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ともだちは海のにおい

 web上で偶然見かけて、気になった本。本との出会いは、いつどんな形でやってくるかわからない。

ともだちは海のにおい
工藤直子/長新太:絵/理論社・きみとぼくの本/1984

 作者の工藤直子さんといえば、詩集「のはらうた」。虫や動物たちのことばを、ユーモアたっぷりに描いた詩の数々…大好きな作品です。大人になってから出会ったのですが、本当に面白い。その虫や動物をよく観ていないと描けない。かつて読み聞かせをしていた時、「のはらうた」からいくつか朗読したこともありました。その工藤直子さんが、童話も書いていたとは知らなかった。

 舞台は海。ある星のきれいな夜、いるかとくじらが出会います。いるかスピード泳ぎやジャンプが得意で、いつもトレーニングを欠かさない。一方くじらは読書好きで、物語から詩、宇宙や哲学、料理など何の本でも読む。また、自分で物語や詩を書くのも好き。性格も好きなものも異なるふたりだが、お互いに共通する何かを感じ、親しくなる。一緒にお茶やビールを飲んだり、遊んだり、探検に出かけたりと、ふたりで過ごす、普通の日常だけれども、かけがえのない時間。ふたりは友情を育みながら、成長していく。

 物語ではあるのですが、物語に関連する詩もあちらこちらに出てきて、文学の魅力をぎゅっと集めた作品のよう。初めに「海のはじまり」、終わりに「おわりのない海」という詩があるのですが、この始まり方と終わり方で、物語の世界に一気に引き込まれる。いるかとくじらのお話なのだけれども、この2つの詩が「海=人間の心・日常」というひとつの見方を教えてくれる。広く、深い海は人間の心そのもの。そう、いるかとくじらは、読者の心の中にいるのだと、語りかけてくる。

 いるかとくじらの日常は、あたたかい。大きさも性格も趣味・嗜好も異なるふたりだが、お互いの全てを認める…というよりは、そのまま受け入れている。ぼくはこれがすきだけど、きみのすきなものもいいね、と。お互いを信頼している。「ふたりはともだち」のがまくんとかえるくんのよう。この作品を読んでいると、大切な友達に会いたいな、と思う。

 私はいるかに近い部分もあるが、くじらに近いと思う。読書が好きなところ。宇宙に興味を持っている点も、まさにくじら。「宇宙を泳いだ」のお話は、まさに太陽系のスケールを実感できる。80年代に童話で、宇宙のスケールを表現した作品があったことが、とても嬉しくなった。くじらがビール好きで、「びーるは一日三本まで」には笑いましたw工藤直子さんらしいユーモアのセンスです。

 読んでいると、物語そのもの、物語と文章の雰囲気にゆっくりと浸り、包まれます。これ以上の感想を書くよりも、何度でも読みたい、とにかく読んでほしいと思う本です。もうすぐクリスマスなので、贈り物にもピッタリの本だと思います。大切な友達に、プレゼントしたい本です。
by halca-kaukana057 | 2010-12-11 23:01 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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