2011年 08月 01日
妙なる技の乙女たち
小川一水さんのSF小説です。小川さんの作品は、何年も前に「第六大陸」を読んだ以来です。表紙イラストが「プラネテス」(現在は「ヴィンランド・サガ」)の幸村誠さんの絵というところに惹かれて読んだのですが、とても面白かった。
妙なる技の乙女たち
小川一水/ポプラ社・ポプラ文庫/2011
時は2050年。赤道直下、シンガポールのリンガ島は、軌道エレベーターが造られ、宇宙へ人々を運んでいた。そのため、リンガ島は宇宙開発産業が盛んになった。そのリンガ島に住み、働く女性たち。産業デザイナー、海上タクシーの艇長、保育士、軌道エレベーターの乗務員、芸術家…。彼女たちは、宇宙に近いこの島で、それぞれの仕事に邁進していた…。
軌道エレベーター…カーボンナノチューブで作られた、地球と36000km上空の静止軌道を結ぶエレベーター。作品では、10時間で地球と静止軌道上にあるステーションを結ぶ、とあります。エレベーターと言っても、現在の普通のエレベーターのようなものとはちょっと違い、第5話によると、上空へ向かうトンネルを走る列車、のようなイメージで、この作品は描かれています。宇宙には行ってみたいけれど、ロケットの加重力(G)が大きいのは怖い、というか苦手(絶叫マシーンは大の苦手です、乗れません!)なので、軌道エレベーターやスペースプレーン(宇宙まで飛んでいける飛行機)が開発されたらいいのになぁ…といつも思っています。
そんな軌道エレベーターのおかげで、宇宙産業が盛んになっている舞台のリンガ島。この島で、たくましく、時に挫折しても力強く、それぞれの仕事に邁進している女性たちがこの作品の主人公。各話は独立しているオムニバスストーリーですが、関係性のある作品もあります。
私は、近未来のSFであれ、異世界のファンタジーであれ、そこで生きる人々の暮らしや仕事、生き様が描かれている作品が好きです。今の自分が生きる世界とは全く異なるフィクションでも、そこに人間が生きているなら、その環境によって異なる点はあっても今の私たちに共通する衣食住が、暮らしが、仕事があるはず。そう感じるのです。この作品でも、リンガ島や軌道上での衣食住、文化・慣習が描かれていて、興味深く読みました。
軌道エレベーターが出来た未来のSFとはいえ、SFっぽくない物語もあります。リンガ島は宇宙産業が発達しているとはいえ、全ての人がその宇宙産業に関わっているわけではない。たまたまリンガ島に住んでいて、宇宙開発・宇宙産業とは無縁の仕事をしている人もいる。そんな立場にある人の暮らし・仕事を描いているのも興味深かった。直接宇宙にかかわりは無くても、どこかで関わりを持っている。宇宙産業が、軌道エレベーターが、リンガ島に当たり前のようにあって、人々の暮らしに根付いている。このブログで、私たちの生活の延長線上に宇宙での暮らしがあって、その線が徐々に短くなっていく、つまり身近になればいい、とよく書いていますが、リンガ島はまさにそんな場所なのだなと感じました。第7話では、更に宇宙を本当の意味での「人の土地」にしようとプロジェクトを立ち上げた女性を描いています。確かに、宇宙で暮らす、と言っても地球から全て持って行かないと暮らせない。宇宙での独自の衣食住が発達していない。宇宙と私たちの暮らしがどんどん近くなっても、地上の暮らし無しに宇宙の暮らしはない…。これには唸りました。地上とは異なる、地上とは繋がっていなくても宇宙の暮らしが独自に発達する。なるほどなと感じました。
その第7話と、保育士さんが主人公の第4話が特に好きです。2人の主人公の考え方がとても興味深いです。
小川一水さんのSF小説で、他にも気になっている作品があるので、夏の読書として読みます。
妙なる技の乙女たち
小川一水/ポプラ社・ポプラ文庫/2011
時は2050年。赤道直下、シンガポールのリンガ島は、軌道エレベーターが造られ、宇宙へ人々を運んでいた。そのため、リンガ島は宇宙開発産業が盛んになった。そのリンガ島に住み、働く女性たち。産業デザイナー、海上タクシーの艇長、保育士、軌道エレベーターの乗務員、芸術家…。彼女たちは、宇宙に近いこの島で、それぞれの仕事に邁進していた…。
軌道エレベーター…カーボンナノチューブで作られた、地球と36000km上空の静止軌道を結ぶエレベーター。作品では、10時間で地球と静止軌道上にあるステーションを結ぶ、とあります。エレベーターと言っても、現在の普通のエレベーターのようなものとはちょっと違い、第5話によると、上空へ向かうトンネルを走る列車、のようなイメージで、この作品は描かれています。宇宙には行ってみたいけれど、ロケットの加重力(G)が大きいのは怖い、というか苦手(絶叫マシーンは大の苦手です、乗れません!)なので、軌道エレベーターやスペースプレーン(宇宙まで飛んでいける飛行機)が開発されたらいいのになぁ…といつも思っています。
そんな軌道エレベーターのおかげで、宇宙産業が盛んになっている舞台のリンガ島。この島で、たくましく、時に挫折しても力強く、それぞれの仕事に邁進している女性たちがこの作品の主人公。各話は独立しているオムニバスストーリーですが、関係性のある作品もあります。
私は、近未来のSFであれ、異世界のファンタジーであれ、そこで生きる人々の暮らしや仕事、生き様が描かれている作品が好きです。今の自分が生きる世界とは全く異なるフィクションでも、そこに人間が生きているなら、その環境によって異なる点はあっても今の私たちに共通する衣食住が、暮らしが、仕事があるはず。そう感じるのです。この作品でも、リンガ島や軌道上での衣食住、文化・慣習が描かれていて、興味深く読みました。
軌道エレベーターが出来た未来のSFとはいえ、SFっぽくない物語もあります。リンガ島は宇宙産業が発達しているとはいえ、全ての人がその宇宙産業に関わっているわけではない。たまたまリンガ島に住んでいて、宇宙開発・宇宙産業とは無縁の仕事をしている人もいる。そんな立場にある人の暮らし・仕事を描いているのも興味深かった。直接宇宙にかかわりは無くても、どこかで関わりを持っている。宇宙産業が、軌道エレベーターが、リンガ島に当たり前のようにあって、人々の暮らしに根付いている。このブログで、私たちの生活の延長線上に宇宙での暮らしがあって、その線が徐々に短くなっていく、つまり身近になればいい、とよく書いていますが、リンガ島はまさにそんな場所なのだなと感じました。第7話では、更に宇宙を本当の意味での「人の土地」にしようとプロジェクトを立ち上げた女性を描いています。確かに、宇宙で暮らす、と言っても地球から全て持って行かないと暮らせない。宇宙での独自の衣食住が発達していない。宇宙と私たちの暮らしがどんどん近くなっても、地上の暮らし無しに宇宙の暮らしはない…。これには唸りました。地上とは異なる、地上とは繋がっていなくても宇宙の暮らしが独自に発達する。なるほどなと感じました。
その第7話と、保育士さんが主人公の第4話が特に好きです。2人の主人公の考え方がとても興味深いです。
小川一水さんのSF小説で、他にも気になっている作品があるので、夏の読書として読みます。
by halca-kaukana057
| 2011-08-01 22:44
| 本・読書