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ふわふわの泉

 読んだ本の感想を。今回もSF。前回は古典SFでしたが、今度は比較的新しいSFです。


ふわふわの泉
野尻 抱介/ 早川書房・ハヤカワ文庫JA/2012(元のファミ通文庫は2001年)

 浅倉泉は高校2年生、化学が好きで化学部の部長をしている。部員は1年生の保科昶(あきら)のみ。文化祭に向け、展示するフラーレンの生成を行っていた時、落雷による実験器具が故障、実験は失敗に終わったかに見えた。しかし、部屋の空気中には不思議な物体が浮かんでいた。ミクロのシャボン玉のような、でも中身は真空で、とても固い…。泉はこの物体を「ふわふわ」と名づけ、文化祭の後に詳しい検査をしてみる。すると、その物質はダイヤモンドより固く空気より軽い、「立方晶窒化炭素」…夢の新素材と予言されていたものだった。「ふわふわ」を生産し、売って一儲けしようと考えた泉は、昶と再び「ふわふわ」を作る。そして昶の祖父と祖父の鉄工場に協力してもらい、「ふわふわ」を生産し販売する会社を立ち上げる。夢の新素材に人々は殺到。そして3年後…泉は社長、昶は専務となり、「ふわふわ」は世界を変えていた…


 2001年に刊行されるも絶版してしまいましたが…この度復刊した作品です。話には聞いていて、読みたいと思っていたので復刊が嬉しかった。

 物語が次々ととんでもない方向に進んでいきます。勢いがよくて、とても面白い。化学はあまり得意分野ではないのですが、「ふわふわ」がいかに優れた物質で、様々なことに応用が利くことは読み進めるうちにすんなりと頭に入ってきます。

 泉と昶が開発した「ふわふわ」。この「ふわふわ」を様々な形に活用し、新しいものが次々と生まれ、その過程にワクワクするのですが、その一方でワクワクを阻むものもある。「ふわふわ」の工場の立地や、「ふわふわ」を使った建造物の立地。「ふわふわ」を活用して、空飛ぶコミューンを作った人々…。「ふわふわ」はそれまでの建築などの概念を根底から変え、それまでにない画期的なものも生み出された。それを活用して、それまでの概念の枠から飛び出し、打ち破る人々も現れるが、どこかでこれまでの概念や決まりにぶつかってしまう。環境、その地域に住む人々の考え、国境…。「ふわふわ」で広がる可能性、生まれる自由。でも、どこかで止まってしまう…。そんなもどかしさが力になっているようにも読める。

 後半は、更にとんでもない方向に物語が進みます。あまりにもとんでもなくて、一体どうなるの?と思わずにいられなかった。そして泉は新たなるプロジェクトを進める。ここでもまた、それまでの概念や決まりにぶつかってしまう。でも、泉は、いや「ふわふわ」はどこまでも自由を、広がる世界を目指しているように読んだ。最後、そのとんでもない展開が収拾したのには、もう驚き…非常に驚いた。何も制限するものが無く、どこまでも自由で、どこまでも広がる世界へ進んでゆける…実際にそうなったら、私もラストシーンのようになるかもしれない。

 読んでいてとても楽しかった。復刊してくれて有難い、読めてよかった作品です。
by halca-kaukana057 | 2013-06-28 22:41 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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