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こころと脳の対話

 この本のことは前から気になっていて、読もうと思っていました。その後、NHK-BSプレミアム「宮川彬良のショータイム」第4回の「脳科学ミュージカル」を観て、この本のことを思い出しました。茂木さんがゲストだったこともあって。脳って一体何?心はどこにある?心と脳はどんな関係にあるの?そんな疑問を抱きながら、ちょうど文庫化もされていたのでじっくりと読みました。

・「脳科学ミュージカル」の感想のようなものなど:その想いをミュージカルで代弁します 「宮川彬良のショータイム」第4・5・6回感想まとめ
↑かなりの長文記事ですごめんなさい。前半のほうにあります。


こころと脳の対話
河合隼雄・茂木健一郎/新潮社・新潮文庫/2011(単行本は2008、潮出版社より刊行)

 心理学・心理療法の河合隼雄さんと、脳科学の茂木健一郎さん。この2人が3回に分けて、脳と心、そして人間について語り合う。茂木さんと言えば、「クオリア」(脳科学において、脳の働きは数量化できる。しかし、数量化できない「質感」、「質」や「状態」のこと)。この脳科学においての「質感」について、ユングやフロイトは考えていたのか…という話から始まります。先に挙げた「脳科学ミュージカル」でも表現していたのですが、脳と心は繋がっている、でも、脳のことがわかれば心もわかるわけではない。このことに、ますます脳と心の関係にますます興味を持ちました。脳も心もまだまだわからないことばかり。そして、脳のことがわかっても心のことがわかるわけではない。こう言われると、わけがわからない…と言いたくなりそうなのですが、わからない、簡単には解明できないからこそ惹かれています。不思議だ。いや、もし脳のことが全部解明されて、心も全部わかってしまったら…人間の行動や思考をコンピュータでプログラミングできるような感じがして、そっちのほうがわけがわからないと私は思います。
 実際、第3回の部分に、パーキンソン病の原因となっている脳のある部分に電極をあてて神経伝達を調整すると、症状がパッと無くなり普通に動く。また、抑うつ症でも悲しい時に活動する中枢部分に電極をあてて調整すると、症状が全く出なくなる(全ての被験者がそうなったわけではない)。でも、寂しさや悲しみなどの感情を操作するようなことをしていいのか。どこまでやれるのだろうか、という倫理的な問題も出てくる、という内容のお話がありました。倫理的な面でも問題になると思いますし、それが出来るとしたら「感情って何だろう?心って何だろう?」という問題にまた突き当たる。脳と心の関係は、グルグルと回っているみたいだ。

 この本でよく語られ、面白いなと思ったのが「関係性」のお話。心理療法でも、カウンセラーや先生と患者の信頼関係があって、治療が進んでゆく。また、個と個の関係があって”私”があるという「華厳経」の考え方。脳でも、神経細胞がネットワークをつくって、「クオリア」も意識も生まれる。一方で、ユングの「シンクロシニティ」(共時性)は、外のものと外のものが因果的に結びつくのではなく、自分の無意識と外のものが呼応する。関係性があるといっても、何にでもあるわけではない。確実ではないのに因果があると思い込むと、視野が狭くなってしまう。思考が偏ってしまう。関係性があるという面白さと同時に、何でも繋がっている…とは簡単には言えないのだなという別の面白さを感じました。

 また、科学に対するお話も。事象を一般化、標準化できないと、「科学的」とは言えない。例えば、箱庭療法でも、「科学的」にやるには箱庭で使うものを一般化すべきだという考え方があって、実際使われているところもある。でも、「全体をアプリシェイト(味わう)することが大事であって、インタープリット(解釈)する必要はない」(23ページ)と河合さんは主張し、ゆるい基準だけ決めておいてあとはセラピストと被験者に任せるという形になっているそうだ。
 「科学的」と言われれば、しっかりとした理論があって、理路整然とした実験・観察に基づいたデータの裏づけがあって、確実なもの、というイメージがある。そうでないものは「非科学的」。確実ではない…のだとしたら、心は、心理学はどうなのだろうか。河合さんと茂木さんの科学への鋭い眼差し・見解に、今まで自分が抱いてきた「科学的」なものと「非科学的」なものを線引きしてしまうことへの危うさを感じました。ドキリとします。

 第2回の対談では、河合さんの京都のオフィスで、茂木さんが箱庭をやってみる。茂木さんは大学時代に精神分析に興味を持ち、箱庭を継続してやっていたことがあるそう。茂木さんの箱庭の続きを見たかった、そのお話を聞きたかったなと思います。河合さんが急逝してしまったので、叶いませんでしたが…。

 初めは、河合さんが脳について茂木さんに話を聞くはずだったのが、茂木さんが河合さんの心理療法について話を熱心に聞いたり、河合さんが茂木さんの話をうまく引き出したり…。そして脱線やジョークも。脳と心の不思議に惹かれると共に、この2人のお話そのものにもぐいぐいと引き込まれる本でした。

 脳と心に対する疑問は、きっとこれからも持ち続けると思う。グルグルと。わからないからこそ、面白い。


・参考:以前読んだ茂木さんの著書:すべては音楽から生まれる
 ↑脳科学のお話もありますが、タイトルどおり音楽…クラシック音楽、特にシューベルトについて。
by halca-kaukana057 | 2011-12-23 23:53 | 本・読書

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