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木いちごの王さま

 先日、見つけた気になる絵本です。


木いちごの王さま
サカリアス・トペリウス:原作/きしだえりこ:文/やまわきゆりこ:絵/集英社/2011

 サカリアス・トペリウスは「フィンランドのアンデルセン」とも呼ばれる、フィンランドの作家・童話作家・詩人。短編の作品を多く残しています。そのトペリウスの作品のひとつが、日本で絵本になりました。しかも、絵は「ぐりとぐら」でお馴染みの山脇百合子さん。表紙の山脇さんのやわらかな絵と、木いちごの赤に惹かれます。

 物語は、テッサとアイナの姉妹が、森で採ってきた木いちごを洗っている時、木いちごの中に隠れていた虫を助け森に返すところから始まります。再び木いちごを採りに森へ行くテッサとアイナ。この森での描写が、まさにフィンランドの森だ、と感じました。

 フィンランドでは、ご存知の方も多いかと思いますが、私有地であれ、森で採れる果実やベリー、きのこなどは、誰もが収穫する権利を持っている、とされています(勿論マナーや限度は守って)。森は皆の財産、皆にとって恵みの存在。フィンランドでは夏になれば、この物語のように、森へ出かけベリーを摘み、そのまま食べたりジャムにしたりします。そんなフィンランドの森と、森とともに生きる人々の様子が描かれていて、嬉しくなりました。

 そして、森でテッサとアイナが出会ったもの。これまたフィンランドらしい。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」とはちょっと違うけど、こんな”存在”がいても不思議ではないのがフィンランドの森。

 物語の中で、ミルクコーヒーが出てくるのですが、これもまたフィンランド。さすがはコーヒー消費量世界一の国です。こどもでも、ミルクは入っているけどコーヒーを飲む文化がある。日本のコーヒー牛乳とは違う。何と言うか…驚かされます。

 短い絵本ですが、物語そのものも面白いし、山脇さんの絵もあたたかく柔らかく、親しみやすい。そしてフィンランドの自然・文化・人々の生活の様子も伺える。素敵な絵本です。文字だけのページもあるので、読み聞かせにはちょっと向かないかもしれない(絵本を読むと、つい読み聞かせモードに入ってしまいます…)。でも、こどもと1対1で朗読するなら、とてもいい絵本だと思います。小学生(低学年)がひとりで読むのもおすすめかと。

 トペリウス作品をもっと読みたいなら、こちらをどうぞ。

星のひとみ (岩波少年文庫 (1004))

トペリウス / 岩波書店


 岩波少年文庫で復刊した、トペリウス作品集。こちらも、フィンランドの自然や文化をじんわりと味わえる作品です。
by halca-kaukana057 | 2012-04-05 21:37 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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