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コルシア書店の仲間たち

 今年読んだ本は、今年中に感想を書いておきたい。しばらく前に読んだのですが、感想を書くとなると難しい、文章にしにくいと思ってしまうのは何なのだろう?読んでいて、とても惹かれた本なのに。
・読んでいた頃の過去記事:活字に飢える(2012.6.4)
 体調不良、精神状態不安定だった頃だ…。

コルシア書店の仲間たち
須賀敦子/文藝春秋・文春文庫/1995(単行本は1992年)

 1960年代須賀さんが若い頃、イタリアへ留学し、ミラノで「コルシア・デイ・セルヴィ書店」という小さな書店に出入りするようになる。カトリック神父のダヴィデ・マリア・トゥロルド神父が中心となり、理想の共同体をつくろうと政治的な活動も行う若い人々が書店に集っていた。そんなコルシア書店に通い、集う仲間たちのことを綴ったエッセイです。

 イタリア、と聞くと、地中海の明るい日差しが降り注ぐ海と街、朗らかで陽気な人々、彩りよく美味しいイタリア料理やワインをイメージする。しかし、この本で描かれているイタリア・ミラノは、そんなイメージとは異なる。須賀さんが描くミラノは、淡く、どこか暗く、「モノクローム」もしくは「セピア色」という言葉が似合う。銀板写真のようなイメージもある。

 しかし、描かれている人々は個性的で、活き活きとしている。彼らが生き、暮らす周囲は鮮やかだ。一癖あるけれども、愛おしい人々。夫となるペッピーノをはじめ、読んでいてその人たちへの愛情が伝わってきた。

 それと同時に、イタリアやヨーロッパの歴史も語られる。第1次世界大戦、ナチスとユダヤ人、第2次世界大戦…。戦争は過去のものではない、人々が生きることを脅かした身近なもの、自分たちに繋がるものと書かれている。歴史の教科書やドキュメンタリーとは違う、リアルさを感じた。

 どの章も印象的なのだが、「銀の夜」のダヴィデの詩に惹かれる。「街」で描かれるミラノの2面性。「大通りの夢芝居」のミケーレはどうなったのだろうと気になってしまう。先述したナチスとユダヤ人の「家族」。「小さい妹」のガッティと共に描かれるミラノの風景。夜、アイスクリーム屋へ向かう道の描写に惹かれる。そして日本に帰ってからの「ダヴィデに」。

 コルシア書店はなくなってしまい、集っていた人々も離れ離れになってしまう。夫・ペッピーノも他界してしまう。同じ場に集っていて、ひとつのものを目指している仲間たち。でも、その心の中が全く一緒とは限らない。私もそんな経験は何度もある。その度にかなしい、残念だけれども、これは当然のことなんだ、私と他者は「別人」なのだから、と言い聞かせる。でも、完全に「別人」でもない。「孤独」とは。最後の232ページを読んで、また最初から読むと、描かれている人々がますます愛おしく感じる。

 文章を味わい、描かれている情景や人々を味わう。いとおしむ。優しく抱きしめたくなる。最初に書いたとおり、「モノクローム」な味わいもありますが、そんな雰囲気もまた愛おしい。何度でも読み返したい本です。

 須賀さんの本は、これからも読みたい。読みます。既に積読になってます。
・前回読んだ須賀さんの本:遠い朝の本たち
by halca-kaukana057 | 2012-12-18 22:58 | 本・読書

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by 遼 (はるか)
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