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ぐるりのこと

ぐるりのこと
梨木香歩/新潮社/2004

 「裏庭」や「西の魔女が死んだ」、「りかさん」等どこかファンタジーだけれども登場人物はしっかりと現実を見据えている作家、梨木香歩さんのエッセイです。

 まず、梨木さんの博学ぶりに驚いた。それぞれの作品でも「こんなの相当の知識がないと書けないよ」と思っていたのだが、エッセイはそれ以上。知識だけかと思ったら違う。何かを考える心、それを表現する言葉も多様で深い。しっかりした芯を持っている作家さんなのだと改めて感じた。

 「ぐるりのこと」というタイトルは正木ひろしという弁護士の『近きより』という雑誌の発刊の言葉の一節から来ているのだそうだ。
……あまり遠大な仕事のみを考えていると、考えているうちに年をとってしまう。『道は近きにあり』とも言う。私はあらゆる意味に於いて『近きより』始めようと思う

身近なことから大きなものに考えをめぐらせていく。イギリスに留学中のことから近所の草花のこと、トルコに旅行した時に考えたことから国防、教育、様々な事件まで。梨木さんの考えたことに私はとても共感した。考え方が似ていると言うと何だか嫌味くさいので嫌なのだが。ただ、その考えに基盤となる知識が広く、しっかりと敷いてあってその考えが具体的なものとなっているところに感心した。日常の中から学ぼうとする姿勢、知識欲・向学心がとても強い人なのだと思う。私の勉強不足でよく分からないことも多く難しく感じるのだけど、その分勉強になる。

 とにかく共感するところが多くて、特にここを押したいというところがあちこちにあるのでどこを重点的に紹介すれば良いのか決めかねて困ってしまっている。もしこの記事を読んで興味をもたれたのなら是非読んでくださいとしか言いようがない。まいった。これではあまりにも内容が見えないので、共感した文の中から一節を紹介します。

―けれどそれは何か、その首の後ろ辺りの風情は何か、一つの記号的な「答え」のように圧倒的な確かさを漂わせていたのだった。幼い日々のいつか、鼻孔の奥に秘やかに埋め込まれた記憶のような確信をもって、私はこれは何かの「答え」なのだと納得するのだった。けれど、さて、そんな訳の分からない「答え」に先立つ「問い」を、私はいつ設定したか。だけど、ああ、もう問いもスタートも要らない、ゴールは、辺りに満ちているのだから。
 と、思える瞬間も、人生にはある。
(117~118ページ「目的に向かう」より)




 文庫版も出ました。

ぐるりのこと
梨木香帆/新潮社・新潮文庫
by halca-kaukana057 | 2006-04-12 20:37 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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