人気ブログランキング |

青い星まで飛んでいけ

 以前小川一水さんのSF小説「妙なる技の乙女たち」を読んだのですが、もう一冊小川さんの作品を読みたいと思っていました。それがこれです。
妙なる技の乙女たち

 まず、帯に
「はやぶさ」も目指した 未知との遭遇
宇宙大航海時代が見える

との言葉が。小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトマネージャー・川口淳一郎先生による推薦文です。これに思わず反応してしまったのは、言うまでもありません…w

青い星まで飛んでいけ
小川一水/早川書房・ハヤカワ文庫JA/2011

 収録されているのは、時代も場所(星)も人物も全て異なる6つの短編。タイトルと、帯の言葉で宇宙SFかと思ったら、これもSF?と思ってしまうような物語も。彗星で人類が暮らしている未来、その彗星都市での生活に物足りなさと閉塞感を抱いている少女・サエは、ある日彗星都市の機能を守っている場に迷い込み、不思議な少年と出会う。その少年との出会いが、サエを広い世界・宇宙へ出ようとする強い思いに繋がってゆく「彗星都市のサエ」。準惑星ケレスで、人造人間として暮らしているトレントが、小惑星で未知の生命体と出会い、コンタクトする「静寂に満ちていく潮」。遠い遠い未来、人間が地球外生命体とコンタクトすることを目指して造られ、広い宇宙を旅する知能を持つ宇宙船・エクスの大宇宙航海記「青い星まで飛んでいけ」。この3作品のように宇宙が舞台のSFもあるのですが、「グラスハートが割れないように」は、祈りの力で増えるという食用苔を信じる恋人と、科学的根拠があって増えているものであって祈りの力ではないと調べた主人公の、それぞれの想いとすれ違いを描いているし、「占職術師の希望」は他者の”天職”が見えるという不思議な力を持った主人公と、彼の言葉で”天職”に就き活躍している女性が、ある事件に巻き込まれるうちに、職業について考えるというSFとはかけ離れた物語もある。電脳都市で生きる少年が、ある少女に出会い、その少女の頼みを聞いているうちに都市のことについて知ってゆく「守るべき肌」は、冒険ファンタジーライトノベル風(でも終盤、SF方向にも進む)。多種多様な物語が面白くて、夢中になって読みました。

 全て異なるストーリーの物語ですが、共通しているのは、新しい何かに出会うこと。宇宙SFの意味でのファーストコンタクトもある。恋愛としての出会いもある。異なる考え方・価値観との出会いもある。今まで体験しなかったものに出会い、彼らはどう行動するのか。何を思うのか。初めての何かに出会う時、ワクワクも感じるし、不安も感じる。「彗星都市のサエ」のサエは、ワクワクの方向へ。表題作のエクスは不安と恐怖の方向へ。でも、出会ってしまったからには向き合わなければならない。「グラスハート~」で、主人公とその彼女は”グラスハート”の中の食用苔を巡って、すれ違ってしまう。その奥底には、相手への心配・愛情もある。でも、”グラスハート”が妨げのようになっている。その妨げ・壁をどう2人は乗り越える…壁を壊すのか。爽やかなエンディングでした。「守るべき肌」の主人公・タウヤと、出会った不思議な少女・ツルギや、「静寂に~」のトレントと未知の生命体も、全く異なる存在であるのに心を通わし、一緒にいよう、お互いを守ろうとする。新しい何かに出会い、それまで「ここまでが自分の世界」と思っていた領域が広がる。その領域は、他者であることもあるし、土地・宇宙・星である時もある。

 私は、「青い星~」のエクスのように、不安や怖さを抱いて新しい何かに接することが少なくない。「彗星都市のサエ」のサエのように、面白そう!と飛び込んでいくこともあるけど、飛び込んでみて、最初のワクワクが不安や怖さに変わってしまうことも多い。エクスも、不安や恐怖を抱いていても、それを抱きつつ、ファーストコンタクトを続けようとする。私も、そうなのかなと感じました。不安や怖さを感じていても、まだ知らない、会ったことのない何かに出会いたい。その出会いにより自分の領域が広がってゆくことが、成長というならば、それを受け入れたい。

 「占職術師の希望」は、この中では異色ですが、考えさせられる内容です。
「人は、職を持つ以前に、まず人間なんじゃないの?」(252ページ)

 主人公が”天職”を見出し、活躍している女性・寛奈が言った言葉です。確かに…。仕事について悩むことが多い私にとって、自分への問いかけでもあるように感じました。

 SFとしても面白いですし、短編集としても面白いです。
by halca-kaukana057 | 2011-09-30 22:44 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31