2011年 06月 22日
ユタと不思議な仲間たち
先日、劇団四季のミュージカル「ユタと不思議な仲間たち」のCDを買いました。…編曲がアキラさん・宮川彬良さん(作曲は三木たかしさん)で、ずっと気になっていました。それだけがきっかけです(言い切ったw 聴いてみて、原作も読みたくなったので読んでみました。
ユタと不思議な仲間たち
三浦 哲郎/新潮社・新潮文庫
東京育ちの少年・勇太。父を仕事中の事故で亡くし、母の実家がある東北の山奥の村・湯ノ花村にやってきた。しかし、勇太は村にも、村の学校・子どもたちにもなかなか慣れることが出来ず、退屈で寂しい思いをしていた。母が手伝っている温泉宿で働く寅吉じいさんは、そんな勇太に、満月の夜に大きな大黒柱のある古い家に出ると言う「座敷わらし」の話をする。温泉宿の離れのひとつに、古い大きな大黒柱のある家があり、そこにひとりで泊まってみればその「座敷わらし」に会えるかもしれない、と。半信半疑で迎えた満月の夜。離れの客間にひとり眠る勇太のもとに、誰かがやってきた…。
東京からやってきた”もやしっ子”の少年・勇太(村の人々からは「ユタ」と呼ばれる)と、座敷わらしたちが繰り広げる物語。面白くて、すぐに物語の世界に惹き込まれました。東北の山奥にある小さな村の環境・文化・人々の暮らしに馴染めず、学校でも子どもたちだけでなく教師からも異質な存在として見られ、距離を置かれている。そんなユタが出会った9人の座敷わらしたち。彼らが、どうして座敷わらしになったのか。その背景には、暗い歴史があった。凶作・飢饉と、生まれた子どもの「間引き」。ペドロたち座敷わらしは、重く、哀しい過去を背負っている。しかし、物語にはそんな重さや暗さはあまり感じられない。感じさせない。ペドロたちと出会って、ユタは様々な体験をする。人間には見えないが、座敷わらしたちには見え、触れるものの存在。村の子どもたちに自分の意見をきっぱりと言い、さらに賭けまでしてしまう。その過程で、ユタは成長し、たくましくもなってゆく。私は、子どもが成長してゆく過程がうかがえる物語が好きだ。大人になって、失うこともある。でも、その姿は清々しいし、潔い。
物語はユタの一人称「ぼく」で語られるのですが、ユタは本当に賢い子です。そして、ペドロたち座敷わらしも、人間そのものに対して敏感で、個性的で、感情表現豊か。両者とも、自分自身に対して、そして他者に対しても敏感で、繊細なところがあるからかなと感じました。でも、物語の文章は決して難しくなく、すーっと物語に入っていける。三浦哲郎氏の作品は初めて読んだのですが、いい物語だなぁとしみじみと感じました。
豊かな自然の中で友情を育んでいったユタと座敷わらしたちですが、最後に寂しくなります。成長するということは、別れも経験するということ。それでも、ユタと座敷わらしたちの日々はかけがえの無いものなのだなと感じるラストで、また胸が熱くなります。
物語そのものを、何度でもじっくり味わいたい作品です。
さて、劇団四季のミュージカル版(CD)なのですが、
原作の前にこっちを先に聴いてしまったので、原作とはちょっと違うものになっていることを、原作を読んで気が付きました。舞台が東北の農村のため、歌やセリフに東北訛りの言葉が出てきます。その訛りが、私にとってはあまりにも自然で驚きました。私の母国語のようなものだから。全国区のミュージカルで、東北訛りが通じるのか…ちょっと不安にもなりましたが、もう20年も前から、現在も演じられ続けている作品。東北訛りのセリフや歌が、さらに「不思議」さを引き出しているのかなと感じました。
音楽も、東北独特の躍動感があって、夏や収穫の季節の祭を連想しました。どこかロックテイストなところもあるのに、東北の民謡の雰囲気もある。凄いよ!感激しました。
ちなみに、「友達はいいもんだ」の歌は、このミュージカルが元だったことを初めて知りました。小学生の頃、クラスの歌になっていてよく歌いました。あまりにも歌い過ぎて、私の中でイメージが固定していたのですが、原曲であるミュージカル版は違うなぁ、イメージが変わるなぁと何度も聴いてしまいました。この歌をよく歌っていた小学生の時、ミュージカルも観て、聴きたかったな。印象が変わっていたかもしれない。
このCDには、ミュージカルの「全て」が収められているわけではありません。ミュージカルは生で観てこそのもの。ミュージカル版を是非観たいです!現在、東京で公演中。夏には、東日本大震災で被災した東北3県をまわるとのこと。東北の力になって欲しいと思います。
◇劇団四季:ユタと不思議な仲間たち
ユタと不思議な仲間たち
三浦 哲郎/新潮社・新潮文庫
東京育ちの少年・勇太。父を仕事中の事故で亡くし、母の実家がある東北の山奥の村・湯ノ花村にやってきた。しかし、勇太は村にも、村の学校・子どもたちにもなかなか慣れることが出来ず、退屈で寂しい思いをしていた。母が手伝っている温泉宿で働く寅吉じいさんは、そんな勇太に、満月の夜に大きな大黒柱のある古い家に出ると言う「座敷わらし」の話をする。温泉宿の離れのひとつに、古い大きな大黒柱のある家があり、そこにひとりで泊まってみればその「座敷わらし」に会えるかもしれない、と。半信半疑で迎えた満月の夜。離れの客間にひとり眠る勇太のもとに、誰かがやってきた…。
東京からやってきた”もやしっ子”の少年・勇太(村の人々からは「ユタ」と呼ばれる)と、座敷わらしたちが繰り広げる物語。面白くて、すぐに物語の世界に惹き込まれました。東北の山奥にある小さな村の環境・文化・人々の暮らしに馴染めず、学校でも子どもたちだけでなく教師からも異質な存在として見られ、距離を置かれている。そんなユタが出会った9人の座敷わらしたち。彼らが、どうして座敷わらしになったのか。その背景には、暗い歴史があった。凶作・飢饉と、生まれた子どもの「間引き」。ペドロたち座敷わらしは、重く、哀しい過去を背負っている。しかし、物語にはそんな重さや暗さはあまり感じられない。感じさせない。ペドロたちと出会って、ユタは様々な体験をする。人間には見えないが、座敷わらしたちには見え、触れるものの存在。村の子どもたちに自分の意見をきっぱりと言い、さらに賭けまでしてしまう。その過程で、ユタは成長し、たくましくもなってゆく。私は、子どもが成長してゆく過程がうかがえる物語が好きだ。大人になって、失うこともある。でも、その姿は清々しいし、潔い。
物語はユタの一人称「ぼく」で語られるのですが、ユタは本当に賢い子です。そして、ペドロたち座敷わらしも、人間そのものに対して敏感で、個性的で、感情表現豊か。両者とも、自分自身に対して、そして他者に対しても敏感で、繊細なところがあるからかなと感じました。でも、物語の文章は決して難しくなく、すーっと物語に入っていける。三浦哲郎氏の作品は初めて読んだのですが、いい物語だなぁとしみじみと感じました。
豊かな自然の中で友情を育んでいったユタと座敷わらしたちですが、最後に寂しくなります。成長するということは、別れも経験するということ。それでも、ユタと座敷わらしたちの日々はかけがえの無いものなのだなと感じるラストで、また胸が熱くなります。
物語そのものを、何度でもじっくり味わいたい作品です。
さて、劇団四季のミュージカル版(CD)なのですが、
原作の前にこっちを先に聴いてしまったので、原作とはちょっと違うものになっていることを、原作を読んで気が付きました。舞台が東北の農村のため、歌やセリフに東北訛りの言葉が出てきます。その訛りが、私にとってはあまりにも自然で驚きました。私の母国語のようなものだから。全国区のミュージカルで、東北訛りが通じるのか…ちょっと不安にもなりましたが、もう20年も前から、現在も演じられ続けている作品。東北訛りのセリフや歌が、さらに「不思議」さを引き出しているのかなと感じました。
音楽も、東北独特の躍動感があって、夏や収穫の季節の祭を連想しました。どこかロックテイストなところもあるのに、東北の民謡の雰囲気もある。凄いよ!感激しました。
ちなみに、「友達はいいもんだ」の歌は、このミュージカルが元だったことを初めて知りました。小学生の頃、クラスの歌になっていてよく歌いました。あまりにも歌い過ぎて、私の中でイメージが固定していたのですが、原曲であるミュージカル版は違うなぁ、イメージが変わるなぁと何度も聴いてしまいました。この歌をよく歌っていた小学生の時、ミュージカルも観て、聴きたかったな。印象が変わっていたかもしれない。
このCDには、ミュージカルの「全て」が収められているわけではありません。ミュージカルは生で観てこそのもの。ミュージカル版を是非観たいです!現在、東京で公演中。夏には、東日本大震災で被災した東北3県をまわるとのこと。東北の力になって欲しいと思います。
◇劇団四季:ユタと不思議な仲間たち
by halca-kaukana057
| 2011-06-22 23:25
| 本・読書