったコウイチは宇宙の謎についてキョウコに尋ねる。宇宙の果てはどうなっているのか、宇宙の始まりはどうだったのか、宇宙は最後どうなってしまうのか。それについて、キョウコはわかりやすく解説する。コウイチもなかなか賢い子で、難しいこともうまく例えたり、キョウコに遠慮なく質問したりして宇宙への理解を深めてゆく。2人は宇宙の魅力を語るうちに、お互いをかけがえのない存在だと思うようになる。そして付き合い始めてからも、2人をつなぐのは宇宙の話。さらにキョウコの友人で作曲を学ぶミミも出てきて、科学と芸術、科学とはそもそも何なのか…についても話すようになる。一方で、キョウコはある決断を迫られていた…。

 タイトルに「宇宙に恋する」とある通り、宇宙というまったく不思議で、何もかもを超越した謎な世界に魅了される、”恋する”という表現がピッタリだと感じました。実際、私自身が宇宙について学んだり、夜空を見上げて星を観ている時は、「宇宙に恋している」と言ってもいいかもしれない。星座の話も何度も読んだり聞いたりしても飽きないし、自分で望遠鏡で観たことのない天体はそれこそ”星の数ほどある”ので、観たい天体を数えてみたり。この本は宇宙論、つまり、宇宙がいつどのように始まって、現在の姿になるまでどのような過程を経てきたのか、宇宙に果てはあるのか、宇宙の終わりはどうなってしまうのか…という宇宙そのものの姿を探究する分野の本ですが、どれも何度話を聞いても飽きない。ダークマターなどの新しい研究や、遠くにある銀河などの観測結果が次々と出てくる。疑問も次々と沸いてくる。宇宙をどこまで解明できるのだろう?と思うとワクワクする。夜空を見上げている時、今見えている星の光は過去のものであること、見えている星だけでなく、ダークマターやニュートリノなどの「人間の目では見えないもの」もこの宇宙には存在しているんだと思うと、いても経ってもいられない。やっぱりこれは「宇宙に恋している」としか表現しようがない。

 オールカラーで、イラストや図も多い(各章終わりの解説ページには特に多めに)あるので、ビジュアルでも理解しやすいようになっています。さらに、カバーの裏を見るのもお忘れなく。カバー裏の図解を見ていると、宇宙は途方もないほど大きく、長い長い時間を有しているものだと実感します。その宇宙に、私も生きている。自分の生きている場所を知りたい…そんな気持ちに駆られる本でした。

 キョウコさんは博士課程で、大学院卒業後の進路を決めかねているポスドクという設定ですが、この設定は天文学に限らず、学問を研究する道を志す若き研究者たちの現実そのものです。研究の道に進みたくても、ポストがなければどうしようもない。ようやくポストを見つけても、そこで研究をするためには今いる環境などと研究のどちらを取るか、という厳しい選択を迫られることもある。そんな若き研究者たちの現実にも触れられる本でした。ますます面白くなる科学の研究を志す若者たちが望む道に進み、未知の世界を切り拓いていけることを、願ってやみません。
by halca-kaukana057 | 2010-10-22 22:26 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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