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ヴィンランド・サガ 10

 結構前に買って読んだのに、感想を書くまでに日が開いてしまいました。「ヴィンサガ」待望の10巻です。

ヴィンランド・サガ 10
幸村 誠/講談社・アフタヌーンKC/2011

 農場主ケティルの父である大旦那・スヴェルケルから馬を借りることが出来たトルフィンとエイナルは、懸命に荒地を畑として耕す。麦を育て、収穫し、売ることで、奴隷身分から脱することが出来る。張り切るエイナルの一方で、生まれて初めて畑作に挑むトルフィンは、農耕そのものに驚いてばかりいた。
 そんな日々の中で、トルフィンは悪夢にうなされ続けていた。心配するエイナル。トルフィンは、戦士だった頃のこと、父・トールズとアシェラッドのことをエイナルに話し始める…。


 まず、表紙を観て驚いた。これ…トルフィンだっけ?トルフィンです。9巻から更に雰囲気が変わりました。成長したということです。そういえば、この10巻ではトルフィンはいくつになっているのだっけ…?

 10巻は畑を耕し麦を育てるトルフィンとエイナルの日常の中で、ケティルと父である大旦那・スヴェルケルの考え方の違い、奉公人たちのトルフィンとエイナル(奴隷)への”差別意識”。そして、そこから発展する”憎しみ”と”暴力”について描かれます。冒頭や中盤で起こったことが、後半で全て収束します。凄いまとめ方、物語の作り方だと感じました。

 「ヴィンランド・サガ」は、最初トルフィンの”憎しみ”で成り立っていた物語でした。父・トールズを罠にはめ、殺したアシェラッド。そのアシェラッドに仇を討つため、子どもながらもアシェラッドの一味に加わり、仇討ちの機会を伺う。アシェラッドもそんなトルフィンの気持ちはわかってはいたが、己の目標の実現のため、トルフィンをそばに置いて、うまく動かしながら戦士とは何かを教え続けた。そして、デンマーク王スヴェンを殺し、その息子であるクヌート王子に自ら殺されることで、クヌートを王にするという命をかけた策略で目標を達成する。一方、トルフィンはアシェラッドに仇を討つ必要がなくなり、戦場から去り、今のケティルの農場で奴隷として働いている。過去の戦士だった自分も、アシェラッドに父の仇を討つことも、ここ、ケティルの農場には無い。でも、トルフィンの過去には、しっかりと刻まれている。過去の自分と今の自分が繋がらない。

 この、過去の自分と今の自分が繋がらないことによる、複雑な想いを、私も抱いています。トルフィンのような強い”憎しみ””仇討ち”ではありませんが、過去に追い求めていたこととは全く違う道にいる今の自分に、どう向き合ったらいいか。頻繁に悩みます。ネガティヴな面でも、ポジティヴな面でも、こんな複雑な気持ちを抱くことは誰にでもありうると思う。

 そして、ある事件をきっかけに、トルフィンは戦士だった自分、過去に抱いていた”憎しみ”に向き合うことになる。父・トールズに加えて、まさかのアシェラッド再登場です。アシェラッドが死ぬ際に遺した言葉の本当の意味が、ここで明瞭になります。8巻で死ぬ時に、殺してしまったけれども、「本当の戦士」だと認めていたトールズ。そのトールズが貫き通した「本当の戦士」の道へ、様々な人々の”憎しみ”や”かなしみ”、”死”と共に進んで行け!この力強い言葉。アシェラッドは本当に最後の最後まで魅力的な人間だった。

 9巻で無気力だったトルフィンが、この10巻で生きる道・場所を見つけ、畑と同じように開拓してゆく。物語がまた大きく動き始めました。これは11巻が待ち遠しいです。


【過去巻感想】
ヴィンランド・サガ 8
ヴィンランド・サガ 9
by halca-kaukana057 | 2011-05-26 23:00 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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